3.ソンリッサ
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夜、カタクリが帰ってきた。
「遅くなった…」
「うううん! お帰りなさい」
「今日はドーナツを買ってきた」
「わぁ いい香り~」
「……それと…これをお前に…」
カタクリはポケットから小さな箱を取り出して テーブルの上に置いた。
「……これは…?」
「…開けてみろ」
「……うん」
アイリスはそっと小さな箱を開けた。
「!」
小さな箱の中には婚約指輪が入っていた。
「色々な事があって 用意するのがすっかり遅くなってしまった…すまない。 …お前が作り出す宝石に比べたら貧相な物になってしまうが……」
アイリスは首を横に振った。
「……凄く嬉しい…」
そして、アイリスの瞳から一筋の涙が流れ落ちた。
カタクリはアイリスの左手の薬指に婚約指輪をはめた。
「背中の刺青が完成したら、結婚式を挙げよう」
「……はい」
アイリスの返事にカタクリは嬉しそうに微笑した。
そして、アイリスに口付けた。
俺の全てを受け入れてくれてありがとう アイリス―――…
「結婚指輪は、アイリスのデザインした物にしたいと思っているのだが…どうだ?」
「…うん! 任せて」
「……それと…」
カタクリは17年前にアイリスからもらったサファイアをポケットから出して テーブルの上に置いた。
「このサファイアを結婚指輪の装飾に使えるか?」
「……え…」
思いもしない言葉にアイリスは驚いた。
「…嫌だったか?」
カタクリは悲しそうに瞳を伏せた。
「俺とお前が出会うきっかけになったこのサファイアを 指輪に装飾したら良さそうだと思ったのだが…」
「! ………」
「無理にとは言わん。 アイリスの気に入ったデザインと言うのが 俺にとっては1番だから」
アイリスは首を横に振った。
「…とても素敵だと思う。 幾つかデザインしてみるわね」
「…ああ」
カタクリは嬉しそうに微笑した。
…結婚指輪も大事だけど……
…私、最高級の品質の宝石をまた作れる様になって
あなたとの約束を守れるように頑張るわ―――…
アイリスはカタクリの了承を得て、電伝虫にて アルフレッドに、
・背中の天竜人の紋章を消す為に上から刺青を入れた事
・刺青を入れた影響でカタクリと共に彫師が暮らす島で療養している事
・刺青が完成した後 結婚式を挙げる事
を伝えた。
「それと――…」
アイリスは日々 デザインを考えるのと同時に 質の良い宝石を作り出す練習に励んでいた。
そして、刺青を入れてから 1ヶ月が経った――…
「よし。 完成だよ」
「じゃあ もう見てもいいんですね?」
「ああ。 大きな鏡を持って来るよ」
そう言って 彫師は部屋を出ていった。
「楽しみだな~」
「……後悔しないか?」
「え?」
アイリスはカタクリを見た。
カタクリは浮かない顔をしていた。
「…どうして?」
「…俺が無理矢理させた事だ。 …それに デザインも」
アイリスは首を横に振って 瞳を伏せた。
「…本当はね 私もどうにか消そうと思っていたんだけど…なかなか勇気が出なくて…」
アイリスは顔を上げて カタクリを見た。
「…だから あなたのお蔭なの」
「!」
「…それに カタクリが選んでくれたデザインなら 嬉しい」
そう言って アイリスは笑いかけた。
「……アイリス…」
【お待たせ~】
彫師が部屋に戻ってきた。
「ここに置いておくからね。 恥ずかしいだろうから、我は部屋を出ているよ~」
彫師は再び 部屋を出ていった。
「アイリス」
「…うん」
アイリスは鏡に背を向けて立ち、服を脱いだ。
「!」
天竜人の刻印があったアイリスの背中には、それを隠す様に カタクリの刺青と同じショッキングピンク色で、王冠と大きな翼をアレンジした刺青が入れられていた。
「…綺麗」
「……気に入ってくれたか?」
「…とっても…」
アイリスはカタクリに満面の笑みを浮かべた。
「…ありがとう カタクリ」
「っ!」
今までにない 最高の笑顔……
きっと これが彼女の本当の笑みなのだろう――――…
彫師と別れたアイリスとカタクリは万国に向かっていた。
刺青が気に入ったアイリスは、背中が開いている洋服を好むようになった。
「夕方には万国に着く」
「そう。 すごい久しぶり」
「………」
「どうかしたの?」
カタクリは正面を見た。
「……いや…」
「………」
「……!」
カタクリはアイリスにズボンを引っ張られ、アイリスに視線を戻した。
「…隠さないで」
「!」
「…お願い…」
「………」
カタクリは瞳を閉じて 開いた。
「…お前は…記憶を消す気はあるか―――?」
「……え…?」
アイリスは予想だにしない言葉に驚いた。