焔の間:~青炎と溶けない氷~: 青の祓魔師 奥村燐と勝呂寄り
「出張所から右目が奪われた」
「まさかウソでしょ」
「それと奥村が捕まった」
「え!?」
「捕まった!?」
「炎だして出張所の連中に見られたんや」
「し…したら奥村くんどないなるんです?」
「わからん。今は霧隠先生がなんかの術で失神させて、ほたるさんが出張所の監房に閉じ込めてはるわ」
「それって奥村くんヤバイんとちゃう?」
『……』
「少しは頭冷えたか?」
「シュラ…」
「体は平気か?」
「まだ力はいんねぇけどなんとか…動けるよ…」
「じゃあコレは読めるな」
「?なんだ手紙?」
「かっき勝呂のお父さんからお前に渡してほしいって頼まれたんだよ」
「何で俺に…?」
「まあいいから読んでみろ」
「…?読めん」
「はぁ!?…ったく字ぃ読めんやつだとは思ってたけど…のっけからかよ!ったく最近のゆとり世代?ってやつは…ウッソあたいも読めん!」
「お前もじゃねーか!」
『貸してください。草書ですね、私読めますよ』
「何で読めるんだよ!」
『独学』
「はぁ!?」
そこに雪男も合流。
兄が獄中にいる姿を見て呆れている。
以前雪男を追い抜くだの顎外れるくらいビックリさせてやるなどいっていたらしい。
『じゃ読みますね。時間もったいないので』
前略―――
奥村燐くん、はじめまして。
私は京都にすむ坊主で勝呂達磨と言うものです。
なぜこの手紙を書いたかというと、君に大切なお願いがあるからです。
しかし見知らぬものからこんな手紙をもらっても君も戸惑うことでしょうから、まずは昔話をすることにします。
文才がないので、まとまりのない内容になりますが許してください。
そう。あれは君が生まれる少し前のことです。
あの頃の私はまだ若く慎重で病みついてしまった妻が、日に日に弱っていくのになにもできずとても追い詰められていました。
七年も仏さまとの対話を欠かすことなく続けていましたが、皆の病はようなるどころか十五人も亡くなりました。
私の父は母が亡くなり己が病んでからというもの、明陀宗の勤めを果たすことに固執していました。
護摩を炊く以外に出来ることはない無力な私はただただ思い込んだ。
そうや、私は明陀宗十七代目の座主血統として生まれた。門徒は皆、私たち座主の血筋を守るために毎日そのつとめを果たしてくれとる。私もつとめを果たさなければ。
ただ無心に、それが明陀を、いや虎子や子供を守ることなんやと。
その時、空から鳥と共に君の育てのお父さん・藤本獅郎くんが落ちてきた。
これが私と藤本くんとの最悪な出逢いでした。
ここで君が持っている剣の話をしようと思います。
降魔剣
明王陀羅尼宗の本尊として伝わる摩剣またの名を倶利伽羅
今から150年ほど昔、"不浄王"という疫病をもたらす悪魔が現れ日本中を蹂躙した。
明陀の祖・不角はこの剣に伽樓羅と呼ばれる火の悪魔を降ろし、その火の力によって不浄王を倒したとされています。
以後、明陀宗は代々に渡りこの剣を本尊とし残った右目を封印して俗世から遠ざけるのを固い掟とした。
そういうすべてのことを嘲笑うかのように彼は私の目の前に現れた。
しかし彼は現れたときからかなりの重傷でした。
彼に倶利伽羅を欲しがる理由を聞けば上司命令で来たと、そして上はそれで子供を殺すと平然とした面でいった。
彼は瘴気にやられた人たちを集めた部屋を見て全員助けられるといったのです。
もし本当に本当に助かるとしたら…私たちはいったい今まで何を信じてきたんか。
藤本くんのお陰でみんな無事に助かり、虎子も助かり私たちの子供を産めることとなりました。
