純黒の悪夢 【完結】
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「……ん…」
アイリスが目を覚ました。
「…ここは…?」
アイリスは包帯を巻かれている 痛む右腕を押さえながら上体を起こした。
そこは病院の特別室だった。
アイリスが向かい合ったソファの方を見ると包帯を巻かれた赤井と安室が眠っていた。
「「ん」」
その時 赤井と安室が同時に起きた。
「!」
アイリスは隠れる様に再び横になった。
「なんだかんだ言って眠ってしまったみたいですね…僕たち」
こいつと同じ部屋で寝るとか最悪だ…
「そうみたいだな…」
疲れていたんだな…
まあ 無理もないか…
【………】
ふふっ ちょっと面白そう
アイリスは寝たふりをすることにした。
「アイリスさん まだ目を覚ましていないみたいですね…」
安室はアイリスのベッドを見た。
「みたいだな…」
「…あまり心配していない様ですね」
「そんなことはない。 医者から 後遺症も出ることもなく 安静にしていれば大丈夫だろうと聞いて安心した。まあ 桜雅家の者は治癒能力も高いから 早く退院もできるだろう。 それに…」
赤井の目つきが変わった。
「彼女の身体のことは誰よりもわかっているつもりだが?」
【!】
…秀…
…嬉しい
アイリスは布団の中で笑顔になった。
「…あーそうですか。 そうですよね」
安室はぷいっとそっぽを向いた。
ほんと 癇に障るやつだ…
なんで アイリスさんはこんな奴がいいんだか……
少しして 安室は赤井を見た。
「ところで そろそろ聞かせてくれませんか?」
「何がだ?」
「観覧車の頂上でした 僕の問いに対する答えを」
赤井は観覧車の頂上での会話を思い返した。
あの話か…
赤井は足を組み直した。
「まず 君達を助けたのは まあ単純にアイリスがいたからもあるが、水無には借りみたいなものがあったから」
「……僕を助けた理由はないんですね…」
「君を助けたのは組織時代の昔の好みと…」
赤井はベッドで横になっているアイリスを見た。
「彼女を止めなかった理由にもなるが…彼女が君を気に入っているみたいだから」
「!」
「俺は…友好関係まで束縛するつもりはないからな…」
【………】
…秀……
赤井は安室に視線を戻した。
「さて 朝風呂でもしてきたらどうだ 安室君?」
「貴方がお先にどうぞ」
「俺はほとんど朝は入らないから。 髪とか痛むみたいだし。 君は朝シャンしてそうだからね」
「……それは 僕の髪が傷んでるって言いたんですか?」
「いや 違う。 朝シャンしてそうな顔をしていると言うことだ」
「一体 どんな顔ですか!?」
【!】
ふふっ…
「君は朝 弱そうだからな」
「それは貴方もじゃないんですか?」
「俺は起こしてくれる人がいるから」
【っ!】
「そうですよね。 あんな可愛い恋人が起こしてくれれば ちゃんと起きれますよね!?」
「“恋人”じゃなくて “婚約者”だがな」
【!】
婚約者…
アイリスは嬉しくなった。
「君も早く恋人を見つければいいのに」
「余計なお世話ですよ!!」
貴方は僕に喧嘩を売っているんですか!?
僕の気持ちを知っているくせに…!
【……ふふっ!】
我慢できなくなり アイリスはとうとう笑ってしまった。
「…あ…」
「「………」」
赤井と安室はベッドに横になっているアイリスを見ていた。
アイリスは二人の視線を感じ 上体を起こした。
「……ごめんなさい…」
赤井と安室はソファから立ち上がり アイリスのベットの方に歩み寄ってきた。
「…アイリスさん…いつから起きていたんですか?」
「……秀と零さんが起きる少し前……」
「寝たふりをして 全て聞いていたと言うことか…」
「…そんなつもりはなかったんだけど……」
だって 面白そうだったんだもん!
「「悪い子にはお仕置きかな?」」
「…私…怪我人だよ……?」
「そう言う時だけ 自分を怪我人扱いするんだな?」
「アイリスさん 覚悟してくださいね?」
赤井と安室の目は怖かった。
「え!? ちょっと待って…!」
アイリスは咄嗟に目を瞑った。
その瞬間 赤井と安室に抱きしめられていた。
「…え…?」
「良かった。 目を覚ましてくれて」
「心配してたんですよ? もし 貴女がこのまま目を覚まさなかったら…って……」
「! ………」
アイリスは赤井を見た。
「…秀…」
赤井は頷いた。
アイリスは安室を見た。
「…零さん…」
安室は片目を瞑ってみせた。
アイリスは赤井と安室を抱きしめ返した。
「二人とも ありがとう…」
アイリスの瞳からは涙が一筋流れ落ちた。