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多分すぐに知る事になるんだろうなとは思っていたんだ。
好きな人の事だから、情報は早いんだろうな。
そう、今目の前を駆けて行った恋の目的地。
そんなの分かりきっているのに、俺は思わずその後を追いかけた。
それから、目的人物を見つけたのか立ち止まっている恋がいた。
「別れたって本当なの?」
開口一番そう言った恋に目を見張るのは三井だった。
あぁ、やっぱり知ったんだ。
そして、恋が掴む腕を三井は無造作に振り払った。
「は?何で知ってんだよ」
「何で別れるの!?」
恋が鬼気迫る勢いで来るからか三井は少し怯んでいるけど、怒る理由を知らない三井は眉を寄せた。
「はぁ?何で恋が怒ってんだよ」
「そんなの困る!」
「意味わかんねー」
それだけ言い残し立ち去る三井を見る恋の目は、苛立ちと悲しみが入り混じり複雑で泣きそうに見えた。
だから、俺は声すらかけられずその場を離れたんだ。
けど、恋は何で怒っていたんだろう。
普通は残念がりつつも、内心嬉しいものなんじゃないのか…?
放課後、恋が教室の机で突っ伏しているのを見つけて声をかけた。
「大丈夫か?」
「うるさいよ。木暮には関係ないでしょ」
多分、何を指して「大丈夫か」なんて聞いたのかは分かっているんだろうな。
だから、顔すら上げずにそう答えるんだよな。
「まぁ、そうなんだけど…。心配だから」
「それは幼馴染として?だったら放っておいて」
「うん、そうだよな。ごめん」
そう、俺達は家が隣同士で小さな頃から仲が良かった。
顔を見なくても声だけで識別できるくらいには。
けど、いつからか疎遠になった。
別に仲違いしたわけでもなくて、それは男女の幼馴染特有なのかも知れない。
それは寂しいけれど仕方のない事だ。
俺はずっと恋が好きだったけど、恋は違うから。
今までも、これからも…。
そんな事を考えていれば、恋がふいに顔を上げて俺を見る。
その目は少し苛立ちが見えた。
「そこで謝る所が本当嫌。何ですぐ謝るの?」
「ごめん」
俺は苦笑いしてまた謝った。
そんな俺に嫌気がさしたのか、恋は立ち上がり教室を出て行った。
恋と三井は3年間同じクラスで、2人は波長が合ったのか自然と仲が良くなっていた。
初めは本当にただの友達同士だった。
でもいつからか、恋は三井が好きになっていたんだ。
三井なら仕方ないと思ったから、俺は恋の気持ちにはすぐに気付いたけど何も言わなかった。
多分それからずっと片想いなんだと思う。
三井が挫折して不良になってもそれは変わらなかったんだと思う。
いや、実際にはどうか分からないけど。
恋はかなり一途だし諦めが悪いからそう思うだけで。
恋はハキハキと言いたい事は結構言うけど、どこか臆病な所があるから、言えないのかな。
そんな事を言ったらまた嫌な顔されるかも知れないけど。
でもやっぱり気になるんだ。
「恋は告白しないの?」
たまたま帰り道の時間が被ったから、久しぶりに並んで帰っている今、俺は家の目前でそんな事を聞いた。
恋はこちらを見る事なく歩くけど、一緒に帰る事を拒みはしなかったから。
だから、会話がしたくて、こっちを向いて欲しくて、でもその事がずっと頭を占めているから思わず聞いてしまった。
恋はやっぱりこっちを見ずに答えた。
「しない。てか、木暮には関係ないじゃん」
「三井も恋ならまんざらでもないんじゃないか?」
「ない。三井の隣にいていいのは私じゃない」
「何だよ、それ」
「木暮にはわかんないよ」
恋は静かにそう言うと自宅の門を開けて中へ入って行った。
入る時に小さく「バイバイ」と聞こえて、俺は少しだけ嬉しくなってしまった。
ある日、俺は引退した部活に顔を出していた。
その休憩中、目の前で勢い良くスポーツドリンクを飲む三井に聞いてみた。
「三井は恋の事どう思ってる?」
「はぁ?何だよ、いきなり」
ゴフッと吹き出しそうになりながら三井は俺を見た。
凄く眉を寄せているから、何でそんな事お前が聞くんだよって思ってそうだ。
「仲良いからどうなのかなって」
「別に何とも思ってねぇよ。ダチだ、ダチ」
再びスポーツドリンクに口を付ける三井は、こちらを見ずにそう言った。
だから、俺はこう返すしかない。
「そうか」
そして、すぐに集合の号令がかかったから、俺達はコートへと集まった。
数日後の昼休み、珍しく恋に呼び出されて屋上へ来ていた。
急に降り出した雨の為、屋上には誰もいなくて、外に出る事も出来ず屋上前の踊り場で待つ事にする。
