1.愛する人
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「フォルシオン さっきの話は何なんだ?」
アイリスは寝室の方に行ってしまい、西園寺が付いていった。
「彼女の顔色が悪かったが…」
「赤井様は“桜雅家”について、どの程度 知っていますか?」
「彼女はあまり話さんから そこまで詳しくは知らん。 国の上層部が知っているくらいだよ」
「では “裏社会の住人”と言う言葉は聞いたことがありますね?」
「ああ。 “桜雅家”の様に 権力によって特別な権利を与えられている一族だろう」
「ええ。 まあ“裏社会の住人”と言っても 世界中に多くの一族が存在します。 その中でも桜雅家と深い関係がある一族をまとめて“Raven(レイヴン)”と呼んでいます」
「…“Raven(レイヴン)”…」
…鴉……か……
「“Raven(レイヴン)”のボスであった旦那様が亡くなり アイリス様は後を引き継いだ形になっています。 そして “Raven(レイヴン)”は不定期に桜雅家の屋敷で集まっております」
「……彼女はその集まりが嫌だと言うことか…?」
「…“嫌”とまで言ってしまうと 語弊を招くかもしれません。 “集まり”自体は嫌いではないので。 昔は逆に好きだったくらいですよ。 西園寺様やご友人たちにお会いできますからね」
「…では 何を気にしているんだ?」
やはり 西園寺さんも裏社会に通じていたのか…
「最近 “Raven(レイヴン)”の中でお会いしたくない人物がおりまして…」
「…一体どんな人物なんだ?」
「イタリアで今 人気沸騰中のモデル 兼 俳優で レオナルド・ルチアーノと言う方です。 自信過剰な傾向が強く、以前はとても優しいお兄さんの様な方でしたが、最近はアイリス様を伴侶に迎えたいと アイリス様が何度もお断りしているのにも関わらず、しつこい程に求愛してこられて…」
「自信過剰でストーカー気質…危険そうな男だな」
フォルシオンの目つきが変わった。
「本当に……始末してしまいたいくらいですよ」
赤井は苦笑いをした。
彼を怒らすと怖いんだろうな……
……アイリスは…傍から見たら 唯の可憐な女なんだろうが……
こう言う話を聞くと 彼女が一般人ではないことを改めて突きつけられた気分になる……
俺と彼女は立っている場所が違うと――…
「彼女は俺の事を話していないのか?」
「親しいご友人たちには話しているみたいですが、レオナルド様には話しておりません」
「俺の事を話したとこで手を引いてくれる輩でもないんだろうが……」
「赤井様が仰りたい事はわかります。 ですが、もし赤井様の事を話して、万が一 赤井様に危害を加えてきたら……アイリス様はそれを恐れているのです」
「そんな事で 気を遣わなくてもいいものを…。もともと組織に追われてる身なんだから」
「……そうですね…」
「それより 俺は彼女の方に危害を加えてくる方が心配だ」
「それは 絶対にさせません。 私共が必ず守ります。 ですから 赤井様は安心して 仕事に専念していてください」
「…ああ。 お前たちなら 大丈夫だろう」
何せ アイリスの師匠たちでもあるからな
「ありがとうございます。 …本当は “Raven(レイヴン)”の集まりに参加しない様にしてあげたいのですが…、アイリス様は“ボスである私が参加しないのは失礼でしょ…”と おっしゃられて…。 本当は参加したくないはずなのに…」
「…彼女らしいな」
「…ええ。 私たちや西園寺様、西園寺家の執事の如月 司様が代理として動いている部分もあるので 気持ち的には少しは楽だとは思うのですが…」
「…彼女のそう言う 自分を犠牲にして危険に関わろうとするところが心配だよ…俺は…」
「…はい。 ですが、アイリス様の強さは 誤解とは言え 直接手を合わせられた赤井様もご存知なはず」
「……ああ。 手を合わせたのは体調の悪い彼女だったがな…」
俺と彼女が初めて出会った頃の話か……懐かしい…
赤井はアイリスと出会った時のことを思い返した。
「すみません、こんな話を…。 ですが 赤井様には知っておいて欲しかったのです。 …これから永く アイリス様と関わっていくのであれば……」
「…ああ。 彼女のことは極力知りたいと思っているよ」
「ありがとうございます」
フォルシオンは笑った。
彼女が強いのはわかっている…
…だが…それでも心配なんだ…
赤井はアイリスがいる寝室に向かった。
もし 彼女に何かあったら…俺は――…