焔の間:~青炎と溶けない氷~: 青の祓魔師 奥村燐と勝呂寄り


「ど…どうする気だ!?」

【火生三昧を呼び出すんぢゃ!火生三昧は物質界の全てを焼きつくす。お前のこの魔神の炎であれば、この山肌ごと不浄王を焼き清めることができるんぢゃよ】

「ちょっと待て…山肌ごとゴッソリって…ここには人がたくさんいるんだぞ!」

【だったらなんぢゃ。些末なことぢゃ。不浄王の城に立ち入ったもの、手下に触れたもの、すべて汚染されとるんぢゃよ。漏れなく浄化せねばならん!小さな苗床からも不浄王はまた復活する。】



迷う時間はない。


人だけ燃やさずに不浄王だけ燃やしたおす。



【ちんたらしている暇はない。行くぞ。シュリマリ…】

「…ママリマリシュシュリ」

【いいぞ!】

「オンクロダノウウンジャク!!」

【いいぞ。修多羅と共に放て!!】

「火生三昧!!!!!!!」



青い炎は森を焼き、地を焼き、木々を焼き、人々の体を汚染した瘴気をも焼いた。


長かった夜は明け、朝を迎えた。


意識的に燃やし分けができるようになったと喜ぶ燐。


しかし、雪男から自分の状況がわかっているのかと殴られた燐は、自分が魔神の仔で青い炎から逃げることはできないことを告げる。


ずっと向き合うこと、認めることが怖かった燐がそれではだめだと悟った。


しかし、一晩中戦い続けた疲労は体に蓄積していて燐はその場に倒れた。



(私も、認めるのが嫌で怖かった。紛れもない自分なのに、自分を否定していた。でもそれをクロセルが否定してくれた)

「名無しさんちゃん!生きてはったんやね、よかったー!」

『うん』

「ほたるさん、奥村くんと同じやからって怖がったり酷いことゆうて……許してもらえるとは思ってへん。今回ほたるさんと奥村くんがおらんかったら、みんなどうなってたか…」

『いいよ。理解してもらうには時間がかかるし、敵じゃないとわかってもらう場が必要だから…』

「ほたるさん…」

『私も途中から冷たくしてごめんね。自暴自棄になってたってゆーか……やっぱり信じてもらえない!ってなってて……でも、これでちょっとは信じてもらえ……』

「ほたるさん!」



名無しさんも燐同様に力を使いすぎたことでその場に倒れてしまった。


次に目を覚ましたのは虎屋の番頭部屋だった。


しえみから告白を受けているかのように感じていた燐だったが、それはこれからもずっと友達だよと言う宣言に目を覚ました。


耐えかねて吹いてしまった志摩を筆頭に、みんなが番頭部屋に押し込められていることを知る。


醜態をさらしてしまったと顔を真っ赤にさせる燐。



『ん……』

「あ、名無しさんちゃん目覚ましはった~?」

『志摩…』

「いや~、寝起きの名無しさんちゃん可愛いわ~!」

『なんか食べなきゃ…』

【名無しさん~!おはよ~!】

『んぎゃぁぁぁぁあ!!!!』



体の向きを変えた名無しさんだったが、襖を少し開けて三頭火蜥蜴が入ってきた。


三頭火蜥蜴を見ていなかった宝や出雲はビックリしている。



【クロ~!おはよ~】

【おはよ!今日はなにして遊ぶんだ?】

【えっとね~】



相変わらずゆるい話し方でクロと遊んでいる三頭火蜥蜴。


戦闘時以外では小さいドラゴンの姿となり、うろうろしているようだ。



「つーか俺ら明後日東京戻るらしーんやけど、明日一日休んでええて霧隠先生が!」

「まじで?!」

『私、京都案内少しならできるよ』

「ホンマですか~?いや~、こんな可愛いガイドさんとならどこにでも行けますで~!」

『いやいや、志摩くんに関しては案内する側だよね(笑』



ジャーン!と出雲、雪男、しえみ、宝、燐、志摩、子猫丸、勝呂、名無しさんと並ぶ。


いざ、京都観光!




