第十四章
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そして、気づけば太陽は傾き、地平線へと真っ赤な色味が沈もうとしていた。
「あれ?」
恋は片付けをしながら、ふと遠目に見覚えのある姿を見つけた。
恋はそこへ向かう為、足場の悪い岩場を歩く。
そして、近寄ってハッキリと見えるその髪型に恋の考えは確信に変わる。
「仙道さ…」
と、恋が声を出かけようとした時、急な高波に足を取られその勢いで海へ落下した。
突然の事にパニックになり、恋は海の中で必死にもがく。
呼吸は乱れ息が出来ず、代わりに海水が口内へ侵入する。
恋は突然の事に冷静になれず、足がつかない海へ恐怖を感じる。
ガボガボと海面を出たり入ったりしていると急に体を捕まれた。
まだパニックが起きている恋は必死に両手足を動かす。
「っ…大丈夫だから暴れんな」
ギュッと力強い腕が恋を掴んでいた。
恋は、その声に反応してしまい見返すと三井が間近にいた。
恋は一気に冷静さを取り戻し、今度は違う意味でパニックになりそうになる。
「じっとしてろ。何も…すんな」
そう言い、三井は恋を引きながらゆっくりと浜辺に向けて泳いで行く。
と、三井が何かに気付き岩場を見上げた。
そしておもむろに岩場に近付き恋に声をかける。
「手…上に…伸ばせ」
恋が言われるままに腕を頭上に伸ばすと、グイッと力強い何かに引き上げられた。
恋はそのまま下から三井に抱え上げられる様な形で岩場に乗り上げた。
途端にゲホゲホと咳き込んだ恋が引っ張られた腕の先を見ると、そこには心配そうに見つめる仙道がいた。
「大丈夫?」
気遣う仙道の声に恋はただコクンと頷いた。
同時に、隣でバシャンという音と共に三井が岸に上がった。
「お前…何…してんだ…よっ」
三井は息も絶え絶えに苦しそうに恋を睨んだ。
恋はビクリと肩を震わせ呟いた。
「ごめ…なさ…。仙道さん…が…見えた…から…」
恋の様子に三井は苦虫を噛み潰したみたいな顔をして立ち上がった。
「あと頼んだぞ」
三井は仙道にそう言うと、そのまま皆がいる場所へ向かう。
どうやら、三井以外は恋が溺れていた事に気付いていない様だった。
仙道が三井の後ろ姿を見てポツリと呟いた。
「カッコいいなぁ…」
「え?」
「いや。ごめんな?すぐ助けられなくて」
「いえ、私が勝手に落ちたから」
恋はびしょ濡れになった服の水を絞りながら首を振った。
仙道は近くに置いていた荷物からタオルを取り出し恋に手渡した。
「ありがとうございます」
恋は素直に受け取り水分を拭いていく。
仙道は唐突に恋を抱き寄せた。
「仙…道さん?」
「ビックリさせないでよ。呼ばれた気がしたから振り返ったら、恋ちゃんが波に攫われたとこだったんだ。心臓止まるかと思ったよ」
恋が、酷く長く感じた溺れもほんの数秒の事だったらしい。
仙道は大きく息を吐き出し恋をギュッと抱き締める。
「でも、三井さんの方が反応早かったな」
「え?」
「恋ちゃんが海に投げ出された瞬間飛び込んでたから」
仙道は抑揚のない声で言い、どこか悔しそうだった。
しかし、今の恋はそんな事には気付かず三井の事を考えていた。
何故、三井に助けられたのかが分からない。
1人岩場に近付いたので、誰にも気付かれていなかった筈なのだ。
恋が黙り込んだのを見て、仙道はゆっくりと腕の力を緩める。
「どうかした?」
「え?あ、いえ、あの仙道さんはここで何を?」
「海釣り」
「そうですか。私達、皆で海に来てて」
「みたいだね。向こうに皆いる」
仙道は三井が歩いて行った先を目を細め見ていた。
恋は、皆がいる方を見ながら話題が浮かばず言葉を探している。
「そう言えば、流川は?」
「あ、選抜でいないんです、今」
