焔の間:~青炎と溶けない氷~: 青の祓魔師 奥村燐と勝呂寄り


「みんな内心怯えとりますわ。こない大きな悪魔と戦うのははじめてゆうて……」

「まあ大きさとか慣れだよにゃ~」

「さ、さすがはヴァチカン本部所属の上一級祓魔師さん!心強いですわ!!」

「まあついでにいうとコイツも上一級祓魔師みたいなもんだ」

『やめてください…』

「ホンマですか?!ありがたい!」

「いや、しっかしこんな化け物生まれて始めてみたけどな」



不浄王は先程よりもさらに大きくなり吹き出す瘴気の量も多くなっている。


その不浄王を倒すために不浄契金剛烏枢沙摩を召喚するという。


烏枢沙摩は上級以上の手騎士十人以上の詠唱が必要となる。



「霧隠隊長とほたる副隊長にもぜひご協力願いたい」



不浄王は腐の王の眷属であるから、魔元素の形成図によれば火が弱点となる。



「しかし火炎放射器や火属性の中級悪魔程度の攻撃力ではらちがあかん。烏枢沙摩は我々の呼び出せる火属性の悪魔のなかで最強の手札」

「火天か……烏枢沙摩。確かに見方だったら心強いが、さて…」



そう言うとチラッと名無しさんをみるシュラ。


その視線からやることを悟った名無しさん。


烏枢沙摩召喚のための詠唱が始まる。


少しすると烏枢沙摩が現れる。


圧倒的な力。


滅多にお目にかかることのできない姿に皆驚いている。



【ワシは烏枢沙摩の名で明王陀羅尼の十人の僧正に仕えし者ぢゃよ。ワシの火を得たくば血の証をしめすんぢゃ】

「この150年で僧正血統は減ってしもたんや。今ここにおる僧正は五人や!これで火を借りたい!」

「五人ではたりんわい!」



怒った烏枢沙摩は僧正血統が書かれた紙を燃やした。



【しかし、この大地を不浄王の好きに腐らせるのも面白くないし五人分の血に釣り合う火の加護を与える】



そう烏枢沙摩がいうと錫杖のさきに火が点る。


それを確認した名無しさんは詠唱を始める。



『マグヌスイグニスプネウマ……我が血を炎に変えよ 火蜥蜴!!』

「な、なんですかこれは!」

「こんな火蜥蜴みたことないですよ!」

「んー?まあこれがこいつの手札の中の一つの火蜥蜴だ」



名無しさんが召喚したのは頭が三つある火蜥蜴だ。


普通の火蜥蜴とくらべるとかなり大きく、烏枢沙摩と同じくらいの大きさである。



「あんな火蜥蜴おるんですね…」

「しかもあんなでかい火蜥蜴を一人で…」



烏枢沙摩がでたとき同様、驚きを隠せない明王宗の人々。


火蜥蜴は眠そうな顔で周りをみて、名無しさんをみると笑顔になった。



【名無しさん?久しぶりだね~】

『久しぶり。力をかしてほしいの』

【僕の~?いいよ~。その代わり名無しさんの血をくれる?】

『倒れないくらいでならいいよ』

【わ~い。じゃ僕頑張る~】



見た目とは反してゆるい喋り方に周りの人々は内心驚いている。


三頭火蜥蜴の召喚には普通の火蜥蜴の召喚の4倍の人数で詠唱しなければならない。


しかし名無しさんはそれを自分の血と引き換えに行っている。


召喚した日は代償として大量の血を失うため、二日ほど寝込むことになる故あまり召喚しないようにしている。



「よし、では竜騎士は全員火炎放射器をもって位置につけ!医療騎士の称号を持つものは優先的に衛生班へ!敵は幸い移動しないがどんどん巨大化しとる!まずは火蜥蜴で巨大な菌塊を焼却しながら少しずつ奥へ進む!ええな!」

