第一章
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「恋は帰り、どっちだ?」
片付けを終えた部員達は、揃って学校を出て来た。
校門前で木暮が恋に聞くと、恋は帰り道を説明した。
「何だ、俺と一緒か」
恋の説明を聞いていた三井は言った。
木暮は頷き、恋の背を軽く押す。
「じゃあ、三井、送ってやってくれないか」
その言葉を合図に、各々帰路へと歩き始めた。
そして、恋と三井も歩き出した。
「でも、ほんとすげぇな、お前」
唐突に、三井がニッと笑って言った為に、恋は謙遜した様子で言葉を返した。
「そんな事ないですよ」
「お前のプレイは、見ていて気持ち良かったぜ」
「…私の場合、あのプレイじゃないとダメなので…」
恋の言葉に、三井は首をかしげた。
恋は曇った表情を浮かべている。
その時、道の脇の自動販売機で小銭を派手に落とした人物がいた。
恋は、目の前に転がって来たそれを拾い上げその人物に渡す。
その人物は、恋に礼を言うと去って行った。
「お前、左利きか?」
三井は左肩に鞄をかけ、その左手で小銭を拾った恋に疑問を持った。
普通は、鞄をかけている方の手で落ちている物は拾わないだろう。
「…両利きですよ」
「元は左か?」
「…いえ…右ですよ。何でですか?」
「なら、空いてる右手で小銭拾えば良かったじゃねぇか。鞄落ちて来て邪魔じゃねぇ?」
「…えーっとですね」
三井の疑問に、恋は咄嗟に答えられなかった。
どう答えようか考えているうちに、恋は自宅近くに着いてしまう。
「あの、私の家、この先なので…」
「近ぇなぁ…。俺ん家、こっちちょっと行ったとこなんだぜ。じゃあ気つけて帰れよ」
三井は、先刻の質問に特別答えを求めなかったので、2人は挨拶を交わし別れた。
恋は三井の背を見送ってから、程なくしてついた家の鍵を開け玄関へ入る。
恋は、玄関のドアにもたれかかると、誰に言うでもなく呟いた。
「…痛いなぁ…」
その目には、うっすら涙が浮かんでいた。
翌日、移動教室の為恋が廊下を歩いていると、曲がり角で突然、誰かにぶつかった。
手にしていた教科書類は落ち、拾おうとすると影が落ちたので見上げると、そこには三井がいた。
「悪ぃ」
三井はそう言って教科書を拾い差し出すと、恋は左手でそれを受け取る。
受け取る際も受け取ってからも、恋は右手を一切動かそうとしない。
三井は、そんな恋を怪訝そうに見た。
恋は、三井と目が合いぎこちなく笑う。
「お前、右手…」
そう言って三井は恋の右手を取る。
すると恋の表情が苦痛に歪んだ。
「お前、どっか痛めて…」
「大丈夫です」
強く言い放つ恋に、無言で手を引き三井は歩き出した。
「ちょ、何です…」
「うるせぇ」
三井は低く唸る様に声を出し歩く。
恋が三井の様子に歯向かえず連れられ、向かった先はバスケ部の部室だった。
2人が部室に着いたと同時に、チャイムが鳴る。
「授業あるんですけど」
「いいから、入れ」
三井は、恋を無理矢理部室に入れてドアを閉めた。
そして、救急箱を取り出し恋の右手を取る。
「どこ痛めたんだ?」
恋が無言でいると、三井は恋の手首を動かす。
反応のない恋に怪訝そうな顔をした。
指も触ってみるが反応がない。
「お前、我慢してんじゃねぇだろーな…。ケガは怖ぇんだぞ。バスケやってる人間なら…」
「今はやってません」
恋はキッパリと言い放った。
三井が恋を見ると、何かを決意しているようにも見える表情をしている。
沈黙が、ただただ流れた。
「…ほんと、大丈夫ですよ。…ダメなのココですから」
恋は観念したように、溜め息と共に自分の右肩を差した。
「前、試合中にケガして、それが痛んで腕が上がらないだけです」
「だけって…」
「大丈夫ですよ、ホント」
