七夕
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ある日、俺と恋は帰り道を並んで歩いていた。
部活がなくなった時くらいしか恋と帰れる事はない。
だから少し嬉しかったりするんだけど、恋はどうなのかな。
なんて、そんな事を考えていると、まだまだ明るい空を見上げて恋は唐突に言った。
「七夕に願い事って叶うのかなぁ」
急な質問に俺は疑問しか浮かばない。
七夕に願い事をするというのは、小さな頃からの習慣みたいなものだ。
今更それに疑問を持つ事もなかったから、そんな質問をされても答えようがない。
「急にどうした?」
「だってさ、織姫と彦星って年一でしか会えないんでしょ?なら、他人の願い事とか叶えてる暇なくない?」
恋がどこか不満そうに俺を見て言うから考える。
確かに、あの二人が叶えているのならそんな暇はないだろうと思う。
「あー…確かに」
「でしょ?」
やっぱりどこか不満そうな恋に俺は問いかけた。
「じゃあ、恋は願い事しないのか?」
俺の言葉に恋はきょとんとした。
恋の理論で行くと、願い事をしても叶わない=願い事をしないと言う事になるんじゃないかと思う。
「まぁ…私の願い事を叶えてくれるのは一人しかいないしねぇ」
「何だ、それ」
「何でしょうねぇ?」
どこかため息混じりに、けれど意地悪く笑いながら恋が言った。
この顔をすると言う事は、答える気がないのだと分かる。
そんな事がわかるくらいの仲ではあるんだ。
だから、ふいに浮かんだ世間話を振った。
「そう言えば、越野が願い事は織姫と彦星が叶えるわけじゃないとか言ってたな」
「え?そうなの?」
「あれは、自分の誓いを書いて、自分で叶えるものらしいよ。その為に神様は力を貸してくれるだけだとか、この間力説された」
その時の様子を思い浮かべると、自然と笑みが浮かんでしまう。
何故、越野はあんなに力説していたのだろうか。
七夕の伝説みたいな物を、事細かに力説される日が来るとはそれまで思ってもいなかったのだ。
恋はそんな俺を見て少し眉を寄せた。
「何、越野って信心深いの?」
「いや、調べたらしい。だから『なりますように』じゃなくて『なる』って書いた方が良いとか言ってたな。何か、よっぽど叶えたい事でもあるんじゃないか?」
この話をした時の越野は、どこか自身に言い聞かせているようにも感じた。
そこまでして叶えたい願い事とは何なのだろうか。
恋も不思議に思ったのか浮かんだ物を口にする。
「えー、何だろ、冬の選抜優勝とか?」
「どうだろうな。それでもおかしくはないと思うけど」
インターハイ予選で敗れた俺たちが次に本命とするのは冬の選抜だ。
優勝は、多分皆の願いではあると思う。
恋もそう思ったのか、俺の顔を覗いて聞いてきた。
「仙道も同じ?」
どこか優しい笑みを浮かべて恋は言う。
恋は肯定の言葉を待っていると思う。
でも、俺は少し違う。
「願い事って感じじゃないな、それは。するべき事と言うか、するつもりだし」
願いではある。
けれど、それよりもするという思いの方が強いんだ。
そんな俺に恋は笑った。
「あはは、仙道って意外と勝気だよね」
「皆そうじゃないか?」
「そういうものなのかな?でも出来たら凄いよね、応援してる」
恋はニッコリと笑ってそう言ってくれた。
恋のその気持ちがどれくらいなのかなんて分からないけど、俺には十分過ぎる言葉だった。
「ありがとう。で?恋の願い事は?」
「願い事ぉ?」
「そう。何かないのか?」
恋は眉を寄せているが、さっきの話から察するに願い事自体はありそうだった。
けれど、恋は頭を悩ませている。
「えー…何だろうなぁ」
「さっき言ってたのは?」
さっきの言葉は何故か気になった。
叶えてくれる人とは誰なんだろうか。
それは、どんな願い事なのか。
「んー…内緒」
「ふーん」
それは答えになっていない。
でも聞いたところで答えてくれるとも思わないから、それ以上は何も言えなかった。
「あ、じゃあ仙道の活躍でも願っとこうかな」
どうやら不満が顔に出てしまったらしい。
多分、僅かにしか出ていないはずだけど、そんな俺の機微に恋は何故か気づく事が多かった。
