1.愛する人
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次の日、アイリスの屋敷に赤井のシボレー C-1500が運ばれて来た。
「あれ? ホテルの方に頼んだはずなんだけど…」
「昨晩 私の方で変更しておきました」
フォルシオンは赤井を見て 視線を戻した。
「赤井様が来る事を読んでいましたので」
…と言うより、私がそう仕向けた と言う方が正しいのかもしれませんね…
赤井はシボレーに乗り 窓を開けた。
「帰りはなるべく 遅くならない様にする」
「…え? ホテルの方に帰るんじゃないの?」
「……出来るだけ お前と一緒に過ごす時間を大切にしたいんだ」
「……秀…」
アイリスは嬉しくなり 笑顔になった。
「…それでも 遅くなった日は…悪いが ホテルの方に帰る。 お前を起こす訳にはいかないからな」
「…そんな事 気にしなくていいのに…」
赤井は首を横に振った。
「お前はちゃんと睡眠時間を取らないと活動できない人間だろ」
「…う…」
…否定できない…
赤井は微笑した。
「じゃあ 行ってらっしゃい」
赤井は人差し指で自分の方に来るように示した。
「ん? なに?」
アイリスは運転席に顔を近づけた。
「!」
その瞬間 アイリスは唇を奪われた。
赤井は唇を離した。
「…っ…」
顔を赤くしたアイリスは口に触れた。
赤井は満足そうな顔をしていた。
「行ってくる」
「…行ってらっしゃい」
アイリスは手を振って 見送った。
【なんか 新婚さんみたいね】
「!」
アイリスが振り返ると そこには西園寺たちが立っていた。
「…見てたの…?」
「そう隠す事でもないだろう?」
ヴィクトリア達はうんうんと頷いた。
「だって 恥ずかしいし…」
アイリスの頬は少し赤くなっていた。
西園寺たちは微笑した。
ヴィクトリア達が日本にいる間、アイリスは東京を案内した。
また、西園寺は“ヘーヴロイヤルホテル”の中をアイリス達に案内した。
赤井はほぼ毎日、屋敷の方に帰って来てくれていた。
そんなある日、赤井が帰ってこない日が続いた。
アイリスは毎日 起きて待っていたが、赤井からの〔今日はホテルに帰る〕と言うメールによって突き放された気分になった。
「……眠れない…」
仕方なく一人で寝ることにしたアイリスであったが、寝付けなかった。
アイリスはいつも秀が寝ている横を見た。
「……寝付きが悪いな…」
その頃、“レーヴロイヤルホテル”にいる赤井も同様だった。
アイリスと赤井は離れた場所で、同時にため息をついた。
…淋しい――…
そして、日本に滞在していたヴィクトリア達が帰国する日になった。
赤井も見送りに空港に来てくれていた。
「では 赤井君、僕達はこれで失礼するよ」
「アイリスのこと 頼んだヨ」
「泣かせたら 承知しないからな」
「何か困ったことがあれば 遠慮なく連絡をしてくれて構わないからね」
「ありがとうございます」
ヴィクトリアは赤井に近寄った。
「例の件 考えておいてね」
「………」
そして ヴィクトリア達はそれぞれの自国へ帰っていった。
「さてと 私たちも帰ろうか」
「うん」
「………」
アイリスと赤井はフォルシオン、西園寺は如月の運転する車にそれぞれ乗り 空港を後にした。
「秀に会うの 久しぶりだから嬉しいな!」
フォルシオンはアイリスと赤井を見た。
「今日はどちらに帰られますか?」
「う~ん… じゃあ ホテルの方!」
「かしこまりました」
アイリスは窓から外を見ている赤井を見た。
「いいよね?」
「…ああ」
赤井は外を見たまま答えた。
「……秀…?」
「………」
赤井は終始 外を見て考え事をしていた。
西園寺は如月を見た。
「お前もご苦労だったな」
「いえ」
「…彼の事 どう思う?」
「…赤井様のことですか?」
「ああ」
「とてもいい方だと思います。 クールでポーカーフェイスな方かと思いきや、アイリス様に対しては とても優しく 愛していらっしゃるんだなと感じました」
「そうだな」
「それに 直接私が見た訳ではなく フォルシオンから聞いた話ですが、頭がとても切れ、凄腕のスナイパーで 截拳道の使い手だと」
「アイリスを護るには充分な方だよ 赤井君は…」
「……旦那様 先程から何を心配されているのですか…?」
「…私が心配しているのは…彼の職業だよ」
「…そうですね。 赤井様の職業は危険と背中合わせですから…」
「…ああ」
西園寺は瞳を伏せた。
「もし 万が一、彼に不幸があって…アイリスの前からいないくなってしまったら……」
「! ………」
「…それが 私が一番恐れていることだよ…」
優秀な彼に限っては…と思うが…
心配は拭い切れないものだ……