「病院は…」
「この状態で行ったら、怒られるじゃないですか」
「は?」
「はぁ…。ここまで言っちゃったから言いますけど、私の肩ダメなんですよ。試合中、相手とぶつかってケガして、当たり所悪かったからそれ以降、後遺症って言うか…激しく動かし続けると上がらなくなるんです」
恋は、諦めた表情を浮かべ淡々と続けた。
「ムリさせすぎちゃったんですよね。リハビリでムリし過ぎて、逆に余計ダメになっちゃったし…。でも、やっぱり当時はどうしてもバスケしたかったんですよね…。今思えばバカですけど」
「…バカじゃねぇだろ…。諦め切れねぇもんは、諦め切れねぇんだ」
三井は苦い表情を浮かべている。
恋は、三井の膝にゆっくりと視線を送った。
「…三井さんも、左膝ケガしてましたもんね」
「あぁ…」
「諦めない精神は良い事だとは思いますけど、諦めるしかない時もあるんです。ケガした時に医者に言われました。『リハビリをしても、もう前のようにはいかない。バスケなんて以ての外だ。日常生活が限界だろう。もし無理をすれば日常生活にも害が及ぶ』って。それでも私は信じてたんです、私の肩を。でもやっぱり最終的にはダメで…バスケが嫌いになりました」
恋の声は落ち着き払っており、三井は黙って聞いていた。
「でも、昨日桜木くんを見てたらどうしてもやりたくなって…。結果はこの通り動かないですけど、楽しかったんです…。やっぱり、バスケが嫌いになれないんですよね」
恋は、力が抜けた様に苦笑を浮かべながら言った。
ずっと遠ざかっていたバスケの感覚が、昨日まざまざと蘇った。
それは認めざるを得ない程に、ただ純粋に楽しかったのだ。
三井は優しく微笑み、恋の頭をふいに撫でた。
「あぁ、楽しいな…」
「関わりたくないけど、関わりたい…。複雑な気分なんです、今」
「素直になればいいんじゃねぇのか?ムリに諦めたって良い事ねぇぜ」
「…そうですね」
恋は苦笑を浮かべたまま三井を見た。
同じ思いを三井もした事があるのだろうか。
恋自身、葛藤しつつも答えはもう出ているのかも知れない。
ふと、三井は思い出したのか、突然話題を変えた。
「…肩いいのか?」
「湿布は貼ってるので平気です。…貼り替えてくれますか?」
その言葉に三井はみるみる顔を赤くした。
その様子を見て、恋はニマニマと意地の悪い表情をする。
三井は、そんな恋に恥ずかしさと怒りが込み上げる。
「てめぇ…」
「フフッ…三井先輩ムッツリですね」
「なっ!?」
そこで、授業終了のチャイムが鳴り響いた。
恋は無言で立ち上がり部室を出ようとしたが、くるりと向きを変え三井を見て言った。
「ありがとうございました。何かスッキリしました。話せて良かったです。あと、この事は誰にも言わないで下さいね?特に…木暮先輩には心配かけたくないので。2人だけの秘密ですよ?約束ですからね、先輩。言ったらムッツリって言いふらしますから!では」
一方的に言うと、恋はニコリと笑って去って行った。
部室のドアはパタリと音を立てて閉まり、三井は1人取り残される。
恋は、閉まったドアの前で俯いた。
その口元は笑みが浮かび、顔を上げると教室へ向かった。
数日後、三井が体育館に来てみれば見知った顔、しかし、昨日まではなかった顔がそこにはあった。
その人物は、三井を見つけて挨拶をしに来る。
「あ、三井先輩、おはよーございます」
「如月…何でお前が…」
「私、男バスのマネージャーになったんですよ」
「はぁ?何で…」
「だって、うっかり話されたら困るから、自分で見張ろうかと思いまして」
三井は、ふいに部室でのやりとりを思い出して顔を赤らめた。
「んな事しねぇよっ」
「え~…。ムッツ…むぐぐ」
恋の口を三井は手で押さえ言葉を遮った。
三井は恋を睨みながら小声で言う。
