3.五月闇
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プリエール城に帰ってきたアイリスは、自分の部屋にいた。
サッチ様に“俺に任せておけ”と言われ 帰ってきましたが…
アイリスはため息をついた。
【また ため息ついてんのかい?】
「!」
アイリスは声のした方を見た。
そこには 扉に背を預けて立っているマルコがいた。
「悪ィな。 ノックしても返事が無かったから…」
アイリスは気まずそうにマルコから視線を逸らしたが、マルコに視線を戻して 顔を伏せた。
「……いえ…」
どうしよう…
どんな顔をすれば……
「………」
「………」
…言わないと…
ちゃんと謝らないと……
アイリスは深呼吸をして 口を開こうとした。
「……アイリス」
「!」
が、先にマルコに話しかけられた。
「……悪かった よい…」
「!」
そして 先に謝られたアイリスは驚いた。
「…そんな マルコ様が悪い訳では…」
「………」
「…私が…ただ……」
アイリスの瞳に涙が浮かんだ。
「…ただ 嘘をついて 貴方を傷つけてしまったから……」
「………」
アイリスはソファから立ち上がり 扉に背を預けて立っているマルコの方へ歩み寄った。
「…マルコ様…本当にごめんなさい……」
アイリスは頭を深々と下げた。
「!」
マルコは扉から背中を離した。
「…いいんだ アイリス。 頭を上げてくれ」
「………」
アイリスはゆっくりと頭を上げて マルコを見た。
「……俺がただ…小さい男だっただけだよい…」
「……“小さい男”…? マルコ様が…?」
「…ああ」
「そんな事ないです…! マルコ様はとても立派な方です」
マルコは首を横に振った。
「…俺は…あんたが思うような立派な人間でもねェよい…」
そして マルコは再び扉に背を預け、恥ずかしそうに顔を逸らして 頭を掻いた。
「……現に 好きな女の前だと こうも余裕が無くなる…ただの男だよい……」
「…え…?」
「………」
「…マルコ様 今何て… !」
アイリスは頬を触られ 驚いた。
「…アイリス、俺は……あんたの事 がっ!!【マルコ!! あのそうめん!!】」
その瞬間、マルコが背を預けていた扉が勢いよく開いた。
アイリスの部屋にサッチがやって来た。
「……あれ? アイリスちゃん マルコは?」
「……えーっと…」
アイリスはサッチが勢いよく開けた扉を見た。
「……サッチ…」
扉と壁に挟まれたマルコが姿を現した。
「うおっ! マルコ 大丈夫か?」
マルコの後頭部には大きなたんこぶが出来ていた。
「マルコ様 大丈夫ですか?」
「ああ。 直ぐ 治るよい」
マルコはサッチに視線を戻し 睨みつけた。
「…ノックくらいしろよい…」
マルコはたんこぶを手で触れた。
「悪ぃな。 緊急な用だったし。 つーか まさか扉に寄りかかっているとも思ってなかったし…」
「………」
的確な事を言われ マルコは黙り込んだ。
「ともあれ 2人とも仲直りしたみたいで良かったよ」
「…ああ」
「はい。 サッチ様 ありがとうございました」
「いいって事よ!」
「安心したら 腹が減ったな」
「…ですね」
「それなら さっき俺が持っていったそうめん食べなよ」
「そうだな」
マルコはサッチから受け取ったそうめんとつゆとお椀を机の上に置いた。
「じゃあ 食べるか」
「はい」
「アイリスちゃん ちょっと待って!」
「?」
「そうめんとつゆ 足りないかなって思って、#NAME1##ちゃん用に 持ってきたからさ」
「気が利くな」
「ありがとうございます」
「じゃあ マルコはさっき渡した方で、アイリスちゃんは俺が今持ってきた方な」
サッチは親切にアイリスとマルコのお椀に それぞれつゆを入れていった。
「「いただきます」」
アイリスとマルコはそうめんを食べた。
「美味しい…」
「っ! ゴホッ! ゴホッ!」
マルコは思わず噎せて 咳き込んだ。
「マルコ様!?」
「…サッチ…、てめェ…何か入れただろ…?」
「…え? まぁ…少々 つゆに唐辛子を…。 色の出ないやつ…」
「「!?」」
アイリスとマルコは驚いた。
「…サッチ――!!」
マルコは怒り サッチに蹴りを繰り出した。
「おっと!」
サッチはかわした。
「マルコを元気づけようかと思って 作ったんだよ! …アイリスちゃんに持っていった時は冷や汗もんだったけどさ…」
サッチはアイリスに笑いかけた。
「でも アイリスちゃんが食べる前に間に合って良かった!」
「……え はい…」
「……俺だったら 良いのかよいっ!!」
マルコは激辛のあまり 涙目になっていた。
マルコ様 可愛そう…
…でも 本当にお2人は仲良しですね
アイリスはそこではっとした。
そう言えば…
マルコ様はさっき…何を言いかけたのでしょうか――――…?
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