それから少し遅れて来た恋は微かに怒った顔をしていた。
そして、階段を登りながら話しかけてくる。
「ねぇ、木暮」
「ん?何だ?」
「三井に何か変な事聞いた?」
目の前で立ち止まる恋に少し動揺しながら俺は問い返した。
「どうして?」
「三井が少し変だから」
「そうか?」
「お節介な木暮の事だから聞いたよね、絶対」
俺には普段通りに見えたけど、やっぱり好きな人の些細な変化には気付くものなのかな。
恋は俺の性格をよく知っている。
だから、「絶対」なんて言ってくるんだろうな。
ついお節介な事をして、余計に恋を怒らせるって分かっているのに。
だから、俺は素直に謝るしか出来ない。
「うん。ごめん」
「あのさ、この際だから言っとくけど、私、三井にはフラれてるから」
「え?」
「だから、三井が私と付き合う事なんかないから」
そんな事実は知らなかったけど、そんな事よりも、真っ直ぐにそう言ってくる恋は今どんな気持ちなんだろう…。
どうして、こんな事を言わせてしまったんだろう。
「…ごめん」
「いい。それだけ」
恋はそれだけ言い残し階段を降りて行った。
俺は酷く後悔して、しばらく動けなかった。
けれど、別れる時「バイバイ」すら言ってくれなかったな、なんてぼんやりとそんな事が頭を過ってしまった。
どうして、俺はそんな独り善がりな事を考えてしまうんだろう。
数週間後、俺は恋を屋上へ呼び出した。
今日は良く晴れているけど、珍しく誰もいなかったその場所へ、恋は先に着いていた。
屋上のドアから手を離すと、俺は声をかけた。
「恋」
振り向いた恋の元へ駆け寄るけど、恋はやっぱりどこか気落ちしているのか元気がないように見える。
恋は俺が目の前で立ち止まると少しだけ視線を逸らした。
「何」
「いい加減諦めたら?」
「放っておいて」
恋は明らかに嫌そうな顔をしている。
俺自身これはお節介だと分かっている。
でも、ここ数週間、恋は三井に新しい女の子を紹介したり、けしかけたり、色々と空回りしていた。
終いには三井に呆れられて辛辣な言葉を向けられているのを目撃した。
恋はその時、あははと笑って謝っていたけど、内心凄く傷付いているはずだ。
一瞬だけ泣きそうな顔になったのを見てしまったから。
何で俺はそれに気付いてしまったんだろう。
気付かなければ良かったのに…。
「…放っておけるわけないだろ!」
俺は思わず強く言い放って恋の腕を掴んだ。
恋は驚いた顔をしてから、眉を寄せて俺の腕を振り払おうとする。
「ちょ、痛…」
「俺の気持ちも考えろよ!」
悲痛な声音だったのかもしれない。
恋が思わず息を呑んだのが分かったから。
でも、俺の言葉は止まらなかった。
「俺は昔からずっと恋が好きなんだよっ」
恋を真っ直ぐ見つめた俺に、恋は明らかに動揺した。
だから視線を逸らす。
それが酷く悲しいと思ってしまった。
「頼むからこっち向いてくれよ…」
「…ごめん」
俺の声に恋は静かにそう言った。
「私は、三井が好きなの」
視線を逸らしたまま言う恋の声はか細い。
別にそれが泣いてるからとは思わない。
そんな事で恋が泣く事はない。
…俺の方が泣きそうだ。
「うん。知ってるよ」
そう言って俺は静かに恋の腕を離した。
恋は解放されると駆け足で屋上を出て行った。
告白するつもりなんてなかった。
恋を困らせるだけだと分かっていたから。
でも、どうしても抑えきれなかった。
俺の中はぐちゃぐちゃなのに、空はどこまでも澄んでいる。
俺は、また恋と他愛もない話をする事が来るんだろうか…。
→アトガキ
好きな人の事だから、情報は早いんだろうな。
そう、今目の前を駆けて行った恋の目的地。
そんなの分かりきっているのに、俺は思わずその後を追いかけた。
それから、目的人物を見つけたのか立ち止まっている恋がいた。
「別れたって本当なの?」
開口一番そう言った恋に目を見張るのは三井だった。
あぁ、やっぱり知ったんだ。
そして、恋が掴む腕を三井は無造作に振り払った。
「は?何で知ってんだよ」
「何で別れるの!?」
恋が鬼気迫る勢いで来るからか三井は少し怯んでいるけど、怒る理由を知らない三井は眉を寄せた。
「はぁ?何で恋が怒ってんだよ」
「そんなの困る!」
「意味わかんねー」
それだけ言い残し立ち去る三井を見る恋の目は、苛立ちと悲しみが入り混じり複雑で泣きそうに見えた。
だから、俺は声すらかけられずその場を離れたんだ。
けど、恋は何で怒っていたんだろう。
普通は残念がりつつも、内心嬉しいものなんじゃないのか…?
