サモンナイト2夢 短編
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夜のはじめ、一冊のノートを持ってユハはロッカの部屋を訪れた。
今日の昼間、約束したのだ。
「ロッカ、お願いがあるんだけど」
「何でしょう?」
幾分緊張して、私はロッカに声をかけた。
ロッカはいつも読書をしているイメージがある。
実際はそんなことないのだろうが、雨の日などは自室で過ごしていることが多い。
そのため、あまり話したことはない。
今日はたまたま、リビングで見つけた。
これ幸運と、かねてより考えていたことを思い切ってお願いしてみることにした。
「私にリィンバウムの文字を教えてくれないかな?」
「…?ユハさん文字わからないんですか?」
「うん、話せば長くなるけど…簡単に言うと、私は別の世界から召喚されたから、こっちの文字は知らないんだ。話す分にはなぜか話せるんだけど、リィンバウムの本はそれこそタイトルから読めなくて」
「なるほど。ユハさんは召喚獣だったのですね」
どう見ても人としか思えないが、名もなき世界より人が召喚されることがある…とは聞いたことがある。
召喚士じゃないからそのあたりのことはよくわからないが。
「そうですね…僕はこれから出かける用事があるので、夕飯が終わった後でも良いですか?」
「うん!よろしくお願いします!」
という訳で、今ここにいる。
ドアをノックすると、微かに返事が聞こえた。
「お邪魔します…」
「どうぞ」
部屋は片付いていて、どうやら私が来る前に簡単に掃除してくれたようだ。
とはいえ、ロッカの部屋だからもともと綺麗なんだろうが。
「それにしても、ユハさんからそんな依頼が来ると思いませんでした。教えることならネスティさんみたいな方が得意そうに見えるのに…どうして僕なんでしょう?」
「それは…」
率直に言うとロッカと交流したかったからなのだが、それを言うのは意識していることを知られるようで恥ずかしい。
「ロッカは読書してそうだし、子どもの扱いも上手そうだから教えるの得意かなって。ネスティに頼むとお説教の嵐になりそうなんだもん」
「あはは…確かにネスティさんはマグナさんに教えるだけでいっぱいいっぱいかもしれませんね」
では始めますか、と言って、ロッカは紙に文字を書き始めた。
「…と、これがリィンバウムで使われている標
準的な文字すべてです。意外と少ないでしょう?」
「確かに…これなら覚えられそう」
丁寧にノートに写し取る。
その途中で「ん?」と思った。
コツコツとペンの先でノートを叩く。
「どうかしましたか?」
「んー…この文字、私がいた世界のよその国の文字と似ているような…」
「そうなんですか?では覚えるのも捗りますね」
なぜかはわからない。
しかし私の少し知っている言語にそっくりだ。
もっとも、その言語も自由に扱えるわけじゃないから、勉強しなければ読むことも書くこともできないことに変わりはないのだが。
「でも、文字の書体というか書き方は全然違うなあ…こっちのほうが機械文字っぽい」
「そうですか」
やり取りをしながら、文字を繰り返し練習した。
「あ、それは違いますよ。ここはこういう書き順で…」
ロッカが私の手元でノートに文字を書いてくれる。
その距離は近くて、息が詰まりそうだ。
心臓がバクバク鳴る。
「こ、こうですか?」
「…聞いていましたか?こっちが先です」
何度も、何度も丁寧に。
緊張してロッカの言っていることがよく聞き取れない。
手も震える。
「こう…ですね」
「そうです」
合っていることを確認したのか、す、とロッカが離れる。
あんなに緊張していたのに、もう物寂しいような気がする。
私は我儘だ。
「ところで、ユハさんはどうして文字が知りたいんですか?言葉が話せるなら無理に読み書きできるようにならなくても…」
「えっとね…みんなのこと、もっと知りたいから。できることはしたいの」
ロッカのことが知りたい。
ロッカに近づきたい。
本当はそう思っているが、いきなりそんなことを言っても困らせてしまうだろう。
「勉強熱心ですね。良いことだと思います」
「有り難う」
「そういう一所懸命なところ、好きですよ」
「す…っ!?」
「?どうかしましたか?」
こいつは天然のタラシか。
過剰に反応してしまったわ。
…きっと、みんなにそう言っている。
そう思うことで、自分を落ち着かせる。
「…おおう…ありがと」
「さて、今日は基本の文字だけにしましょうか。復習も必要ですし、続きは明日」
「うん」
ノートを閉じる。
ふと、それにロッカの目が止まった。
「そのノートの表紙に書かれているのは、母国語ですか?」
「うん、そうだよ」
どのノートかわかるように、とりあえずタイトルを書いておいた。
リィンバウムの言語を覚えたら、その言葉でもタイトルをつける予定だ。
「どういう言葉でしょうか」
「それは内緒」
「え…じゃあ僕もユハさんの世界の言葉、覚えます」
「うーん、じゃあ一緒に勉強しよう。でも漢字は難しいよ」
「臨むところです」
そう言ってロッカと笑い合う。
ああ、一緒に勉強できるなんて、なんて幸せなんだ。