だから、恋はそんな事を言ったんだろう。
言い方はあれだけど、そんな風に言ってくれるのは、内心嬉しかったりするんだ。
「はは、ありがとう」
「あ、でも越野の話じゃ、私が叶えなきゃいけないんだっけ。じゃあ、無理だね」
「えぇ?」
即座に前言撤回されて俺は肩を落とした。
そんな手のひら返しをされるとも思ってなかったんだ。
けど、恋はあっけらかんと続けた。
「だって、仙道の活躍とか仙道が頑張るしかないでしょ?」
確かにその通りではある。
俺が活躍するには、俺がそうなるように動くしかない。
「まぁ…あ、恋にも出来るよ、その願い叶えるの」
「何?」
「恋が応援に来てくれる事」
そう、恋が応援に来てくれればモチベーション向上にもなる気がする。
まぁ、試合自体好きだからモチベーションが下がる事はそうそうないんだけど。
それでも、好きな子が会場に来て応援してくれるなんて、考えただけでも正直かなり嬉しい。
相乗効果はありそうだ。
でも、恋は少し困惑顔だった。
「えぇ?」
「恋が観に来てくれたら、もっと活躍できる気がするな」
「えー?てか、活躍する前提で話してるじゃん。他の人が活躍して、仙道が霞むかもよー?海南の牧さんとか、翔陽の藤真さんとか上手いんでしょ?」
「はは、確かに。でも倒すから」
「さらっとそんなこと言って、本人が聞いたら気悪いよ?」
恋はため息混じりにそんな事を言うけど、あの二人を知っている俺からしたらそんな事はないと思う。
「そうか?あの二人なら逆に、『倒しにこい』って言うと思うよ。それか『倒されはしない』とか」
頭に浮かぶのは仁王立ちで不敵に笑う二人の姿。
早々に倒れはしないと自負しているだろうし、実際、容易く倒れてはくれないんだよな。
けど、その方が倒し甲斐があるってものだ。
「そうなの?皆負けず嫌いだねぇ」
「負けたらそこで終わるしな」
そう、負ければそこで終わりだ。
だから、インターハイのような予選で負けた俺たちの道は途絶えた。
負けたくて出る奴なんかいない。
勝てばまだ強い奴と戦える。
負ければ悔しいけど、俺の力が足りない証拠でもある。
でも、勝つ為に何が必要か考えれば俺はもっと強くなれる。
強い奴を倒すのは楽しいんだ。
だから、俺は負ける事が悪いとは思わない。
まぁ、どうしようもなく悔しいけど。
ただ、今の言い方に、恋はそう思わなかったのか、少しばつが悪そうにしていた。
「…まぁ、休みの日とかは応援行くから」
「あぁ。期待してる」
実際来るかなんて分からない。
でも、恋がそう言ってくれるって事は来る意思はあるみたいだ。
なければ、即答で断っているだろう。
恋はそんな子だから、俺は内心期待せずにいられない。
「でも、面白いね」
「何が?」
「願い事は、自分で叶える誓いって。それなら織姫と彦星の負担も減るよね」
「何で恋は、織姫と彦星目線なんだ?」
さっきから気になっていた。
どうして、恋は願い事を叶える側の気持ちになっているんだろう。
「だって年一でしか会えないんだよ?」
「まぁ…でも元々は自業自得だしなぁ」
越野から七夕の由来は聞いていたので話は分かっている。
聞いた時、自業自得だと思ったんだ。
仕事をサボるのが悪い。
まぁ、俺が言えた義理じゃないけど。
「それでもだよ。私なら年一とか言われたら、別れるかこっそり会うね」
「はは、見つかったら大変だな」
「えー?じゃあ、仙道は恋人と年一しか会えなくてもいいの?」
恋はどこか怒った風に言い放つ。
確かに年一でしか会えないのは辛いかもしれない。
「…そうなったら、こっそり会うな」
「あはは、一緒じゃん」
恋は俺の答えに満足そうだった。
律儀に年一で会う二人は偉いと思う。
俺なら無理だ。
「遠距離でも早々ないよね、年一って」
「そうだな。どっちかが海外とかだったら、それに近い状態にはなりそうだけど」
「え!?」
「海外だと気軽には行けないだろ?」
「あー、そうだよね…」
何故か恋は大きく肩を落とした。
距離を考えて海外なんて言ったけど、場所によってはすぐ会えない事もないとは思う。
なのに、何で恋はこんなに落ち込んだんだ?
