サモンナイト2夢 短編
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少しばかりだが、未だに人は訪れている。
しかし、その顔には落胆の表情が見て取れる。
一応、看板は立ててあるが、それを見ていない人を追い返す…もとい、事情を説明するのも今の仕事だ。
「さあ、帰った帰った!聖女はいないぜ!村もご覧の通りだ」
聖女の噂を聞きつけて人はやってくる。
ここはレルム村。
いや、村だった場所。
建物が焼け、荒廃したその土地は、もう村とは呼べなかった。
のどかな春の夜、突然、村は焼き討ちに遭った。
今でもその光景は覚えている…。
「アグラさん!リューグ!食事の用意ができたよ!」
「おお、有り難う」
「…こっちもきりにすっか」
焼けた建物の残骸を掃除していた二人は手を止めて、ユハの待つ家に帰る。
家と言っても、簡易的なものだ。
なにしろ、アグラさん一人で建てたものだ。
いくら木こりとはいえ、大掛かりな建築はできない。
それでも、十分生活はできたし、今は一人ではない。
「いただきます」
声を揃えて食べ物に感謝する。
そこには、一つの家庭がある。
レルム村が焼けたとき、一時的にサイジェントに避難した。
聖女、アメルと兄貴、ロッカは、知り合った旅人の先輩とやらの屋敷で世話になっている。
あいつらは安全な場所にいてくれればいい。
俺は、村を焼いた黒騎士をぶっ潰す。
…もっとも、あのとき力の差は思い知ったから、今は村の復興を手伝いながら鍛錬を重ねている。
対抗できるための力をつけるために。
ユハはというと、もともとは旅人たちの仲間だったが、俺がレルム村に戻るときに一緒についてきた。
俺と兄貴が黒騎士に対する意見の相違でぶつかったとき、
「ロッカが正しいと思う」
そういう声の中で、
「私は…リューグに賛成だな」
一人、そう呟いた奴だ。
黒騎士を倒す、そういう気持ちは認めてやるが、どうやら戦闘は苦手らしい。
大人しくアメルや兄貴と一緒にいればいいものを。
俺と一緒に黒騎士を倒しに行くと言ってきかず、結局ついてきた。
今は、こうしてアグラ爺も含め、三人で生活している。
この生活に不満はない。
だが、俺は早く黒騎士に勝てるだけの力をつけてぇ。
だから、午後は鍛錬に時間を割いている。
「はぁっ!」
一撃に力を込めて斧を振り下ろす。
汗が噴き出る季節だ。
「とうっ!とぁたぁてりゃーっ!」
隣でユハが短剣を振り回す。
こいつも鍛錬は欠かさない。
だが、短剣は素人の俺でも、無鉄砲な振り回し方をしていると思う。
そのため、
「はっ!」
「きゃっ!」
攻撃中の短剣を斧で弾くと、その得物は手から離れて簡単に飛んで行った。
「うう…いったぁ…」
ユハは衝撃の伝わった手を押さえる。
「攻撃中は隙だらけだし、振り回し方は適当だし…お前は黒騎士に勝つ気あんのか!」
「…ごめんなさい」
「謝っても変わんねーんだよ。もっと気持ちを込めて振れ」
こいつがいると気が抜ける。
それでも弱いとは言いきれない。
それは、
「!」
斧が空を切る。
「ちっ、まだ当たんねーか」
怒られてしゅんとしているときでも、俺の攻撃は避けられる。
自ら攻撃さえしなければ、こいつはなかなか厄介だ。
手合わせしたところで、俺の攻撃はユハをかすりもしない。
こいつは回避・防御専門の奴だ。
そんなわけで、足手纏い…とまでは言えない。
まあ、敵の手を煩わせる奴がいるだけマシか?
