3.ハニートラップ
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アイリスの病室には 赤井とラジャイオンがお互いに無言で残っていた。
「おい」
先に口を開いたのはラジャイオンだった。
赤井はラジャイオンを見た。
「てめェはいつまでそこにいるんだ?」
ラジャイオンは片目を開いて 赤井を見た。
「用は済んだだろ?」
「いや まだ済んでいない」
「……なんだと?」
ラジャイオンは驚いた様に 瞑っていたもう片方の目も開いた。
そして 目つきを変え 赤井を睨みつけた。
「目障りだ!って言ってんだよ! とっとと失せろ!」
「俺は彼女が目を覚ますまでここに居るべきだと思う。 それに退院するまではちゃんと見届けたいとも思っている」
「はァ? 何勝手な事言ってんだよ!」
【患者の前で大声をあげるのは感心しませんね】
「あん?」
ラジャイオンが振り返るとフォルシオンと青ざめた顔をしている院長がアイリスの病室に入って来ていた。
「てめェが院長か?」
ラジャイオンは院長を睨みつけてそう言った。
「ひ ひぃっ!」
院長の顔がますます青ざめていった。
「おい コイツが何者かわかって…「ラジャイオン」」
ラジャイオンは横目でフォルシオンを見た。
「その件については 既に謝罪を頂きましたよ」
フォルシオンは院長を横目で見て 視線を戻した。
「それに アイリス様の目が覚め次第 特別室に移動させてくださるそうです」
ラジャイオンは院長を睨みつけた。
院長は何度も頷いた。
その後、気分が優れなくなった院長は逃げる様にアイリスの病室を去っていった。
「ケッ。 弱っちい奴…」
「ふふっ。 穏やかで親切そうな先生じゃないですか」
「………」
普通の一般人が桜雅家のことを知ったら まあ そうなるよな…
「それよりラジャイオン 一服してきたらどうですか?」
「あん?」
「ヤニ切れ…なんでしょう?」
「………」
黙り込んでしまったラジャイオンにフォルシオンは微笑した。
ラジャイオンはタバコを吸いに行き、アイリスの病室には赤井とフォルシオンが残っていた。
「さてと…」
フォルシオンは赤井を見た。
「これで貴方と 落ち着いてお話が出来ますね…赤井様」
「! ………」
フォルシオンは妖美に笑った。
赤井は喫煙場所でタバコを吸いながら、フォルシオンから聞いたアイリスの話を思い返していた。
…桜雅 アイリス……桜雅家の若き当主で、俺と同じ イギリス人と日本人の血が流れてる…
そして 俺の読み通り 顔を出さない有名画家のアイリス…
フォルシオンに聞く彼女は一般の女と変わらない様子だったが……
赤井はタバコの煙を吐き出した。
「…何にせよ まずは謝らないといけないか…」
すんなり 許してくれるだろうか……?
そして その日の夜、アイリスが目を覚ました。
「アイリス様 具合はいかがですか?」
「…訳も分からず撃たれるし、撃たれたところは痛むし、頭はぼーっとするし…もう最悪…」
フォルシオンは微笑した。
「ゆっくりお休みください…と 言いたいところなんですが…」
「……もしかして 部屋移動?」
「…ええ。 比較的安全な国である日本ならまだしも、一般人ですら拳銃を所持しているこの国では 貴女を一般病室に居させる訳にはいきませんから…」
「…そうね…。 日本がどれだけ平和で安全な国かを改めて実感させられたよ…」
「……アイリス様…」
「ん?」
フォルシオンは胸に手を当てながら 片膝を付いた。
そして 頭を下げた。
「貴女にお怪我を負わせてしまいました。 弟の代わりに謝罪致します」
フォルシオンは深く頭を下げた。
「…申し訳ございませんでした…」
「………」
「………」
フォルシオンの額に汗が浮かんだ。
「…頭上げて」
フォルシオンはゆっくりと頭を上げた。
「別にフォルシオンのせいじゃないよ。 もちろん ラジャイオンのせいでもない。 私が…勝手に行動して、油断して 勝手に怪我しただけ…」
「……アイリス様…」
「だから…ね?」
アイリスは微笑んだ。
「フォルシオンが責任を感じることはないんだよ」
フォルシオンは深く頭を下げた。
「有り難き お言葉…」
お嬢様が心優しい人で良かった…
主人に傷をつけさせてしまったとなれば…
…使用人は死を覚悟すべきだから――…