焔の間:~青炎と溶けない氷~: 青の祓魔師 奥村燐と勝呂寄り


日がのぼり朝が来る



「昨日の夜の記憶がないんや。どーも酒のんで寝てもーたみたいやねん!あの先生自分の飲み物と間違わはったんやないか?ろくでもないわ…!」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫や。しかも縁側で夜飯食うてたはずが、朝おきたら自分の部屋や」

「誰かが見つけて運んでくれはったんですね。」

「そやろな。酔ってたから記憶ないけど、一人でおったな…それより子猫お前昨日お父お母に挨拶できたか?」

「あっはい昨日…」

「そか、ならよかったわ。じゃあ先いくな」

「はい、鴬の間でしたよね」

「ああ」



ここにはいるだけでも精一杯になっている自分がいる、名無しさんはそう考えて襖の向こうにたっていた。

京都に来てからも移動中のバスのなかでも、旅館についてからも一言も話していない。



「あ、オハヨー名無しさんちゃーん!」

『志摩…』

「入らへんの?」

『……』

「もしかして気にしてんの?可愛いな~!」



一瞬このおめでたい頭を殴ってやろうかとおもった。

人が悩んでいるのに、と悪態をつく。



「気にせんでもええんちゃいます?」

『え?』

「名無しさんちゃんが悪魔でも堕天使でも俺は名無しさんちゃんの味方ですよ!」

『味方…ね』

「ささ、お腹すいたし中入りましょ!奥村くんオハヨー!昨日ちゃんと部屋戻れた?」



朝からいつもの元気かつ剌感を見せてくれる辺り、少し気持ちが落ち着いた。

生まれてきてしまったものは仕方ない、と割りきってくれているような気がした。



「れ~~ん~~ぞおおりゃあ!」

「いったー!いきなり何すんの金兄!」

「何て…飛びげりやろ。お前アホか」

「お前がアホや!ど阿呆!」

「廉造!元気そーで何よりやで」

「おげっ柔兄も…」



志摩家三男が集まると賑やか賑やか。

昨日はしっかりと挨拶していなかったが、志摩家の男たちはなかなか個性が溢れている。



「誰やこいつ」

「あーこちらお友だちの奥村くんと、ほたる名無しさんさん!」

「ほたる?ヴァチカン本部の上一級祓魔師の?」

『(仮)ですが…稀に任務で呼び出されることもあります』

「おお~そーかそーか!俺は柔造、廉造の兄貴や!そっちは四男の金造でドアホや。廉造は男兄弟の末っ子でドスケベやけど、よろしく遊んでやってくれな」



と自己紹介もほどほどに、今日は休みである候補生の奥村と志摩は、今日の予定について話し合っている。

がしかし、修行途中の燐はプールなどにいっている暇もなく修行。

名無しさんはというと候補生ではなく上一級祓魔師としての任務が伝えられた。




ボッボッ



「クソ…なんでだ。なんで蝋燭ごと燃えちゃうんだよ!ちくしょお…!!!」

「ほぁほぁ。どうしたもうやめるか?」

「やめねーよ!!!…あれだ、Tシャツ汗だくだから変えてくるだけだ!つーかちゃんと師匠の仕事しろ!サボってんじゃねー!」



ギャーギャーと騒いでいると下から名無しさんが上がってきた。

疲れているだろうと思い軽い夜食を持ってきたのだ。



「名無しさんか」

「うぉー!夜食!クロも食うか?」

[食べるー!]

『クロの分はこれ』

「クロの言葉わかるのか?」

『悪魔と対話できなきゃ扱えないよ』

「そりゃそうだな。いっただきまーす!」



うまいうまいとどんどん食べていく燐

視線をずらすと燃えて溶けた蝋が大量に屋根瓦についている。



『進んだ?』

「いや、まだ…」

『落ち着いてやればできると思う。焦ってやってもなんにもならないから』

「落ち着くなー……」

「名無しさんがやるのを見るってのもありだな。ほれ、やってみ」

『…はい』



蝋燭5本、星のかたちに並べ上一本と下の二本を凍らせ、残り二本を緑でおおうという悪魔2体同時使役。

標体が小さいためほとんど力を使わずにできるが、大きいものとなると今の名無しさんには2体同時使役が限度である。

目を閉じていた名無しさんが目を開くと上一本と下二本は凍り、残り2本には緑が生えた。



「おおー!すげー!」

「お前もこれくらいできるようにならないとにゃ~」

「わかってるよ!」

『落ち着いて、無理につけようとせずに。シュラも言ってるけど、"燃やす"んじゃなくて"点す"。フワッとでいいんだって。マッチつける感じって言えばいいのかな』

「フワッと……」

『頭んなか真っ白にして、何も考えずにやるとできるよ』



助言をして何度かやってみるが、なかなかうまくはいかない。

人にはそれぞれのやり方がある。



ポッポッ



「おっ」

「!!」

[おーっ]

『やったね』

「やた…うおー!!やったー!」



やっと蝋燭二本に火をともすことができた。

少しの進歩でこれほどの大喜びは、なかなか素直な人間にしかできない反応だ。



「どうだシュラ、コレ!?点ったろ!完璧スマートに点ったろ!!」

「…まあそうだな。やっとスタートラインにたったって感じか?」

「うえっ!?ウソ俺まだスタートしてなかったのかよ!」

「これを自由自在に操れるようにならないとな」

「クッソそっかぁ…先なげぇなぁ…へへ、いやでもこれは…人間にとっては小さな一歩だが…人類にとって大きな一歩だ!」

「…なにいってんだお前…まず落ち着いてくんない」



とそのとき、少し離れたところから大きな爆発音



「!?」

「なんだ?」

[あっちだ!]

