ひだまり
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冬独特の空気と寒さが身に染みる中、恋と桜木と水戸はいつものように並んで歩いていた。
桜木軍団と恋は中学生の頃から馬が合い、何かとよく行動を共にしていた。
年明けの今日、まだ家で寝ている高宮達以外でなんとはなしに集まり一緒に過ごしていた。
人混みのピークが去った神社で初詣を済ませ、その帰り道を歩いているとある光景が視界に入る。
「ねぇ、見て見て、凧揚げしてる!」
道すがら恋が指差す方向に注視すれば、小学生くらいの子供達が凧揚げをしていた。
水戸はそれを見ては感慨そうに言った。
「おー、よく揚がってんなー」
「凄いよねー。私も小さい時は結構うまかったんだけどなー。今でもあんな風に揚げれるかなぁ?」
空高く泳ぐ凧を見て恋が過去の記憶を蘇らせていると、桜木が茶化すように突然笑い出した。
「なははは、恋には無理だろー」
「何でよ!?絶対花道よりは上手いからね!」
「この天才桜木には勝てん!」
なぜか自信満々な桜木に恋はピクリと青筋が浮かぶ。
「はぁ!?じゃあ勝負しようよ!勝った方が何か1個相手のお願い聞く事!」
「よかろう!俺様に恋ごときが勝てるわけがない。なーはっはっはっは」
「絶対勝つから!」
高笑いを続ける桜木に恋は真っ向から立ち向かった。
そんな2人を見て水戸は呆れ返った声を出すしかない。
「はいはい。で、どうやって勝負すんだよ?凧ねぇぞ」
水戸の言う通りで、出先である今誰も凧など所持していない。
高校生となった現在、きっと家にもないだろう。
だからと言って、買いに行くには少し離れた店に行かなければ置いていないと予想される。
この寒い中、わざわざその為に買いに行くのも億劫ではあるのだ。
「奴らに借りれば良い!おーい、ガキどもー!」
「ちょ、花…」
桜木はそう言うと一目散に子供達に駆け寄って行く。
そして、唐突に話しかけられた子供達は、不審な視線やその風貌に怯えた様子を見せている。
「あーあー、ガキがビビっちまってんじゃん」
「ちょっと行ってくる!」
水戸が駆け出そうとしたよりも早く恋は駆け出していた。
急いで駆け寄ると、子供達は桜木と怯えながらも果敢に言い合いを繰り広げていた。
「知らない人に貸しちゃいけないんだよ!」
「すぐに終わる!少しだけ貸せい!」
桜木は凧を奪いそうな勢いで子供達に言うが、それを恋は慌てて静止する。
「花道!ごめんねー、意味わかんないし怖いよね。あのね、見てたんだけど凄いなーって話しててね、ちょっとお姉ちゃん達もやりたくなっちゃったの。ちょこっとだけ貸してくれたら、後でこのお兄ちゃん達が遊んでくれるけどどうかな?」
恋は、同じく駆け寄った水戸と桜木を指差し子供達に笑顔を向けた。
「はぁ!?おい、恋…」
「本当!?じゃあいいよ!」
水戸が目を丸くして止めようとするも、1人の少年が目を輝かせて答えた。
その返事に子供達は少し揉めそうになるも、少年の押しの強さに他の子供達も頷いて凧を差し出してきた。
「ありがとう。はい、花道!」
恋が桜木に凧を渡し、もう1つを受け取っていると、水戸がふと気付いたように言った。
「つーかよ、勝敗ってどうやってつけんだよ?」
「え?…あー…より高く上がった方が勝ち!よし、いくよー」
水戸の言葉に、恋は考えていなかったようで思考を巡らせると思い付いた言葉を述べる。
そして、間も無く始まった凧揚げ勝負だったが、恋は早々に風を上手く捉えながら凧を高く上げていった。
