食欲旺盛娘
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「恋…食い過ぎだろ…」
洋平が隣りに座る恋に言った。
恋はラーメンと餃子、チャーハンを目の前にしてニコニコとしている。
しかも全て大盛り。
女子が食べるには少々…いや、かなり多い。
「何で?だってお腹空いてるし」
「太るぞ?」
洋平は呆れた顔をしてラーメンをすする。
恋はピクリと眉を動かし洋平を睨んだ。
「…うるさいよ」
「たくっ、花道からも何か言ってやれよ」
洋平は、恋の隣りでラーメンを追加注文している花道を見た。
今日は恋、花道、洋平の3人でラーメン屋に来ている。
3人は同じクラスという事もあり仲がよかった。
事の始まりは、花道が恋を晴子と間違えて声を掛けたからだった。
恋と晴子は背格好がとても似ている。
入学当初、恋が髪の長さをセミロングにしていたのにも由来していた。
だから花道は恋の後ろ姿を見て晴子と間違え、その後の花道の不遜な態度に恋がブチギレた。
それから何故か仲良くなったのである。
「恋」
「な、何?」
花道はチュルンと麺を吸い込むと、恋に箸を向けた。
「太っただろう」
「え!?」
突然言われた言葉に恋は驚愕する。
確かに近頃お腹回りが気になって来た恋だが、まだ標準体型の範囲なので気にしない様にしていた。
「腹に肉が付いたな。やはり晴子さんとは大違いだ。なはははは」
「な!?バカ言わないでよ!出てないもん!」
「なら、このハミ肉は何なのだ?」
花道は、恋の脇腹の肉を制服の上からプニョッと摘んだ。
瞬間、恋は顔を赤くして立ち上がる。
事の様子を見ていた洋平が、慌てて恋を止めた。
「やめとけよ、店内だぞ」
「うっさいよ、洋平!花道!あんたセクハラ!失礼!!えーっと…ハゲ!」
恋は押さえられていた洋平の手を退け、花道に指差し叫んだ。
洋平は溜め息を付き恋から手を放す。
「ハゲてないだろ…」
「えっと…赤頭!」
「見たまんまかよ…」
そう言うと洋平は呆れたのか、席に着きラーメンをまたすすり始める。
恋は突っ込みを入れられ言葉を探した。
「えぇっと…えぇっと…洋平!何て言えば花道を罵れるの!?」
「恋って悪口の語彙力ねぇよなぁ」
助けを求める恋を見て、洋平はククッと笑いながら水を飲む。
恋は顔を赤くさせ、テーブルをバンッと叩いた。
「洋平!」
「教えなくていいぞ、洋平。バカは教えてもバカのままだ」
今までの言葉を聞き流してラーメンを食べていた花道は、更に追加注文をしている。
「は、花道に言われたくないもん!ムカつく!!」
恋は、花道が今まさに口に含もうとしている餃子を奪い、口に含んだ。
「ぬぁぁ!貴様俺様が楽しみにしていた餃子を!!」
「ひゅん、ふぁたしの肉ちゅかんだふぁつよ」
恋は、思ってたよりも熱かった餃子を涙目になりながらも飲み込もうとしている。
洋平は見兼ねて水を差し出すが呆れていた。
「恋、飲み込んでから言わねぇと分かんねぇって」
「何が罰だ!ハミ肉は本当の事だろう、バカめ!!」
「聞き取れてんのかよ…」
洋平には上手く聞き取れなかった言葉も、花道にはしっかり聞き取れた様である。
恋は差し出された水を勢い良く飲むと、花道に向き直った。
「うっさいわね、ぶぁかぶぁか!!」
「何だとぅ!?」
そして花道も立ち上がり、2人は言い合いを始めた。
洋平はそんな2人を見て深く溜め息を吐いた。
「あれ?恋、今日はそんだけかよ?」
翌日、洋平は廊下を歩く恋の昼食を見て言った。
昨日の食欲とは打って変わり、恋はパン1つにジュース1本だけしか手にしていない。
「ん…」
「昨日、花道が言った事気にしてんのか?」
恋は俯き何も言わない。
洋平は苦笑いして恋の頭をポンポンと叩いた。
「はいはい。大変だな、恋も」
「な、何よ?」
「愛しの花道だもんな」
洋平はニヤリと笑い恋を見ている。
恋は瞬く間に顔を赤くさせた。