「てめぇなぁ…」
恋は三井の手から逃れると小声で言い返した。
「だって、先輩ムッツリだし…」
「違ぇっ!」
「えー、だって私、先輩の事よく知らないから信用出来るかどうか…。あ、もちろんムッツリ以外知らないって事ですよ」
「もちろんって何だ…」
「あれー?早速、新人にアタックかけてんすか?」
2人の様子に宮城が声を掛けて来た。
そこへ桜木もやって来る。
「何だ、ミッチーはこういうのがタイプなのかね?…確かに顔はまぁまぁだが、やはりハルコさんの方が断然可愛いな。ぬはははは」
「何、アヤちゃんの方が可愛いぞ」
そうして桜木と宮城は何故か言い争いを始める。
恋が呆気に取られていると、2人の頭に勢い良くスパーンと何かが当たり音が鳴った。
見ると彩子がハリセンを握って立っていた。
「あんた達、何やってんの!さっさと準備しなさい!」
桜木と宮城は頭を押えながら小さく返事をする。
その横で恋が口を開いた。
「わぁ、カッコいい~」
「恋、あんたにもこれからバリバリ働いて貰うからね!」
「はい、それはいいんですけど…」
「けど、何よ?」
「…それどうやって作るんですか?」
恋の興味はハリセンにいっているようで、目をキラキラと輝かせていた。
何気なく、彩子が如月にそれを渡す。
すると、如月はハリセンを手に持ちブンブンと素振りを始めた。
その仕草を見て危機感が募り、彩子は静かにそれを返却させた。
と、そこへ赤木が体育館に入って来た。
それから、程なくして練習が始まる。
「三井先輩、頑張って下さいね」
恋は、ふいにコートへ向かおうとする三井に声を掛けた。
三井は、一瞬きょとんとした顔をしたがすぐに笑顔を向けた。
「おう」
三井はそう言って駆け足でコートに入って行った。
この時から恋の本当の意味での新しい生活が始まった。
まだ気付いていない、本人達の淡い恋心と共に…。
→第二章
片付けを終えた部員達は、揃って学校を出て来た。
校門前で木暮が恋に聞くと、恋は帰り道を説明した。
「何だ、俺と一緒か」
恋の説明を聞いていた三井は言った。
木暮は頷き、恋の背を軽く押す。
「じゃあ、三井、送ってやってくれないか」
その言葉を合図に、各々帰路へと歩き始めた。
そして、恋と三井も歩き出した。
「でも、ほんとすげぇな、お前」
唐突に、三井がニッと笑って言った為に、恋は謙遜した様子で言葉を返した。
「そんな事ないですよ」
「お前のプレイは、見ていて気持ち良かったぜ」
「…私の場合、あのプレイじゃないとダメなので…」
恋の言葉に、三井は首をかしげた。
恋は曇った表情を浮かべている。
その時、道の脇の自動販売機で小銭を派手に落とした人物がいた。
恋は、目の前に転がって来たそれを拾い上げその人物に渡す。
その人物は、恋に礼を言うと去って行った。
「お前、左利きか?」
三井は左肩に鞄をかけ、その左手で小銭を拾った恋に疑問を持った。
普通は、鞄をかけている方の手で落ちている物は拾わないだろう。
「…両利きですよ」
「元は左か?」
「…いえ…右ですよ。何でですか?」
「なら、空いてる右手で小銭拾えば良かったじゃねぇか。鞄落ちて来て邪魔じゃねぇ?」
「…えーっとですね」
三井の疑問に、恋は咄嗟に答えられなかった。
どう答えようか考えているうちに、恋は自宅近くに着いてしまう。
「あの、私の家、この先なので…」
「近ぇなぁ…。俺ん家、こっちちょっと行ったとこなんだぜ。じゃあ気つけて帰れよ」
三井は、先刻の質問に特別答えを求めなかったので、2人は挨拶を交わし別れた。
恋は三井の背を見送ってから、程なくしてついた家の鍵を開け玄関へ入る。
恋は、玄関のドアにもたれかかると、誰に言うでもなく呟いた。
「…痛いなぁ…」
その目には、うっすら涙が浮かんでいた。
