第195話:『吹雪VSアデラ ファクト団の存在』
シークレットサービス管理の島にある研究所
今、この周りでは、フロンティアとビューティフルジャスティスとの戦いが繰り広げられている。
フロンティアの数は5人に対し、ビューティフルジャスティスは、組織メンバー全員。100人以上は少なくともいる。
数で言えば、ビューティフルジャスティスの方が上かもしれない。
だが、フロンティアに所属する者たちは少人数の中、戦い抜き、そして5人の幹部の内、3人は戦闘不能となっている。
そして、今、幹部シャインレディのリーダーであるアデラと吹雪が戦っていた。
激しい戦闘を2人で繰り広げている。
しかし、そんな戦いが繰り広げている中、フードを被った男性が、シークレットサービス管理下の研究所にあるシステム室へ潜入していた。
この男が所属しているのは、ビューティフルジャスティスでもフロンティアでもない…。
そう、今はあまり有名ではない。ファクト団と言う組織のものだった…。
第11OP『夜鷹の夢《Do As lnfinity》』
第195話:『吹雪VSアデラ ファクト団の存在』
システム室へ潜入しているフードを被った男が、通信機を使って、どこかと連絡を取り合っていた。
謎の男:「えぇ、わかってます。上を叩けば、組織は終わりです。所詮、女だらけの組織です。我々、ファクト団の敵ではありませんよ」
フードを被った男は、そう言って通信を切る。
謎の男:「所詮、こうなる運命だったか」
謎の男は、手元にあるビューティフルジャスティスの組織メンバーのリストの資料を、周辺にばら撒く。
勿論、その資料の中には、ボスのヴィヴィエンや、幹部たちのリストも入っていた。
その頃、吹雪はアデラと戦っていた。
アデラは、代行者と名の付くモンスターとの限界勢力を駆使し戦っている。
今、現在も”英知の代行者マーキュリー”と限界勢力を使って背中に翼が生え、空を飛んでいる。
吹雪:「フレア・バーン!」
レッドアイズ・ガレオンから赤い光線を連続で放ち、アデラを落とそうとするも、アデラは全て攻撃を躱した。
アデラ:「レッド・プラネットの刃!」
右手を手刀にして、そこから炎が噴き出し刃となる。
アデラは、その炎の手刀で、吹雪に接近する。
吹雪も、レッドアイズ・ガレオンの砲身についている刃で、その手刀を受け止める。
吹雪:「はぁ、はぁ」
吹雪は少し息が上がっていた。
アデラ:「ん?息、上がってるわね。まだ戦ってそんなに時間経ってないわよ」
吹雪:「そうだねっ…!」
レッドアイズ・ガレオンで受け止めている炎の手刀を振り払い、少しだけ距離を取る。
吹雪:「でも、僕もいい歳だからさ。少しは加減ぐらいしてほしいな」
アデラ:「あら、敵にお願いごと?悪いけど、私、敵のお願いを聞く趣味はないよ」
吹雪:「だよねっ…!」
レッドアイズ・ガレオンから再び赤いビームを放つ。
アデラ:「シャーティルの羽は時に、炎の力を纏うこともあるのよ」
余裕の笑みを浮かべながら、アデラの身体に赤いオーラが纏われる。
アデラ:「シャーティルの羽-火炎」
シャーティルの羽が突然、炎で象った翼になる。
吹雪は、身に覚えのある羽だった。
そう、つい昨日のこと。初めて、アデラと戦ったときに、彼女は今の羽を背中から出して戦っていた。
吹雪:「限界勢力、…いや炎の属性波動の力を加えたのか…」
吹雪はアデラの羽を見てそう解析した。
アデラは「正解」と一言言って、炎で象った翼の形状を少し変化させ、羽から火の玉を無数に放ち、吹雪の攻撃を全てかき消した。
吹雪:「流石、幹部のリーダー。強いね」
今の攻撃を見て、アデラを関心してしまう吹雪。
アデラは、地上に降りる。
アデラ:「お褒めの言葉ありがとう。この翼は、私自身の強さの証。奴らを倒すための、強さを…」
アデラが背中から生えている炎の翼を見て、そう言った。更に、拳を握り占める。
吹雪:「奴ら?」
確かにアデラはどう言っていた。
一体、何のことなのか吹雪には理解できなかった。
アデラ:「そう、ビューティフルジャスティスを苦しめている連中のことよ。あなたには、あまり関係のないことよね」
