1.番い
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「…どこへ行く気だ」
「京都に決まってんだろ。 文句あるか?」
斎藤は左之助に歩み寄った。
「ああ…困るんだよ。 お前等の様な弱っちいのについてこられちゃな」
斎藤は左之助を指差した。
「抜刀斎にとってお前等の存在など 弱点以外の何でもないんだ」
「………」
左之助の手から荷物が落ちた。
斎藤は言葉を続けた。
「そうか…俺は剣心の弱点で…、守りきれないから あいつは独りで旅立ったって訳か…」
左之助は怒った。
「それを聞いて尚更 あいつをブン殴りたくなったぜ!」
左之助は斎藤の前に立った。
「どけ 斎藤!! どかなきゃ力ずくでいくぞ!!」
「その言葉…そっくり返すぜ」
左之助が斎藤に拳で向かってきた。
斎藤はそれをかわし、左之助の右腕の裾を掴んだ。
「フン」
そして 斎藤が以前 牙突を食らわせた右肩辺りに拳打を入れた。
「が…」
治りきってない傷からは大量の血が出た。
斎藤はそのまま 左之助の背中を地面に叩きつけ、右足の踵で傷痕を踏みつけた。
左之助は悲鳴をあげた。
斎藤のズボンには左之助の大量の血が飛び散った。
「…一様 そこまでしなくても…」
斎藤は琴乃の言葉を無視して 青ざめた顔をしている弥彦に歩み寄った。
「言ったろ。 相手の弱点をつくのは戦術の基本中の基本。 卑怯でも何でもない。 “正々堂々“なんて通用しない。 これから京都で始まるのは 殺った者勝ちの“殺し合い”なんだ」
「! ………」
琴乃は瞳を伏せた。
…“殺し合い”…
…平和になった明治でも…また多くの血が流れる――…
「おとなしく東京にいろ。 …わかったな?」
「嫌だね」
弥彦は竹刀の柄を握った。
「……そうか…」
斎藤は拳を鳴らした。
「…待って 一様!」
琴乃は弥彦の前に手を広げて 立った。
「…お前はそこで見ていろ」
琴乃は首を横に振った。
「敵でもないのに 子供にまで手を出す必要はないでしょう?」
「……抜刀斎の仲間なら 敵と変わらん」
「てめェ!」
弥彦は怒りを露わにした。
「そんな事ないっ!」
「……お前は昔からそうだ…。 …新撰組にいた時から…」
「……っ…」
「!」
この姉ちゃんも……新撰組だったって言うのか…
…じゃあこいつも…“人斬り”……
弥彦は驚いた顔で琴乃を見ていた。
「勘違いするな。 琴乃は“不殺”だ」
「!」
剣心と同じ…
琴乃は悲しそうな顔をしていた。
「……弥彦…克……」
「!」
斎藤が振り返ると 左之助が立ち上がっていた。
「お前ェ達は手ェ出すんじゃねェ…」
「「!」」
「こんな傷 痛かねェ…もう全っ然痛かねェんだよ こんな傷…! こんな傷より」
左之助は拳を強く握りしめた。
「剣心に弱点扱いされた事の方が 万倍痛えんだよ!!」
左之助は斎藤に向かっていった。
「危ないっ」
琴乃は弥彦の手を引いて 横に避けた。
「ぐう…」
斎藤は両手を交差させて 左之助の拳打を防御したが、壁に背中をぶつけた。
「……ありがと」
弥彦にお礼を言われ 琴乃は微笑んだ。
「どけ 斎藤! 俺は京都へ行く! 京都で俺がヤツの力になれるって事を この拳で証してやるぜ!」
「チッ。 身の程知らずが。 …拳で証してみせる…だと?」
「おうよ!!」
「よく言うぜ。 この前は俺にボロ負けしたくせして」
斎藤は呆れた。
「何ィ!」
左之助は怒った。
斎藤は刀を外した。
「琴乃 持っていろ」
斎藤は刀を琴乃に差し出した。
「…はい」
琴乃を刀を両手で受け取った。
斎藤は左之助に視線を戻した。
「今回はお前に合わせてやる。 拳の勝負だ」
「信用するんじゃねー 左之助! そいつはくそ汚ねェから 油断していると 蹴りがくるぞ!」
「フ…本当に 俺、嫌われてるな」
「ったりめーだ!」
弥彦は怒った。
「大丈夫。 一様は嘘は言わない。 闘いなら尚更…」
そう言って 琴乃は斎藤を見た。
…なんか…一様 楽しそう――…