「そんな言い方しないでくれる!?別に花道なんか…」
「はいはい。まぁ、体壊さねぇ程度にな」
洋平は苦笑いを浮かべ、恋は頬を膨らませている。
その時教室から花道が出て来て、恋が手にしている昼食を見て驚いた。
「何だ恋、腹でも下したか」
「な!?バッカ、違うわよ!」
「じゃあ、何故そんなに少ないのだ!いつもはその5倍食べてるだろう」
「うるさいよ、花道には関係ないもん」
恋はベーっと舌を出すと駆けて行った。
残された花道は、駆けて行く恋の後ろ姿を見て首を傾げる。
「何だ、あいつは」
「花道…もうちょい気にしてやれよ?」
「何がだ?」
「はぁ…いや、いい」
洋平は溜め息を吐き花道の肩に手を置く。
花道は理解が出来ない様できょとんとしていた。
(お腹空いた)
恋は先刻から鳴るお腹の音に頭を悩ませる。
いつもより断然少ない量だった為、5時間目が始まり10分でお腹が空き始めた。
机に額を付けながらお腹の音と格闘する。
「おーい、誰だ?さっきから腹の音鳴ってんのは」
授業をしていた教師が、見兼ねたのか茶化す様に言った。
恋はお腹を押さえながら教師を見る。
気付いた教師は笑って恋に近付いた。
「たくっ、昼くらいちゃんと食えよー。只でさえ馬鹿なんだから、授業くらい集中出来るようにちゃんと食っとけ。栄養全部脂肪にでもいってんじゃねぇのかー?」
パコっと教師が恋の頭を叩き、教室内に笑いが起こる。
恋はキッと教師を睨んだ。
「何だ、その目は?たくっ、このクラスは…おい桜木!」
今度は、机で寝ていた花道を教師が教科書で叩く。
目の覚めた花道は教師を睨み付けた。
「たくっ、どいつもこいつも…」
教師はそう言ったが、花道に怯んだ様で授業を再開する。
花道は恋の方をチラリと見て、また机に突っ伏す様にして寝た。
放課後の学校は生徒達により賑わっていた。
授業という枠から解放されて皆、各々の行動の為にいそいそと準備を始める。
かく言う花道もその1人であった。
「花道、恋落ち込んでたぜ」
体育館へ行く為、いそいそと帰り支度をする花道に洋平が話し掛ける。
花道は鞄を手にし、立ち上がると洋平を見た。
「何がだ?」
「お前がハミ肉とか言うから、気にして昼少なくしてたんだからよ」
溜め息混じりに洋平が言ったが、花道は疑問符を頭上に浮かべるだけだった。
「何故そんな事をするんだ?」
「…まぁ、とりあえず謝っとけ」
洋平は深くは言わずに、花道の肩を軽く叩いた。
花道は理解出来ていない様だったが、恋の態度も気になっていたのでとりあえず、言われた通りに恋を探す事にする。
「恋」
花道は、教室とは反対側の廊下を歩いていた恋を見付け呼び止めた。
恋がゆっくり振り返れば、駆け寄った花道が恋の目の前にパンを差し出す。
「食え」
「いらないもん」
「食えと言うのだ」
花道はガサガサと袋を開けパンを取り出すと、恋の口に無理矢理押し付ける。
だが、口を開かない恋はパンを持つ花道の手を退ける。
「もう!やめてよ!」
「食わないからだろうが」
「いらないもん」
プイッとそっぽを向く恋は少し頬を膨らませる。
だが、内心食べたい欲求と戦っていた。
「腹減ってんだろ」
「減ってないもん」
「何、怒ってんだ」
「怒ってないもん」
「貴様が『もん』を語尾に付ける時は、機嫌が悪い時だ」
花道に言われ、恋はグッと言葉に詰まる。
恋にとってそれは無意識の事だった。
「そんな事ないも…ないよ!」
「うるさい、食え」
花道はまた恋の口元にパンを近付けるが、恋はそれを避けようとした。
すると、花道は恋の口を空いているもう片方の手も使い、無理矢理開こうとする。
「にゃ…ひゃにす…」
「うるさい、食えと言うのだー」
しばらくして、無理矢理に少しだけ開かされた口へとパンが突っ込まれた。
恋は仕方なく…というよりも欲に負けてパンを食べ始める。
「始めから素直になればいいのだ、バカめ」
花道は仁王立ちになり、パンを貪っている恋に言った。