「やっぱベタがええやろ…まずは金閣寺さんかいなあ?」

「なんゆーてんの志摩さんは。まずは虎屋から近い東寺さんやろ!道順考えて目的地行かんと全部回れへんで!」

「……………ハーイ」

「他ここはいきたいてとこあったら教えてや」

「わ、私!あんみつとかくずきりとか甘味が食べたいな…」

「私は伏見稲荷。一度参ってみたかったから…」

「お・れ・は!!京都タワー!!」

「言いよった」

「え京都タワー!?京都他にみるとこあるよ?」

「ほらな」

「頼む!来る前から目ぇつけてたんだーっ」

「サタンの息子たっての望みや聞いてやりぃ。燃やされんで」

「!?俺まだそんな印象」

「わかりました……………サタンの息子さんの仰せのままに…」

『それなら京都市営バスがいいよ。500円で乗り放題で市営バスが通るとこならどこでも行ける(2018年?から600円です)』

「ほたるさん詳しいな」

『おじいちゃん住んでるからって話したでしょ?それで教えてもらったの。すごく便利だよね』



しばらく人が変わってしまったかのような表情しか見ていなかった勝呂は、名無しさんの久しぶりの笑顔に少し顔を赤くした。



『行くとしたら東寺→伏見稲荷→清水寺→三条大橋とか鴨川→金閣寺→京都タワーの順かな』

「よーし!んじゃ行こーぜ!」



こうして9人は京都の観光地を巡りながらお昼を食べたり川で遊んだり、甘味を食べて休日を過ごしていた。


修学旅行に行っていなかった燐や、集団観光が始めてのしえみには新鮮な一日となった。


そして翌日の京都。



「では、我々はこれで!」

「藤堂三郎太の追跡━━及び残務処理等よろしく頼みます所長!また改めて本部からも人を送りますんで!」

「まかせてください!……そういえばフェレス卿のお姿が見えへんようですが………」

「あーアイツ本部と支部繋ぐ鍵持ってるんで先帰ったんじゃないっすかにゃあ?おっと噂をすればかよ。なんだメフィスト」



生徒たちはみな虎屋の女将さんや明陀宗の人たちと別れの挨拶をしていた。


志摩兄弟は別れ際にも関わらず喧嘩が始まり、柔造に怒られる始末。


そしてバスにのって京都駅へと向かった一行。



「え~っとよしじゃこれから新幹線に乗って一路正十字への帰路につく………………思ったら大間違いだ!今から総員水着を買ってきてもらう!!」



は?!と言いたげな正十字騎士団祓魔師たちと候補生たち。


連絡が回ってきていた雪男と名無しさんは涼しげな顔でたっていた。



「はあ…あ……ううっ…海やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!俺はこれをまっとったんや!!夏!!海!!そして……」

「わぁ志摩さん急に元気にならはったなあ」



チラッと志摩が後ろをみると水着を着た出雲がたっている。



「ウルサイキモイ。私の半径2m以内近寄るな」

「海神よ…!アザっっっしたあああ!!!」

「あれだけゆわれてよーあんなに喜べるな」

「あーゆーとこは尊敬しますわ」

「…坊…一つ教えたるわ…女の子が水着着てはるちゅーことはや…ほとんど裸同然ちゅーことなんやで…」

「何ゆーてんのや自分…落ち着けや!」

「ほら!名無しさんちゃんをみて!」



少し離れたところから、長い髪を束ねながらこちらに歩いてくる名無しさん。


その姿に男どもの視線が釘付けになる。


大きすぎず小さすぎない大きさの胸。


しえみよりは少し小さいであろうが、それはとても形がよく整っている。


水着はバンドゥタイプでフレアタンクトップがついているものだ。



「…………」

「坊、顔赤いですよ?」



名無しさんを見て固まっている勝呂に志摩が声をかける。


うるさい!とそれを振り払う勝呂だが頭のなかは真っ赤である。



「志摩さん、海水浴にきたんやないで。あくまで任務なんやから…」

「つーかしえみは水着着ねーっつってたぞ」

「え!?んな殺生な!裸!ええやん!!裸!」

『あんまり裸裸言ってると頭かちわるよ?』



愛刀をもった名無しさんがブラックな笑みを浮かべている。



「やろーどもちゅーもーく!!今回の祓魔対象は大王烏賊だ!作戦は観光客を避難させたここ、熱海サンライズビーチで行う!じゃあとの説明は情報管理部の佐藤くん頼むわ」



話はこうだ。


今日の午前0時過ぎに太平洋沖にて遠洋漁業線が沈没する事故が発生。


ほどなく第三管区海洋保安部の水中側的機が巨大な謎の物体を探知。


海洋保安庁から正十字騎士団へ正式なデータの分析依頼があり、早朝正十字騎士団はこれを大王烏賊と断定したとのこと。


食人性の大王烏賊をおびき寄せるために、一時間ほど前から人間の血を相模湾おきに散布している。


現在大王烏賊は熱海サンライズビーチに接近中とのことだ。



「作戦は特にないが、中二級以上のものは大王烏賊担当、中二級未満及び候補生は大王烏賊の吸盤から排出される偽烏賊掃除を担当する。……っちゅーワケでそれまではバカンス気分でいてよし!以上解散!」



