1.番い
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次の日、琴乃は川路に呼び出され、斎藤と共に警視庁を訪れていた。
琴乃はドアをノックをしようとしたが、斎藤はドアを開けた。
「!」
書類に目を通していた川路は驚いた様に 顔を上げた。
「ノックくらいしたらどうだ?」
「……フン」
「すみません」
琴乃は頭を下げた。
斎藤は川路の前に立った。
「琴乃を呼び出して 何のつもりだ――?」
川路と話した帰り道、琴乃と斎藤は街中を歩いていた。
「…狼に首輪とはな」
川路の「暴走させない様、斎藤に首輪をさせていろ」と言う命により、琴乃は斎藤の補佐を務める事になった。
「……一様の首輪になんて…なる自信ありませんけど…。 でも 制服着なくて済んで よかったです」
「制服の方が動きやすいと思うがな」
「だって…可愛くないんですもん…」
「……フン。 くだらん」
「…ひどいです…」
琴乃は機嫌を損ねた。
斎藤は琴乃の髪を撫でた。
「……一様?」
「…本当に良かったのか?」
「……私は一様のお傍にいられれば構いません…」
琴乃は瞳を伏せた。
「…たとえ…手を血で染めたとしても…」
そう言って 琴乃は自分の手を見た。
斎藤は琴乃の手を握った。
「…俺はお前には手を汚して欲しくないとは思う…。 矛盾しているかもしれないがな…」
「……一様…」
齋藤は微笑した。
琴乃は笑みを返した。
そして 一週間が経ち、約束の日である五月 十四日がやって来た――…
剣心たちは斎藤の悪口を言っていた。
お蕎麦屋さんにいた斎藤はくしゃみを四回もした。
「…大丈夫ですか?」
「…どうやら随分 嫌われた様だな」
斎藤はお茶をすすった。
「まあいい。 新撰組はいつの時代も嫌われる性分だ」
「そんな悲しいこと言わないでください…」
「……フン」
斎藤の目に日めくりカレンダーが入った。
斎藤は微笑した。
「さて…どう出る 抜刀斎」
「!」
そっか…今日は……
…抜刀斎さんが答えを出す日――…
その頃、剣心は忙しくている大久保に自分から会いに、紀尾井坂に向かっていた。
一方、大久保は紀尾井坂を大型馬車に乗り 通っていた。
その時、場車に乗り込んで来た 志々雄の側近である瀬田 宗次郎により暗殺された。
…が、明治政府に不満を抱く石川県士族を中心とした七人の犯行となり、志々雄一派の存在が表に出る事はなかった。
それが 日本史に残る大事件である、“紀尾井坂の変”である―――…
大久保 利通暗殺は“号外”により 東京中を駆け巡った。
琴乃たちは警視庁に集まり 話し合っていた。
琴乃は剣心を見ていた。
この間の時と違って…全然 雰囲気が違う――…
話し合いが終わった後、琴乃たちは廊下を歩いていた。
「川路殿は随分 気を落としていたでござるな…」
「あいつは元々 大久保卿にその才覚を見出された男だからな」
「……川路さん…」
「だが 大変なのは川路だけじゃない。 これで“維新三傑”、最後の一人にして 最大の指導者が失われ、政界には力不足の二流三流ばかりが残っちまった」
斎藤は横目で剣心を見た。
「これから確実に 日本の“迷走”が始まる。 そして この隙を志々雄は見逃さないであろう」
剣心は立ち止まり、琴乃は瞳を伏せた。
「斎藤」
斎藤は立ち止まり、琴乃もつられて立ち止まった。
「お主は…どうするつもりでござるか?」
斎藤は琴乃を見た。
「道は一つ…京都…」
斎藤は横目で剣心を見た。
「そこに志々雄がいる。 そう言う事だ」
その後、斎藤は琴乃を連れて 去っていった。
夜、覚悟を決めた剣心は神谷道場に戻る道中、剣心を探しに来ていた薫と会った。
そして 京都へ行く事を告げた。
「今までありがとう。 そして…さよなら」
「……!」
「拙者は流浪人。 また…流れるでござる」
薫は剣心の名を呼びながら泣き崩れた。
明治十一年 五月十四日、緋村 剣心は再び流浪人に戻った―――