恋はパンを食べる口の動きは止めずに返す。
「うるさいよ」
「恋」
急に名前を呼ばれ、恋がパクパクとパンを口に含みながら花道を見上げた。
「すまん」
花道は何の前触れなく頭を下げ、恋に謝っていた。
突然の事に、恋の食べる動作も止まる。
「ハミ肉を気にしてると洋平が…」
「だって出てるんでしょ」
「まぁ、出てないと言えば嘘になる」
花道は言葉を隠す事なく、ウンウンと首を振りながら言った。
その態度に恋は怒りが込み上げる。
「な!?」
「だが、恋はそのくらいでも可愛いだろうが」
「え!?」
恋は、思わず手にしていたパンを落とした。
今聞こえた言葉が頭に入っていかない。
そもそも、その言葉を頭が理解しようとしなかった。
「おい!貴様、折角俺様が買ってやったパンを!」
「うう、うるさい!いきなり変な事言うから…」
慌てて恋がパンを拾い上げると、花道がそのパンを奪い入っていた袋に入れた。
「思った事を言っただけだろ」
「花道、キモい!」
恋は、背筋に悪寒でも走った様な顔で花道を見る。
花道はパンを持つ手の力を強め、パンは見事にぶにゅりと潰れていた。
「何をぅ!?」
「優しい花道ってキモい」
「何?俺様が下手に出てやれば…」
花道はワナワナとパンを持つ手を震わせている。
恋はそっぽを向きながら言い返した。
「バカに言われても嬉しくないし」
「語尾に『し』が付くのは、嬉しい時に使うくせに」
「は!?」
ボソリと言った花道の声が聞こえず、恋は思わず聞き返す。
しかし、花道は答えようとはしなかった。
「何でもないわ、バカ者め」
「な!?」
恋が目くじらを立て、花道を叩こうと腕を上げた。
「なぁ、恋」
しかし突然名前を呼ばれ、その手は空を彷徨ったままだった。
「何?」
「部活終わったら、ラーメン食いに行くぞ」
「花道の奢りなら行くよ!」
恋は腕を下ろし即答すると、期待に満ちた笑顔を花道に向けていた。
「何!?パンをくれてやったんだから、今度は恋が奢る番だろう」
「勝手にくれたくせによく言うよ!」
「何をぅ!?そもそも、恋が元気ないのは気持ち悪い。原因は恋だ」
「な、何言って…」
勝手な花道の言い分に恋は心中穏やかではない。
しかし、そんな心中を知らない花道は気にせず踵を返した。
「ふん、洋平達と食いに行くからもういい。恋は来なくていいぞ、バカめ」
「な…行くから!ラーメン食べたい!」
「行かせん!」
花道は、早足で歩き駆けて来る恋に追い抜かされそうになり、体当たりで止める。
「痛た…じゃあ、洋平先に見つけた方が奢るの!なら行っても良いでしょ?」
「良いぞ、俺様の勘を侮るなよ?なははははは」
「ふふん、私だって洋平探すの上手いんだか…」
恋が言い終わる前に花道は駆け出した。
出遅れた恋も駆け出し花道を追いかける。
「花道せこっ」
「なははははは、勝負にセコいもクソもあるかバカめ」
「バカにバカとか言われたくない!!」
恋は花道の後を追いかけながら心の中で思う。
絶対、口には出すまいかと思う言葉を。
(嬉しかったし…ありがとね)
花道の背を見つめ、追いかける恋の顔からは笑みが零れている。
しかし、そんな事を考えていた恋の前方で走る花道が、急にピタリと止まった。
恋は突然の事に止まれず花道にぶつかる。
すると、振り返った花道が恋を抱き締めた。
「な!?」
「俺は餃子をガツガツ食う女は嫌いじゃない。気兼ねしなくて良いからな。少しくらい太った恋も好きだ。その方が可愛いぞ」
恋は花道の胸元から視線を僅かに上げると思わず笑った。
そこには顔を赤くさせた花道がいたからだ。
「顔、真っ赤だし」
「黙れ!ただ、恋と気まずいのは好かん!」
「ありがとう」
恋は笑うと花道の背に手を回した。
花道は驚いた顔を恋に向けている。
「少しだけ…ね?」
恋がそう言って俯くと、花道は回していた手に少しだけ力を入れる。
恋はその暖かさに笑みが零れていた。