今回の任務の詳細が伝えられ、大王烏賊側こちらに来るまでの間は自由時間となった。


水着を着ないといっていたしえみも水着を着てビーチに現れた。


そのことで志摩が相変わらずな反応を見せでいる。


始めての海に盛り上がるしえみと対照的に、ビーチのパラソルの下に座って海を眺める出雲。


しかし、勝呂のため息のタイミングが合わさったとかなんとかで、勝呂により海に投げ入れられた。



『あるよね、海に投げ入れられるの』

「ほたるさんもやるか?」

『え?うわっ!ちょっと!』



気を抜いていた名無しさんは勝呂に捕まり、すぐに担ぎ上げられ海に投げ入れられる。


出雲よりも遠くに投げられた名無しさんはゆっくりと海から立ち上がった。



「名無しさんちゃん、大丈夫?」

『………』

「あれ、怒ってはるんとちゃいます?」

『こんの!』



どこから持ってきたのかビーチボールを勝呂に向けて全力で投げつける名無しさん。


鬼の豪速球で勝呂の頬を掠めた。


それをみた燐やしえみ、出雲や子猫丸に志摩は口を開けていた。


名無しさんを怒らせるとどうなるのかを目の当たりにしたような感じだ。



「こわ!名無しさんちゃんこわ!」

「でも本気で怒ってるわけじゃなさそうだぞ?」

「いや、それでも怖いやん!」

『バレーで勝負!』

「望むところや!」



突如始まったビーチバレー対決。


名無しさん&燐&子猫丸チームvsしえみ&勝呂&志摩チーム


審判は出雲で3セット2セット先取の勝ちで1セット20点だ。



『その都度その都度でポジションは臨機応変に対応!』

「よし!勝ってやろうぜ!俺ビーチバレー初めてだ!」

「いや~、杜山さんと同じチームになれるやなんて~!」

『志摩、鼻血拭いてきて』



いつでもどこでも通常運転の志摩。


鼻にティッシュを詰めたところでいざ試合開始。



『はーい!こっちこっち!燐!』

「まかせろ!」

「させるか!」

「げ!勝呂がとった!」

『でもこれで次勝呂がさわることはない!』

「志摩くん!」

「坊!」

『強烈アタック来るよ~!ブロックブロック!』

「「せーの!」」



勝呂のボールは燐の手に辺りこちらのコートへと落ちていく。

だが、名無しさんがそれをレシーブしたことでラリーは続く。

上がったボールは少し短いがトスで修正すればいいことだ。



「奥村くんいくでー!」

「よっしゃこーい!」



燐のスパイクはエンドラインギリギリのところに落ちる。



『よし!いい感じ!』

「だな!これなら勝てそうだ!」

『でもまだまだ油断できない!向こうはブロック高いけど、抜けられないこともない。フェイント仕掛ければなんとかなるかも…』

「ほたるってバレー詳しいな」

『昔ちょっとやってた』

「そうなんですね。じゃほたるさんに指示とかあおいだらええですか?」

『んー。うまくいくかわからないけど……』



次の攻撃パターンはこれでいくと指サインを決める名無しさん。


少し多くて燐には覚えられないようだったがなんとかなった。



『あ、あとブロックに跳ぶときは相手の利き腕の前ね』

「わかった!」



それから順調に点を重ねていく両チーム。



「ほたる、トス!」

『おりゃ!』

「うっ!」

「すごい…ほたるさん、腕の力あるんやね」

「ないと剣なんて振るえねぇからな!」

「ほんまやね。奥村くんも結構強いんかな?」

『次来るよ!』



チームを引っ張っていく名無しさん。

勝呂チームはなんとか追い付いている感じだ。



「ごめんね」

「杜山さんが謝ること違うよ~!いざとなれば坊が全部受け止めますから!」

「にしてもほたるがバレー強いのは厄介やな」

「指示も出してますしね~」

「でも、こっちも負けてないよ!頑張ろう!」



「次子猫丸~!」

「は、はい!」

『落ち着いてサーブ切ってこー!』

「うわ、ごめんなさい!」



盛り上がる6人を尻目に、少し離れたところではシュラと雪男が話をしている。


しえみが遊びに誘うも相変わらず雪男はことわるばかり。


すると大王烏賊が100キロ圏内にはいったサイレンが鳴り響く。


海には大王烏賊が姿を現した。



「来たぞ…!図体はデカいが不浄王戦を切り抜けた後だったら雑魚に見えるはずだ!」