「昨日で合宿は終わったけど?」
「え?あれ…?そうですよね、仙道さんがここにいるんだし。…あれ?」
恋は今更ながらに流川がいない事に疑問を持った。
選抜には仙道も、よくよく考えれば牧も参加していたはずだ。
恋は日程を正確に把握しているわけではないが、参加者の仙道が言うのだから合宿は終わったのだろう。
でも、今日は事実流川がいない。
宮城が誘わない筈はないと恋は思う。
案外お節介でもある宮城と彩子が満遍なく声はかけただろうと予測がつくからだ。
「何か用事があったのかも知れませんね」
恋は笑みを浮かべて言っていた。
内心、流川がいない事に安堵していたのだ。
皆に会った瞬間、三井と流川の姿を1番に探した。
2人が揃うと恋は心穏やかにはいられない。
妙に三井に突っかかる流川と、恋を構う三井。
恋は何か引っ掛かる物を感じ首を捻る。
「そうか。まぁ、協調性はないからな」
「え?はい。まぁ、大分マシにはなったと思いますよ?」
仙道の言葉に、先刻の引っ掛かりはすぐに恋の頭から薄れ去った。
仙道はジッと恋を見つめた。
「何ですか?」
「三井さんと仲直りした?」
「え?」
「何となく…大会中、揉めてそうだなぁって」
「…仙道さんて、時々怖いですよね」
恋は呆れた様に声を出した。
仙道の勘で話していると取れる態度に圧巻でもある。
事実揉め事はあったが、それは恋、三井、流川の3人しか知らない事だ。
内容までは知らないにしろ、そこまで勘が良すぎるのも少し怖く感じる。
どこかに盗聴機でも仕掛けられているのだろうかと考えてしまう。
「うーん、恋ちゃんって考えてる事顔に出るよね」
「え!?」
「何か失礼な事考えてるだろ?」
「そ、そんな事は」
恋が慌てて言葉を詰まらすと、仙道はニコッと笑みを溢した。
「何か、初め会った頃と雰囲気違うよな」
「そう…でしょうか…」
「まぁ、それは流川にも言えるかな」
「え?」
「いや、何でもない。で?仲直りした?」
仙道の独り言に恋は首を傾げたが、再び繰り返された質問に少し表情が暗くなる。
「仲直りはしてないです…」
「そうか」
「あ、でもさっき…」
「ん?」
「普通に話せました。いつ以来だろ…」
ふと恋は今日の三井とのやり取りを思い出す。
険悪になる頃より前に戻ったかの様に自然と話せていたのだ。
三井が余りに自然な態度だったので、それに恋がつられてしまったのかも知れない。
「へぇ…。諦めたか素直になる事にしたか…どっちなんですか?」
「はい?」
「おい」
仙道が恋越しに何かを見つめると、恋の声と重なってもう1つ声が後ろから聞こえた。
振り返れば三井が怪訝そうな顔をして仙道を見ている。
手にしているのは恋の荷物だった。
「あいつらとは別で帰れ。そんなずぶ濡れで向こう戻ったら、何言われるか分かんねぇだろ」
地面に恋の荷物を置くと早々に三井は踵を返した。
恋はポカンと三井の背を見つめていた。
「三井さん」
それを仙道が声をかけ引き留める。
三井はゆっくり振り返り仙道を睨むが、仙道は笑みを浮かべていた。
「どっちなんですか?」
「何か勘違いしてるみてぇだがな、俺は何も思っちゃいない」
「へぇ、何も…ね」
ニヤリと笑う仙道に、三井は不遜な態度で言った。
「おい、仙道」
「何ですか?」
「こいつ送ってやってくれ。じゃあな」
三井は顎で恋を指すと踵を返し歩き出した。
「あいつは、好きだって言いましたよ」
仙道の少し大きな声に三井の足がピタリと止まる。
だが、すぐにまた歩き出し何も言わず三井は遠退いて行った。
恋は意味が分からず仙道を見る。
今の会話、恋は全くの蚊帳の外だったのだ。
「何もって顔じゃないけどなぁ」
「あの?」
「いや。今の言い方、何かお兄さんみたいだったね」
「あ…妹みたいって言われてますから」
