戦利品
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デフォ名は如月 恋(キサラギ レン)となります。
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部活も終了したので帰ろうかと恋が考えていると、ふいに声をかけられた。
それは恋が想いを寄せ続ける相手からだった。
「おぉい、恋!帰りに皆でゲーセンに行くんだが行くか?」
声を掛けて来たのは桜木花道。
バスケ部マネージャーの恋は、桜木の幼馴染みでもある。
桜木は恋の気持ちなど知りはしないが、今の恋は内心かなりの興奮状態だった。
こうしてたまに恋を桜木の輪の中に入れてくれるのを、恋自身嬉しく感じていたからだ。
「行く行く~」
恋は満面の笑みを浮かべ返事をした。
桜木も笑顔を返して来たので、やはり笑顔を向けてしまう。
これが2人でのデートなら尚更嬉しいと内心は思ってしまうのだが、今のこの状況でも十分な恋にとっては笑顔を返す他なかった。
駅前のゲームセンターに着くと桜木達は一直線に格闘ゲームコーナーへと向かった。
恋は呆れた表情を向ける。
自身だけならまだしも、桜木が好意を寄せている晴子もいる。
その相手を放ったらかしにするのは如何なものかと、そう思わずにはいられなかった。
「男ってこういうの好きよね」
彩子も嘆息気味に言っている。
桜木軍団、宮城、三井で格闘ゲームをしているのだ。
木暮と赤木はそれを傍観しているだけだった。
「くそ~取れない…」
しばらくは女の子だけで店内を回っていたが、それぞれが散り散りになってしまったので、恋は1人UFOキャッチャーをしていた。
何度やっても取れないので、恋の怒りはフツフツと蓄積される。
「何だ、それ欲しいのかよ?」
声を掛けて来たのは三井だった。
恋の悪戦苦闘ぶりを見ていた為、笑いながら言って来た三井を見て恋は少し気恥ずかしく思った。
「何回やっても取れないんですよ…」
そう諦め半分に言うと、ものの数秒で三井がぬいぐるみを取ってしまう。
それを恋に渡し、先刻のゲームコーナーに戻って行った。
そのスマートな仕草に恋は胸を打たれる。
それに引き替え桜木は格闘ゲームに夢中だった。
「ぬぉぉぉ、リョーちん!今のはいかさまだっ!!」
桜木は叫びながらゲーム機を揺すっていた。
恋は苦笑いを浮かべその様子を楽しんだ。
しばらくすると誰からともなくプリクラを撮ろうという事になり、狭い個室に入る。
ふと、晴子の手元に目が行った。
その手にはUFOキャッチャーの景品が握られている。
嫌な予感のした恋は撮影が終わると晴子に聞いた。
「どしたの、それ?」
「えっ?あ、これは桜木くんが取ってくれたのよ」
その言葉に恋の脳内に、ピシッと衝撃が走る。
晴子の欲しい物には気付くが、自身が欲しがっていた物には気付かなかった桜木に微かに腹を立てた。
プリクラも撮り終わってそれぞれの帰路に別れた後、駅を出た恋は家の近い桜木と2人で歩いていた。
チラリと桜木の顔を見て恋の額に青筋が浮かぶ。
桜木はプリクラに写っている晴子を見てはニヤニヤニヤニヤ…と、気持ち悪い程にずっと笑っていた。
晴子を好きな事は仕方がないと思いつつも、自身の前でくらい気を使って欲しいものだと思った。
そんな恋の気持ちに気付いていない桜木だから何も言えないのだが。
「随分嬉しそうだね、花道」
「当たり前だ、バカ者!ハルコさんの隣で写った戦利品だぞ!」
戦利品と言う言葉に若干の違和感を覚えるが、桜木の学力を考えれば致し方ないのかもしれない。
すると桜木は思い出したようにポケットをゴソゴソと探る。
「そうだ恋、これをやろう」
言いながら桜木が出したのは手の平サイズの小さなぬいぐるみだった。
頭部にボールチェーンがあるので、鞄などに付ける事が出来るようだ。
「何これ?」
「ふははは、さっきハルコさんのを取ってた時についでに取れたのだ。流石天才!だがハルコさんにはこんな小さいのは渡せんからな!余ったからくれてやる」
桜木にとっては何ら意味のない事。
だが恋にとっては至極嬉しい事だった。
恋の瞳から思わず涙が溢れる。
「恋?…なななな、何泣いてんだ!何だどっか痛いのか?腹か?頭か?脳みそか?」
恋の顔を見て桜木はアタフタしている。
「脳みそが痛いってどんなよ」
思わず恋は吹き出した。
その様子に桜木は安心したような顔を向けている。
「何だお前は泣いたり笑ったり…変な物でも食ったのか?」
「食べてません。何でもないよ」
恋が笑顔を向ければ桜木は、少し納得のいかない顔を向けたがすぐに笑い返した。
恋は桜木の手を掴んで自分の指と絡める。
「なっ何をするっ」
「何よ、照れてるの?昔はよく繋いでたじゃん?」
小さい頃は気軽に繋いでいたが、高校生にもなると結構勇気のいる行為。
恋はかなり必死に平常ぶってはいるが、内心はドギマギしていた。
「照れてなどいないわっ!だいたいそんなガキの頃の事など覚えてられるかっ」
「私は覚えてるよ?ずっとず~っと覚えてるもんね。あぁでも花道はバカだから物忘れ激しいのかな…バカだもんねぇ」
「何ぃ!俺はバカではない!天才だぁぁ」
「はいはい天才花道くん。またバスケの試合で遅刻するようなバカはしないようにね」
そう、先日行われた対武里戦、桜木は遅刻をしていた。
理由を聞けば、意外に努力家の桜木だからこそではあったのだが。
「うぬぬぬぬ…あれは天才の秘密特訓がだな…」
桜木はしどろもどろになりながら説明をしようとする。
恋は笑みを隠しつつ言い返した。
「秘密でも何でも遅刻したら意味ないよ、おバカ大将」
「バカではないと言ってるだろうが!」
「わかったわかったバカ男爵」
「ぬぬぬぬぬ、恋!貴様言い改めろ!俺様は天才バスケットマン桜木だぞ!」
「はいはい、天才バスケットバカ殿下」
「ぬぉぉぉ!!」
桜木が憤慨して追いかけて来たので恋は逃げたが、すぐに追いつかれてしまう。
桜木は女には手を上げないので特に問題はなかった。
お互いに笑いあって終わる。
恋はこの瞬間がたまらなく好きだった。
自身が桜木を独り占めしている気分になれるからだ。
恋がまた桜木の手を握ってみたが、今度は桜木も何も言わない。
少し顔が赤いのでやはり照れてるいるのかも知れないと思ったが真相は分からない。
だが、そうだととても嬉しいと思う恋だった。
→アトガキ