恋する瞬間
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ジリジリと陽が照りつける夏休み後半。
恋が用具を手に体育館へ入ると越野達が集まって話しているのを目にする。
まだ皆は揃っていないが、何をそんなに話し込んでいるのだろうと、恋はその輪をジッと見つめた。
すると、越野が気付いたのか突然恋に話しかけてきた。
「なぁ、頭ナデナデされんのって嬉しいのか?」
唐突な質問に恋は理解が追いつかず言葉が出なかった。
そして、言葉足らずだった越野に代わり植草が説明してくれる。
どうやら、女子は男子に頭を撫でられると嬉しいらしいという話題が出た為に、その真偽が知りたくなったようだ。
恋はしばし考えると答えた。
「えー?私は思った事ないけど。てか、あんまされた事ないからわかんない」
恋の記憶の中にある異性に頭を撫でられた機会は極端に少ない。
絞り出すように記憶を辿るが、そもそも、そう何度も異性から頭を撫でられる理由がないのだ。
これが彼氏でもいれば違うのかも知れないが、男友達はいても未だかつて彼氏のいた事のない恋にはそんな機会も早々なかった。
異性とふざけ合う事はあっても頭を撫でられる状況は稀だ。
そして、記憶の中にある男友達に撫でられた事にドキリとした覚えもない。
恋の答えに落胆した越野に植草が言った。
「じゃあ試してみれば良くないか?」
「え?」
「面白そうだな。じゃあ俺からな」
越野はその言葉に反応し嬉々として恋の頭に手を伸ばす。
「えぇ!?ちょ…」
恋が止めるのも聞かず、越野は恋の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「どうだ!?」
「何か、ムカつく…」
「はぁ!?」
恋が髪を整えながら眉を寄せてそう言うと、越野は不満気に声を上げた。
そこへまぁまぁと相田が割って入る。
「じゃあ、次はわいがしますわ」
そしてスッと恋の頭を撫でた。
「どうです?」
「うーん…特には…」
「じゃあ次は…よし、福田!いけ!」
越野は近場にいた福田に声をかけた。
福田は神妙な面持ちでしばらく迷った末、軽く恋の頭を撫でた。
「何か顔赤くね?」
越野は恋の顔色の変化にニヤニヤとしていた。
恋はバツが悪そうに言い返す。
「いや、フクちゃんのが赤いからね!?それ移っただけだし!」
福田は恋の頭を撫でたはいいが、どうにも照れてしまい頬を染めていた。
そんな変化を目の当たりにして、意識していない相手とはいえ、恋まで照れてしまったのだ。
しかし、越野は茶化すように2人を指差す。
「嘘つけー。赤いじゃん、2人して」
「ちょ、フクちゃん、照れないでよ!移る!」
「うるさい」
バシッと福田を軽く叩く恋に、福田はますます赤く染めた顔で言い返していた。
徐々に周りが茶化す雰囲気になりそうだった時、体育館へ入って来たばかりの仙道が声をかけた。
「あれ?何してるんだ?」
てくてくとゆったり歩く仙道に皆は一様に顔を向ける。
「あ、仙道」
「よし、仙道もやってみろよ」
「え?何?」
越野は、何も分かっていない仙道の背を押し恋の前に立たせた。
恋は半ば諦めているのか小さく溜息を吐いている。
越野は間に立ち、さぁどうぞと言わんばかりに2人を交互に見た。
「恋の頭撫でんだよ」
「女子は男子に撫でられて嬉しいのかって試してるんだ」
「へー?」
「誰がやっても一緒だってば」
仙道は楽しそうだと思ったのか笑みを浮かべ、恋の頭上に腕を伸ばした。
恋はただ呆れた表情を向けている。
誰がやっても胸が高鳴る事などないので、早く終わらせてしまいたいとさえ思っていた。
そして、静かに仙道の掌が恋の頭に乗り優しく撫でられた。