吹雪:「!」
元帥から聞いていた。最近、ビューティフルジャスティスを影で苦しめている奴がいる可能性がある…。まさか本当だったとは…。
アデラ:「少し休憩しましょ。私と、ここまで戦ってくれたお礼に、色々教えて上げるわ」
アデラの背中に生えていた炎の翼が消える。
吹雪:「ビューティフルジャスティスの裏に別の組織がいる可能性がある。僕も、元帥からそう聞いてたけど、本当だったんだね」
吹雪の言葉を聞いて、アデラは少し驚いた表情をする。
アデラ:「もう日本の組織にも、私たちの組織の情報は筒抜けのようね。そう、ビューティフルジャスティスは、ある組織によって操られている。力を求め、そして手に入れるためなら手段を選ばない謎の組織…”ファクト団”」
アデラの口から語られる組織名”ファクト団”。
吹雪:「ファクト…確か英語で、真実・事実を意味する言葉だったね」
アデラ:「えぇ、私たちも詳細な情報は知らないわ。ファクト団は、表向きでは全然姿を現さない謎の多い組織だから。でも、長年、神秘の石版について研究しているという話しを聞いたことはあるわ。神秘の石版に掛かれている文字の解読。そして、石版は何を示しているのか。それを追い求めているってね」
吹雪:「それが、ビューティフルジャスティスを操っている組織…」
吹雪は小さい声で呟いた。
吹雪:「どうして、君たちの組織とファクト団は手を組んでいるんだい?正直、怪しい組織なら、切り捨てるべきじゃないのかい?」
吹雪は、思ったことをアデラに聞いた。
確かに、怪しい組織なら、同盟を破棄すればいいだけのこと。その後、奇襲をかけてくるかもしれないが、対抗する手段はあるはずだ…。
アデラ:「それができないのよ」
吹雪:「?」
アデラ:「知っての通り、ビューティフルジャスティスは女性だけで、構成された組織。これは、元々ヴィヴィエンがアメリカホワイトハウスの防衛隊のリーダーを務めていたとき、同じチームだった女性たちをかき集めて作り上げられた組織であり、それから仲間を増やしてきて人数を確保してきた。女性だけの組織なんて、現実世界には存在しない。だから、ビューティフルジャスティスを有名な組織にして、強力な組織にしようと思っていた」
組織を強くする。組織のボスのほとんどはそうしたいだろう。
百々原元帥も、人々を守るためにフロンティアは強くならなくてはいけないと言っているぐらいだ。
アデラ:「だけど、現実は甘くなかったわ。戦いに参加すれば、他の組織に比べビューティフルジャスティスの死者は多く、死に恐怖してやめる者たちも多かった。組織は、弱体化していくだけだった。そんな弱いビューティフルジャスティスの前に現れたのが、ファクト団だったのよ」
弱体化した組織に、希望を与えてやると言わんばかりに現れた組織、それがファクト団だった。
アデラ:「ファクト団は、同盟を組み、力を与える代わりに、自分たちの配下になってもらおうと脅し文句を言ってきたわ。私たちは、それを聞くだけしかなかった。ファクト団の言う通りに動き、ずっとアメリカの治安を守る組織のはずが、裏では悪事に手を染め、ファクト団の思うがままに動いてきたのよ」
吹雪:「もしかして、麗しのブランイヤリングも?」
アデラ:「そうね。あれもファクト団が欲しがっているもの。でも私たちも欲しがっているのは事実よ。麗しのブランイヤリングも、凄まじい力を持つ代物。それを手に入れて、ファクト団を壊滅させようと思っているから」
吹雪:「なぜ、最初から他の組織に要請しなかったんだい?麗しのブランイヤリングを手に入れてしまえば、ファクト団はおろか、僕たちもフロンティアも敵に回すことになる。フロンティアの元帥は、話せばわかってくれる人だ」
アデラの話しを聞いた吹雪は、段々彼女たちを救いたくなってきた。
謎の組織ファクト団。他の組織を操り、自分たちの手は汚さず、力を求める組織。
やることがせこすぎると吹雪は内心思っていた。
アデラ:「これは、ビューティフルジャスティスの問題よ。他の組織の手を借りるつもりはないわ」
吹雪:「しかし…」