上手いと豪語しただけの事はあるようで、水戸はその凧を見ながら感心していた。
「おー、上手いじゃん、恋」
「ふふーん、でっしょー」
「ぬおぉぉお」
恋が誇らしげに答える横からその場に似合わぬ声が聞こえ出した。
恋と水戸は思わずその方向に視線を向ける。
「ふんぬー!」
そこには凧を引っ張りながら走り回る桜木がいた。
「何故あがらんのだー!」
ひたすら走り続けていると桜木は腹立たしげに叫び出した。
恋はそんな桜木を見てニンマリと笑みを浮かべた。
「ほーら、私のが上手いじゃん!これは私の勝ちですなー」
「まだ勝負はついとらんわ!どりゃー」
桜木はそう言い放ちまたも走り回り始めた。
それを見た水戸は呆れた顔を浮かべていた。
「バカだなー、相変わらず」
「ねー」
微笑ましそうにクスクスと笑う恋に、水戸はニヤリと笑いながら投げかけた。
「で?勝ったら何お願いすんだよ?やっぱデートとかか?」
「はぁ!?な、な、何バカな事…」
「顔赤っけー」
恋の反応に水戸は思わず笑いがこぼれてしまう。
中学生の頃から恋は桜木に恋心を抱いているのだが、それを知る水戸は恋が思った以上の反応をしたのに堪え切れなくなったのだ。
「う、うるさいよ!」
恋は頬を赤く染めて抗議し、笑いが隠しきれない水戸に再び口を開きかけた時、唐突に言葉を遮られた。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「え?何?」
そこには凧を貸してくれた子供達が立っていた。
凧を借りた後は子供達だけで鬼ごっこをしていたはずだが、いつの間にか遊びをやめていたようだ。
「あのお兄ちゃんに揚げ方教えてあげたら?」
「そうだよ、何か可哀想だよ、あのお兄ちゃん」
子供達が憐れんだように指差す先には、桜木が尚も走り回り続けている姿があった。
恋は水戸と顔を見合わせると、苦笑いを浮かべて子供達に答えるしかない。
「あはは、そうだねー。花道!」
恋は走り続けている桜木の元へ駆け寄った。
「そんなに走らなくても、風に乗ればすぐ揚がるよ」
「ふんぬー」
桜木は恋の言葉に耳を貸さずまだ走っていた。
「もう、ちょっと貸して!」
恋は桜木を追いかけ凧を無理矢理ひったくると、たぐり寄せた糸の元を桜木に渡した。
「はい、ここ持ってて。ほら、このままちょっと引っ張って…」
隣に立つ桜木へ手渡した糸を恋が操ると、その先にある凧は徐々に高度が上がり始めた。
風はそこそこある為、一度風に乗ると高さはどんどん上がっていくのだ。
それを見た桜木のテンションは一気に上がっていく。
「おぉ、揚がったぞ!」
「ね?簡単でしょ?」
「おぉ、ありがとうな、恋!」
まるで無垢な少年のように笑みを浮かべ礼を言う桜木に、恋は思わず口ごもってしまった。
「…う、うん…」
「すごーい、やったね、お兄ちゃん!」
「なはははは、見ろ、ガキどもー!」
「うわー、凄く高くなってるー!」
近くで見守っていた子供達も桜木の上げる凧に夢中になり始めていた。
桜木は褒められ機嫌が良くなったのか、コツを掴むとどんどん糸を解き高度を上げていた。
恋と水戸は、はしゃいでいる輪を微笑ましく思いながら見ていた。
「恋」
「何ー?」
「顔赤っけぇぞ」
ニヤニヤと笑う水戸の言葉通り恋の頬は紅潮している。
その色が寒さだけのせいでない事は見れば明らかだった。
「うるさい。だってあの顔はずるいでしょ」
「まぁ、あいつは良い男だからなー」
「分かってるよ」
その言葉に恋は言い返す事などできはしない。
「おーい、洋平!恋!見ろ、糸なくなったぞ!」