しかし彼は降魔剣を諦めてはおらんかったけど、僕は彼を悪い人やとはおもえへんかった。
それに彼は僕に"汚れることを怖がっていてはなにも進まない"と教えてくれたんです。
父が守っていたのは明陀の掟で、そんな父とは違うと…私はもぬけの殻である降魔剣を藤本くんに渡しました。
藤本くんと私の物語はこれでお終いです。
その数ヵ月後、「青い夜」が起こり父は座主と明陀の本当の秘密を私にたくして死にました。
その秘密は本当に恐ろしいものでした。
どうか、どうか奥村くん、降魔剣を使って不浄王を倒してほしい。理不尽で無謀なお願いであることは承知の上です。
しかしもし…もし君がお父さんのようなほんの小さな慈悲の心を向けてくれるなら私はそれにすがりたい。
ここまで読んでくれてありがとう 勝呂達摩
こう書いてあります。』
「フックックッ……思った通りとんでもない内容だった」
「……しかし勝呂くんのお父さんには悪いが、兄さんの炎が不浄王に有効かどうかは推測できない。こんな不確かな根拠で剣を使わせるわけにはいかない」
「燐、コレはお前に宛てられた手紙だ。お前はどうしたい?」
「シュラさん!そんなことを聞いてどうするんです!」
『まぁまぁ』
「俺は助けたい!」
「兄さん!今の自分の立場がわかっているのか!?」
「……俺もジジイに命を助けてもらった…だから俺が何かの役に立つっつーなら戦いてーんだ!!でももちろんあくまでの俺の希望だよ!」
「じゃあその希望は却下だ」
「よし判った」
「シュラさん何を…」
「戦うってんなら状態もわからず許可できにゃいにゃろ~?」
『今ここで抜いてどうなるかってことですか』
シュラがやろうとすることもわかるが、つい今しがた炎を出してしまった燐に降魔剣を握らせるなど正気ではない。
雪男はそういいたいらしい。次何かあれば今度こそ必ず殺されると。
しかし禁固呪を唱えた時点で既にヴァチカンには伝わっている。
いつでも難癖つけて処刑できる状況であるというわけだ。
「それに不浄王が復活して今まさに存在してるとしたら、現時点で燐なんかより危険な存在なんだ。それにお前もさんざん見てきたろーが。こいつの炎は今まで悪魔に有効だった。試す価値はある。燐、抜いてみろ!」
「…!!!!あれ…っ」
『どうしたの?』
「なにやってるの兄さん」
「いや…ううおおおおおおお?ぐぎぎぎ!!??わかんね…抜けない」
「えぇ!?」
「?…どーゆうことだ?」
「わ…わかんねーよ。何でか全然ぬけねーんだ!」
『……燐、もしかして怖いと思ってるんじゃない?』
「えっ」
『ついさっき炎を操れたって大喜びしてたのに、一時間もしないうちに感情に任せて炎を出して大暴れ。あっという間に振り出しに逆戻りした気分なんじゃない?"今度この剣を抜いたら俺はどうなってしまうんだ?また我を忘れてしまうかもしれない。今度こそ誰かを傷つけるかもわからない。"』
「そんなこと…」
「名無しさんの言うとおり図星だろ。お前、完全に自信になくしたな」
「ちょ……ちょっと待ってくれ!そんなことで剣が抜けなくなったりすんのか?」
『するよ。私だって経験した』
「!!!」
「兄さん、剣を返すんだ」
とそのとき鍵穴もないところからどうやってやってきたのかメフィストが現れた
さきほどヴァチカン本部からグレゴリ以下査問委員会賛成多数により、奥村燐の処刑が決定したと。
「ちょ…ま…待ってく…ずいぶん早いな!本当かよ!」
「この状況でウソをつきに来るほど私は暇じゃありません。そんなことより今は不浄王討伐が最優先です」
ブェアークション☆と派手にくしゃみをした。
不潔なものが苦手でアレルギーがあるとかなんとか。