→アトガキ
洋平が隣りに座る恋に言った。
恋はラーメンと餃子、チャーハンを目の前にしてニコニコとしている。
しかも全て大盛り。
女子が食べるには少々…いや、かなり多い。
「何で?だってお腹空いてるし」
「太るぞ?」
洋平は呆れた顔をしてラーメンをすする。
恋はピクリと眉を動かし洋平を睨んだ。
「…うるさいよ」
「たくっ、花道からも何か言ってやれよ」
洋平は、恋の隣りでラーメンを追加注文している花道を見た。
今日は恋、花道、洋平の3人でラーメン屋に来ている。
3人は同じクラスという事もあり仲がよかった。
事の始まりは、花道が恋を晴子と間違えて声を掛けたからだった。
恋と晴子は背格好がとても似ている。
入学当初、恋が髪の長さをセミロングにしていたのにも由来していた。
だから花道は恋の後ろ姿を見て晴子と間違え、その後の花道の不遜な態度に恋がブチギレた。
それから何故か仲良くなったのである。
「恋」
「な、何?」
花道はチュルンと麺を吸い込むと、恋に箸を向けた。
「太っただろう」
「え!?」
突然言われた言葉に恋は驚愕する。
確かに近頃お腹回りが気になって来た恋だが、まだ標準体型の範囲なので気にしない様にしていた。
「腹に肉が付いたな。やはり晴子さんとは大違いだ。なはははは」
「な!?バカ言わないでよ!出てないもん!」
「なら、このハミ肉は何なのだ?」
花道は、恋の脇腹の肉を制服の上からプニョッと摘んだ。
瞬間、恋は顔を赤くして立ち上がる。
事の様子を見ていた洋平が、慌てて恋を止めた。
「やめとけよ、店内だぞ」
「うっさいよ、洋平!花道!あんたセクハラ!失礼!!えーっと…ハゲ!」
恋は押さえられていた洋平の手を退け、花道に指差し叫んだ。
洋平は溜め息を付き恋から手を放す。
「ハゲてないだろ…」
「えっと…赤頭!」
「見たまんまかよ…」
そう言うと洋平は呆れたのか、席に着きラーメンをまたすすり始める。
恋は突っ込みを入れられ言葉を探した。
「えぇっと…えぇっと…洋平!何て言えば花道を罵れるの!?」
「恋って悪口の語彙力ねぇよなぁ」
助けを求める恋を見て、洋平はククッと笑いながら水を飲む。
恋は顔を赤くさせ、テーブルをバンッと叩いた。
「洋平!」
「教えなくていいぞ、洋平。バカは教えてもバカのままだ」
今までの言葉を聞き流してラーメンを食べていた花道は、更に追加注文をしている。
「は、花道に言われたくないもん!ムカつく!!」
恋は、花道が今まさに口に含もうとしている餃子を奪い、口に含んだ。
「ぬぁぁ!貴様俺様が楽しみにしていた餃子を!!」
「ひゅん、ふぁたしの肉ちゅかんだふぁつよ」
恋は、思ってたよりも熱かった餃子を涙目になりながらも飲み込もうとしている。
洋平は見兼ねて水を差し出すが呆れていた。
「恋、飲み込んでから言わねぇと分かんねぇって」
「何が罰だ!ハミ肉は本当の事だろう、バカめ!!」
「聞き取れてんのかよ…」
洋平には上手く聞き取れなかった言葉も、花道にはしっかり聞き取れた様である。
恋は差し出された水を勢い良く飲むと、花道に向き直った。
「うっさいわね、ぶぁかぶぁか!!」
「何だとぅ!?」
そして花道も立ち上がり、2人は言い合いを始めた。
洋平はそんな2人を見て深く溜め息を吐いた。
***
「あれ?恋、今日はそんだけかよ?」
翌日、洋平は廊下を歩く恋の昼食を見て言った。
昨日の食欲とは打って変わり、恋はパン1つにジュース1本だけしか手にしていない。
「ん…」
「昨日、花道が言った事気にしてんのか?」
恋は俯き何も言わない。
洋平は苦笑いして恋の頭をポンポンと叩いた。
「はいはい。大変だな、恋も」
「な、何よ?」
「愛しの花道だもんな」
洋平はニヤリと笑い恋を見ている。
恋は瞬く間に顔を赤くさせた。
「そんな言い方しないでくれる!?別に花道なんか…」
「はいはい。まぁ、体壊さねぇ程度にな」
洋平は苦笑いを浮かべ、恋は頬を膨らませている。