『煙ですね』

「な、なんだコレ…!?揺れてるぞ?」

「出張所で何かあったな…」

『私先にいきます』



先に屋根づたいで物音のほうに走り出したのは名無しさん。

その頃出張所では、蝮と柔造が対峙していた。

蝮は明陀の目を覚まさせるためだといい、不浄王の右目を狙い地下へと入っていた。

それに気づいた柔造が、蝮の後をおい地下へと入っていたのだ。

腐敗していく天井、そこから現れる元正十字騎士団祓魔師・藤堂

不浄王の右目を手にした蝮は己の右目にそれをはめて姿を消してしまった。

名無しさんたちが深部に到着したときには、勝呂達磨・竜士親子が(主に竜士)話をしているところだった。



「何もかんも全部アンタの所為やろうが‼」

「竜士」

「和尚、蝮のゆうとおり俺らを裏切っとるんか…!?」

「そ、そないなワケないやろ」

「せやったら、このみんながおる前で、今ホンマのことゆうてくれや!」

「ホンマのこと…いやあ…それは"秘密"や。"秘密"は息子のお前にも話せへん…できれば一生話さずにすめばほんま大助かりなんやけどなぁ…」

「この状況でアンタなにゆうてんねん…」

「とにかく!今はそれどころやない。蝮をおわんと。竜士、お前はお母や先生のゆうことよう聞いて大人しゅうしとるんやで。ええな?」

「親父面すな!!!!」



いつまでたっても隠し続けようとする親の姿に怒りの限界を越えた勝呂竜士。

なにも話さないまま言うというのなら金輪際親父でもなんでもないと言い渡した。

それでもなお頑なに隠そうとする父・達磨



「…ほな私はいくな……堪忍してや」



と燐の横を通りすぎようとしたとき、燐が達磨の服をつかんだ。

その燐の表情には"自分も経験した"かのようなものが見てとれた。



「アンタ勝呂の父ちゃんだろ!!」

「燐くん…」

「それに勝呂てめぇは!!」



一発殴りをいれる燐。

青い炎が少しもえあがった。



「詳しい事情は知んねーけど、あとでお前が絶対後悔するから言っといてやる。いいか!父ちゃんに謝れ!今のうちに!」

「関係ないやろが!黙っとけや!」

「親父を簡単に切り捨てんじゃねえ!!!!」

「お前に言われたないわ。サタン倒すゆうてるやつに…!!」

「まあまあ燐くんも竜士もここらで仲直りや」

「…アンタはどこへでも好きにいったらええやろ。二度と戻ってくるな!!」



そのときであった。

同じく怒りのパラメーターのフル数値を越えた燐も怒り爆発である。

禁止されていた青い炎を出してしまうことになった。



『ヤバいですよ』

「ちょとどいてどいて!やめろ燐!!!」

「俺だってなあ…!!俺だって…好きでサタンの息子じゃねーんだ!!でもお前は違うだろーが!!違うだろ!!」



諭されたかのように少し冷静さを取り戻した勝呂であったか、二人の間にすかさず柔造が割り込む



「オンマニパドウン!!」

「…ぎっ!!!いぎゃあああああああっ!!!!」

「奥村!?」

「オンギャチギャチギャビチヤンジュヤンジュタチバタソワカ」

「…うぅぎゃあああ!!!」



教戒尋問で次炎を出して暴れたら祓魔対象として処刑されることになっている燐

責任者として燐を落ち着かせようとしたシュラだったが、燐からの一言で一気に燐を気絶させることに。



「おーい誰か!」

「!?」

「こいつを隔離するの手伝ってちょ。もう気絶してるし大丈夫だよ」

『私がいく』

「お前はここにいろ」

『副隊長一人抜けたところで対して変化ありませんよ。それに誰もいきたがらないようなので』

「副隊長が抜けたら変化でるだろ。ここに残れ」

「霧隠隊長…!ゴホ」

「所長!お騒がせしてたいへん申し訳ありません!」

「…この件あとで当然ご説明があるんでしょうな」

「ハイ、もちろんです!」



一騒ぎあった直後、左目奪還部隊が戻ってきていた。



「雪男!」

「シュラさん」

「どういうことだ?」

「妨害電波で連絡が遅れました。それよりこっちは大変ってどういう…」

「左目奪還部隊隊長ターセム・マハルです」

「増援部隊隊長の霧隠っす」

「京都出張所所長の志摩八百造です。歓迎いたします。責任者が揃ってるこの場で早急に会議したいんやけどもよろしいか?」

「構いません」



左目奪還部隊が追わされていた軽自動車の中からは祓魔師二名の死体、さらに妨害電波までかけるという徹底ぶり。

入念な時間稼ぎのしかたから、藤堂がすでに左目を所持しているのではという考えが濃厚となった。

不浄王の右目と左目は150年あまりの長き間、明陀宗が何十もの秘密で守り続けてきたもの。

出張所の上のものですらありかを明かされず、下のものには存在そのものすら伏せられてきたと。

すべての秘密を知り守っているのは座主である勝呂達磨大僧正ただ一人。

明陀の伝説によれば右目と左目が揃うとき、より強毒な新型の瘴気を産み出すと言われている。

藤堂の目的は新型の強毒性瘴気の散布ではないかと絞られた。






to be continued
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