それはさておき、不浄王が復活すると瞬く間に成長し、熟しきったとき、京都は死の都と化す。
このとき既に不浄王は復活していたのだった。
「かなりの人手が必要でしょう。簡易的なものですが装備品などプレゼントしましょう。これが何かの助けになればよいのですが」
『?』
「では検討をお祈りいたします☆」
「お、おい…待て!!あんにゃろう…」
「とりあえず僕たちはできることをしましょう」
雪男はそういうと牢を出ていった。それを微妙な表情で見届けるシュラと名無しさん。
出張所では緊急召集がかかり動ける人は皆出張所に駆り出されていた。
蝮も柔造によって出張所へと助け出されていた。
それを聞いた勝呂が立ち上がり蝮のところへと向かう。
「柔造さんが戻らはった…!!」
「蝮!柔造」
「人を…集めてくださって…ゲホッゲホッ有難う…ございます。みんな…ゲホゲホ……あ…私は裏切り者や…けど今から言う話だけは聞いてほしい。先程私と藤堂三郎太は奪った"右目"と"左目"を用いて…不浄王を復活させた」
「「「「「「!?」」」」」」
「不浄王!?何やて……」
蝮は息も切れ切れになりながら、ことの真相を話した。
不浄王が金剛深山の地下に仮死状態で封印されていたこと
勝呂達磨が一人残って戦闘していること
援軍を出し不浄王を倒してほしいと言う願い。
しかし、周りの人間は自分等で蘇らせた不浄王を倒してほしいと言う願いには否定的だった。
「蝮!!」
「りゅ、竜士様!」
「お前右目が……!」
「ごめん…なさい……。助けて……和尚を助けて…」
傷ついた蝮を柔造は医務室まで運び一番隊と合流し、勝呂や子猫丸やしえみたちは旅館にということになった。
が……
「おっいたいた。お前ら!ちょっとこっちに来い!」
「霧隠先生…」
「さっき炎を出した件で燐の処刑が決まった」
「「!!!!」」
一番驚いたのは勝呂としえみだ。
子猫丸は下を向いて青くなっている。
ヴァチカンの決定である以上簡単にはこの決定が覆ることはない。
「そこでだ。勝呂くん、これを君に預ける」
「倶利伽羅……!」
「それと親父さんが燐にたくした手紙だ。不浄王を倒すには燐の力が必要だとかいてある。アイツは協力する気だった。お前たち、燐を助け出してくれないか?もう燐が処刑を免れるには手柄をたてるしかない。この迷彩貫頭衣を持ってけ。カモフラージュ効果があったはず。見張りに気づかれずに独居房に近づけるだろう」
「霧隠隊長!早く!」
「ふぁ~~い。この通りあたしも所詮騎士団の犬だ。表だって動けない。それは名無しさんも同じことだ。上からの命令だから副隊長として既に動いている。頼むぞ!すべてはお前たちの判断に任せる!」
手紙を渡された勝呂は手紙を読んだ。
しえみは燐を助けようと声をかけるが、志摩は反対。
だが子猫丸は後悔すると貫頭衣をはおり、出雲も同じように貫頭衣をはおった。
結局は全員で独居房にいくことになったのである。
燐の独居房には一番防御力が高い牢屋がいた。
それは内側から開けることはできず外からは簡単に開けるきとができるという。
防御が高い理由は、敵意をもって近づくものの動きを止めることができるからだ。
五人のなかで動きを止められてしまったのはしえみ以外の、志摩と勝呂、子猫丸、出雲の四人。
しえみは弱く武器を所持していないからだった。
唇を固く結び、改めて自分の弱さを思い知らされるしえみだったが、燐を助けるために独居房へと足を踏み入れる。
近づくなと怒鳴る燐にしえみは優しく近づき抱き締めた。
大丈夫だと励まされた燐は牢屋をぶち壊して不浄王のもとへと急ぐ。
to be continue
