焔の間:~青炎と溶けない氷~: 青の祓魔師 奥村燐と勝呂寄り


ある日の塾の前。

一人の女の子が友達を作ろうと頑張っていた。

その子の名前は杜山しえみ。

祓魔用品店の「フツマヤ」の娘。

とても可愛らしい。



「こ、こんにちは!」



いきなり話しかけられた。

でもすごく癒される可愛らしい笑顔。



『こんにちは』

「わ、わわわ///」

『あの、何か用があるんじゃ?』

「あ、あの!その!えっと…おと…」

『おと?』

「お友だちになってください!」

『…』

「だ、ダメですか?」



私は考え付いた。

こんなかわいい子が私のような変な人に友達申請。

嬉しすぎて天にも上れるかもしれない。

それでも勇気を持って声をかけてくれた。



「ほたるさん?」

『私、昔から変だってよく言われてるような人だけどいいの?』

「ほたるさんは変じゃないよ!優しい人だよ!かわいいし美人だし頭いいし!」



こんなこといってくれる人は他にはいなかった。

というか褒めすぎ。私死んじゃう。

塾に入ってからしゃべったのは奥村兄だけ。

日常生活では特進科の友達だけだけど

極力接する機会を少なくしている。

いつどこで悪魔が友達を襲うともわからないからだ。



『よろしくね!呼びため大歓迎だから』

「よ、呼びため?」

『名前を呼び捨て、かつ敬語なしでいいよってこと』



そう言って笑うとしえみも笑って"じゃあ私も呼びため大歓迎!"

と花開いたような笑顔で返してくれた。

こんな友達がほしいと思ってた。夢が一つかなった。



「夏休みまでそろそろ一ヶ月切りましたが、夏休み前には今年度の候補生認定試験があります。候補生に上がるとより専門的な実践訓練が待っているため試験は容易くはありません。そこで来週から一週間、試験のための強化合宿を行います。合宿参加するかしないかと取得希望"称号"をこの用紙に記入して月曜日までに提出してください」



祓魔師になるには必要な資格のようなもの。

サタンを倒すためなら全部とった方がよいのだろうかと、

”今さら悩まなくてもいい”が悩むふりをする。

クロセルは寝ていてなんの返事もない。

称号には騎士、竜騎士、手騎士、詠唱騎士、医工騎士の5種類があり、どれか一つでも称号を取得すれば祓魔師になれるというしくみ。

色々考えてなかなか決まらない”ふり”をする。

ちらっとしえみの方を見ると悩んでいる模様。



「これから悪魔を召喚する」



魔法円・印章術



「図を踏むな。魔法円が破綻すると効果は向こうになる。
そして召喚には己の血と適切な呼び掛けが必要だ」



そう言って担当の先生が呼び掛けをして悪魔を召喚する。

なかなかエグい屍番犬(ナベリウス)がでてくる。



「悪魔を召喚し使い魔にすることができる人間は非常に少ない。悪魔を飼い慣らす強靭な精神力もそうだが天性の才能が不可欠だからな。今からお前たちにその才能があるかテストする」



そう言ってちらっと奥村燐をみていた。



(奥村燐をみるというとこは何かの悪魔の落胤なのか…)