アデラ:「それに、知りたかったのよ。ファクト団の正体を。私たちの手で」
拳を握り占めるアデラ。
その拳には、怒りに満ち溢れているようにも見えた。
アデラ:「ファクト団は、国家政府でさえ手こずっている団体組。組織階級に属さず、世界の裏で何かをも眩んでいると噂もされているわ。最近では、”サイコパワー”っていう力にも、手を付けているらしいわ」
ファクト団の新たな機密情報。それは、サイコパワーという力の研究。
吹雪:『サイコパワー…、確かどっかで…』
吹雪は、その力のことをどこかで聞いたような感じがした。
誰だったか、その力をかつて持っていたとか…。
吹雪は誰だったか思い出そうとするが、そこにアデラが話しかけてきた。
アデラ:「ねえ、あなたファクト団のことは聞いたことはあるの?」
吹雪:「いや、初めてだ。元帥からも、そんな組織の名前は聞いていない。だけど…」
吹雪は、アデラから聞いた話を総合して、何かを思った。
吹雪:「その連中、そのまま野放しにはできないよね。これからの戦い、そのファクト団が、僕たちフロンティアを襲ってくるのも、そう遠くはない」
なぜなら、ファクト団同様、フロンティアもここ最近、神秘の石版の研究を開始したからだ。
理由は、その石版を読み解くことができる人物が現れたこと。
その1人に、吹雪の妹、明日香もいる。
勿論、フロンティアも神秘の石版の研究結果は機密情報扱いで、研究に携わっていない者たちにデータを見せることはない。
アデラ:「さっきも言ったけど、連中は欲しいものはどんな手段を使っても手に入れようとするわ。多くの犠牲が出てもね」
吹雪:「ファクト団と手を組んで、ビューティフルジャスティスは変わったのかい?」
吹雪の言葉に、アデラは首を振った。
アデラ:「力を与えてくれるって言いながら、対したことはしてくれなかったわ。カードをくれたぐらいかしら。でも、ファクト団と手を組んで、無理な仕事を押し付けられる所為で、仲間たちも苦しめられる一方。ファクト団に対する怒りでいっぱいよ」
アデラは、掌を見つめる。
アデラ:「だから、この手で力を手にして、ファクト団を潰すのよ。奴らが、どんな手段を使っても欲しいものを手にするなら、こっちはどんな手段を使ってでも、ファクト団を倒す」
見つめる掌を拳にする。
吹雪:「だが、まだ勝てる見込みはない。なら、やはり他の組織と手を組んだ方が―」
アデラ:「さっきも言ったでしょ。これは、ビューティフルジャスティスの問題。ヴィヴィエンも他の組織と手を組むつもりはないわ!」
アデラの表情が変わった。
アデラ:「話しはここまで。さっきの続きよ」
アデラが手元にカードを持つ。そのカードは、”奇跡の代行者ジュピター”だった。
アデラの背後にジュピターの幻影が現れ、アデラと1つになる。
アデラ:「ジュピターの領域」
アデラの身体が輝き、周辺が円形状に輝きを放つ。
まるで、ここは自分が治める領域のように…。
吹雪:「これは…!」
アデラ:「これより、この周辺は、私の領域よ。覚悟しなさい!」
アデラが背中から先ほどと同じ炎で象った翼を広げる。
シャーティルの羽-火炎と言うアデラが炎の属性波動を使用して行うものだ。
翼を羽ばたかせ、吹雪に接近する。
吹雪:「くっ、話しを聞く耳を持たないか。なら、動きを止めて…!」
吹雪がレッドアイズ・ガレオンを構えようとする。
しかし、吹雪の身体はピクリとも動かなかった。
吹雪:『身体が…動かない…』
アデラ:「さっきも言ったでしょ。この周辺は、私の領域だって!」
アデラは、吹雪の画面を蹴り飛ばした。
吹雪:「ぐはっ!」
吹き飛ばされた吹雪。口元が切れ、血が垂れる。
吹雪:「ジュピターの領域…。自分が有利になる領域ってところかな」
アデラ:「まあ、そういうところかしら。この領域に入ってしまえば、あなたの動きは封じられる。そして、私の攻撃は、通常よりもパワーが上がっているわ」
アデラの背後に、力の代行者マーズの幻影が現れ、アデラと1つになり、手刀で炎で象った剣を生成した。
その炎の剣はさっきよりも刀身が長かった。