夕方。
今夜は星がよく見えそうだ、なんて思いながら外を見ていると、ユハが話しかけてきた。
「リューグ。お願い事書いて」
そう言って紙きれを差し出してくる。
「願い事?」
「うん。あの笹につけるの」
ユハが示す先にはなぜか昼間から立て掛けてあった謎の植物の枝。
どこから持ってきたんだろうか。
ごみかと思って焼却するやつと一緒にしようとしたら怒られた。
「今日は七夕っていって、私の故郷では笹に願い事をつける日なの」
「…そうかよ」
子供じみた行事だと思うが、故郷でしてたことだと言われると断る気は起きない。
故郷を焼かれた俺としては…少しなら協力してやってもいい。
「はいよ」
「レルム村が発展しますように…か。アグラさんと被ったなぁ」
そう言いながらユハは笹とやらにつけに行く。
「お前はどんな願い…って多っ!」
「え?」
ユハの手元には、色とりどりの紙きれがあった。
そのどれもに、願い事らしきものが書いてある。
「強欲じゃねぇか…」
「たくさんつけたほうが華やかかと思ったの!強欲じゃないもん!」
慣れた手つきでそれらを紙紐で結ぶ。
「…あ、これは後にしよ…」
そう言って、一つ紙をポケットにしまって、ユハは去っていった。
「?一緒につければいいじゃねぇか…」
つけられた紙を覗くと、打倒黒騎士!からアメルが幸せでいますように、まで様々な願いが書いてあった。
その中に私利私欲の願いはない。
「…強欲は言い過ぎたな」
少し笑みが零れた。
夜。
なんとなく寝付けなくて、台所に水を飲みに行った。
その脇には夕方願い事をつけた笹。
「…ん?」
一番上。
一番目立つ色。
…さっきこんなのあったか?
そこで、紙きれをしまいながら後にしようと言っていたユハを思い出す。
「そうか、これは俺らが寝静まるまでとっておいたってわけか…」
さぞかし私欲にまみれたものだろう、こんな目立つ場所につけて。
ちょっとした悪戯心でそれを覗く。
“リューグとずっと一緒にいられますように”
「…」
そういえば、“アグラさんが健康でいられますように”はあったが、俺に関することは一つもなかったな。
これが、あいつの、俺に関する願い…?
俺らが寝るまで隠しておくほど見せたくない、一番目立つように吊るされた私利私欲にまみれた願い…?
まさか、アメルたちと別れてサイジェントを出て来たのも、俺と一緒にいるためか?
「…そんなわけねぇか」
ちょっと自惚れ過ぎたようだ。
頭を掻きつつ、ベッドに戻る。
窓から見える星空が綺麗だ。
今度はよく眠れるかもしれない。
しかし、その顔には落胆の表情が見て取れる。
一応、看板は立ててあるが、それを見ていない人を追い返す…もとい、事情を説明するのも今の仕事だ。
「さあ、帰った帰った!聖女はいないぜ!村もご覧の通りだ」
聖女の噂を聞きつけて人はやってくる。
ここはレルム村。
いや、村だった場所。
建物が焼け、荒廃したその土地は、もう村とは呼べなかった。
のどかな春の夜、突然、村は焼き討ちに遭った。
今でもその光景は覚えている…。
「アグラさん!リューグ!食事の用意ができたよ!」
「おお、有り難う」
「…こっちもきりにすっか」
焼けた建物の残骸を掃除していた二人は手を止めて、ユハの待つ家に帰る。
家と言っても、簡易的なものだ。
なにしろ、アグラさん一人で建てたものだ。
いくら木こりとはいえ、大掛かりな建築はできない。
それでも、十分生活はできたし、今は一人ではない。
「いただきます」
声を揃えて食べ物に感謝する。
そこには、一つの家庭がある。
レルム村が焼けたとき、一時的にサイジェントに避難した。
聖女、アメルと兄貴、ロッカは、知り合った旅人の先輩とやらの屋敷で世話になっている。
あいつらは安全な場所にいてくれればいい。
俺は、村を焼いた黒騎士をぶっ潰す。
…もっとも、あのとき力の差は思い知ったから、今は村の復興を手伝いながら鍛錬を重ねている。
対抗できるための力をつけるために。
ユハはというと、もともとは旅人たちの仲間だったが、俺がレルム村に戻るときに一緒についてきた。
俺と兄貴が黒騎士に対する意見の相違でぶつかったとき、
「ロッカが正しいと思う」
そういう声の中で、