「「「「「「「「「「おう!」」」」」」」」」

「進撃!!!!!!!」



その頃の勝呂たちは森のなかで勝呂達磨を発見。


生きた年月を焔に変える却波焔をきり札に不浄王を倒そうとしていた和尚。


しかし、蓄えた焔を不浄王の足を止めるのに使ってしまったという。


和尚は残りの焔で瘴気が外に漏れないように結界をはる。


するとその時、遠くの方から円上に炎の壁ができるのが見えた。



【三頭火蜥蜴の火遮だ】

「三頭火蜥蜴?」

「火蜥蜴の仲間かなんかですか?」

【三頭火蜥蜴は火蜥蜴の最終形態のようなものだ。"女に仕えることになった"と嬉しそうに話していたな】

「そんなことができる女の人が?」

「そんなのアイツしかいないでしょ」

「アイツってほたるさんか?!」

「相変わらずすごいんやね名無しさんちゃん~!」



そう盛り上がる森の中、達磨の息子である竜士に却波焔が受け継がれた。


胞子嚢の近くで結界をはると言う勝呂に燐がついていくという。


今は刀を鞘から抜くことができない燐であるが力になれると二人は走り出す。



『火榴弾!』

「す、すごい……あっという間や…」

『いきましょう!』

「「「「「はい!」」」」」



名無しさんも三頭火蜥蜴を連れ道を開いていく。


それに続く明陀宗の人たちは、名無しさんの後ろ姿に感化され突き進む。


そのころ雪男は、あるところで苦しそうにしている"若い"藤堂三郎太を発見するも、隠れていることがばれて戦闘になっていた。



「ほたる副隊長!ここはもう大丈夫です!他のところに回っていただけますか?!」

『わかりました!』

【次はどこにいくの~?】

『他のところといってもここからは距離がある…』

【…………】

『どうしたの?』

【僕、もっとここで戦っていたいな~】

『ならここにとどまるしか……』

【一頭をおいてくれたら移動できるよ~?】

『…………』



三頭火蜥蜴は同じ体の大きさの火蜥蜴が融合したもの。

三頭のうち一頭が融合解除をすれば火力は少し落ちる。

しかし、それでも相当火力があるのには違いない。



【だから大丈夫~。胞子嚢の方にいった方がいいかも~。二頭だけでも十分戦力にはなるよ~】

『わかった』

【わぁ~い!名無しさん、僕頑張る】

『みなさんのこと、ちゃんと守ってね』



そう言うと三頭火蜥蜴はグググッと体を丸めた。


少し光ったと思えば三頭から二頭+一頭にわかれる。


それをみた人たちはまた驚く。


その一体を残して名無しさんは胞子嚢へと向かった。


空を見上げると火属性の結界が張られている。



(兄さん…!)