アデラ:「さあ、これで終わりよ!炎で焼き尽くしてあげるわ」
アデラが手刀に灯った炎の剣で、吹雪にトドメを差すつもりのようだ。
吹雪は反撃しようとするも、やはり身体が動かず、手が止まってしまう。
レッドアイズ・ガレオンの銃口は下に向いたままだ。
吹雪:「くっ!」
アデラ:「無駄よ。もう、あなたに勝ち目はないわ」
アデラが空を飛ぶ速度を上げ、吹雪に接近する。
吹雪:「まだだ!ヒュドール・アヴラ!」
吹雪が水の属性波動をレッドアイズ・ガレオンに送り、銃口から水を放出する。
そして、銃口から放った水は吹雪を守るようにバリアを張り、アデラの接近を封じる。
アデラ:「そう言えば、あなた、水の属性波動を使えたんだったわね。水属性は、防御に特化した属性。破るのは、困難でもあるけど、それは所持者が強ければの話し。悪いけど、あなたから、私が満足するような強さは感じられないわ」
アデラは”死の代行者ウラヌス”のカードを手に持ち、頭上にウラヌスの幻影が現れる。
アデラ:「ここからは、恐怖があなたを襲うわ!」
ウラヌスとアデラの身体が1つになる。
アデラ:「ウラヌスの棺桶!」
アデラがそう叫んだと同時に、周辺の地面が崩れ落ちる。
吹雪:「何っ!」
吹雪は崩れ落ちる地面の下に落ちる。
アデラ:「悪いけど、捕えさせてもらうわ」
吹雪が落ちる先には、黒い棺桶が宙に浮かんでいた。
蓋が開いており、まるで吹雪を待っているような雰囲気だった。
吹雪:「くっ!」
吹雪は、レッドアイズ・ガレオンから赤いビームを放ち、棺桶を破壊しようとするが、棺桶は思った以上に固くできており、吹雪のレッドアイズ・ガレオンの銃弾を弾き返す。
アデラ:「悪いけど、捕えさせてもらうわ」
アデラが右手を動かす。その動かし方を見る限り、棺桶を操作しているようだ。
蓋が開いた状態の棺桶が、下に落ちる吹雪を棺桶に入れる。
アデラ:「捕えたわ」
アデラがそう言うと、棺桶の蓋が閉じる。
これで、吹雪は棺桶から出ることはできないわけだ。
アデラ:「そこから脱出はできないわ」
アデラが炎で象った剣、もとい手刀を構え、炎の翼を羽ばたかせ、吹雪に接近する。
アデラ:「せめて苦しまずに、あの世に逝かせてあげる!」
アデラが、その手刀を棺桶に向け、炎の剣が棺桶を貫いた。
棺桶の中で躱すことはできない。
確実に、この炎は吹雪を貫き、そしてこれから焼き殺すことになる。
アデラ:「マーズの火葬!」
棺桶が炎に包まれ、突き刺している炎の剣を抜く。
棺桶の中にいる吹雪がどんな姿になっているのか、想像しただけで気持ち悪くなる。
普通の炎より燃え方が激しく、もう骨まで焼き尽くしているのではないかとアデラは思った。
アデラ:「ファクト団の情報、冥土の土産になっちゃったわね。でも、ファクト団は、私たちビューティフルジャスティスの獲物。手出しはしてほしくないの」
アデラが棺桶から離れようとする。
???:「フレア・スレイヤー!」
アデラ:「!」
上空より、炎で象ったドラゴンが、アデラに向かって襲いかかってきた。
アデラ:「華麗なるフェアタイディグング!!」
創造の代行者ヴィーナスと限界勢力し、輝く両手で円を描き、バリアを張る。
直接攻撃を受けるのは阻止できたものの、今の攻撃でジュピターの領域が解けてしまい、地面が元に戻る。
アデラは地面に着地し、ダメージを受けた左腕を押さえる。
アデラ:「どうして…」
アデラは理解に苦しむ。なぜなら、自分の目に映っているのは、さっき棺桶に閉じ込めて刺し殺し焼き尽くしたはずの吹雪だったからだ。
しかも、吹雪は空を飛んでいる。
吹雪:「危ないところだったよ。これがなかったら、今頃死んでた」
吹雪は自分の背中に生えている翼を見て呟く。
アデラ:「それは、もしかして限界勢力の力かしら…?」
吹雪:「レッドアイズ・フリューゲル。レッドアイズ・ブラック・ドラゴンと限界勢力することで使える僕の翼さ」
棺桶に閉じ込められる直前に、レッドアイズ・ブラック・ドラゴンと限界勢力し、棺桶に閉じ込められた振りをして、実は棺桶の裏に穴を開けて脱出したのだ。
