焔の間:~青炎と溶けない氷~: 青の祓魔師 奥村燐と勝呂寄り
時は京都行きが決まる少し前の話
名無しさんは入院していた子猫丸や志摩、勝呂へ自身の生い立ちや過ごしてきて日々について説明していた。
三人とも名無しさんが本部の上一級祓魔師試験に受かっていて、それでもまだ塾に通っていることや時には教師として教壇にたつこともあること
クロセルの血をひいていること、今までやってきたことは演技だったことに驚いている。
そうしてみな怖がる。悪魔と人間の血縁者なんぞ聞いていてもいい気はしない
『まあ私も半悪魔だから殺そうと思えば人なんて簡単に殺せる』
「え………っと…」
『この15年そうやって生きてきたの。私にそのつもりはないのにみんながそんな目で見てくる。触らぬ神に祟りなし。』
「………」
『私は平和な世を作るためにここにいる。それなのに人なんて殺さない。どう思うかはみんなの自由』
それだけいうと静かになる名無しさん
誰にも分かってもらえない気持ちを自分一人のなかで、おし殺してきたのだ
「ほたるさんも奥村みたいに暴れはるんですか…?」
「子猫さん…」
『私は自分で操れるから暴れることはない』
「そうですか…」
『燐だって生まれたくてサタンの子になった訳じゃない。サタンの子ってのは変えようのない事実だけど、使い方によっては"守ることも傷つけることもできる"。サタンの炎が必ずしも人を傷つけるとは限らないよ』
「せやけど………」
「正直もうあんな目は…」
「………」
人に理解してもらうには時間がかかる。
名無しさんにはよくわかっていることだった。
すぐわかってくれる人も入れはそうでない人もいる。
三人は時間がかかる人の方。
それでも何時かわかってくれる日がくると信じて名無しさんは話しをして出ていった。
「ずいぶん悲しそうな顔をしてますネ」
『こんなときになんのよう』
「祓魔師と祓魔師候補生に京都遠征の任務です☆」
『京都…』
「好きでしょう?」
『好きだけど…』
「ではお願いしますよ~」
それだけいうとポンッと姿を消してしまった
京都ていえば不浄王の左目と右目の件だろう。
任務用携帯を見れば案の定遠征についての知らせが届いていた。
「俺中学ん時修学旅行いかなかったから京都って初めてだ!やっぱしバナナはおやつにはいるんだよな?」
「……気持ちいいまでに行楽気分を隠さないな」
『ほんと見てて清々しい』
「お、ほたる!ひさしぶりだな!」
『久しぶり~。あれからみんなとどう?』
「トレーニングルームに連れていかれてからあってねぇんだよな」
『そっか。じゃ私先に乗るね』
新幹線で東京駅JR新幹線のぞみ201号新大阪行きにのり京都まで特急料金4,870円
時間は2時間15分
3・4号車は祓魔師と祓魔師候補生の貸しきり。
乗る前には3号車で予防接種を受けることが決まりとなっている
車内にはいれば祓魔師たちのヒソヒソ声が聞こえてくる。
サタンの子となればヒソヒソしない方がおかしい。
名無しさんも同じようなものだが、名無しさんのことは祓魔師みな知っているためこれといってなにもない。
「…俺ってどこ座ればいいんだ?やっぱ奥からつめた方が」
「………空気読んで。お前は前の方に座っとけ」
いつになってもお気楽気分の抜けない燐に一発かつかましてやろうかと思う名無しさん
そろそろ他の祓魔師候補生も集まってくる時間。
燐についてや悪魔との血縁者のことは話たが自分のクラスメイトがそれだとそれぞれ反応にも困る。
そんな当たり前の現実に燐が納得するだろうか。
いや、絶対にしない。それは断言できる。
「オハヨ」
「あ……………おはよう!」
しえみが2番手で入ってきたがどうしたらいいのかわからずといった感じで燐から顔を背けた。
勝呂に関しては今にも突っかかりそうな剣幕をまとって。
子猫丸は完全に怯えきった感じ。
志摩はさほどいつもと変わらぬ感じである。
「なんで普通にしてはるん!?またあ…暴れはったらどないするつもりなんや!」
「上の偉い人がきめはったことやからなぁ」
「触らぬ神にしとったらええんですよ」
「志摩さん、よくそんな平気でおれるな」
完全に猛獣扱いを受ける燐を横目に自然な反応であることを痛感させる。