放課後、恋が教室の机で突っ伏しているのを見つけて声をかけた。
「大丈夫か?」
「うるさいよ。木暮には関係ないでしょ」
多分、何を指して「大丈夫か」なんて聞いたのかは分かっているんだろうな。
だから、顔すら上げずにそう答えるんだよな。
「まぁ、そうなんだけど…。心配だから」
「それは幼馴染として?だったら放っておいて」
「うん、そうだよな。ごめん」
そう、俺達は家が隣同士で小さな頃から仲が良かった。
顔を見なくても声だけで識別できるくらいには。
けど、いつからか疎遠になった。
別に仲違いしたわけでもなくて、それは男女の幼馴染特有なのかも知れない。
それは寂しいけれど仕方のない事だ。
俺はずっと恋が好きだったけど、恋は違うから。
今までも、これからも…。
そんな事を考えていれば、恋がふいに顔を上げて俺を見る。
その目は少し苛立ちが見えた。
「そこで謝る所が本当嫌。何ですぐ謝るの?」
「ごめん」
俺は苦笑いしてまた謝った。
そんな俺に嫌気がさしたのか、恋は立ち上がり教室を出て行った。
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恋と三井は3年間同じクラスで、2人は波長が合ったのか自然と仲が良くなっていた。
初めは本当にただの友達同士だった。
でもいつからか、恋は三井が好きになっていたんだ。
三井なら仕方ないと思ったから、俺は恋の気持ちにはすぐに気付いたけど何も言わなかった。
多分それからずっと片想いなんだと思う。
三井が挫折して不良になってもそれは変わらなかったんだと思う。
いや、実際にはどうか分からないけど。
恋はかなり一途だし諦めが悪いからそう思うだけで。
恋はハキハキと言いたい事は結構言うけど、どこか臆病な所があるから、言えないのかな。
そんな事を言ったらまた嫌な顔されるかも知れないけど。
でもやっぱり気になるんだ。
「恋は告白しないの?」
たまたま帰り道の時間が被ったから、久しぶりに並んで帰っている今、俺は家の目前でそんな事を聞いた。
恋はこちらを見る事なく歩くけど、一緒に帰る事を拒みはしなかったから。
だから、会話がしたくて、こっちを向いて欲しくて、でもその事がずっと頭を占めているから思わず聞いてしまった。
恋はやっぱりこっちを見ずに答えた。
「しない。てか、木暮には関係ないじゃん」
「三井も恋ならまんざらでもないんじゃないか?」
「ない。三井の隣にいていいのは私じゃない」
「何だよ、それ」
「木暮にはわかんないよ」
恋は静かにそう言うと自宅の門を開けて中へ入って行った。
入る時に小さく「バイバイ」と聞こえて、俺は少しだけ嬉しくなってしまった。
***
ある日、俺は引退した部活に顔を出していた。
その休憩中、目の前で勢い良くスポーツドリンクを飲む三井に聞いてみた。
「三井は恋の事どう思ってる?」
「はぁ?何だよ、いきなり」
ゴフッと吹き出しそうになりながら三井は俺を見た。
凄く眉を寄せているから、何でそんな事お前が聞くんだよって思ってそうだ。
「仲良いからどうなのかなって」
「別に何とも思ってねぇよ。ダチだ、ダチ」
再びスポーツドリンクに口を付ける三井は、こちらを見ずにそう言った。
だから、俺はこう返すしかない。
「そうか」
そして、すぐに集合の号令がかかったから、俺達はコートへと集まった。
***
数日後の昼休み、珍しく恋に呼び出されて屋上へ来ていた。
急に降り出した雨の為、屋上には誰もいなくて、外に出る事も出来ず屋上前の踊り場で待つ事にする。
それから少し遅れて来た恋は微かに怒った顔をしていた。