アデラ:「まさか、そんな隠し玉を持っていたなんてね…」
アデラは立ち上がる。
吹雪:「別に隠していたわけじゃない。ただ、使いたくなかっただけさ」
アデラ:「どういう意味かしら?」
アデラが真剣な眼差しで、吹雪に聞いた。
吹雪:「僕は女性と戦うのが苦手でね。本気を出したくても、本気を出せない体質になっちゃっているんだ。だから、ずっと限界勢力を出せなかった。でも、死を目前にした所為か、自然と、この力を使ってしまったよ」
吹雪は地面に着地し、翼を消す。
アデラ:「私、嘗められていたみたいね。まさか、本気で戦えない男を倒すために、手こずっていたなんて。でも、どうしてかしら…」
アデラの表情は突然、怒りに溢れたような表情になっていた。
アデラ:「バカにされた感じがして、無性に腹が立ってきたわ」
アデラは”神秘の代行者アース”のカードを持ち、身体中が強い輝きに覆われる。
吹雪はあまりの眩しさに目を閉じそうになる。
アデラ:「なら、私も本気の本気で、あなたに最後の攻撃を放つわ」
アデラの頭上に地球のような球体が現れる。
アデラ:「全ての代行者よ、集え!」
アデラの身体から、残り6体の代行者、”マーズ”、ジュピター”、”ヴィーナス”、”ウラヌス”、サターン”、”マーキュリー”が抜け出し、頭上でアースを囲うように位置に着く。
アデラ:「これが、私の最終兵器!」
6体の代行者が、アースに力を与え、そして神秘の代行者アースが、みんなの力を集わせて、新たな武器を光で生成した。
その武器の見た目はライフルのような形で砲身が随分長いものだった。
アデラ:「これで、あなたを貫くわ!」
アデラが、光で生成したライフルを構え、銃口を吹雪に向ける。
吹雪:「キミがそう来るなら、僕も迎え撃つだけだよ」
レッドアイズ・ガレオンを前に突き出す吹雪。
そして、黒い輝きと共に吹雪は呟いた。
吹雪:「セカンドステージ、レッドアイズ・ガレオン」
黒い輝きの中でレッドアイズ・ガレオンは形状を変え、パワーアップする。
砲身が長くなり、見た目だけでパワーが上がったように見えるその形状は、まさに黒き竜の姿、そのものだった。
吹雪も銃口を、アデラに向ける。
吹雪:「下がるつもりはないんだね?」
アデラ:「ええ、私をバカにした罪、その身で償ってもらうよ」
吹雪:「別にバカにしたつもりはないよ。もし怒らせてしまったのなら謝る。でも、女性に対して本気になれないのは本当のことなんだ。妹以外だけどね」
余裕の笑みで、自分の弱いところを語る吹雪。それを見たアデラは更に怒りを増した。
アデラ:「あなたに、ファクト団の情報を教えたのは間違いだったのかもしれないわね。ビューティフルジャスティスはアメリカの治安を守る組織だけど、今だけは本気で、あなたを殺すために、この引き金を引くわ」
アデラが持つ光で生成したライフルの銃口にエネルギーが溜められる。
吹雪:「僕は死なないよ。妻と娘たちが待っているからね」
吹雪もセカンドステージ状態のレッドアイズ・ガレオンにエネルギーを溜める。
吹雪とアデラの火花が散る中、互いに持つデュエルギアが攻撃できるほどのエネルギーを蓄えた。
アデラの背後に7体の代行者の幻影が現れ、そして彼女は引き金を引いた。
アデラ:「グラビテーション・ユニバスタァァー!!」
光で生成したライフルから凄まじい輝きの光線が放たれ、吹雪に接近する。
吹雪:「暗黒の炎…、ダークマター・メガ・フレア!!」
ありったけ溜めたエネルギーを大きな球体状に、吹雪は引き金を引いた。
両者の攻撃が激しくぶつかる。
周りの木は、ぶつかり合う攻撃の反動により倒れ、カラスたちが驚いて飛び逃げる。
アデラ:「まだよ!フルバースト!」
攻撃の出力を上げたアデラ。
吹雪の攻撃を押す。
しかし、吹雪の表情は攻撃を放つ前と変わりはなかった。
この状況でも余裕な顔をしている。
アデラ:「どうやら、私の勝ちね。あなたは、命はここま―」
アデラが吹雪に勝利の宣言をしていると、吹雪が放った攻撃が徐々に大きくなっていた。
吹雪:「攻撃の出力を上げたのが誤算だったね」
アデラ:「これは…!」