桜木はブンブンと腕を振りながら空を指差し満面の笑みを向けていた。
周りにいる子供達も桜木同様に喜び拍手まで起きていた。
「おー、すげーな」
「うん」
「だから顔赤ぇって」
「仕方ないじゃん!」
ついに桜木を直視できなくなったのか恋は俯いてしまうが、恋が今どんな顔をしているかなど火を見るよりも明らかだ。
恋は、頬を冷ますかのように熱くなった箇所へ手を当てると、再び視線を戻した。
その視線の先には桜木が楽しそうにしている姿があり、顔が緩むのを必死に抑えている恋がそこにはいるのだった。
そして暫く凧揚げを堪能すると、子供達が桜木と遊び始めた。
意外に打ち解けた少年達を肩車したり、桜木と子供達はすぐに仲良くなっていた。
変わって水戸は一部の少女達と朗らかに遊んでいる。
2人とも意外にも子供との付き合いが上手く、いつの間にか恋も交えて鬼ごっこが始まっていた。
またも白熱する恋と桜木に、水戸と子供達は笑いが絶えない。
恋は桜木が向けてくる笑みを度々見ては頬を赤く染め、それを誤魔化す為にも桜木と張り合っていた。
ひとしきり遊び終え、子供達と別れ歩き出すと水戸が思い出したように切り出した。
「で、結局どっちが勝ったんだ?」
「えー、そりゃ私でしょ?先に揚げたんだし」
「俺様の方が最後まで揚げたぞ!」
「私が途中まで手伝ったからじゃん!」
「いーや、恋は最後まで揚げていないだろう!」
お互い譲らず言い合いを始める2人に、水戸はため息混じりに言った。
「はいはい、どっちでもいいから行くぞー」
「よくないっ!」
「よくないわっ!」
「おーおー仲の良いこって。じゃあ勝ってたら、花道は何言うつもりだったんだよ?」
「お?そりゃあ…」
水戸に言われ桜木は自信満々な顔を浮かべたが、その後言葉が紡がれる事はなかった。
どうやら勝敗に夢中で考えていなかったのか、その内思案し始めてしまった。
「何だよ、浮かんでねぇのかよ。じゃあ、恋は?」
「は!?私!?私は…」
「何だよ?」
同じく言葉を紡がない恋だが、言葉は決まっている様に見え水戸は促した。
恋は微かに頬を赤らめるとボソリと呟いた。
「花道と…手…繋ぎたい」
「あぁ?そんな事でいいのか?」
「そうだよ、悪…!?」
水戸の言葉に恋が言い返そうとすると同時に、掌に自身のではない熱が伝わった。
「これで良いのか?」
恋が手元を見れば桜木の手が重なっていた。
恋は途端に手を離し桜木を見上げる。
「ちょ、花み…」
「俺は心が広いからな。恋の負けだが今回は叶えてやろう」
桜木は離された手に躊躇する事なく再び繋ぐと笑みを浮かべていた。
どこまでも自身が勝者だと言い張る桜木に、恋は最後の抵抗か小さく言葉を吐き出す。
「勝ったのは私だし」
「手が冷たいぞ」
「え!?」
「よくこんなのでいられるな。寒くないのか?」
怪訝そうにギュッと繋ぎ直す桜木に恋の心臓は早鐘を打っていた。
頬が熱を持っているのを痛感しながら苦し紛れに強く言い返す。
「花道の手が温かすぎんの!」
「なははははは、俺様は天才だからな!」
「意味わかんないし」
強がって見せるが、それでも離れはしない桜木の手をそっと恋は握り返した。
その温かさにじんわりと自身の手にも熱が移ってくる。
側から見れば、まるで手を引かれて歩く子供のようでしかなく決して甘い雰囲気ではないのだが、恋の心を満たすには十分な出来事だった。
熱を持つ頬を冷たい風が撫でていく。
恋が桜木を直視できず視線を逸らすと水戸と目が合った。
水戸は優しく笑みを浮かべて音にはせず言葉を紡ぐ。
(良かったな)
