サモンナイト2夢 短編
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ユハは、薄い上着を纏って駆けて行く。
今日は、レイムとデートする日。
衣替えが必要なこの時期に、何を着ていくか迷っていたら、待ち合わせの時間になってしまった。
日中は暖かくなってきたが、まだ朝晩は冷える。
そのため、ワンピースの上に上着を着てきた。
待ち合わせはいつもと同じ夜のはじめだが、晴れて空気も澄み通っている、いい日だった。
「レイムさーん!」
「ユハさん」
待ち合わせ場所に行くと、もうレイムは来ており、噴水の縁に腰掛けて手持ち無沙汰にしていた。
「ごめんなさい、待ちました?」
「いえ、先程来たところですから」
ユハが来たところでレイムは立ち上がり、二人並んで歩き出す。
どこというあてもなく、ただゆっくり、歩いてゆく。
ユハはううんと大きく息をする。
「もう夜の匂いがしますね!」
「夜の匂い?」
「春から夏にかけての夜の匂いです。私この匂い大好きなんです」
ユハは、満面の笑みでレイムを見た。
「なるほど、この時期の草木の香りをそのように表現するのですね。素敵です」
「えへへ」
本当は何の匂いか知らないから、語る言葉を持っていないからそういう表現になったのだが、レイムに褒められると悪い気はしない。
「こんな夜は外で演奏したくなりますね」
「わあ、素敵ですね」
どちらともなく近くのベンチに座って、一息ついた。
レイムは竪琴を取り出す。
綺麗な指がその竪琴の上をなぞり、ぽろん、ぽろん、と音を出す。
「さて、何を弾きましょうか」
「こんな夜に相応しい曲をお願いします」
するとレイムの手が宙を舞い、次の瞬間には竪琴に下ろされた。
静かに、そっと曲が始まる。
不思議な旋律。
柔らかで、少し悲しげで、同じフレーズが繰り返されるのに、少しずつそれは変化していって。
こんな静かな夜に聴きたくなる、素敵な曲。
「レイムさん…天才ですね」
「私は演奏しただけですよ」
「でも、こんな想いが籠って…こちらまで切なくなるような、素晴らしい演奏ができるのは、やっぱりレイムさんだからなんだと思います。私にとっては、最高の演奏です。だからやっぱり天才だと思います」
「ふふ、演奏のし甲斐がありますね。差し詰めユハさんは、私にとって最高の観客というところでしょうか」
二人顔を合わせて微笑みあう。最高の時間だ。
「たくさん聴かせてください。私、実は耳コピして楽譜に起こせるんです」
「ほう、そんな特技がありましたか」
「はい。戦闘じゃ役に立たないですけど…幼い頃ちょっと、音楽をかじったので」
「こんな世の中ですけど、戦闘だけがすべてじゃないですよ。素晴らしい特技じゃないですか」
「レイムさんに聞かせてもらった曲ぜんぶ、楽譜に起こしたい。そしてそれをまとめて、レイムさんという人をみんなに知ってもらいたい。こんなに素敵な人がいるんだよって。音楽は不滅ですから」
「貴女にそう思ってもらえるのは、嬉しいですね」
「レイムさん…私、感動しています」
「有り難うございます」
ユハの瞳は潤んで、今にも涙が零れ落ちそうだった。
レイムはそっと、彼女を抱きとめる。
「レイムさん…」
彼女はその頭を、レイムの胸に擦り寄せた。
「…こんな日が続けばいいのに」
「それはどうでしょうね」
レイムはユハを抱いたまま、続ける。
「無論短期的には続けられるでしょう。しかし、貴女も私もずっとこの生活を続けてはいられない。そうなったとき、私たちは…進んでいくのですよ。その過程で、道を違えるかもしれない」
「やっぱり、そうですよね…ずっと一緒には、いられないというか…」
「…しかし、必ずしもそうであるとは限りません」
「どういうことですか?」
ユハは顔を上げる。
「私たちは目指すことができます…私たちの望む未来を。そしてまた、私たちはこの関係性を更に進めることもできます。ユハさん。貴女はどういう未来を目指しますか?」
「私は…」
ユハは少し思案する。
私の望む未来、それは。
「レイムさんと一緒に笑っていられる未来を、目指します」
「…よくできました」
しかしユハは知っている。
目の前の愛しき人が同じ未来を目指してくれるとは限らないことを。
「…レイムさんは、どういう未来を目指すんですか?」
「私ですか?そうですね…以前マグナさんにもお伝えしたのですが、語るべき詩を探しています。それは、嘘ではありませんよ」
「はっきりとは教えてくれないんですね」
「まだ、どう出るかわかりませんから」
答えは未来が持っている。
私たちは、ただ懸命にそこを目指すだけ。
「今日は有り難うございました」
「いえ、こちらこそ。楽しかったですよ」
「また、会いたいです」
「はい。また」
レイムさんにお礼を言って、別れる。
さようならの時間は、いつも寂しい。
でも、その寂しさも今は受け入れたい、そう思った。
レイムさんの演奏した曲が耳に残っている。