言葉を教えてもらおうと誘ってよかった。
そうそう、このノートの今のタイトルは…
『ロッカとユハの思い出』
今日の昼間、約束したのだ。
「ロッカ、お願いがあるんだけど」
「何でしょう?」
幾分緊張して、私はロッカに声をかけた。
ロッカはいつも読書をしているイメージがある。
実際はそんなことないのだろうが、雨の日などは自室で過ごしていることが多い。
そのため、あまり話したことはない。
今日はたまたま、リビングで見つけた。
これ幸運と、かねてより考えていたことを思い切ってお願いしてみることにした。
「私にリィンバウムの文字を教えてくれないかな?」
「…?ユハさん文字わからないんですか?」
「うん、話せば長くなるけど…簡単に言うと、私は別の世界から召喚されたから、こっちの文字は知らないんだ。話す分にはなぜか話せるんだけど、リィンバウムの本はそれこそタイトルから読めなくて」
「なるほど。ユハさんは召喚獣だったのですね」
どう見ても人としか思えないが、名もなき世界より人が召喚されることがある…とは聞いたことがある。
召喚士じゃないからそのあたりのことはよくわからないが。
「そうですね…僕はこれから出かける用事があるので、夕飯が終わった後でも良いですか?」
「うん!よろしくお願いします!」
という訳で、今ここにいる。
ドアをノックすると、微かに返事が聞こえた。
「お邪魔します…」
「どうぞ」
部屋は片付いていて、どうやら私が来る前に簡単に掃除してくれたようだ。
とはいえ、ロッカの部屋だからもともと綺麗なんだろうが。
「それにしても、ユハさんからそんな依頼が来ると思いませんでした。教えることならネスティさんみたいな方が得意そうに見えるのに…どうして僕なんでしょう?」
「それは…」
率直に言うとロッカと交流したかったからなのだが、それを言うのは意識していることを知られるようで恥ずかしい。
「ロッカは読書してそうだし、子どもの扱いも上手そうだから教えるの得意かなって。ネスティに頼むとお説教の嵐になりそうなんだもん」
「あはは…確かにネスティさんはマグナさんに教えるだけでいっぱいいっぱいかもしれませんね」
では始めますか、と言って、ロッカは紙に文字を書き始めた。
「…と、これがリィンバウムで使われている標
準的な文字すべてです。意外と少ないでしょう?」
「確かに…これなら覚えられそう」
丁寧にノートに写し取る。
その途中で「ん?」と思った。
コツコツとペンの先でノートを叩く。
「どうかしましたか?」
「んー…この文字、私がいた世界のよその国の文字と似ているような…」
「そうなんですか?では覚えるのも捗りますね」
なぜかはわからない。
しかし私の少し知っている言語にそっくりだ。
もっとも、その言語も自由に扱えるわけじゃないから、勉強しなければ読むことも書くこともできないことに変わりはないのだが。
「でも、文字の書体というか書き方は全然違うなあ…こっちのほうが機械文字っぽい」
「そうですか」
やり取りをしながら、文字を繰り返し練習した。
「あ、それは違いますよ。ここはこういう書き順で…」
ロッカが私の手元でノートに文字を書いてくれる。
その距離は近くて、息が詰まりそうだ。
心臓がバクバク鳴る。
「こ、こうですか?」
「…聞いていましたか?こっちが先です」
何度も、何度も丁寧に。
緊張してロッカの言っていることがよく聞き取れない。
手も震える。
「こう…ですね」
「そうです」
合っていることを確認したのか、す、とロッカが離れる。
あんなに緊張していたのに、もう物寂しいような気がする。
私は我儘だ。
「ところで、ユハさんはどうして文字が知りたいんですか?言葉が話せるなら無理に読み書きできるようにならなくても…」
「えっとね…みんなのこと、もっと知りたいから。できることはしたいの」
ロッカのことが知りたい。
ロッカに近づきたい。
本当はそう思っているが、いきなりそんなことを言っても困らせてしまうだろう。
「勉強熱心ですね。良いことだと思います」
「有り難う」
「そういう一所懸命なところ、好きですよ」
「す…っ!?」
「?どうかしましたか?」
こいつは天然のタラシか。
過剰に反応してしまったわ。
…きっと、みんなにそう言っている。
そう思うことで、自分を落ち着かせる。
「…おおう…ありがと」
「さて、今日は基本の文字だけにしましょうか。復習も必要ですし、続きは明日」
「うん」
ノートを閉じる。
ふと、それにロッカの目が止まった。
「そのノートの表紙に書かれているのは、母国語ですか?」
「うん、そうだよ」
どのノートかわかるように、とりあえずタイトルを書いておいた。
リィンバウムの言語を覚えたら、その言葉でもタイトルをつける予定だ。
「どういう言葉でしょうか」
「それは内緒」
「え…じゃあ僕もユハさんの世界の言葉、覚えます」
「うーん、じゃあ一緒に勉強しよう。でも漢字は難しいよ」
「臨むところです」
そう言ってロッカと笑い合う。
ああ、一緒に勉強できるなんて、なんて幸せなんだ。
言葉を教えてもらおうと誘ってよかった。
そうそう、このノートの今のタイトルは…
『ロッカとユハの思い出』