サタンを倒そうとしているというのはこないだの体育騒動でわかった名無しさん。



「さきほど配ったこの魔法円の略図を施した紙に
自分の血を垂らして思い付く言葉を唱えてみろ」

「"稲荷の神にかしこみかしこみもうす。為す所の願いとして成就せずということなし"」



そう神木出雲が唱えると白狐が二体現れる。



「うおお!!なんだアレ、スゲー!」

「白狐を二体も…見事だ神木出雲」



朴さんと他の男子+燐は上手くいかなかったようである。

そんな中、しえみは緑男(グリーンマン)の幼生を召喚。

小さくて愛らしい、とても悪魔には見えない。



「次はほたる名無しさんだができそうか?」

『はい』



略された紙をじっと見る。



《”いつものように”すればいい》



いつの間に起きてたのかクロセルがそういった。

紙を使わず、地面に血を垂らすだけの召喚。



「紙はいらんか」

「え、そんなことできるの?」

「いやぁほたるさんすごいわ~」



期待の声が発せられるなか思い付く言葉を唱える。



『"我友の悪魔たちよ。今私に力を貸したまえ。水に生き、水を守る悪魔よ。友が必要とするそのとき今真の姿を我の前に示せ"』



そう唱えると血を垂らしたところに魔法円が現れる。

先生が書いていた魔法円より大きいものだ。


そこに現れたのはエメラルドの色の鱗を持つ美貌の人魚。

名前はヴェパル。クロセルによると海を司る悪魔。

クロセルとは仲がよく一緒に暮らしていたそう。

大渦の側で船が通るのを待ち構え、

溺れたふりをしては助けようとした水夫を死へと誘う。

地位は29の軍団を率いる序列42番の地獄の公爵。

「海洋公」と称される堕天使。

海を愛する者には深い慈愛を以って加護を与えるが、

海を汚す輩には恐怖を以って惨たらしい死を与える。

外見は長い髪に海藻を絡ませた人魚の姿。

人間の姿をとることもできる。

今まさに人間の美しい女性の姿。

目立たないように成っているが耳の後ろにエラがあり、

指の間には水掻きがある。

海を支配する力を持ち、人を溺死させたり船を沈めたり、

大嵐を起こしたりと海上・海中では万能に近い力をもっている。

睨むだけで人に傷を負わせ、なおかつ

その傷に蛆をわかせ三日のうちに殺す力を持っているとのこと。

召喚でクロセルと共に過ごした悪魔が出るとは思っていなかった名無しさん。



《我を呼んだのは主か?》

『はい!』

《何用だ》

『授業の一貫で呼んだだけです』

《ジュギョウ?教えか何かか》

『まあ、そんなところです』

《そうか。もうこれ以上用がないのなら私は帰る》

『ありがとうございました。また何かあったら呼びます』



そう言うと魔法円と共に姿を消した。

ヴェパルが消えてからどっと体に疲れを感じる名無しさん。



「今のはソロモン72柱の悪魔の一人か。あれほどの上級悪魔を召喚するとは。見事だほたる名無しさん」

「スゲー!」

「綺麗でしたね~坊」

「なんで俺にふんねや!」

「すごいね、ほたるさん」

「………」



それぞれが皆、ヴェパル召喚に驚き、感動の声をあげる。

神木出雲は悔しいといった感じでこちらを見る。

名無しさんははじめて出てきたヴェパルに驚愕。



「名無しさんちゃん、すごいね!」

『しえみもスゴいよ。その緑男可愛いね~。あとで触ってもいい?』

「うん!」

「今年は手騎士候補が豊作なようだな。悪魔を操って戦う手騎士は祓魔師の中でも数が少なく貴重な存在だ。まず悪魔は自分より弱いものには決して従わない。特に自信をなくしたものには逆に襲いかかる。さっきもいったが使い魔は魔法円が破綻すると任を解かれ消えるので、もし危険を感じたら
"紙"で呼んだ場合、紙を破くといいだろう。ほたるは紙なしで呼べるようだが、危険を感じたら静めの言葉を唱えろ。」