「んなアホな…」

「中二級未満および候補生は火炎放射器かまえ!敵が近づくまで海には入るな!」



シュラがそう呼び掛けるも、大王烏賊は近づいてこない。


それはおろか海に潜り上空を飛ぶヘリを襲った。



「助けますか!?」

「ダメだ!大王烏賊の体が海中にあるときは絶対に海にはいるな!大渦潮を起こされてら全滅する!」

「…!!ゆっくり眺めてろってのかよ…!」



案の定ボートで飛び出していった奥村燐。


それを止めるためにボートに乗り込んだしえみ諸とも大王烏賊につっこんでいった。


その後をおう雪男もボートへと飛び乗った。



『この作戦は中止ですよね?大王烏賊がこの海域を離れるまで救助隊も捜索隊も出せませんし』

「チッ。あんんのバカども…」



ボートを破壊された三人はというと、ポツンと海に浮かぶ島へと来ていた。


雪男は燐に対し自分の勝手な行動でどれだけの人間が振り回されていると思っていると胸ぐらを掴んだ。


考えあってやっていると主張する燐に雪男もヒートアップ。


そこにシュラの怒号の電話がかかってくる。


内容は三人への説教と、大王烏賊がピーチまでやってこなかった理由。


その海の海域には1500年前の海神信仰の名残があった。


今は忘れ去られているが、昔は三人がいる島で祀られていたのだ。


この海の神の祠を探して連絡するようにとのことらしい。


すると、三人の後ろに巨大な海坊主出現。


海の岩礁生物を自在に生やす能力を持っている緑男の仲間だ。


その海坊主は三人を洞窟の奥へと案内した。


そこには巨大な鯨、もとい海神がいたのだ。


名を海人津見彦といい、遠海の巨獣大王烏賊からなわばりを守ってほしいとお願いしてきた。


そのことをシュラに報告すると接待することとなった。


この頃海岸では忘れられた神を表舞台に引きずり出すために、三人が動いている間、待機となった。



「いやーそれにしても奥村兄弟と杜山さん、無人島に三人きりでどうなっとるんやろね~」

「……」

「志摩さんのんきやなあ…」

「はは…坊また怒ってはるん?「アイツまたかってしおって!」って?」

「…いま俺がいまムカついとるんはそーゆんことやない。むしろ少し"ようやった!"とか思ってもた自分に驚いとるんや…」



そういう勝呂に子猫丸が賛同する。


そして、勝呂が苛立っているのは宝にであった。


腹痛があるとかないとかで水着にならなかったのだ。


その頃、島で海神を接待している三人は海神への供物と海神祓を捧げていた。


長らく忘れられていた海神は大喜び。


しかし、奥村兄弟は自分達のことで大喧嘩。


しまいにはしえみが仲裁に入って止める事態まで発展したのだった。


少し収まったかと思われた事態は少しの間をおいて急変。


しえみが大王烏賊に捕まってしまったのだ。


海岸でも戦闘準備に入り、海は怪獣大戦争が始まった。


しかし、弱りきった老体は海岸へと投げられ、大王烏賊は擬態吐きを始めた。


擬態吐きは瀕死の大王烏賊の断末魔的な習性で大量の擬態を作り出す。



『本体以外は全て擬態なので眉間を攻撃すれば簡単に消滅します!』

「そして本体を倒せば擬態は全て消える。本体を探せ!候補生と下一級以下は偽烏賊掃除だ!」



烏賊の吸盤からはバラバラと擬態が産まれてくる。


数が多いゆえに不浄王並の面倒くささである。


この頃奥村サイドは雪男が燐に炎を使わせるやり方をしてきたことを悔いていた。


危険じゃないと確証が持てるまで安心できない、認められないと述べる雪男に燐はたった二人の兄弟だから助け合おうと叫んだ。


迷わない燐に勝てないと悟る雪男だったが、すぐいつもの様に戻る。


眉間を攻撃し続ける雪男達だったが、確実に眉間に銃弾が当たった時消滅しなかったことから、雪男達が対峙している烏賊が本体であることを見抜く。


一日通しで行われた熱海での大王烏賊祓いは燐の一撃により幕を閉じた。


海人津見彦はその命を全うし消えていった。


サタンの息子として祓魔師になることを決めた燐と今だ不安を抱えたままの雪男、


そして未だ謎の多い名無しさんの物語は続く。



To be continued

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