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翌日、移動教室の為恋が廊下を歩いていると、曲がり角で突然、誰かにぶつかった。
手にしていた教科書類は落ち、拾おうとすると影が落ちたので見上げると、そこには三井がいた。
「悪ぃ」
三井はそう言って教科書を拾い差し出すと、恋は左手でそれを受け取る。
受け取る際も受け取ってからも、恋は右手を一切動かそうとしない。
三井は、そんな恋を怪訝そうに見た。
恋は、三井と目が合いぎこちなく笑う。
「お前、右手…」
そう言って三井は恋の右手を取る。
すると恋の表情が苦痛に歪んだ。
「お前、どっか痛めて…」
「大丈夫です」
強く言い放つ恋に、無言で手を引き三井は歩き出した。
「ちょ、何です…」
「うるせぇ」
三井は低く唸る様に声を出し歩く。
恋が三井の様子に歯向かえず連れられ、向かった先はバスケ部の部室だった。
2人が部室に着いたと同時に、チャイムが鳴る。
「授業あるんですけど」
「いいから、入れ」
三井は、恋を無理矢理部室に入れてドアを閉めた。
そして、救急箱を取り出し恋の右手を取る。
「どこ痛めたんだ?」
恋が無言でいると、三井は恋の手首を動かす。
反応のない恋に怪訝そうな顔をした。
指も触ってみるが反応がない。
「お前、我慢してんじゃねぇだろーな…。ケガは怖ぇんだぞ。バスケやってる人間なら…」
「今はやってません」
恋はキッパリと言い放った。
三井が恋を見ると、何かを決意しているようにも見える表情をしている。
沈黙が、ただただ流れた。
「…ほんと、大丈夫ですよ。…ダメなのココですから」
恋は観念したように、溜め息と共に自分の右肩を差した。
「前、試合中にケガして、それが痛んで腕が上がらないだけです」
「だけって…」
「大丈夫ですよ、ホント」
「病院は…」
「この状態で行ったら、怒られるじゃないですか」
「は?」
「はぁ…。ここまで言っちゃったから言いますけど、私の肩ダメなんですよ。試合中、相手とぶつかってケガして、当たり所悪かったからそれ以降、後遺症って言うか…激しく動かし続けると上がらなくなるんです」
恋は、諦めた表情を浮かべ淡々と続けた。
「ムリさせすぎちゃったんですよね。リハビリでムリし過ぎて、逆に余計ダメになっちゃったし…。でも、やっぱり当時はどうしてもバスケしたかったんですよね…。今思えばバカですけど」
「…バカじゃねぇだろ…。諦め切れねぇもんは、諦め切れねぇんだ」
三井は苦い表情を浮かべている。
恋は、三井の膝にゆっくりと視線を送った。
「…三井さんも、左膝ケガしてましたもんね」
「あぁ…」
「諦めない精神は良い事だとは思いますけど、諦めるしかない時もあるんです。ケガした時に医者に言われました。『リハビリをしても、もう前のようにはいかない。バスケなんて以ての外だ。日常生活が限界だろう。もし無理をすれば日常生活にも害が及ぶ』って。それでも私は信じてたんです、私の肩を。でもやっぱり最終的にはダメで…バスケが嫌いになりました」
恋の声は落ち着き払っており、三井は黙って聞いていた。
「でも、昨日桜木くんを見てたらどうしてもやりたくなって…。結果はこの通り動かないですけど、楽しかったんです…。やっぱり、バスケが嫌いになれないんですよね」
恋は、力が抜けた様に苦笑を浮かべながら言った。
ずっと遠ざかっていたバスケの感覚が、昨日まざまざと蘇った。
それは認めざるを得ない程に、ただ純粋に楽しかったのだ。
三井は優しく微笑み、恋の頭をふいに撫でた。
「あぁ、楽しいな…」
「関わりたくないけど、関わりたい…。複雑な気分なんです、今」
「素直になればいいんじゃねぇのか?ムリに諦めたって良い事ねぇぜ」