平気でいられる志摩の方が"おかしい"のだ。
「全員揃ったか~?そろそろ発車するぞ。アタシは今回無理矢理増援部隊隊長押し付けられた霧隠シュラです!よろしく!そして上一級祓魔師資格をもつほたる名無しさんを副隊長がわりとする」
『はい?!』
「え?」
「ほたるさんが?」
なにも聞いてないんですけどと言わんばかりに立ち上がった。
メフィストが面白がって連絡しなかっただけだろうが。
「ほれ、挨拶挨拶!」
『はぁ……。ご紹介に預かりましたほたる名無しさんです。本部の上一級祓魔師ですが、まだ学びたいこともあり、塾に通っているためまだ(仮)状態です。時には教師として教壇にたったこともあります。上官(ほとんどメフィスト)からの指示があれば任務に参加しています。よろしくお願いいたします』
それだけ言うと座っていた場所に腰を下ろす
みな噂には聞いていたがといった感じだ。
まだ15そこそこの女が本部の上一級祓魔師なのだから。(雪男も似たようなもんだが。)
「ふんじゃひとまず"情報管理部"の佐藤くん。現状説明頼むわ~」
「え、あ、はい!7月22日午後1時20分ごろ、騎士団基地最深部内にて"特別危険悪魔部位"に指定され封印されていた"不浄王の左目"が何者かに奪われました。これは最深部元部長上二級藤堂三太郎の手引きだったことがわかっていますが…その目的や共犯者の検討もつかず現在調査中です」
「そーそして同時刻西に離れた京都出張所の深部も何者かの襲撃を受けた。こちらは未遂にとどめたが狙われたのは"不浄王の右目"!」
"不浄王"とは江戸後期…安政5年頃に流行した熱病や疫病を蔓延させたとされる上級悪魔で当時4万人以上の犠牲者を出した元凶と言われている
"左目""右目"とは"不浄王"を討伐した不角という僧侶が討伐したことを証明するために抜き取ったというもの
目だけでも強烈な瘴気を発し大変危険な代物と言われている
「敵の目的はまだなぞだがその"右目"と"左目"でなにか悪さをしようとしてるのはたしかだ。"右目"を守る京都出張所はまた襲われる可能性がある。"左目"の二の舞になることだけは避けないとな。つまり今回の任務は京都出張所で負傷した祓魔師の看護と手薄になった警護の応援。候補生はそのお手伝いをしてもらう。ふんじゃまぁみんな力合わせて頑張ってくれ!そんでアタシに楽させてくれ!」
最後のは聞かなかったことにしよう。
今回の任務で犯人は何かしらまたアクションを起こすに間違いはないだろう。
未遂に終わっているともなれば多重警護の隙をついてくる可能性もある。
それか京都出張所にスパイが入り込んでいる可能性があるなど色々考えられる。
両目とも揃えばどこか国一つ滅ぼせてしまうかもしれない代物を易々と渡すわけにはいかない。
そしていつものようにうるさくなってきた頃に勝呂と出雲が喧嘩をはじめる。
連帯責任として一生徒でもある名無しさんは囀石の刑の二の舞になっていた。
「…なんでまた連帯責任なんですか?」
「みんなで力合わせてっつたろーが!京都までここで頭冷やしてろ!」
「いいか…?起こすなよ!!!!!!」
普段起きない時間にたたき起こされご機嫌ななめなシュラ。
怒りで充血しきった目。それだけで人一人殺せそうだ
「なんやろこれ。デジャブ…?」
「また用意がいいわね」
「前もたしか坊と出雲ちゃん喧嘩しはって…いやほんま進歩ないわ」
「…チッ」
「うるさいわね!」
ほんと進歩ないなとなぜか囀石2個重ねられている名無しさんが涙する
副隊長と言われておきながら止めることをしなかったからだろうか。
それとも生徒兼副隊長としてであるために2個なのか。
「そ…そんな事より…先生はなんで奥村くんおいていかはったん?もしも何かあったら…危ないやんか!」
「子猫丸…」
「子猫さん……」
しかしやはり理解するには時間がかかるものだ。
もともと悪魔と人間は相容れない関係。
それが世をよくするため悪くするため、悪魔と契約を結び血縁関係までできるほど。
そんなものとはかけ離れた生活を送ってきた人間には理解できまい。
としたところで子猫丸の膝の上にいた囀石が飛び上がりしえみにのしかかった
「しえみ!」
「う…っ」
容赦なくミシミシと重くなっていく囀石