恋は少し肩を落とし三井の背を見つめながら呟いた。
仙道はポンと恋の頭を撫でる。
「本音はどこなんだろうね?案外、単純明快でもないみたいだな」
仙道がどこか楽しそうに言うと、恋の荷物と自身の荷物を持ち上げ歩き始めた。
恋は触れられた頭に手を置き仙道の背を見つめる。
感触の違う暖かさに恋は何故か寂しくなっていく。
「そりゃ…違うよね」
ポツリと呟きもう1度三井の方を振り返る。
三井は先刻よりも遠退き小さくなっていた。
恋は何かを我慢する様に目をギュッと瞑ると、ゆっくり開き少し先で待つ仙道の後を追った。
三井が皆の元へ戻ると彩子が声をかけた。
皆帰り支度は完了し、牧達はすでに帰っていた。
「恋は?」
「仙道と帰った」
「仙道!?何、あいついたの?」
三井が自身の荷物を持ち上げると彩子は驚愕の声を上げる。
他の面々も一様に驚いていた。
どうやら恋が仙道といた事も、海へ落ちた事も、本当に誰も気づいていない様だ。
「あぁ」
「何だよ、如月、仙道と付き合ってんのか?」
宮城は単純にそんな事を言ってのける。
三井は俯いたままゆっくり瞼を閉じ開くと切り替えた声で言った。
「さぁな。さっさと帰るぞ、腹減った」
「どっか寄ってくかぁ?」
「ミッチーの奢りでラーメン!」
すかさず桜木軍団が会話に加わる。
三井はピクリと眉を動かし野間を睨む。
「何で俺が奢らなきゃなんねぇんだよっ」
「何だよ、ミッチーは先輩だろー」
「木暮達もいんだろーがっ」
三井が木暮を指差すと水戸が憐れんだ声を出し三井の肩を叩く。
「ゴリはともかく、メガネくんにたかったらイジメになるだろ」
「どういう意味だよ!」
急に矛先が向いた木暮は慌てて反論した。
一気に場は笑いに包まれる。
結局、自腹でラーメンを食べに行く事になり皆が歩き始めた。
三井はその最後尾で、先刻如月と別れた方向を静かに振り返る。
しかしそこに2人の姿はもうない。
三井は自嘲気味に笑むとは皆の元へと歩き始めたのだった。
→第十五章
「あれ?」
恋は片付けをしながら、ふと遠目に見覚えのある姿を見つけた。
恋はそこへ向かう為、足場の悪い岩場を歩く。
そして、近寄ってハッキリと見えるその髪型に恋の考えは確信に変わる。
「仙道さ…」
と、恋が声を出かけようとした時、急な高波に足を取られその勢いで海へ落下した。
突然の事にパニックになり、恋は海の中で必死にもがく。
呼吸は乱れ息が出来ず、代わりに海水が口内へ侵入する。
恋は突然の事に冷静になれず、足がつかない海へ恐怖を感じる。
ガボガボと海面を出たり入ったりしていると急に体を捕まれた。
まだパニックが起きている恋は必死に両手足を動かす。
「っ…大丈夫だから暴れんな」
ギュッと力強い腕が恋を掴んでいた。
恋は、その声に反応してしまい見返すと三井が間近にいた。
恋は一気に冷静さを取り戻し、今度は違う意味でパニックになりそうになる。
「じっとしてろ。何も…すんな」
そう言い、三井は恋を引きながらゆっくりと浜辺に向けて泳いで行く。
と、三井が何かに気付き岩場を見上げた。
そしておもむろに岩場に近付き恋に声をかける。
「手…上に…伸ばせ」
恋が言われるままに腕を頭上に伸ばすと、グイッと力強い何かに引き上げられた。
恋はそのまま下から三井に抱え上げられる様な形で岩場に乗り上げた。
途端にゲホゲホと咳き込んだ恋が引っ張られた腕の先を見ると、そこには心配そうに見つめる仙道がいた。
「大丈夫?」
気遣う仙道の声に恋はただコクンと頷いた。
同時に、隣でバシャンという音と共に三井が岸に上がった。
「お前…何…してんだ…よっ」
三井は息も絶え絶えに苦しそうに恋を睨んだ。
恋はビクリと肩を震わせ呟いた。
「ごめ…なさ…。仙道さん…が…見えた…から…」