「…そうですね」
恋は苦笑を浮かべたまま三井を見た。
同じ思いを三井もした事があるのだろうか。
恋自身、葛藤しつつも答えはもう出ているのかも知れない。
ふと、三井は思い出したのか、突然話題を変えた。
「…肩いいのか?」
「湿布は貼ってるので平気です。…貼り替えてくれますか?」
その言葉に三井はみるみる顔を赤くした。
その様子を見て、恋はニマニマと意地の悪い表情をする。
三井は、そんな恋に恥ずかしさと怒りが込み上げる。
「てめぇ…」
「フフッ…三井先輩ムッツリですね」
「なっ!?」
そこで、授業終了のチャイムが鳴り響いた。
恋は無言で立ち上がり部室を出ようとしたが、くるりと向きを変え三井を見て言った。
「ありがとうございました。何かスッキリしました。話せて良かったです。あと、この事は誰にも言わないで下さいね?特に…木暮先輩には心配かけたくないので。2人だけの秘密ですよ?約束ですからね、先輩。言ったらムッツリって言いふらしますから!では」
一方的に言うと、恋はニコリと笑って去って行った。
部室のドアはパタリと音を立てて閉まり、三井は1人取り残される。
恋は、閉まったドアの前で俯いた。
その口元は笑みが浮かび、顔を上げると教室へ向かった。
***
数日後、三井が体育館に来てみれば見知った顔、しかし、昨日まではなかった顔がそこにはあった。
その人物は、三井を見つけて挨拶をしに来る。
「あ、三井先輩、おはよーございます」
「如月…何でお前が…」
「私、男バスのマネージャーになったんですよ」
「はぁ?何で…」
「だって、うっかり話されたら困るから、自分で見張ろうかと思いまして」
三井は、ふいに部室でのやりとりを思い出して顔を赤らめた。
「んな事しねぇよっ」
「え~…。ムッツ…むぐぐ」
恋の口を三井は手で押さえ言葉を遮った。
三井は恋を睨みながら小声で言う。
「てめぇなぁ…」
恋は三井の手から逃れると小声で言い返した。
「だって、先輩ムッツリだし…」
「違ぇっ!」
「えー、だって私、先輩の事よく知らないから信用出来るかどうか…。あ、もちろんムッツリ以外知らないって事ですよ」
「もちろんって何だ…」
「あれー?早速、新人にアタックかけてんすか?」
2人の様子に宮城が声を掛けて来た。
そこへ桜木もやって来る。
「何だ、ミッチーはこういうのがタイプなのかね?…確かに顔はまぁまぁだが、やはりハルコさんの方が断然可愛いな。ぬはははは」
「何、アヤちゃんの方が可愛いぞ」
そうして桜木と宮城は何故か言い争いを始める。
恋が呆気に取られていると、2人の頭に勢い良くスパーンと何かが当たり音が鳴った。
見ると彩子がハリセンを握って立っていた。
「あんた達、何やってんの!さっさと準備しなさい!」
桜木と宮城は頭を押えながら小さく返事をする。
その横で恋が口を開いた。
「わぁ、カッコいい~」
「恋、あんたにもこれからバリバリ働いて貰うからね!」
「はい、それはいいんですけど…」
「けど、何よ?」
「…それどうやって作るんですか?」
恋の興味はハリセンにいっているようで、目をキラキラと輝かせていた。
何気なく、彩子が如月にそれを渡す。
すると、如月はハリセンを手に持ちブンブンと素振りを始めた。
その仕草を見て危機感が募り、彩子は静かにそれを返却させた。
と、そこへ赤木が体育館に入って来た。
それから、程なくして練習が始まる。
「三井先輩、頑張って下さいね」
恋は、ふいにコートへ向かおうとする三井に声を掛けた。
三井は、一瞬きょとんとした顔をしたがすぐに笑顔を向けた。
「おう」
三井はそう言って駆け足でコートに入って行った。
この時から恋の本当の意味での新しい生活が始まった。
まだ気付いていない、本人達の淡い恋心と共に…。
→第二章