その時教室から花道が出て来て、恋が手にしている昼食を見て驚いた。
「何だ恋、腹でも下したか」
「な!?バッカ、違うわよ!」
「じゃあ、何故そんなに少ないのだ!いつもはその5倍食べてるだろう」
「うるさいよ、花道には関係ないもん」
恋はベーっと舌を出すと駆けて行った。
残された花道は、駆けて行く恋の後ろ姿を見て首を傾げる。
「何だ、あいつは」
「花道…もうちょい気にしてやれよ?」
「何がだ?」
「はぁ…いや、いい」
洋平は溜め息を吐き花道の肩に手を置く。
花道は理解が出来ない様できょとんとしていた。
(お腹空いた)
恋は先刻から鳴るお腹の音に頭を悩ませる。
いつもより断然少ない量だった為、5時間目が始まり10分でお腹が空き始めた。
机に額を付けながらお腹の音と格闘する。
「おーい、誰だ?さっきから腹の音鳴ってんのは」
授業をしていた教師が、見兼ねたのか茶化す様に言った。
恋はお腹を押さえながら教師を見る。
気付いた教師は笑って恋に近付いた。
「たくっ、昼くらいちゃんと食えよー。只でさえ馬鹿なんだから、授業くらい集中出来るようにちゃんと食っとけ。栄養全部脂肪にでもいってんじゃねぇのかー?」
パコっと教師が恋の頭を叩き、教室内に笑いが起こる。
恋はキッと教師を睨んだ。
「何だ、その目は?たくっ、このクラスは…おい桜木!」
今度は、机で寝ていた花道を教師が教科書で叩く。
目の覚めた花道は教師を睨み付けた。
「たくっ、どいつもこいつも…」
教師はそう言ったが、花道に怯んだ様で授業を再開する。
花道は恋の方をチラリと見て、また机に突っ伏す様にして寝た。
放課後の学校は生徒達により賑わっていた。
授業という枠から解放されて皆、各々の行動の為にいそいそと準備を始める。
かく言う花道もその1人であった。
「花道、恋落ち込んでたぜ」
体育館へ行く為、いそいそと帰り支度をする花道に洋平が話し掛ける。
花道は鞄を手にし、立ち上がると洋平を見た。
「何がだ?」
「お前がハミ肉とか言うから、気にして昼少なくしてたんだからよ」
溜め息混じりに洋平が言ったが、花道は疑問符を頭上に浮かべるだけだった。
「何故そんな事をするんだ?」
「…まぁ、とりあえず謝っとけ」
洋平は深くは言わずに、花道の肩を軽く叩いた。
花道は理解出来ていない様だったが、恋の態度も気になっていたのでとりあえず、言われた通りに恋を探す事にする。
「恋」
花道は、教室とは反対側の廊下を歩いていた恋を見付け呼び止めた。
恋がゆっくり振り返れば、駆け寄った花道が恋の目の前にパンを差し出す。
「食え」
「いらないもん」
「食えと言うのだ」
花道はガサガサと袋を開けパンを取り出すと、恋の口に無理矢理押し付ける。
だが、口を開かない恋はパンを持つ花道の手を退ける。
「もう!やめてよ!」
「食わないからだろうが」
「いらないもん」
プイッとそっぽを向く恋は少し頬を膨らませる。
だが、内心食べたい欲求と戦っていた。
「腹減ってんだろ」
「減ってないもん」
「何、怒ってんだ」
「怒ってないもん」
「貴様が『もん』を語尾に付ける時は、機嫌が悪い時だ」
花道に言われ、恋はグッと言葉に詰まる。
恋にとってそれは無意識の事だった。
「そんな事ないも…ないよ!」
「うるさい、食え」
花道はまた恋の口元にパンを近付けるが、恋はそれを避けようとした。
すると、花道は恋の口を空いているもう片方の手も使い、無理矢理開こうとする。
「にゃ…ひゃにす…」
「うるさい、食えと言うのだー」
しばらくして、無理矢理に少しだけ開かされた口へとパンが突っ込まれた。
恋は仕方なく…というよりも欲に負けてパンを食べ始める。
「始めから素直になればいいのだ、バカめ」
花道は仁王立ちになり、パンを貪っている恋に言った。
恋はパンを食べる口の動きは止めずに返す。
「うるさいよ」
「恋」