その言葉に恋は照れつつも笑みを返すのだったー。
→アトガキ
桜木軍団と恋は中学生の頃から馬が合い、何かとよく行動を共にしていた。
年明けの今日、まだ家で寝ている高宮達以外でなんとはなしに集まり一緒に過ごしていた。
人混みのピークが去った神社で初詣を済ませ、その帰り道を歩いているとある光景が視界に入る。
「ねぇ、見て見て、凧揚げしてる!」
道すがら恋が指差す方向に注視すれば、小学生くらいの子供達が凧揚げをしていた。
水戸はそれを見ては感慨そうに言った。
「おー、よく揚がってんなー」
「凄いよねー。私も小さい時は結構うまかったんだけどなー。今でもあんな風に揚げれるかなぁ?」
空高く泳ぐ凧を見て恋が過去の記憶を蘇らせていると、桜木が茶化すように突然笑い出した。
「なははは、恋には無理だろー」
「何でよ!?絶対花道よりは上手いからね!」
「この天才桜木には勝てん!」
なぜか自信満々な桜木に恋はピクリと青筋が浮かぶ。
「はぁ!?じゃあ勝負しようよ!勝った方が何か1個相手のお願い聞く事!」
「よかろう!俺様に恋ごときが勝てるわけがない。なーはっはっはっは」
「絶対勝つから!」
高笑いを続ける桜木に恋は真っ向から立ち向かった。
そんな2人を見て水戸は呆れ返った声を出すしかない。
「はいはい。で、どうやって勝負すんだよ?凧ねぇぞ」
水戸の言う通りで、出先である今誰も凧など所持していない。
高校生となった現在、きっと家にもないだろう。
だからと言って、買いに行くには少し離れた店に行かなければ置いていないと予想される。
この寒い中、わざわざその為に買いに行くのも億劫ではあるのだ。
「奴らに借りれば良い!おーい、ガキどもー!」
「ちょ、花…」
桜木はそう言うと一目散に子供達に駆け寄って行く。
そして、唐突に話しかけられた子供達は、不審な視線やその風貌に怯えた様子を見せている。
「あーあー、ガキがビビっちまってんじゃん」
「ちょっと行ってくる!」
水戸が駆け出そうとしたよりも早く恋は駆け出していた。
急いで駆け寄ると、子供達は桜木と怯えながらも果敢に言い合いを繰り広げていた。
「知らない人に貸しちゃいけないんだよ!」
「すぐに終わる!少しだけ貸せい!」
桜木は凧を奪いそうな勢いで子供達に言うが、それを恋は慌てて静止する。
「花道!ごめんねー、意味わかんないし怖いよね。あのね、見てたんだけど凄いなーって話しててね、ちょっとお姉ちゃん達もやりたくなっちゃったの。ちょこっとだけ貸してくれたら、後でこのお兄ちゃん達が遊んでくれるけどどうかな?」
恋は、同じく駆け寄った水戸と桜木を指差し子供達に笑顔を向けた。
「はぁ!?おい、恋…」
「本当!?じゃあいいよ!」
水戸が目を丸くして止めようとするも、1人の少年が目を輝かせて答えた。
その返事に子供達は少し揉めそうになるも、少年の押しの強さに他の子供達も頷いて凧を差し出してきた。
「ありがとう。はい、花道!」
恋が桜木に凧を渡し、もう1つを受け取っていると、水戸がふと気付いたように言った。
「つーかよ、勝敗ってどうやってつけんだよ?」
「え?…あー…より高く上がった方が勝ち!よし、いくよー」
水戸の言葉に、恋は考えていなかったようで思考を巡らせると思い付いた言葉を述べる。
そして、間も無く始まった凧揚げ勝負だったが、恋は早々に風を上手く捉えながら凧を高く上げていった。
上手いと豪語しただけの事はあるようで、水戸はその凧を見ながら感心していた。
「おー、上手いじゃん、恋」
「ふふーん、でっしょー」
「ぬおぉぉお」