「何?」
「ううん」
やっぱり恋は浮かない顔。
何か気がかりでもあるのかと様子を伺っていると、恋はポツリと言った。
「仙道は留学とかするの?」
「ん?考えない事もないけど、日本で倒したい人いっぱいいるしな」
アメリカへ行きたい思いがないわけではない。
でも、今はそれよりも沢山の選手と戦いたいし倒したい。
まだまだ倒せていない人が多いから。
恋は、俺の返事に少しだけ安堵したみたいな顔をした。
「そ、そっか」
「何?行ったら寂しい?」
「当たり前でしょ!?」
「え?」
思ってた以上に強く返されて俺は驚いた。
そんな怒った風に言われるとは思ってもなかったし、そう思ってくれるなんて思いもしなかったから。
恋はばつが悪そうに苦笑した。
「あー、ごめん、何でもない」
その顔を見て、何故か急にとある考えに辿り着いた。
「なぁ、恋」
「何?」
「さっきの話だけどさ、恋の願い事を叶えられる奴の話」
「あー、あれね」
「それって俺だったりする?」
どうしてそんな事を思ったのか明確な理由なんてない。
何となく浮かんだだけ。
そうだったらいいなという、俺の願望が混じっているとは思うけど。
ただ、すぐに反応のなかった恋はみるみる顔色を変えていった。
「…はぁ!?な、何言っへ…何言ってんの!?」
「何でそんな慌ててるんだ?」
「慌ててないから!」
「本当に?」
「本当に!」
でも見るからに恋の顔は赤くなった。
ムキになってる所は本当に可愛いし、これだけムキになるって事は肯定ととっていいんだろうと思う。
俺が叶えられる願い事って何だろう。
色々浮かぶけど、俺と同じだといいな。
俺の願いは一つだけ。
『恋人になって』
そう言ったら恋はどんな顔するのかな。
困るのか、それとも嬉しいと思ってくれたりするんだろうか。
俺としては嬉しく思って欲しいんだけど。
でも、それを口にしてしまったら俺は、返事がどうであれ恋から離れられなくなってしまいそうだ。
それくらい好き。
ずっと傍にいたい。
だから、この言葉を伝えるのはもう少し先。
多分もうすぐ歯止めがきかなくなる。
恋に触れたいと思う俺がいるから。
その時まで待ってて。
部活がなくなった時くらいしか恋と帰れる事はない。
だから少し嬉しかったりするんだけど、恋はどうなのかな。
なんて、そんな事を考えていると、まだまだ明るい空を見上げて恋は唐突に言った。
「七夕に願い事って叶うのかなぁ」
急な質問に俺は疑問しか浮かばない。
七夕に願い事をするというのは、小さな頃からの習慣みたいなものだ。
今更それに疑問を持つ事もなかったから、そんな質問をされても答えようがない。
「急にどうした?」
「だってさ、織姫と彦星って年一でしか会えないんでしょ?なら、他人の願い事とか叶えてる暇なくない?」
恋がどこか不満そうに俺を見て言うから考える。
確かに、あの二人が叶えているのならそんな暇はないだろうと思う。
「あー…確かに」
「でしょ?」
やっぱりどこか不満そうな恋に俺は問いかけた。
「じゃあ、恋は願い事しないのか?」
俺の言葉に恋はきょとんとした。
恋の理論で行くと、願い事をしても叶わない=願い事をしないと言う事になるんじゃないかと思う。
「まぁ…私の願い事を叶えてくれるのは一人しかいないしねぇ」
「何だ、それ」
「何でしょうねぇ?」
どこかため息混じりに、けれど意地悪く笑いながら恋が言った。
この顔をすると言う事は、答える気がないのだと分かる。
そんな事がわかるくらいの仲ではあるんだ。
だから、ふいに浮かんだ世間話を振った。
「そう言えば、越野が願い事は織姫と彦星が叶えるわけじゃないとか言ってたな」
「え?そうなの?」
「あれは、自分の誓いを書いて、自分で叶えるものらしいよ。その為に神様は力を貸してくれるだけだとか、この間力説された」
その時の様子を思い浮かべると、自然と笑みが浮かんでしまう。
何故、越野はあんなに力説していたのだろうか。
七夕の伝説みたいな物を、事細かに力説される日が来るとはそれまで思ってもいなかったのだ。
恋はそんな俺を見て少し眉を寄せた。
「何、越野って信心深いの?」