「どう?」
「…うん…普通」
「えー、仙道でもかよー。やっぱ誰でもなるわけじゃねぇんだなー」
「よし、バカやってないでそろそろ始めるか」
「うぃー」
その言葉をきっかけに部員達はコートへ集まって行く。
仙道は、すぐに輪へは向かわず恋をチラリと見ていた。
「恋」
「んー?」
「本当に何も思わなかった?」
ひょいと顔を覗かれ恋は少し焦ったように言葉を返す。
「え!?な、何で!?」
「何となく?」
「ふ、普通だったよ!」
「そう」
恋がそう強く言うと、仙道は恋の頭をポンポンと軽く撫でるように叩いた。
瞬間、恋は息を飲み仙道から顔を逸らした。
仙道はニコリと笑い恋の顔をまたも覗き込む。
「顔赤くないか?」
「ないよ!」
「ふーん」
スッと元の距離に戻った仙道に恋はおずおずと視線を送った。
何故か仙道はここから動かないのだ。
「何?」
「ドキッとしてくれてたら嬉しいんだけどな」
「え!?」
ボソリと言ったその言葉に恋は思わず聞き返す。
仙道は微かに頬を染めてはにかんだ笑みを向けた。
「おい、仙道!始めんぞ!」
そこへ越野が声をかけて来た。
主将は仙道だが、越野は皆をまとめるのを率先してやっている事が多く、仙道は苦笑いを浮かべた。
「はいはい」
そう言って歩き出す際、仙道は恋の頭をまた撫でるように軽く叩いた。
恋はその背を見つめたが、すぐに俯いてしまう。
恋は早鐘を打ち続けている胸をギュッと掴んだ。
「普通」と言ったのは大嘘で、仙道に触れられた瞬間から鼓動の速さが増していたのだ。
そして、はにかんだ仙道の笑みに恋の心臓はこれまで以上に強く打ち付け始めていた。
恋がチラリと輪の中を盗み見ると、タイミングよく仙道と視線が合う。
仙道は優しく笑っていたが、恋は即座に顔を伏せた。
それは、今まで何とも思ってもいなかった仙道を意識し始めた瞬間だった。
→アトガキ
恋が用具を手に体育館へ入ると越野達が集まって話しているのを目にする。
まだ皆は揃っていないが、何をそんなに話し込んでいるのだろうと、恋はその輪をジッと見つめた。
すると、越野が気付いたのか突然恋に話しかけてきた。
「なぁ、頭ナデナデされんのって嬉しいのか?」
唐突な質問に恋は理解が追いつかず言葉が出なかった。
そして、言葉足らずだった越野に代わり植草が説明してくれる。
どうやら、女子は男子に頭を撫でられると嬉しいらしいという話題が出た為に、その真偽が知りたくなったようだ。
恋はしばし考えると答えた。
「えー?私は思った事ないけど。てか、あんまされた事ないからわかんない」
恋の記憶の中にある異性に頭を撫でられた機会は極端に少ない。
絞り出すように記憶を辿るが、そもそも、そう何度も異性から頭を撫でられる理由がないのだ。
これが彼氏でもいれば違うのかも知れないが、男友達はいても未だかつて彼氏のいた事のない恋にはそんな機会も早々なかった。
異性とふざけ合う事はあっても頭を撫でられる状況は稀だ。
そして、記憶の中にある男友達に撫でられた事にドキリとした覚えもない。
恋の答えに落胆した越野に植草が言った。
「じゃあ試してみれば良くないか?」
「え?」
「面白そうだな。じゃあ俺からな」
越野はその言葉に反応し嬉々として恋の頭に手を伸ばす。
「えぇ!?ちょ…」
恋が止めるのも聞かず、越野は恋の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「どうだ!?」
「何か、ムカつく…」
「はぁ!?」
恋が髪を整えながら眉を寄せてそう言うと、越野は不満気に声を上げた。
そこへまぁまぁと相田が割って入る。
「じゃあ、次はわいがしますわ」
そしてスッと恋の頭を撫でた。
「どうです?」
