3.ソンリッサ
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「おはよ~」
次の日、彫師がアイリスとカタクリが居る部屋にやって来た。
「!」
「ノックくらいしろ」
「ああ ごめんね~。 1人で暮らしていると そう言う習慣がつかないから」
「………」
カタクリはため息をついた。
…先が思いやられる―――……
数日経ったが、まだ背中が痛むアイリスは安静にしていた。
「…何か食べたい物はあるか?」
「うううん。 大丈夫」
「……すまない。 退屈な思いをさせて」
「そんな事ないよ。 旅行みたいで楽しい!」
アイリスは微笑んだ。
「それに カタクリが傍にいてくれれば 私はそれで幸せだもん」
「…っ!」
カタクリは頬を少し赤くして そっぽを向いた。
なぜ 平気でそう言う事を言うんだ―――…
「……やっぱり駄目だ…」
痛みが無くなってきたアイリスは、カタクリが部屋にいない時に内緒で1日1つ 宝石作りをし始めていた。
が、出来栄えは以前と比べ粗悪な物だった。
こんな質では カタクリに渡す事が出来ない―――…
そんなある日、カタクリが外出している時にアイリスの居る部屋へ彫師が訪ねてきた。
「やあ」
「!」
アイリスは慌てて 自分で作り出した宝石を背中に隠した。
「……どうかしましたか?」
「驚かせてごめんね~。 背中の痛みはどうかな~と思って来てみたんだけど…、ノックしても返事が無かったからさ…」
「……気付かなくてごめんなさい。 …背中は大丈夫です」
「それは良かった。痛くて起き上がれないのかと思って心配したよ~」
「……そんな事は…」
彫師は不敵な笑みを浮かべた。
「だって ノックの音に気付かないくらい 何かに集中していたんだろうから」
「! ………」
アイリスは気まずそうに視線を逸らした。
「それで 背中に何を隠してるの?」
「!」
…この人には…何でも見透かされてる様な気がする……
アイリスは恐る恐る 背中に隠していた手を出して、自分が作り出した宝石を見せた。
「…これは…君が作り出したものかな?」
「! …ご存知だったのね……」
「カタクリから聞いたよ。 でも、君は作れなくなっていたんじゃないのかい?」
「……こないだ 出来るようになったわ…」
「…喜ばしい事のはずなのに、なぜ そんな浮かない表情をするのか 我には理解し難いけど…」
アイリスは悲しそうに瞳を伏せた。
「……完全な失敗作だから…」
「そんな事は無いと思うけどね…」
彫師はアイリスの手の平から宝石を手に取って よく観察した。
「こんなにも綺麗なんだからさ~。 …まぁ…」
彫師はアイリスに視線を戻した。
「…昔、噂で ジュエリー王国の王族の者は質の良い物を作れると聞いていたけどね~…」
「……っ…」
「出来栄えはさて置き、とりあえず 宝石を作り出せる様になった事を喜ぶべきだと我は思うけどね」
そう言って 彫師はアイリスの手の平に宝石を戻した。
「!」
アイリスは手の平に戻された宝石を見た。
「……そうね。 あなたの言う通りだわ。 ありがとう…」
「我は我の感じた事を伝えたまでで、君にお礼を言われる義理は無いよ~」
そう言って 彫師は背を向けて 部屋を去ろうとした。
「…待って!」
「?」
彫師は立ち止まって 振り返った。
「……1つ…聞いて欲しい話があって…」
「何だい?」
「…カタクリが最近 元気がないみたいで」
「…あの男の刺青も我入れたものだけど、当時から無口な男ではあったと思うよ~…」
「…でも いつも以上と言うか…」
「…う~ん…じゃあ それは恐らく、君に黙って 刺青を入れさせた事 後悔しているのかもしれないね~…」
「…そんな事…!」
アイリスは瞳を伏せた。
「私の為にしてくれたのに…」
「それより、刺青どうだった?」
「え?」
「…その様子だと また見ていないのかい?」
「…はい。 カタクリに、“どうせ見るなら 完成した後の方がいい”って 言われたので」
「そうかい。 デザインは君を想って カタクリが選んだものだからね」
「…そうなんですね」
「カタクリの刺青の色 覚えているかい?」
「あ はい。 優しい感じの色で 私は好きです」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。 因みに 君のも同じ色だからね」
「お揃いなんですね」
アイリスの表情が明るくなった。
「ああ。 もうすぐ完成するから 楽しみにしててね~」
「…はい!」
あなたには感謝してもしきれない―――…