「雪……男?」

「奥村前!」

「うおッと!!そりゃっ」



バンッボンッボフッ



こうしているうちにも胞子はまだ拡大を続ける。


破裂すれば大阪まで届きそうだ。


胞子嚢の成長と共に周りの瘴気の動きが早くなる。



『燐!勝呂!』

「ほたる?!」

「ほたるさん、なんでここに…しかもその火蜥蜴…」

『あとで話す!まずは目の前の敵!』

【燐!きりがないよ!】

【頑張ろ~!】

「「……………」」

『こういう喋り方なの。許してあげて…』



この緊迫した雰囲気に不釣り合いなゆるい声。


見た目は強くとも、口からでる声はゆるさしか感じられない。


その火蜥蜴で周りの胞子を焼いていくが、そのスピードに合わせるかのように胞子は復活する。


まだ抜けない倶利伽羅を横目に名無しさんは思い詰める。


するとズズズズズズズという音と共に、巨大な毒蛾のようなものが姿を現す。



「ぐわっ!くっせ!」

「あ…あれが…不浄王の心臓か…!!」



空の上。派手なソファーに座って高みの見物といくのはメフィスト。


"小さな末の弟"がどうでるのか、そして名無しさんはどうするのかを見ている。


その笑顔は実に"悪魔"にふさわしい。



「伽樓羅!!俺を守れ!」

【…判った】



結界を少し切り崩して守護に使った勝呂。


体力的にも肉体的にもギリギリに見える。


十五分持つかわからない結界。瘴気に取り込まれるクロに焦る燐。



「もう終いやな。俺の結界がもっとるうち……お前とほたるさんは逃げや!逃げて今から少しでも人を避難さすんや!はよ…行きぃ。一分一秒も惜しいわ。行け!」



ギリギリで耐える勝呂の判断に燐と名無しさんは首を縦に振らない。


すると燐が口を開く。



「………あー…あれ!何だっけ…」

「!?」

「ああ、そうだ!京都タワーだ!俺、京都タワー登りてーんだ!明日お前案内してくれ!」



こんなときに何を言い出すんだと言う勝呂に燐は続ける。


タワーなのにお風呂があるとかが気になるらしい。


そこにみんなでいきたい。だからみんなが無事でないとこまると。


絶対に勝って帰ると。



「な…………んで……よりによって京都タワーやねん!!」

「え!?」

「いっぺんも登ったことないわ!ちぃーと恥ずかし思ってるくらいや!京都他に名所ぎょーさんあるやろ!!」

「俺寺とかあんまわかんねーし、むしろおしゃれスポットかと…」

『今なら北野天満宮で髭切の展示もあるし、パンケーキやさんとかもあるよ。四条河原町とか四条烏丸にいけば、色んなお店いっぱいある。しえみとか出雲とか喜びそうなお店とかも。あと抹茶館!整理券ないとはいれない抹茶専門店!』

「ほたる詳しいな!」

『京都にはおじいちゃんが住んでるから。遊びにいくといくの。あ、女の子にモテたい志摩にはINO〇〇Nがいいかも。あそこすごく可愛いの』

「すげー!ほたるも案内してくれよ!」

『行けるかどうかわからない。』

「なんでだ?」

『この火蜥蜴、もともと三頭なの。召喚するにはかなりの血を代償にするから二日とか寝込んだり…』

「そうなのか?!」


『だから行けるかな』

「代償に出す時期とか遅らせられねえの?!」

『んー。いつもその日に代償にだすからわからない』

「おい、火蜥蜴!」

【僕~?】

「お前しかいねぇだろ!なあ、明日京都観光したいんだ!だからほたるから血をとるのはそれが終わってからにしてくれ!」

【…………】

「頼む!」

【お前、名無しさんのこと好き~?】

「は?!」

【いいから答えて~。嘘ついちゃダメだよ~】

「恋愛的な意味で?」

【恋愛~?同じ人間として~】

「好きだ!明るいし!」

【そっか~!僕も好き~!じゃあ、あとでさっきのクロネコと仲良くさせてくれる?そうしたら今回は血のやり取りなしでいいよ~】

「まじで?!いいよいいよ!存分に遊んでやってくれ!」

【わぁ~い!】

【友達だ!】

【友達友達~!】

「って、のんびり話しとる場合か!………あっはっはっはっは!」



急に笑いだした勝呂に驚く燐。


どうでもいいと言う勝呂に名無しさんは目を見開くが、普通の意味ではないことに気づく。



「お前のその空元気に乗っかったるわ。友達やしな奥村……お前を信じる!そして、ほたるさんのことも!」

「勝呂……」



(くそ親父。どうして俺を助けた


こんな俺を…俺はなんのために助けられたんだ…


俺はなんのために助けられたんだ!!!!!!!)



グギギギギギと歯をくいしばって刀を抜いた燐。


青い炎に青い角がともる。


思いっきり不浄王に斬りかかる燐の倶利伽羅は、不浄王の肉を引き裂く。



「オンシュリマリママリマリシュシュリソワカ!」

「シュラ!」

「勝呂はアタシに任せろ!もうあの化け物は素の人間に倒せる代物じゃない…お前に頼るしかないんだ。あたしと約束したろ。獅郎がお前を生かしたことが正しかったと証明して見せるって…証明してみろ!」

「ああ!」

「名無しさんは燐を守れ!」



そう簡単にはやられてくれない不浄王。


燐と名無しさんが攻撃している間、どんどん再生を繰り返していく。


そのとき、勝呂の体が揺れ結界が解かれてしまう。


「勝呂!」

『持たなかった…』

【見てられんわい!】

「え!?何だ!!」

『烏枢沙摩……』

「あわ悪魔!?」

【悪魔だ天使だ明王陀などというのは人間どもが勝手に呼んでいるだけのこと。そういうお前は何者ぢゃ。神の炎を纏いし人間め。ワシは不浄潔金剛烏枢沙摩。不浄王は長年のワシの宿敵ぢゃ。そしてその剣は元来ワシらの長の得物。やつを倒すんならばお前に炎の導き方というものを教えてやるんぢゃよ】

「…よくわかんねーけど…頼む烏枢沙摩!」

【仕方ないのう…ワシの唱える真言と修多羅を復唱するんぢゃ!】




to be continue
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