恋の様子に三井は苦虫を噛み潰したみたいな顔をして立ち上がった。
「あと頼んだぞ」
三井は仙道にそう言うと、そのまま皆がいる場所へ向かう。
どうやら、三井以外は恋が溺れていた事に気付いていない様だった。
仙道が三井の後ろ姿を見てポツリと呟いた。
「カッコいいなぁ…」
「え?」
「いや。ごめんな?すぐ助けられなくて」
「いえ、私が勝手に落ちたから」
恋はびしょ濡れになった服の水を絞りながら首を振った。
仙道は近くに置いていた荷物からタオルを取り出し恋に手渡した。
「ありがとうございます」
恋は素直に受け取り水分を拭いていく。
仙道は唐突に恋を抱き寄せた。
「仙…道さん?」
「ビックリさせないでよ。呼ばれた気がしたから振り返ったら、恋ちゃんが波に攫われたとこだったんだ。心臓止まるかと思ったよ」
恋が、酷く長く感じた溺れもほんの数秒の事だったらしい。
仙道は大きく息を吐き出し恋をギュッと抱き締める。
「でも、三井さんの方が反応早かったな」
「え?」
「恋ちゃんが海に投げ出された瞬間飛び込んでたから」
仙道は抑揚のない声で言い、どこか悔しそうだった。
しかし、今の恋はそんな事には気付かず三井の事を考えていた。
何故、三井に助けられたのかが分からない。
1人岩場に近付いたので、誰にも気付かれていなかった筈なのだ。
恋が黙り込んだのを見て、仙道はゆっくりと腕の力を緩める。
「どうかした?」
「え?あ、いえ、あの仙道さんはここで何を?」
「海釣り」
「そうですか。私達、皆で海に来てて」
「みたいだね。向こうに皆いる」
仙道は三井が歩いて行った先を目を細め見ていた。
恋は、皆がいる方を見ながら話題が浮かばず言葉を探している。
「そう言えば、流川は?」
「あ、選抜でいないんです、今」
「昨日で合宿は終わったけど?」
「え?あれ…?そうですよね、仙道さんがここにいるんだし。…あれ?」
恋は今更ながらに流川がいない事に疑問を持った。
選抜には仙道も、よくよく考えれば牧も参加していたはずだ。
恋は日程を正確に把握しているわけではないが、参加者の仙道が言うのだから合宿は終わったのだろう。
でも、今日は事実流川がいない。
宮城が誘わない筈はないと恋は思う。
案外お節介でもある宮城と彩子が満遍なく声はかけただろうと予測がつくからだ。
「何か用事があったのかも知れませんね」
恋は笑みを浮かべて言っていた。
内心、流川がいない事に安堵していたのだ。
皆に会った瞬間、三井と流川の姿を1番に探した。
2人が揃うと恋は心穏やかにはいられない。
妙に三井に突っかかる流川と、恋を構う三井。
恋は何か引っ掛かる物を感じ首を捻る。
「そうか。まぁ、協調性はないからな」
「え?はい。まぁ、大分マシにはなったと思いますよ?」
仙道の言葉に、先刻の引っ掛かりはすぐに恋の頭から薄れ去った。
仙道はジッと恋を見つめた。
「何ですか?」
「三井さんと仲直りした?」
「え?」
「何となく…大会中、揉めてそうだなぁって」
「…仙道さんて、時々怖いですよね」
恋は呆れた様に声を出した。
仙道の勘で話していると取れる態度に圧巻でもある。
事実揉め事はあったが、それは恋、三井、流川の3人しか知らない事だ。
内容までは知らないにしろ、そこまで勘が良すぎるのも少し怖く感じる。
どこかに盗聴機でも仕掛けられているのだろうかと考えてしまう。
「うーん、恋ちゃんって考えてる事顔に出るよね」
「え!?」
「何か失礼な事考えてるだろ?」
「そ、そんな事は」
恋が慌てて言葉を詰まらすと、仙道はニコッと笑みを溢した。
「何か、初め会った頃と雰囲気違うよな」
「そう…でしょうか…」
「まぁ、それは流川にも言えるかな」
「え?」
「いや、何でもない。で?仲直りした?」