恋が誇らしげに答える横からその場に似合わぬ声が聞こえ出した。
恋と水戸は思わずその方向に視線を向ける。
「ふんぬー!」
そこには凧を引っ張りながら走り回る桜木がいた。
「何故あがらんのだー!」
ひたすら走り続けていると桜木は腹立たしげに叫び出した。
恋はそんな桜木を見てニンマリと笑みを浮かべた。
「ほーら、私のが上手いじゃん!これは私の勝ちですなー」
「まだ勝負はついとらんわ!どりゃー」
桜木はそう言い放ちまたも走り回り始めた。
それを見た水戸は呆れた顔を浮かべていた。
「バカだなー、相変わらず」
「ねー」
微笑ましそうにクスクスと笑う恋に、水戸はニヤリと笑いながら投げかけた。
「で?勝ったら何お願いすんだよ?やっぱデートとかか?」
「はぁ!?な、な、何バカな事…」
「顔赤っけー」
恋の反応に水戸は思わず笑いがこぼれてしまう。
中学生の頃から恋は桜木に恋心を抱いているのだが、それを知る水戸は恋が思った以上の反応をしたのに堪え切れなくなったのだ。
「う、うるさいよ!」
恋は頬を赤く染めて抗議し、笑いが隠しきれない水戸に再び口を開きかけた時、唐突に言葉を遮られた。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「え?何?」
そこには凧を貸してくれた子供達が立っていた。
凧を借りた後は子供達だけで鬼ごっこをしていたはずだが、いつの間にか遊びをやめていたようだ。
「あのお兄ちゃんに揚げ方教えてあげたら?」
「そうだよ、何か可哀想だよ、あのお兄ちゃん」
子供達が憐れんだように指差す先には、桜木が尚も走り回り続けている姿があった。
恋は水戸と顔を見合わせると、苦笑いを浮かべて子供達に答えるしかない。
「あはは、そうだねー。花道!」
恋は走り続けている桜木の元へ駆け寄った。
「そんなに走らなくても、風に乗ればすぐ揚がるよ」
「ふんぬー」
桜木は恋の言葉に耳を貸さずまだ走っていた。
「もう、ちょっと貸して!」
恋は桜木を追いかけ凧を無理矢理ひったくると、たぐり寄せた糸の元を桜木に渡した。
「はい、ここ持ってて。ほら、このままちょっと引っ張って…」
隣に立つ桜木へ手渡した糸を恋が操ると、その先にある凧は徐々に高度が上がり始めた。
風はそこそこある為、一度風に乗ると高さはどんどん上がっていくのだ。
それを見た桜木のテンションは一気に上がっていく。
「おぉ、揚がったぞ!」
「ね?簡単でしょ?」
「おぉ、ありがとうな、恋!」
まるで無垢な少年のように笑みを浮かべ礼を言う桜木に、恋は思わず口ごもってしまった。
「…う、うん…」
「すごーい、やったね、お兄ちゃん!」
「なはははは、見ろ、ガキどもー!」
「うわー、凄く高くなってるー!」
近くで見守っていた子供達も桜木の上げる凧に夢中になり始めていた。
桜木は褒められ機嫌が良くなったのか、コツを掴むとどんどん糸を解き高度を上げていた。
恋と水戸は、はしゃいでいる輪を微笑ましく思いながら見ていた。
「恋」
「何ー?」
「顔赤っけぇぞ」
ニヤニヤと笑う水戸の言葉通り恋の頬は紅潮している。
その色が寒さだけのせいでない事は見れば明らかだった。
「うるさい。だってあの顔はずるいでしょ」
「まぁ、あいつは良い男だからなー」
「分かってるよ」
その言葉に恋は言い返す事などできはしない。
「おーい、洋平!恋!見ろ、糸なくなったぞ!」
桜木はブンブンと腕を振りながら空を指差し満面の笑みを向けていた。
周りにいる子供達も桜木同様に喜び拍手まで起きていた。
「おー、すげーな」
「うん」
