36.0℃

 大きいことを、不便だと思ったことはなかった。見た目が強ければ雑魚が喧嘩をふっかけてくることはないし、何かと便利だ。
 だが、獅子神は初めて自分の体格をマイナスとして捉えることになる。
 自室のキングサイズのベッドの上、ふたりの人間が横になっている。今日ほどベッドを大きいものにして感謝したことはない。
 怖いのだ。獅子神と村雨では体格差がありすぎる。近づいて、彼を押し潰すようなことがあったら。
「…………」
 だから、身体を端に寄せて、彼に触れないようにしている。それなのに。
 ぴたりと背中に触れた、獅子神より低い体温。
「……おい」
「寒い」
 確かにもう春だが夜はまだ冷える。ではなく。
「暖房つけてやるから離れろ」
「乾燥するから嫌だ」
 あなたで暖を取ればいい、と言われてはあ、とため息を吐く。
「お前なあ……」
「離れていたら、二人で眠る意味がない」
 至極当然の事実のように彼は言う。けれど。
「押し潰しそうで怖いんだよ。お前のヒョロガリの身体なんて一瞬だろ」
「私は平均的な体格をしている。それにあなたが私を押し潰すようなことはしないとわかっている」
「…………」
 振り向いて、おずおずとその身体を抱き締める。ガラスを扱うように、ゆっくり、優しく。
 明らかに自分より低い体温が伝わってくる。伝わって、心のどこかを満たしていく。
「……体温低いな」
 これは寒いのも当然だ。もっとあたためてやりたくて、ほんの少しだけ力を強める。
「あなたが、あたたかいだけだ」
 村雨は獅子神の胸に顔を埋めて、夢の中に落ちていく。
 決して高いと言えないそのぬくもりが、どこまでも愛おしかった。
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