今夜はこの曲を全身で享受して眠ろう。
季節は春から夏へ。
夜の匂いがする。
今日は、レイムとデートする日。
衣替えが必要なこの時期に、何を着ていくか迷っていたら、待ち合わせの時間になってしまった。
日中は暖かくなってきたが、まだ朝晩は冷える。
そのため、ワンピースの上に上着を着てきた。
待ち合わせはいつもと同じ夜のはじめだが、晴れて空気も澄み通っている、いい日だった。
「レイムさーん!」
「ユハさん」
待ち合わせ場所に行くと、もうレイムは来ており、噴水の縁に腰掛けて手持ち無沙汰にしていた。
「ごめんなさい、待ちました?」
「いえ、先程来たところですから」
ユハが来たところでレイムは立ち上がり、二人並んで歩き出す。
どこというあてもなく、ただゆっくり、歩いてゆく。
ユハはううんと大きく息をする。
「もう夜の匂いがしますね!」
「夜の匂い?」
「春から夏にかけての夜の匂いです。私この匂い大好きなんです」
ユハは、満面の笑みでレイムを見た。
「なるほど、この時期の草木の香りをそのように表現するのですね。素敵です」
「えへへ」
本当は何の匂いか知らないから、語る言葉を持っていないからそういう表現になったのだが、レイムに褒められると悪い気はしない。
「こんな夜は外で演奏したくなりますね」
「わあ、素敵ですね」
どちらともなく近くのベンチに座って、一息ついた。
レイムは竪琴を取り出す。
綺麗な指がその竪琴の上をなぞり、ぽろん、ぽろん、と音を出す。
「さて、何を弾きましょうか」
「こんな夜に相応しい曲をお願いします」
するとレイムの手が宙を舞い、次の瞬間には竪琴に下ろされた。
静かに、そっと曲が始まる。
不思議な旋律。
柔らかで、少し悲しげで、同じフレーズが繰り返されるのに、少しずつそれは変化していって。
こんな静かな夜に聴きたくなる、素敵な曲。
「レイムさん…天才ですね」
「私は演奏しただけですよ」
「でも、こんな想いが籠って…こちらまで切なくなるような、素晴らしい演奏ができるのは、やっぱりレイムさんだからなんだと思います。私にとっては、最高の演奏です。だからやっぱり天才だと思います」
「ふふ、演奏のし甲斐がありますね。差し詰めユハさんは、私にとって最高の観客というところでしょうか」
二人顔を合わせて微笑みあう。最高の時間だ。
「たくさん聴かせてください。私、実は耳コピして楽譜に起こせるんです」
「ほう、そんな特技がありましたか」
「はい。戦闘じゃ役に立たないですけど…幼い頃ちょっと、音楽をかじったので」
「こんな世の中ですけど、戦闘だけがすべてじゃないですよ。素晴らしい特技じゃないですか」
「レイムさんに聞かせてもらった曲ぜんぶ、楽譜に起こしたい。そしてそれをまとめて、レイムさんという人をみんなに知ってもらいたい。こんなに素敵な人がいるんだよって。音楽は不滅ですから」
「貴女にそう思ってもらえるのは、嬉しいですね」
「レイムさん…私、感動しています」
「有り難うございます」
ユハの瞳は潤んで、今にも涙が零れ落ちそうだった。
レイムはそっと、彼女を抱きとめる。
「レイムさん…」
彼女はその頭を、レイムの胸に擦り寄せた。
「…こんな日が続けばいいのに」
「それはどうでしょうね」
レイムはユハを抱いたまま、続ける。
「無論短期的には続けられるでしょう。しかし、貴女も私もずっとこの生活を続けてはいられない。そうなったとき、私たちは…進んでいくのですよ。その過程で、道を違えるかもしれない」
「やっぱり、そうですよね…ずっと一緒には、いられないというか…」
「…しかし、必ずしもそうであるとは限りません」
「どういうことですか?」
ユハは顔を上げる。
「私たちは目指すことができます…私たちの望む未来を。そしてまた、私たちはこの関係性を更に進めることもできます。ユハさん。貴女はどういう未来を目指しますか?」
「私は…」
ユハは少し思案する。
私の望む未来、それは。
「レイムさんと一緒に笑っていられる未来を、目指します」
「…よくできました」
しかしユハは知っている。
目の前の愛しき人が同じ未来を目指してくれるとは限らないことを。
「…レイムさんは、どういう未来を目指すんですか?」
「私ですか?そうですね…以前マグナさんにもお伝えしたのですが、語るべき詩を探しています。それは、嘘ではありませんよ」
「はっきりとは教えてくれないんですね」
「まだ、どう出るかわかりませんから」
答えは未来が持っている。
私たちは、ただ懸命にそこを目指すだけ。
「今日は有り難うございました」
「いえ、こちらこそ。楽しかったですよ」
「また、会いたいです」
「はい。また」
レイムさんにお礼を言って、別れる。
さようならの時間は、いつも寂しい。
でも、その寂しさも今は受け入れたい、そう思った。
レイムさんの演奏した曲が耳に残っている。
今夜はこの曲を全身で享受して眠ろう。
季節は春から夏へ。
夜の匂いがする。