そのあと授業が終わり旧男子寮に帰る。

と思ったのだが旧男子寮で強化合宿をするらしい。

明日は六時起床で登校するまでの一時間、答案の質疑応答。

なかなかハードな強化合宿を過ごすことになるらしい。



「朴、お風呂入りにいこっ!」

「うん………」

「お風呂!私も!名無しさんちゃんもいこう!」

『うん』



最近しえみは神木出雲の世話係のようなことばかりしている。

名無しさんといるときにも"荷物持つよ?"など言う。

それが友達としてやることだと思っているらしいがしえみはそれでいいのだろうか。

本当の友達ならばそんなことはしない、とも

簡単に言えるものではなかった。



「わー私…お友だちとお風呂にはいるのはじめて」

『そうなの?楽しみだね』

「うん!」



キャッキャウフフフと楽しく話をしていると



「あ、ゴメン。ちょっと待っててくれる?」

「え?どうして?」

「だってあたしあんたに裸見られたくないんだもん。そういうの友達なんだから判ってよ」



しえみが悲しそうな顔をした。

名無しさんについてはなにも言われていないが違和感ばかりの言葉に黙っていた。

しえみにとっては初めての合宿に初めての友達とのお風呂。

一緒にはいって楽しめばいい。



「あ、でもずっと待たすのも悪いからフルーツ牛乳買ってきて。
お風呂上がったら飲みたいから」

「うん」

「じゃいこ」

「うん…」



しえみの悲しそうな顔を見たあとで一緒になんかいけない。

なにも言われはしなかったがしえみを一人待たせておくなんてもっての他だ。



『私も待っとく。二人で入ってきて』

「そう。じゃ朴、いこ」



バタンッ

ドアを閉めてお風呂に入っていった二人。



「名無しさんちゃん、私待ってるからいってきていいんだよ?」



なんでそんなことを言うのか。

一緒に入る方が楽しいに決まっている。

名無しさんも友達と一緒に入ったことなどない。

だからしえみと入るのを楽しみにしているのだ。



『私、昔から変だってよく言われてたから温泉とか一緒に入ったことないの。だからしえみと入って同じ楽しみを味わいたいの』

「名無しさんちゃん…」

「?しえみとほたるじゃんか。なにやってんだ?」

『実は「なんでもない…」しえみ…』

「フルーツ牛乳買ってこなきゃ!」



突然現れた奥村燐。

そんな奥村の横を通るしえみ。

しかしそのしえみの腕を奥村燐は掴んで止めた。



「おい!」

「な、なに…」

「お前…それやめろ!」

「それって?」

「だからパ…使いっ走りみてーのだよ!変だろ!」

「使い走りじゃない。友達を助けてるんだよ!」

「助けてねーよ!!お前本気でそう思ってんのか?思ってねーだろ!ほたるが一度でもお前に"荷物もって"とか"フルーツ牛乳買ってきて"とかいったことあるか!?」

『奥村くん…』



奥村燐はまっすぐで優しい男の子である。

その言葉が胸に刺さる。



「…ないけど。…私はもう誰かの後ろに隠れて助けられるばっかりなんて嫌なの。私だって……誰かを助けられるくらい強くなりたい!だって初めてできた友達のうちの二人だもん。元々強くて友達のいる燐にはわからないんだよ!」



そう叫ぶと走り出した。

しえみの言ってることは、名無しさんには分からなくもないことだ。

誰かを守るために強くなりたい。

同じようにこの学園に入ったのだから。



『長いこと一人だとね、友達ってものがわからなくなる』

「ほたる?」

『私は友達が全くいなかった訳じゃないけど一人のことが多かったからよくわかる。』

「?てか何八つ当たりしてんだ!待てコラ!」

『ちょ奥村くん!』



すごい勢いでしえみを追いかけていく奥村燐。

名無しさんは「私は昔から変って言われてる」と言えば、

ほたるはほたるだろ?どこが変なんだよと奥村燐から言われたことを思い出す。

奥村燐には人の心を温めてくれる力があるのかもしれない。

そんな奥村燐の後ろを名無しさんは走って追いかけていった。




「きゃああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」



女風呂の方から叫び声が聞こえる出雲と朴の声。

名無しさんは足を止め走ってきた道を戻る。

何か悪魔でも出たのかもしれない。

名無しさんがドアを開けるとそこには屍系の悪魔。

しかもかなり大きいサイズの悪魔だ。

出雲が戦闘体勢に入っているが心に隙でもあるのだろう。

白狐二体が出雲を襲うところだった。

場所がお風呂場と言うこともありクロセルの得意とする水がある。

名無しさんは風呂の水を熱し水圧でドアのガラスを割り、悪魔と白狐に浴びせる。

朴にはかからないようにうまいこと水を操った。

とちょうどその時奥村燐到着。



「紙を破け!」

「!?」

「紙!」

「あ……」



力が抜けへなへなと床に座り込んだ出雲。

いつもの強気な出雲はそこにはいない。



「燐!名無しさんちゃん!」

「お前!?」

「朴さん!…燐!名無しさんちゃん!朴さんの手当てをしてる間悪魔を引き付けて!」

「はあ?」



何て言いあってる間にも屍は朴を襲う。

ゴッとクロセルから渡された溶けない氷の剣(鞘つき)で屍を殴り付ける。



『やるしかないみたい』

「簡単に言いやがって!おら黒いの!こっちだ!」



屍番犬であろう屍は奥村燐と名無しさんに向く。



「…ワ……カ…ギ…ミ……ソ…ロ…モ……ン…」

「!?」

『!』



目の前にいる屍番犬は"ワカギミ"と"ソロモン"といった。

名無しさんの正体がわかっているようである。

そして奥村燐にいった"ワカギミ"。

それには奥村燐の正体のヒントが隠されているようだった。


ガシャアアアアアアアンと激しい音をたてて

屍番犬が奥村燐を風呂場へなげやる。



『奥村くん!』



屍番犬は奥村燐に股がり首を絞める。



「オ……ユ…ル…シ…ヲ…。コ…レ…モ…サ……ル…オ…カ…タ……ノ……ハカライ……ニ…ヨ…ル………モノ」



ワカギミやあるお方の計らい。

お許しをという言葉で何となく理解する。

奥村燐は何かの悪魔の落胤であることを。

それもそうとう強い悪魔の落胤。

名無しさんと同じ悪魔の落胤。



『うぐっ!』



助けるすべを模索していた名無しさんに屍番犬の腕が絡み付く。

体をきつく縛られる。油断が招いた結果だ。



「ほたる!」

『いっ……』

「……ソ…ロ…モン…フ…ウ…イン……サ…レ……タ」

「何いってんだこいつ」



(間違いない。屍番犬は私の正体を知っている)



でもなぜ知っているのか、名無しさんはそう思った。

名無しさんの正体は学園でも知るものは少ない。



「兄さん!!!ほたるさん!!」



奥村雪男の声と共に銃弾が屍番犬に当たる。

屍番犬はそのまま風呂の窓をぶち破り外に逃げていった。

朴はしえみの応急処置で無事。



「失敗したか。…何を啼く。…いや、悪魔の犬になり下がったこの祓魔師をわらって入るのか」



また違う闇が奥村燐とほたる名無しさんを追いかける。




to be continued
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