「いや、調べたらしい。だから『なりますように』じゃなくて『なる』って書いた方が良いとか言ってたな。何か、よっぽど叶えたい事でもあるんじゃないか?」
この話をした時の越野は、どこか自身に言い聞かせているようにも感じた。
そこまでして叶えたい願い事とは何なのだろうか。
恋も不思議に思ったのか浮かんだ物を口にする。
「えー、何だろ、冬の選抜優勝とか?」
「どうだろうな。それでもおかしくはないと思うけど」
インターハイ予選で敗れた俺たちが次に本命とするのは冬の選抜だ。
優勝は、多分皆の願いではあると思う。
恋もそう思ったのか、俺の顔を覗いて聞いてきた。
「仙道も同じ?」
どこか優しい笑みを浮かべて恋は言う。
恋は肯定の言葉を待っていると思う。
でも、俺は少し違う。
「願い事って感じじゃないな、それは。するべき事と言うか、するつもりだし」
願いではある。
けれど、それよりもするという思いの方が強いんだ。
そんな俺に恋は笑った。
「あはは、仙道って意外と勝気だよね」
「皆そうじゃないか?」
「そういうものなのかな?でも出来たら凄いよね、応援してる」
恋はニッコリと笑ってそう言ってくれた。
恋のその気持ちがどれくらいなのかなんて分からないけど、俺には十分過ぎる言葉だった。
「ありがとう。で?恋の願い事は?」
「願い事ぉ?」
「そう。何かないのか?」
恋は眉を寄せているが、さっきの話から察するに願い事自体はありそうだった。
けれど、恋は頭を悩ませている。
「えー…何だろうなぁ」
「さっき言ってたのは?」
さっきの言葉は何故か気になった。
叶えてくれる人とは誰なんだろうか。
それは、どんな願い事なのか。
「んー…内緒」
「ふーん」
それは答えになっていない。
でも聞いたところで答えてくれるとも思わないから、それ以上は何も言えなかった。
「あ、じゃあ仙道の活躍でも願っとこうかな」
どうやら不満が顔に出てしまったらしい。
多分、僅かにしか出ていないはずだけど、そんな俺の機微に恋は何故か気づく事が多かった。
だから、恋はそんな事を言ったんだろう。
言い方はあれだけど、そんな風に言ってくれるのは、内心嬉しかったりするんだ。
「はは、ありがとう」
「あ、でも越野の話じゃ、私が叶えなきゃいけないんだっけ。じゃあ、無理だね」
「えぇ?」
即座に前言撤回されて俺は肩を落とした。
そんな手のひら返しをされるとも思ってなかったんだ。
けど、恋はあっけらかんと続けた。
「だって、仙道の活躍とか仙道が頑張るしかないでしょ?」
確かにその通りではある。
俺が活躍するには、俺がそうなるように動くしかない。
「まぁ…あ、恋にも出来るよ、その願い叶えるの」
「何?」
「恋が応援に来てくれる事」
そう、恋が応援に来てくれればモチベーション向上にもなる気がする。
まぁ、試合自体好きだからモチベーションが下がる事はそうそうないんだけど。
それでも、好きな子が会場に来て応援してくれるなんて、考えただけでも正直かなり嬉しい。
相乗効果はありそうだ。
でも、恋は少し困惑顔だった。
「えぇ?」
「恋が観に来てくれたら、もっと活躍できる気がするな」
「えー?てか、活躍する前提で話してるじゃん。他の人が活躍して、仙道が霞むかもよー?海南の牧さんとか、翔陽の藤真さんとか上手いんでしょ?」
「はは、確かに。でも倒すから」
「さらっとそんなこと言って、本人が聞いたら気悪いよ?」
恋はため息混じりにそんな事を言うけど、あの二人を知っている俺からしたらそんな事はないと思う。
「そうか?あの二人なら逆に、『倒しにこい』って言うと思うよ。それか『倒されはしない』とか」
頭に浮かぶのは仁王立ちで不敵に笑う二人の姿。
早々に倒れはしないと自負しているだろうし、実際、容易く倒れてはくれないんだよな。
けど、その方が倒し甲斐があるってものだ。
「そうなの?皆負けず嫌いだねぇ」
「負けたらそこで終わるしな」
そう、負ければそこで終わりだ。
だから、インターハイのような予選で負けた俺たちの道は途絶えた。
負けたくて出る奴なんかいない。
勝てばまだ強い奴と戦える。
負ければ悔しいけど、俺の力が足りない証拠でもある。
でも、勝つ為に何が必要か考えれば俺はもっと強くなれる。
強い奴を倒すのは楽しいんだ。
