2.嘆き
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「京都の方には五千人の警官を配置してある。 数では志々雄側の約十倍、これだけ置いとけばとりあえず京都大火は防げよう」
「京都では琴乃殿が指揮を執るでござるか?」
「まぁな。 安心しろ 琴乃は…「わかっているでござるよ」」
剣心は笑った。
「琴乃殿はお前が一番信頼を置く者でござろう」
「……フン」
【めちゃくちゃ 優しくて、いい奴だよな! っと!】
馬車の屋根の上にいた左之助は下から出てきた 斎藤の刀の刃先を跳んでかわした。
「てめー! 斎藤 何しやがる!」
左之助は馬車の中にいる斎藤を見た。
「お前が琴乃を語るな」
その頃、剣心の手紙を受け取った操たちは京都大火に備えていた。
大阪湾では 志々雄の船 “煉獄”が出港準備をしていた。
京都では、琴乃が現場指揮を執っていた。
「琴乃君」
「……わかっています…」
一様たちはもう大阪に着いた頃でしょうか……?
――そして…
十一時五十九分になり、志々雄の計画が始まった。
京都大火の方は、斎藤の指示によって集められ、琴乃の指揮で動く五千人の警官と御庭番衆である操たちによって防がれていた。
火が回らない事に痺れを切らした宇水たちは街中に現れ、歩兵に発破をかけた。
その頃、東京砲撃を防ぎに向かった斎藤たちを乗せた馬車が大阪湾に到着していた。
蒸気を吹いて出港準備をしていた“煉獄”を見つけ、斎藤たちは馬車から降りた。
斎藤たちが作戦を考えている時、“煉獄”が爆発を起こした。
煙が晴れると 木造船だった“煉獄”は本来の姿である大型甲鉄艦の姿を現した。
それに伴い 斎藤と剣心で銃砲を引き付け、その隙に左之助が炸裂弾で機関部を破壊すると言う作戦に変更した。
そして 相手の砲撃を合図に、斎藤たちは動き出した。
船まで潜って忍び寄った斎藤と剣心は“煉獄”の甲板に姿を現した。
志々雄は斎藤と剣心が囮である事に気づいており、海に浮かぶ木片を足場にして“煉獄”に向かっている左之助を回転式機関砲で撃った。
だが、左之助は“二重の極み”をで 海水の壁を作り、そして 炸裂弾を“煉獄”の後方にある機関部を目掛けて投げた。
炸裂弾の爆発により、“煉獄”は大きく揺れ、 機関部が大破し スクリューシャフトが完全に折れ、火災と浸水に見舞われていた。
方治は激怒した。
『あの男一人じゃねェ』
「!」
『確かに 直接的にはあの男の意外性にしてやられた。 だが』
「「………」」
「この二重作戦を逸早く見破り “煉獄”の位置を突き止めた、緋村 抜刀斎の読みと、警察の機動力と人員を駆使し 事前策を整えた、斎藤 一の判断。 そして こいつらを甘く見ていたこの俺…」
志々雄は拳を握り締めた。
「志々雄 真実の隙が最大の原因だ!」
ここで新月村の決着をつけるか 宗次郎に聞かれた志々雄は、比叡山 六連ねの鳥居の叢祠にある自分たちのアジトで 自分と十本刀だけで迎え撃つ事を言った。
「この先 俺に隙は無い。 覚悟して かかって来い」
そう忠告して 志々雄たちはボートで脱出していった。
少しして 泳いできた左之助が甲板に上がってきたが、志々雄たちは去った後だった為 激怒した。
斎藤たちが京都の山を見ると、火の手は上がっていなかった。
「初戦は 俺たちの勝利だ…」
一方、琴乃は街中の様子を見ていた。
「全焼している家はないみたい…。 よかった」
【琴乃君!】
「!」
琴乃は声の主を見た。
「署長!」
「君の正確な指揮によって 京都大火は防げた様だ。 ご苦労だった」
琴乃は首を横に振った。
「ここまでの用意をしたのは 全て一様です」
琴乃は笑いかけた。
「賞賛の言葉なら 一様にしてあげて下さい」
「ああ」
「あ それと…これを一様に渡してあげてください」
そう言って 琴乃は着物から取り出した 煙草とマッチを署長に差し出した。
「海水に浸かって 使えなくなってしまっていると思うので…」
「…わかった」
署長は煙草とマッチを受け取った。
琴乃は微笑むと 警察署とは逆方向に歩き出した。
「…署に戻らんのかね?」
「すみません。 まだ やる事があるので…」
そう言って 琴乃は背を向けて歩いて行ってしまった。
「…やる事…?」
署長は疑問に思っていた。