仙道の独り言に恋は首を傾げたが、再び繰り返された質問に少し表情が暗くなる。
「仲直りはしてないです…」
「そうか」
「あ、でもさっき…」
「ん?」
「普通に話せました。いつ以来だろ…」
ふと恋は今日の三井とのやり取りを思い出す。
険悪になる頃より前に戻ったかの様に自然と話せていたのだ。
三井が余りに自然な態度だったので、それに恋がつられてしまったのかも知れない。
「へぇ…。諦めたか素直になる事にしたか…どっちなんですか?」
「はい?」
「おい」
仙道が恋越しに何かを見つめると、恋の声と重なってもう1つ声が後ろから聞こえた。
振り返れば三井が怪訝そうな顔をして仙道を見ている。
手にしているのは恋の荷物だった。
「あいつらとは別で帰れ。そんなずぶ濡れで向こう戻ったら、何言われるか分かんねぇだろ」
地面に恋の荷物を置くと早々に三井は踵を返した。
恋はポカンと三井の背を見つめていた。
「三井さん」
それを仙道が声をかけ引き留める。
三井はゆっくり振り返り仙道を睨むが、仙道は笑みを浮かべていた。
「どっちなんですか?」
「何か勘違いしてるみてぇだがな、俺は何も思っちゃいない」
「へぇ、何も…ね」
ニヤリと笑う仙道に、三井は不遜な態度で言った。
「おい、仙道」
「何ですか?」
「こいつ送ってやってくれ。じゃあな」
三井は顎で恋を指すと踵を返し歩き出した。
「あいつは、好きだって言いましたよ」
仙道の少し大きな声に三井の足がピタリと止まる。
だが、すぐにまた歩き出し何も言わず三井は遠退いて行った。
恋は意味が分からず仙道を見る。
今の会話、恋は全くの蚊帳の外だったのだ。
「何もって顔じゃないけどなぁ」
「あの?」
「いや。今の言い方、何かお兄さんみたいだったね」
「あ…妹みたいって言われてますから」
恋は少し肩を落とし三井の背を見つめながら呟いた。
仙道はポンと恋の頭を撫でる。
「本音はどこなんだろうね?案外、単純明快でもないみたいだな」
仙道がどこか楽しそうに言うと、恋の荷物と自身の荷物を持ち上げ歩き始めた。
恋は触れられた頭に手を置き仙道の背を見つめる。
感触の違う暖かさに恋は何故か寂しくなっていく。
「そりゃ…違うよね」
ポツリと呟きもう1度三井の方を振り返る。
三井は先刻よりも遠退き小さくなっていた。
恋は何かを我慢する様に目をギュッと瞑ると、ゆっくり開き少し先で待つ仙道の後を追った。
三井が皆の元へ戻ると彩子が声をかけた。
皆帰り支度は完了し、牧達はすでに帰っていた。
「恋は?」
「仙道と帰った」
「仙道!?何、あいついたの?」
三井が自身の荷物を持ち上げると彩子は驚愕の声を上げる。
他の面々も一様に驚いていた。
どうやら恋が仙道といた事も、海へ落ちた事も、本当に誰も気づいていない様だ。
「あぁ」
「何だよ、如月、仙道と付き合ってんのか?」
宮城は単純にそんな事を言ってのける。
三井は俯いたままゆっくり瞼を閉じ開くと切り替えた声で言った。
「さぁな。さっさと帰るぞ、腹減った」
「どっか寄ってくかぁ?」
「ミッチーの奢りでラーメン!」
すかさず桜木軍団が会話に加わる。
三井はピクリと眉を動かし野間を睨む。
「何で俺が奢らなきゃなんねぇんだよっ」
「何だよ、ミッチーは先輩だろー」
「木暮達もいんだろーがっ」
三井が木暮を指差すと水戸が憐れんだ声を出し三井の肩を叩く。
「ゴリはともかく、メガネくんにたかったらイジメになるだろ」
「どういう意味だよ!」
急に矛先が向いた木暮は慌てて反論した。
一気に場は笑いに包まれる。
結局、自腹でラーメンを食べに行く事になり皆が歩き始めた。
三井はその最後尾で、先刻如月と別れた方向を静かに振り返る。
しかしそこに2人の姿はもうない。
三井は自嘲気味に笑むとは皆の元へと歩き始めたのだった。
→第十五章