だから、俺は負ける事が悪いとは思わない。
まぁ、どうしようもなく悔しいけど。
ただ、今の言い方に、恋はそう思わなかったのか、少しばつが悪そうにしていた。
「…まぁ、休みの日とかは応援行くから」
「あぁ。期待してる」
実際来るかなんて分からない。
でも、恋がそう言ってくれるって事は来る意思はあるみたいだ。
なければ、即答で断っているだろう。
恋はそんな子だから、俺は内心期待せずにいられない。
「でも、面白いね」
「何が?」
「願い事は、自分で叶える誓いって。それなら織姫と彦星の負担も減るよね」
「何で恋は、織姫と彦星目線なんだ?」
さっきから気になっていた。
どうして、恋は願い事を叶える側の気持ちになっているんだろう。
「だって年一でしか会えないんだよ?」
「まぁ…でも元々は自業自得だしなぁ」
越野から七夕の由来は聞いていたので話は分かっている。
聞いた時、自業自得だと思ったんだ。
仕事をサボるのが悪い。
まぁ、俺が言えた義理じゃないけど。
「それでもだよ。私なら年一とか言われたら、別れるかこっそり会うね」
「はは、見つかったら大変だな」
「えー?じゃあ、仙道は恋人と年一しか会えなくてもいいの?」
恋はどこか怒った風に言い放つ。
確かに年一でしか会えないのは辛いかもしれない。
「…そうなったら、こっそり会うな」
「あはは、一緒じゃん」
恋は俺の答えに満足そうだった。
律儀に年一で会う二人は偉いと思う。
俺なら無理だ。
「遠距離でも早々ないよね、年一って」
「そうだな。どっちかが海外とかだったら、それに近い状態にはなりそうだけど」
「え!?」
「海外だと気軽には行けないだろ?」
「あー、そうだよね…」
何故か恋は大きく肩を落とした。
距離を考えて海外なんて言ったけど、場所によってはすぐ会えない事もないとは思う。
なのに、何で恋はこんなに落ち込んだんだ?
「何?」
「ううん」
やっぱり恋は浮かない顔。
何か気がかりでもあるのかと様子を伺っていると、恋はポツリと言った。
「仙道は留学とかするの?」
「ん?考えない事もないけど、日本で倒したい人いっぱいいるしな」
アメリカへ行きたい思いがないわけではない。
でも、今はそれよりも沢山の選手と戦いたいし倒したい。
まだまだ倒せていない人が多いから。
恋は、俺の返事に少しだけ安堵したみたいな顔をした。
「そ、そっか」
「何?行ったら寂しい?」
「当たり前でしょ!?」
「え?」
思ってた以上に強く返されて俺は驚いた。
そんな怒った風に言われるとは思ってもなかったし、そう思ってくれるなんて思いもしなかったから。
恋はばつが悪そうに苦笑した。
「あー、ごめん、何でもない」
その顔を見て、何故か急にとある考えに辿り着いた。
「なぁ、恋」
「何?」
「さっきの話だけどさ、恋の願い事を叶えられる奴の話」
「あー、あれね」
「それって俺だったりする?」
どうしてそんな事を思ったのか明確な理由なんてない。
何となく浮かんだだけ。
そうだったらいいなという、俺の願望が混じっているとは思うけど。
ただ、すぐに反応のなかった恋はみるみる顔色を変えていった。
「…はぁ!?な、何言っへ…何言ってんの!?」
「何でそんな慌ててるんだ?」
「慌ててないから!」
「本当に?」
「本当に!」
でも見るからに恋の顔は赤くなった。
ムキになってる所は本当に可愛いし、これだけムキになるって事は肯定ととっていいんだろうと思う。
俺が叶えられる願い事って何だろう。
色々浮かぶけど、俺と同じだといいな。
俺の願いは一つだけ。
『恋人になって』
そう言ったら恋はどんな顔するのかな。
困るのか、それとも嬉しいと思ってくれたりするんだろうか。
俺としては嬉しく思って欲しいんだけど。
でも、それを口にしてしまったら俺は、返事がどうであれ恋から離れられなくなってしまいそうだ。
それくらい好き。
ずっと傍にいたい。
だから、この言葉を伝えるのはもう少し先。
多分もうすぐ歯止めがきかなくなる。
恋に触れたいと思う俺がいるから。
その時まで待ってて。
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