「うーん…特には…」
「じゃあ次は…よし、福田!いけ!」
越野は近場にいた福田に声をかけた。
福田は神妙な面持ちでしばらく迷った末、軽く恋の頭を撫でた。
「何か顔赤くね?」
越野は恋の顔色の変化にニヤニヤとしていた。
恋はバツが悪そうに言い返す。
「いや、フクちゃんのが赤いからね!?それ移っただけだし!」
福田は恋の頭を撫でたはいいが、どうにも照れてしまい頬を染めていた。
そんな変化を目の当たりにして、意識していない相手とはいえ、恋まで照れてしまったのだ。
しかし、越野は茶化すように2人を指差す。
「嘘つけー。赤いじゃん、2人して」
「ちょ、フクちゃん、照れないでよ!移る!」
「うるさい」
バシッと福田を軽く叩く恋に、福田はますます赤く染めた顔で言い返していた。
徐々に周りが茶化す雰囲気になりそうだった時、体育館へ入って来たばかりの仙道が声をかけた。
「あれ?何してるんだ?」
てくてくとゆったり歩く仙道に皆は一様に顔を向ける。
「あ、仙道」
「よし、仙道もやってみろよ」
「え?何?」
越野は、何も分かっていない仙道の背を押し恋の前に立たせた。
恋は半ば諦めているのか小さく溜息を吐いている。
越野は間に立ち、さぁどうぞと言わんばかりに2人を交互に見た。
「恋の頭撫でんだよ」
「女子は男子に撫でられて嬉しいのかって試してるんだ」
「へー?」
「誰がやっても一緒だってば」
仙道は楽しそうだと思ったのか笑みを浮かべ、恋の頭上に腕を伸ばした。
恋はただ呆れた表情を向けている。
誰がやっても胸が高鳴る事などないので、早く終わらせてしまいたいとさえ思っていた。
そして、静かに仙道の掌が恋の頭に乗り優しく撫でられた。
「どう?」
「…うん…普通」
「えー、仙道でもかよー。やっぱ誰でもなるわけじゃねぇんだなー」
「よし、バカやってないでそろそろ始めるか」
「うぃー」
その言葉をきっかけに部員達はコートへ集まって行く。
仙道は、すぐに輪へは向かわず恋をチラリと見ていた。
「恋」
「んー?」
「本当に何も思わなかった?」
ひょいと顔を覗かれ恋は少し焦ったように言葉を返す。
「え!?な、何で!?」
「何となく?」
「ふ、普通だったよ!」
「そう」
恋がそう強く言うと、仙道は恋の頭をポンポンと軽く撫でるように叩いた。
瞬間、恋は息を飲み仙道から顔を逸らした。
仙道はニコリと笑い恋の顔をまたも覗き込む。
「顔赤くないか?」
「ないよ!」
「ふーん」
スッと元の距離に戻った仙道に恋はおずおずと視線を送った。
何故か仙道はここから動かないのだ。
「何?」
「ドキッとしてくれてたら嬉しいんだけどな」
「え!?」
ボソリと言ったその言葉に恋は思わず聞き返す。
仙道は微かに頬を染めてはにかんだ笑みを向けた。
「おい、仙道!始めんぞ!」
そこへ越野が声をかけて来た。
主将は仙道だが、越野は皆をまとめるのを率先してやっている事が多く、仙道は苦笑いを浮かべた。
「はいはい」
そう言って歩き出す際、仙道は恋の頭をまた撫でるように軽く叩いた。
恋はその背を見つめたが、すぐに俯いてしまう。
恋は早鐘を打ち続けている胸をギュッと掴んだ。
「普通」と言ったのは大嘘で、仙道に触れられた瞬間から鼓動の速さが増していたのだ。
そして、はにかんだ仙道の笑みに恋の心臓はこれまで以上に強く打ち付け始めていた。
恋がチラリと輪の中を盗み見ると、タイミングよく仙道と視線が合う。
仙道は優しく笑っていたが、恋は即座に顔を伏せた。
それは、今まで何とも思ってもいなかった仙道を意識し始めた瞬間だった。
→アトガキ
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