ゼロの執行人 【完結】
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「もうすぐ、東京サミットがあるんだって」
「ああ。 知ってる」
「秀たちは関係ないんだよね?」
「ああ」
「………」
「…どうした?」
「…うううん。 最近 世の中物騒だから、テロとか起きなきゃいいなぁって思って…」
「……そうだな。 まぁ 日本の警察に任せておけば大丈夫だろう」
「……うん」
零さんも警備に関わるのかな―――…
次の日、アイリスは“ポアロ”を訪れていた。
「いらっしゃいませ! あ アイリスさん!」
「こんにちは……透さん」
安室は微笑した。
「今は僕とアイリスさんしかいないので いつもの呼び名で大丈夫ですよ」
アイリスは微笑した。
「…じゃあ、こんにちは 零さん」
「こんにちは アイリスさん。 どうぞ」
笑みを浮かべた安室はアイリスをカウンターの席へ案内した。
「今日は何にしますか?」
「じゃあ ポアロ特製ケーキで!」
「…あ 前に食べてもらったケーキと少し違うケーキでもいいですか?」
「…もしかして 新作!?」
アイリスの目が輝いた。
「はい」
「是非!」
「かしこまりました」
安室はお皿にスポンジケーキを乗せ、その上にクリームとフルーツを乗せた。
そしてアイリスの前に出した。
「お待たせしました。 半熟ケーキです」
「…“半熟ケーキ”?」
「ええ。 中を開いてみてください」
「…うん」
アイリスはナイフでスポンジケーキを縦に切った。
すると、中からクリームがとろっと出てきた。
「わぁ 美味しそう!」
「どうぞ 召し上がれ」
「いただきます!」
アイリスは半熟ケーキを食べ始めた。
「ごちそうさまでした!」
アイリスは満面の笑みを浮かべていた。
「喜んでもらえたみたいで良かったです」
「零さん 本当に料理が上手で羨ましい! …でも 前のケーキも美味しかったのに…どうしてやめちゃったの?」
「…ああ それは――…」
安室はIoT家電によって ケーキが溶けてしまった事件の話をした。
「…そんな事があったんだ」
「…はい」
「ネット社会になるのはとても便利だけど、怖い部分もあるよね…」
「…そうですね」
「………」
「……アイリスさん?」
「あ ごめん…」
「…何か心配事でも?」
アイリスは瞳を伏せた。
「……もうすぐ東京サミットがあるよね…?」
「…ええ」
「……零さんも…警備に関わるの…?」
「……はい」
「………」
やっぱり…
安室は困った様に微笑した。
「……そんな心配そうな顔しないで下さい。 あくまで テロが起きた時の警備ですから」
「……うん…」
アイリスは顔を伏せてしまった。
「………」
安室は小さく息を吐いて、紅茶を淹れ始めた。
そして、厨房から出て 顔を伏せているアイリスの横にやって来た。
「これでも飲んで リラックスして下さい」
そう言って、淹れたての紅茶をアイリスの前に置いた。
「……え でも…」
「僕からのサービスです」
安室は片目を瞑ってみせた。
「……ありがとう」
「どういたしまして」
安室はアイリスの隣のイスに座って 自嘲気味に笑った。
「……フォルシオンさんの淹れる紅茶に比べて 断然味が落ちると思いますけどね…」
「そんな事ないよ。 私、零さんの淹れてくれる紅茶 好きだもん」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
アイリスは微笑んだ。
「いただきます」
アイリスは紅茶を一口飲んだ。
「…!?」
アイリスはティーカップをカウンターに置いた。
「! ……お口に合いませんでしたか?」
アイリスは首を横に振った。
アイリスはティーカップに入っている紅茶を見た。
…味が…いつもと違う……
…でも、茶葉を変えた訳ではなさそう…
アイリスは安室に視線を戻した。
「……零さん…今 何か不安な事とかありますか?」
なら、紅茶を淹れた零さんの気持ちの変化…?
「…え?」
安室は困った様に笑った。
「…僕の生活、毎日 不安だらけかもしれません」
「…そうだよね」
公安、探偵、黒の組織…
3つの顔を持つ 零さん…私が想像する以上に大変なんだろうな…
「……でも…その生活を楽しんでいるのも事実かもしれません」
「!」
…辛そうな顔……
言葉とは裏腹に、安室の表情は重苦しかった。
……何だろう…
…胸騒ぎがする―――……