古ければ古いほど力が強いのである。
「杜山さん!」
「古い強力なんがまざっとったんや!はよ引きはなさなどんどん重なってつぶされる!」
「志摩そっちもて」
「……ふんぐ…ぐぐ」
「あああぁアカンアカン!腰抜ける!」
「先生…霧隠先生呼んでこな…!」
「起こすな言うてはったけどな」
「囀石ってたしか高温で燃やすか、割るしかなったですよね」
キリクで叩き割ろうとするも傷ひとつつくことはなかった
とそこで燐が任せろといい囀石に手をかける。
案の定ではあるがまだコントロールしきれていないため青い炎が上がる
囀石はいやがりしえみの上からのいた
「アカン!座席に燃え移った」
「祓魔師呼ぼ!」
「待って!大事にしないで!燐は暴れてないよ。この炎は……」
『それに祓魔師なんて呼ばなくてもここにいるじゃない』
「あ、ほんまや」
『結構燃え移ったね。多分白狐の大御酒でも消せると思うから出雲はそっちお願い』
不浄王と対峙することになるかもしれないため、体力温存をかねて一人で消せる量の火をあえて二人で消す。
出雲の白狐の天の大御酒とクロセルの水で鎮火
しかし肝心の囀石の姿がどこにも見当たらず。
「ざ…座席消し炭になってもた…」
「…ていうか囀石消えたわ!どこよ」
「なに邪魔してんだよ!俺はうまくやれた!」
「…なにがうまくや…!」
「俺を信じてくれよ!」
"信じてくれ"
それは心のそこからの声
人は信じてくれと願ってもなかなか信じてくれない生き物
対人間同士相手は何を考えているかわからない。
「…信じる…?どうやって……!十六年前うちの寺の門徒がその炎で死んだ。その青い炎は人を殺せるんや!俺のじいさんも…志摩のじいさんも、一番上の兄貴も子猫丸のお父も寺の門とは俺にとって家族と同じ……家族がえらいめにおうてて…どうやって信用せぇゆうんじゃ!」
「………それは…大変だったよな……でもだったらなんだ…!それは俺とは関係ねぇ!!!!」
「……」
「坊!」
「……そえやったな…お前はサタン倒すんやったよな!?」
「…そうだ…だから一緒にすんな」
「わああ!!やめて!坊から離れて!坊も…!僕らを家族やというてくれはるなら…勝手はやめてください!お願いです…!」
「子猫丸……!」
「坊にもしものことがあったら僕ら寺に顔向けでけへん…」
とちょうどその時行方をくらましていた囀石が戻ってきて勝呂めがけて突進していった。
すんでのところでシュラが八つ裂きに。
「ったく。お前らこんな雑魚相手になにやってんだ!本番でもそうやって互いの足引っ張りあうきか?死ぬぞ!」
「………」
「…」
「名無しさんも。しっかりしろ」
『はい』
京都駅
大きな駅で平日でも人でごった返している
改札を出て左にいけば京都タワーを目の前にすることができる。
上をみれば京都駅のプレート。刑事ドラマでよくみるアングルだ。
といっても京都タワーは通天閣の展望台部分よりも狭いのであまり多くの人は入れないうえに
天気がよくなければせっかくの京都の景色はみえない。
「お待ちしておりました!私京都出張所の使いのもので土井ともうします。」
「日本支部増援部隊隊長霧隠シュラです。」
「ようこそおこりくださいました…。バスを用意いたしましたんでとりあえずは逗留先に荷物を預けて落ち着いていただければと思とります」
「わかりました~よろしくお願いします」
せっかくの京都もこんな重い空気のなかではそとすら見ようとも思えはしない
クラスメイトが悪魔の子。しかも2人もだ。
信じるということが簡単にできないこと世界
人は何度声をかけようと、相手に届くのには時間がかかる。
何度もいってきたがそれには時間をかけるしか他ないのだ。
「正十字騎士団日本支部御一行様いらっしゃいました」
「遠くからようこそおこしやす。私この虎屋旅館の女将でございます。ご逗留中は完全貸しきりにさせてもろてますんでゆっくりしとくれやす。ささこちらへ」
「坊!」
「坊や!」
「坊!?」
「よう戻らはりましたなぁ!」
「おかえりなさいませ!」
おっとなんだこの歓迎のされようはと一同困惑。
候補生の中で坊とやばれる男は一人しかいないため誰のことかは容易に見当がつく
to be continue