吹雪:「僕が放った攻撃は、敵の攻撃を吸収することで、更にパワーを上げることができる。つまり、君が攻撃力を上げれば、僕の攻撃もパワーが上がるということだよ」
吹雪は、自分の攻撃をわかりやすく解説した。
そのことを初めて知ったアデラは、出力を下げようとしたが、今出力を下げれば、確実に相手の攻撃の餌食になって死ぬだろう。
だから、諦めず最後まで出力を上げて吹雪の攻撃に耐えた。
アデラ:「負けないわ!私は、私たちを苦しめるファクト団を倒すまで、やられるわけにはいかないのよ!」
吹雪:「何もかも組織1つで解決できるものじゃない!」
アデラ:「!?」
吹雪:「チームワークが良ければ、その組織は強いかもしれない。でも限界だってあるはずだよ!」
吹雪が放った攻撃は、アデラの攻撃を全て吸収する。
そして、アデラに吹雪の攻撃が迫り、彼女の直前で爆発する。
アデラ:「きゃああ!」
爆発の影響でアデラは吹き飛ばされた。
地面に叩き付けられ起き上がろうとしたとき…。
カチャ…
目の前に、吹雪が持つセカンドステージ状態のレッドアイズ・ガレオンの銃口が向けられた。
吹雪:「僕の勝ちだね」
動けば撃たれる。もう、吹雪の勝利で間違いない。
アデラは心の中で負けを認めた。
目を閉じて、死を覚悟するも、吹雪はレッドアイズ・ガレオンを下ろし、アデラから銃口の照準を逸らす。
アデラ:「殺さないの?」
吹雪:「勝負は決まった。なら、殺す必要はないよ」
アデラが何も言わず、地面に座り込んだ。
足元に7枚の代行者のカードが散らばる。
アデラ:「強いのね、あなた」
吹雪:「僕も見ているだけじゃダメだからね」
アデラ:「1つ聞いてもいいかしら?」
吹雪:「何だい?」
吹雪はアデラの質問を素直に聞いた。
アデラ:「”チームワークが良ければ、その組織は強いかもしれない。でも限界だってある”。さっきそう言ってたけど、あれ、どういう意味かしら?」
アデラの質問に、吹雪は考えることなく素直に答えた。
吹雪:「僕の後輩で、周りに頼らず、自分が作り上げた団体のみで世界を守ろうとした人がいてね。地球の危機に精霊たちと一緒に敵に立ち向かって、そして最後は死んだ伝説のデュエリスト…」
アデラ:「それって…」
吹雪:「彼以外、人間はただ見ていることしかできなかった。武器もなく、敵は人間では到底敵うような相手じゃなかった。でも、話しさえしてくれれば、彼の協力者にはなれたはずだって、今でも考えているよ」
アデラ:「あなた、あの男と知り合いなの?」
吹雪:「言ったでしょ?後輩だって。いや、弟みたいなものかな」
吹雪は、明日香とその子供たちの顔を思い出してそう呟いた。
吹雪:「ファクト団の情報の提供には感謝するよ。この情報はフロンティアの上層部に持って行く。もしかしたら、元帥はすぐに対処する可能性があるからね」
アデラ:「…」
吹雪:「まだ、何か不満があるかい?」
吹雪がそう聞くと、アデラは少し笑った。
アデラ:「いえ、何もないわ。ファクト団を倒すのは、私たちの役目だと思ったけど、今の戦いで分かったわ。私の力じゃ、まだ奴らに敵わないって。だから、お願い。必ず奴らを倒して」
アデラが吹雪を見つめる。
吹雪:「了解だ」
吹雪とアデラは握手を交わした。
吹雪とアデラの戦いは、吹雪の勝利となった。
これで、残る幹部はデュランだけとなった。
だが、彼女はまだ気づいていない。これから自分の身に起きる悲劇を…。そして、それを目の当たりにする剣代もまた、自我を失うほどの絶望を味わうことになる…。
第12ED『Sky chord~大人になる君へ~《辻詩音》』
次回予告
ナレーション:人は話せばわかり合える生き物である。
敵対同士でも、それは可能である。
デュランが剣代に語る出来事。それの始まりは世界精霊大戦からであった。
そして、デュランに起きた悲劇が、剣代の内なる力の引き金を引いた…。
剣代:次回、遊戯王5DXAL「暴君の剣代」
剣代:「貴様だけは、絶対に許さねえぇ!」
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