急に名前を呼ばれ、恋がパクパクとパンを口に含みながら花道を見上げた。
「すまん」
花道は何の前触れなく頭を下げ、恋に謝っていた。
突然の事に、恋の食べる動作も止まる。
「ハミ肉を気にしてると洋平が…」
「だって出てるんでしょ」
「まぁ、出てないと言えば嘘になる」
花道は言葉を隠す事なく、ウンウンと首を振りながら言った。
その態度に恋は怒りが込み上げる。
「な!?」
「だが、恋はそのくらいでも可愛いだろうが」
「え!?」
恋は、思わず手にしていたパンを落とした。
今聞こえた言葉が頭に入っていかない。
そもそも、その言葉を頭が理解しようとしなかった。
「おい!貴様、折角俺様が買ってやったパンを!」
「うう、うるさい!いきなり変な事言うから…」
慌てて恋がパンを拾い上げると、花道がそのパンを奪い入っていた袋に入れた。
「思った事を言っただけだろ」
「花道、キモい!」
恋は、背筋に悪寒でも走った様な顔で花道を見る。
花道はパンを持つ手の力を強め、パンは見事にぶにゅりと潰れていた。
「何をぅ!?」
「優しい花道ってキモい」
「何?俺様が下手に出てやれば…」
花道はワナワナとパンを持つ手を震わせている。
恋はそっぽを向きながら言い返した。
「バカに言われても嬉しくないし」
「語尾に『し』が付くのは、嬉しい時に使うくせに」
「は!?」
ボソリと言った花道の声が聞こえず、恋は思わず聞き返す。
しかし、花道は答えようとはしなかった。
「何でもないわ、バカ者め」
「な!?」
恋が目くじらを立て、花道を叩こうと腕を上げた。
「なぁ、恋」
しかし突然名前を呼ばれ、その手は空を彷徨ったままだった。
「何?」
「部活終わったら、ラーメン食いに行くぞ」
「花道の奢りなら行くよ!」
恋は腕を下ろし即答すると、期待に満ちた笑顔を花道に向けていた。
「何!?パンをくれてやったんだから、今度は恋が奢る番だろう」
「勝手にくれたくせによく言うよ!」
「何をぅ!?そもそも、恋が元気ないのは気持ち悪い。原因は恋だ」
「な、何言って…」
勝手な花道の言い分に恋は心中穏やかではない。
しかし、そんな心中を知らない花道は気にせず踵を返した。
「ふん、洋平達と食いに行くからもういい。恋は来なくていいぞ、バカめ」
「な…行くから!ラーメン食べたい!」
「行かせん!」
花道は、早足で歩き駆けて来る恋に追い抜かされそうになり、体当たりで止める。
「痛た…じゃあ、洋平先に見つけた方が奢るの!なら行っても良いでしょ?」
「良いぞ、俺様の勘を侮るなよ?なははははは」
「ふふん、私だって洋平探すの上手いんだか…」
恋が言い終わる前に花道は駆け出した。
出遅れた恋も駆け出し花道を追いかける。
「花道せこっ」
「なははははは、勝負にセコいもクソもあるかバカめ」
「バカにバカとか言われたくない!!」
恋は花道の後を追いかけながら心の中で思う。
絶対、口には出すまいかと思う言葉を。
(嬉しかったし…ありがとね)
花道の背を見つめ、追いかける恋の顔からは笑みが零れている。
しかし、そんな事を考えていた恋の前方で走る花道が、急にピタリと止まった。
恋は突然の事に止まれず花道にぶつかる。
すると、振り返った花道が恋を抱き締めた。
「な!?」
「俺は餃子をガツガツ食う女は嫌いじゃない。気兼ねしなくて良いからな。少しくらい太った恋も好きだ。その方が可愛いぞ」
恋は花道の胸元から視線を僅かに上げると思わず笑った。
そこには顔を赤くさせた花道がいたからだ。
「顔、真っ赤だし」
「黙れ!ただ、恋と気まずいのは好かん!」
「ありがとう」
恋は笑うと花道の背に手を回した。
花道は驚いた顔を恋に向けている。
「少しだけ…ね?」
恋がそう言って俯くと、花道は回していた手に少しだけ力を入れる。
恋はその暖かさに笑みが零れていた。
→アトガキ
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