1.プロメティーダ
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「アイリス」
「………」
イスに座っているアイリスは顔を俯かせたままだった。
“――…君…全然笑わないんだね―――…”
…やめて……
“…一緒にいてつまらないよ―――……”
…やめて……
“――この先…君と一緒になる男の気がしれないよ―――…”
…もう やめて……
“…だって 君……全然 笑わなくて、人形みたいだから―――…”
……もう…やめてよっ……!
アイリスは耳を両手で塞いだ。
カタクリはアイリスに歩み寄った。
「アイリス」
「………」
「アイリス!」
「!」
アイリスは顔を上げて カタクリを見上げた。
が、直ぐにアイリスは瞳を伏せた。
「………」
「…アイリス」
「……ごめんなさい…」
「謝る事はない」
「………」
「…ただ…1つだけ答えてくれ…」
アイリスは再び カタクリを見上げた。
「……お前は…俺と結婚するのが嫌なのか……?」
「!?」
アイリスは慌てて 首を横にぶんぶん振った。
「……違う…」
アイリスの瞳から涙が流れ落ちた。
「……違うの……っ…」
「! …なら いいんだ。 それ以上は聞かない」
カタクリはアイリスの頭に手を置いた。
「…だから もう泣くな」
「……カタクリ…」
カタクリは微笑した。
「…っ…!」
アイリスは立ち上がって カタクリの足に抱きついた。
「! ………」
カタクリはアイリスを見下ろした。
「…アイリス…」
カタクリは膝を折って アイリスを抱きしめた。
…私が何を気にしているのか…聞こうとしないなんて……
…あなたは本当に優しい人―――…
その後、アイリスは眠ってしまい、カタクリはアイリスをベッドに運んであげた。
少しして、ドアがノックされた。
【カタクリ様、アイリス様 夕食をお持ち致しました】
「彼女はもう休んでいる。 下げろ」
「! 大変失礼しました! 失礼致します!」
チェス戎兵たちはアイリスとカタクリの部屋を去っていった。
「………」
ソファに座っていたカタクリは立ち上がって、一旦 寝室に戻った。
「zZZ…」
アイリスは気持ち良さそうに寝息を立てていた。
「………」
アイリスの様子を確認したカタクリは、背を向けて アイリスと自分の部屋を後にした。
カタクリがやって来たのは、アルフレッドがいる部屋だった。
「お話は伺いました。 アイリス様がご迷惑をお掛けした様で 申し訳ございません」
アルフレッドは頭を下げた。
「…構わない」
アルフレッドは顔を上げて カタクリを見上げた。
「……アイリス様は 大丈夫ですか?」
「…心配なら部屋に様子を見に来るといい」
アルフレッドは首を横に振った。
「それはなりません」
「?」
「アイリス様はカタクリ殿と結婚されるのですから。 …アイリス様が私の手から離れる時が来たのです」
「………」
「…それに カタクリ殿であれば何も心配する事はございません」
「……どこを見てそう思うのかは 理解できんが…、俺にはまだ彼女の事でわからないことがある…」
「………」
「…彼女は…結婚の事で、過去に嫌な思いをした事があるのか?」
「!」
アルフレッドは瞳を伏せて 頷いた。
「…アイリス様は…あの可愛らしい容姿から、妻に迎えたいとお会いに来る者たちは多くおりました…。 …しかし、アイリス様が笑わない事を知ると、掌を返した様に 冷たい言葉を浴びせ、アイリス様を深く傷つけました…」
アルフレッドはカタクリを見上げた。
「……だからかもしれませんね。 …辛い事を深く追求しない優しいカタクリ殿と 結婚なんてしてもいいのだろうか…と考えてしまっているのは…」
「!?」
カタクリは目を見開いて驚いた。
「……どうすれば彼女は笑ってくれる様になると 考えている?」
「私めにはわかりません。 ですが」
アルフレッドは笑いかけた。
「カタクリ殿ならきっと、アイリス様の笑顔を取り戻せると信じています――――」