「だから顔赤ぇって」
「仕方ないじゃん!」
ついに桜木を直視できなくなったのか恋は俯いてしまうが、恋が今どんな顔をしているかなど火を見るよりも明らかだ。
恋は、頬を冷ますかのように熱くなった箇所へ手を当てると、再び視線を戻した。
その視線の先には桜木が楽しそうにしている姿があり、顔が緩むのを必死に抑えている恋がそこにはいるのだった。
そして暫く凧揚げを堪能すると、子供達が桜木と遊び始めた。
意外に打ち解けた少年達を肩車したり、桜木と子供達はすぐに仲良くなっていた。
変わって水戸は一部の少女達と朗らかに遊んでいる。
2人とも意外にも子供との付き合いが上手く、いつの間にか恋も交えて鬼ごっこが始まっていた。
またも白熱する恋と桜木に、水戸と子供達は笑いが絶えない。
恋は桜木が向けてくる笑みを度々見ては頬を赤く染め、それを誤魔化す為にも桜木と張り合っていた。
ひとしきり遊び終え、子供達と別れ歩き出すと水戸が思い出したように切り出した。
「で、結局どっちが勝ったんだ?」
「えー、そりゃ私でしょ?先に揚げたんだし」
「俺様の方が最後まで揚げたぞ!」
「私が途中まで手伝ったからじゃん!」
「いーや、恋は最後まで揚げていないだろう!」
お互い譲らず言い合いを始める2人に、水戸はため息混じりに言った。
「はいはい、どっちでもいいから行くぞー」
「よくないっ!」
「よくないわっ!」
「おーおー仲の良いこって。じゃあ勝ってたら、花道は何言うつもりだったんだよ?」
「お?そりゃあ…」
水戸に言われ桜木は自信満々な顔を浮かべたが、その後言葉が紡がれる事はなかった。
どうやら勝敗に夢中で考えていなかったのか、その内思案し始めてしまった。
「何だよ、浮かんでねぇのかよ。じゃあ、恋は?」
「は!?私!?私は…」
「何だよ?」
同じく言葉を紡がない恋だが、言葉は決まっている様に見え水戸は促した。
恋は微かに頬を赤らめるとボソリと呟いた。
「花道と…手…繋ぎたい」
「あぁ?そんな事でいいのか?」
「そうだよ、悪…!?」
水戸の言葉に恋が言い返そうとすると同時に、掌に自身のではない熱が伝わった。
「これで良いのか?」
恋が手元を見れば桜木の手が重なっていた。
恋は途端に手を離し桜木を見上げる。
「ちょ、花み…」
「俺は心が広いからな。恋の負けだが今回は叶えてやろう」
桜木は離された手に躊躇する事なく再び繋ぐと笑みを浮かべていた。
どこまでも自身が勝者だと言い張る桜木に、恋は最後の抵抗か小さく言葉を吐き出す。
「勝ったのは私だし」
「手が冷たいぞ」
「え!?」
「よくこんなのでいられるな。寒くないのか?」
怪訝そうにギュッと繋ぎ直す桜木に恋の心臓は早鐘を打っていた。
頬が熱を持っているのを痛感しながら苦し紛れに強く言い返す。
「花道の手が温かすぎんの!」
「なははははは、俺様は天才だからな!」
「意味わかんないし」
強がって見せるが、それでも離れはしない桜木の手をそっと恋は握り返した。
その温かさにじんわりと自身の手にも熱が移ってくる。
側から見れば、まるで手を引かれて歩く子供のようでしかなく決して甘い雰囲気ではないのだが、恋の心を満たすには十分な出来事だった。
熱を持つ頬を冷たい風が撫でていく。
恋が桜木を直視できず視線を逸らすと水戸と目が合った。
水戸は優しく笑みを浮かべて音にはせず言葉を紡ぐ。
(良かったな)
その言葉に恋は照れつつも笑みを返すのだったー。
→アトガキ
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