「私は…リューグに賛成だな」
一人、そう呟いた奴だ。
黒騎士を倒す、そういう気持ちは認めてやるが、どうやら戦闘は苦手らしい。
大人しくアメルや兄貴と一緒にいればいいものを。
俺と一緒に黒騎士を倒しに行くと言ってきかず、結局ついてきた。
今は、こうしてアグラ爺も含め、三人で生活している。
この生活に不満はない。
だが、俺は早く黒騎士に勝てるだけの力をつけてぇ。
だから、午後は鍛錬に時間を割いている。
「はぁっ!」
一撃に力を込めて斧を振り下ろす。
汗が噴き出る季節だ。
「とうっ!とぁたぁてりゃーっ!」
隣でユハが短剣を振り回す。
こいつも鍛錬は欠かさない。
だが、短剣は素人の俺でも、無鉄砲な振り回し方をしていると思う。
そのため、
「はっ!」
「きゃっ!」
攻撃中の短剣を斧で弾くと、その得物は手から離れて簡単に飛んで行った。
「うう…いったぁ…」
ユハは衝撃の伝わった手を押さえる。
「攻撃中は隙だらけだし、振り回し方は適当だし…お前は黒騎士に勝つ気あんのか!」
「…ごめんなさい」
「謝っても変わんねーんだよ。もっと気持ちを込めて振れ」
こいつがいると気が抜ける。
それでも弱いとは言いきれない。
それは、
「!」
斧が空を切る。
「ちっ、まだ当たんねーか」
怒られてしゅんとしているときでも、俺の攻撃は避けられる。
自ら攻撃さえしなければ、こいつはなかなか厄介だ。
手合わせしたところで、俺の攻撃はユハをかすりもしない。
こいつは回避・防御専門の奴だ。
そんなわけで、足手纏い…とまでは言えない。
まあ、敵の手を煩わせる奴がいるだけマシか?
夕方。
今夜は星がよく見えそうだ、なんて思いながら外を見ていると、ユハが話しかけてきた。
「リューグ。お願い事書いて」
そう言って紙きれを差し出してくる。
「願い事?」
「うん。あの笹につけるの」
ユハが示す先にはなぜか昼間から立て掛けてあった謎の植物の枝。
どこから持ってきたんだろうか。
ごみかと思って焼却するやつと一緒にしようとしたら怒られた。
「今日は七夕っていって、私の故郷では笹に願い事をつける日なの」
「…そうかよ」
子供じみた行事だと思うが、故郷でしてたことだと言われると断る気は起きない。
故郷を焼かれた俺としては…少しなら協力してやってもいい。
「はいよ」
「レルム村が発展しますように…か。アグラさんと被ったなぁ」
そう言いながらユハは笹とやらにつけに行く。
「お前はどんな願い…って多っ!」
「え?」
ユハの手元には、色とりどりの紙きれがあった。
そのどれもに、願い事らしきものが書いてある。
「強欲じゃねぇか…」
「たくさんつけたほうが華やかかと思ったの!強欲じゃないもん!」
慣れた手つきでそれらを紙紐で結ぶ。
「…あ、これは後にしよ…」
そう言って、一つ紙をポケットにしまって、ユハは去っていった。
「?一緒につければいいじゃねぇか…」
つけられた紙を覗くと、打倒黒騎士!からアメルが幸せでいますように、まで様々な願いが書いてあった。
その中に私利私欲の願いはない。
「…強欲は言い過ぎたな」
少し笑みが零れた。
夜。
なんとなく寝付けなくて、台所に水を飲みに行った。
その脇には夕方願い事をつけた笹。
「…ん?」
一番上。
一番目立つ色。
…さっきこんなのあったか?
そこで、紙きれをしまいながら後にしようと言っていたユハを思い出す。
「そうか、これは俺らが寝静まるまでとっておいたってわけか…」
さぞかし私欲にまみれたものだろう、こんな目立つ場所につけて。
ちょっとした悪戯心でそれを覗く。
“リューグとずっと一緒にいられますように”
「…」
そういえば、“アグラさんが健康でいられますように”はあったが、俺に関することは一つもなかったな。
これが、あいつの、俺に関する願い…?
俺らが寝るまで隠しておくほど見せたくない、一番目立つように吊るされた私利私欲にまみれた願い…?
まさか、アメルたちと別れてサイジェントを出て来たのも、俺と一緒にいるためか?
「…そんなわけねぇか」
ちょっと自惚れ過ぎたようだ。
頭を掻きつつ、ベッドに戻る。
窓から見える星空が綺麗だ。
今度はよく眠れるかもしれない。