2.春日影
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「アイリスにサラダ作ったの マルコなんだよ」
ハルタがこっそり教えてくれた事実にアイリスは驚いた。
「でも エルリオンは “サラダを届けたのはサッチ様だ”って言いましたよ…? そうよね エルリオン?」
エルリオンは頷いた。
「持っていったのはサッチだったからだよ」
「……え…」
アイリスはマルコを見た。
「もう その話はいいだろ。 送る」
マルコはアイリスの手を引いて 歩き出した。
「えっ マルコ様っ!」
アイリスが白ひげ達を見ると 笑みを浮かべて見送っていた。
アイリスはプリエール城までの帰路をマルコと一緒に歩いていた。
「あの…マルコ様…」
「なんだよい?」
マルコは前を見たまま答えた。
「あ いえ…」
アイリスはマルコから視線を逸らした。
私…マルコ様を怒らせてしまったのかしら……
アイリスは気づかぬ内にため息をついていた。
「ため息」
「え?」
「ため息をつくと幸せが逃げてくよい…」
「あ…ごめんなさい」
「……さっきは悪かったな…」
「…いえ マルコ様は何も…」
「ハルタの言う通り…俺…なんだよ。 あれ 作ったの…」
「!」
「ホントは言いたくなかったのにな こんなこと……」
「ごめんなさい。 私 てっきりサッチ様が作ってくれたのかと思って……本当にごめんなさい!」
アイリスは頭を下げた。
「いいんだ。 俺がそう仕向けただけだから……」
「どうして… !」
その時 風に乗り 花びらが舞ってきた。
マルコは花びらを掴んだ。
「これは…桜?」
「あ はい。 城の後ろに大きな桜の木があるんです」
「そうなのか…知らなかったよい」
「…行ってみますか?」
「………」
アイリスに連れられ マルコはプリエール城の後ろ側にやってきた。
そこには大きな桜の木が一本あった。
「随分とでかいんだな…」
「はい。 満開にはもう少しかかりそうですね」
「満開になったら花見でもするのかい?」
「はい!」
アイリスは嬉しそうに笑った。
マルコは桜が舞う中で笑っているアイリスに見惚れた。
アイリスとマルコはプリエール城に戻ってきた。
「マルコ様 今日はありがとうございました。 サラダもとても美味しかったです」
「ああ。 俺も…色々とありがとな」
「え?」
「あ いや…花見 やる時は呼んでくれよい」
「はい もちろんです。 島の住民 皆さんでやりますから」
「そうか…。 ところで この島は春島か?」
「いえ この島は四季があるんです。 行事も色々あって 春はお花見、夏は海やプールと夏祭り、秋はお月見と紅葉とハロウィン、冬は雪遊びとクリスマスとお正月――…その他にも色々あって……ってマルコ様にとっては幼稚なことですね…」
「そうでもねェよい。 楽しそうだ」
「そうですか? よかったです」
アイリスは笑った。
「ああ 本当にこの島でよかった……」
マルコは無意識にアイリスの髪に触れていた。
「…マルコ様…?」
「! 桜がついていただけだよいっ!」
「あ ありがとうございます」
「おやすみ アイリス! 早く寝ろよ!」
マルコは逃げるように去っていった。
「マルコ様 おやすみなさい…」
アイリスはプリエール城に入った。
先に戻っていたエルリオンが明かりを持って迎えに来た。
「ありがとう エルリオン」
「キュイィ…」
「そんなことありませんよ。 運んできたのはサッチ様で……あ…」
「キュィイ?」
「マルコ様に理由を聞きそびれてしまいました…」
明日にでも聞きましょうか…
でも…マルコ様はあまりその話をするのを嫌がってました…
だから そのまま私の心にしまっておいた方がいいのでしょう……
マルコ様が作ってくれたという事実だけで
不思議と 嬉しく感じましたから……
アイリスがプリエール城に入っていくのを確認したマルコは走るのをやめ 歩いていた。
「……無意識って言うのは…怖ェよい……」
俺がサラダを作ったのを隠したのは単に知られたくなかった
俺みたいな不器用な男が料理なんて…気持ち悪いからな……
だから怪しまれないようにサッチに頼んだ
結果としては裏切られたがな
でも…
“美味しかった”と言う言葉は嬉しかったな…
気になっている人に言われれば尚更――…