そして、階段を登りながら話しかけてくる。
「ねぇ、木暮」
「ん?何だ?」
「三井に何か変な事聞いた?」
目の前で立ち止まる恋に少し動揺しながら俺は問い返した。
「どうして?」
「三井が少し変だから」
「そうか?」
「お節介な木暮の事だから聞いたよね、絶対」
俺には普段通りに見えたけど、やっぱり好きな人の些細な変化には気付くものなのかな。
恋は俺の性格をよく知っている。
だから、「絶対」なんて言ってくるんだろうな。
ついお節介な事をして、余計に恋を怒らせるって分かっているのに。
だから、俺は素直に謝るしか出来ない。
「うん。ごめん」
「あのさ、この際だから言っとくけど、私、三井にはフラれてるから」
「え?」
「だから、三井が私と付き合う事なんかないから」
そんな事実は知らなかったけど、そんな事よりも、真っ直ぐにそう言ってくる恋は今どんな気持ちなんだろう…。
どうして、こんな事を言わせてしまったんだろう。
「…ごめん」
「いい。それだけ」
恋はそれだけ言い残し階段を降りて行った。
俺は酷く後悔して、しばらく動けなかった。
けれど、別れる時「バイバイ」すら言ってくれなかったな、なんてぼんやりとそんな事が頭を過ってしまった。
どうして、俺はそんな独り善がりな事を考えてしまうんだろう。
***
数週間後、俺は恋を屋上へ呼び出した。
今日は良く晴れているけど、珍しく誰もいなかったその場所へ、恋は先に着いていた。
屋上のドアから手を離すと、俺は声をかけた。
「恋」
振り向いた恋の元へ駆け寄るけど、恋はやっぱりどこか気落ちしているのか元気がないように見える。
恋は俺が目の前で立ち止まると少しだけ視線を逸らした。
「何」
「いい加減諦めたら?」
「放っておいて」
恋は明らかに嫌そうな顔をしている。
俺自身これはお節介だと分かっている。
でも、ここ数週間、恋は三井に新しい女の子を紹介したり、けしかけたり、色々と空回りしていた。
終いには三井に呆れられて辛辣な言葉を向けられているのを目撃した。
恋はその時、あははと笑って謝っていたけど、内心凄く傷付いているはずだ。
一瞬だけ泣きそうな顔になったのを見てしまったから。
何で俺はそれに気付いてしまったんだろう。
気付かなければ良かったのに…。
「…放っておけるわけないだろ!」
俺は思わず強く言い放って恋の腕を掴んだ。
恋は驚いた顔をしてから、眉を寄せて俺の腕を振り払おうとする。
「ちょ、痛…」
「俺の気持ちも考えろよ!」
悲痛な声音だったのかもしれない。
恋が思わず息を呑んだのが分かったから。
でも、俺の言葉は止まらなかった。
「俺は昔からずっと恋が好きなんだよっ」
恋を真っ直ぐ見つめた俺に、恋は明らかに動揺した。
だから視線を逸らす。
それが酷く悲しいと思ってしまった。
「頼むからこっち向いてくれよ…」
「…ごめん」
俺の声に恋は静かにそう言った。
「私は、三井が好きなの」
視線を逸らしたまま言う恋の声はか細い。
別にそれが泣いてるからとは思わない。
そんな事で恋が泣く事はない。
…俺の方が泣きそうだ。
「うん。知ってるよ」
そう言って俺は静かに恋の腕を離した。
恋は解放されると駆け足で屋上を出て行った。
告白するつもりなんてなかった。
恋を困らせるだけだと分かっていたから。
でも、どうしても抑えきれなかった。
俺の中はぐちゃぐちゃなのに、空はどこまでも澄んでいる。
俺は、また恋と他愛もない話をする事が来るんだろうか…。
→アトガキ
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