第194話:『消える復讐』
2機のジェット機が島に向かっていた。
前を飛ぶジェット機には、吹雪や剣代たちが、後方のジェット機にはアデラとデュランが乗っていた。
島に付いた途端、戦いが始まることを、4人は予想していたのであった…。
第11OP『夜鷹の夢《Do As lnfinity》』
第194話:『消える復讐』
レクシー:「っ…」
レクシーはゆっくりと目を開けた。
城之内:「気が付いたか?」
レクシーは声が聞こえた方に振り向いた。
すぐ側に城之内が座っていた。
レクシー:「私、…死んでないの?」
城之内:「あぁ、あのラブリー・ファイアって技は、あまり威力がねえんだ。応急処置だが、手当てするぐらいの傷で済む」
レクシーは恐る恐る腹を触ると、包帯が撒かれていた。
レクシー:「どうして助けてくれたのかしら?」
城之内:「アンタには、色々と気付かされたからな」
城之内はレクシーは見ず、真っ正面を見て呟いた。
そして、城之内は気になっていた。前に、レクシーは、俺みたいな奴をほっとけないと…。そう語った。それはどういう意味だったのか。城之内は、レクシーを見て聞いた。
城之内:「どうして、俺のような奴がほっとけないんだ?」
レクシー:「…」
レクシーは一度目を瞑り語り始めた。
レクシー:「私にも、あなたみたいな彼氏と付き合っていたから」
城之内:「…」
レクシー:「私の都合なんて気にしないで、自分の都合にだけ合わせる自己中な男だったわ」
城之内:「それで別れたのか?」
城之内は恐る恐る聞いて、レクシーは「えぇ」と返事をした。
しかし、間を開けて一言付け足す。
レクシー:「違った意味でね」
城之内:「?」
レクシー:「死んだのよ、私の彼は。何年も前にアメリカで起きた戦争に巻き込まれてね」
城之内:「なんか悪いこと聞いちまったな」
レクシー:「別に気にしてないわ。それに、あんな自己中な奴が死んで、正直嬉しかった気持ちもあったわ。これで別れられるって。…でも…」
レクシーは薄っすらと彼の顔を思い出す。
レクシー:「私と別れなかったってことは、あの人は、私のことを大切にしてくれてたんだなって、後から気付いた時、後悔したのよ。もっと話せば、彼のことを分かって気がする。そして、彼も私のことを気にしてくれるはずだってね」
レクシーは城之内の方を見る。
レクシー:「別に、無理に女性の気持ちを理解してなんて言わないわ。でも、付き合っている彼女の気持ちぐらい、ちゃんと見てあげなさい」
城之内:「今更、40代の女性の気持ちを理解しろなんて言われてもな…」
自信なさそうに城之内は言うと、レクシーはため息をついた。
レクシー:「だらしない男ね。いい?恋に歳になんて関係ないのよ。自信持ちなさい」
レクシーは城之内よりはるかに年下だ。
そんな年下に、こんなこと言われると、何か気まずい。
城之内は、とりあえず「あぁ」と返事を返し、立ち上がる。
レクシー:「悪いけど、ボスがどこにいるかは私にはわからないわ」
城之内:「別にいいさ。俺が、麗しのブランイヤリングを持っている以上、敵は必ず仕掛けてくるしな」
レクシー:「やられない自信があるのね」
城之内:「女だらけの組織に敗れたとなっちゃ、元帥にドヤされるからな。制圧された、この島を救って、すぐに任務完了させるよ」
城之内は、そう言い残し、走ってどこかへ去る。
レクシーは城之内の後ろ姿を見る。
レクシー:「ホント、彼に似てるわね」
レクシーは一言そう言って目を瞑る。
仲間たちと合流するため、城之内は爆発音や騒ぎ声が聞こえる方へと走る。
その頃、吹雪と剣代が乗るジェット機が島に着陸した。
2人は急いで、ジェット機から降りて周りを見渡す。
吹雪:「君たちは、上空で待機。何かあったら、連絡して」
吹雪はミッションウォッチでプライベートジェット機の操縦席に乗る者達にそう伝えると、ジェット機は言うことを聞いて、再び離陸する。
剣代:「研究所から応答がありません。やはり、ビューティフルジャスティスに制圧されたかと…」
吹雪:「うん、それに、この争いの後、紛れもなく城之内さんたちのものだ」
吹雪は周りの争いの後を見て、そう決めつけた。
剣代:「なら、急いだ方がいいですね」
吹雪:「そうだね…、!」
みんなのところへ急いで向かいたいところだが、後方に迫っていたジェット機も、島に到着し、2人の女性が降りてきた。
アデラ:「逃がさないわよ」
デュラン:「あなたたちの好きにはさせない」
降りてきたのはアデラとデュランの2人だった。
アデラは吹雪と、そしてデュランは剣代とそれぞれ戦っている。
剣代:「デュラン…」
吹雪:「剣代君、君は先に行くんだ。ここは僕が」
剣代:「…」
剣代はデュランを見つめる。
剣代:「わかりました。ですが、1人俺が相手をします」
吹雪:「あのピンク色の髪の毛の子だね。わかった。彼女は君に任せるよ」
吹雪はそう言って、剣代は、その場を後にする。
デュラン:「逃がさないわよ!天上院剣代!」
デュランは急いで、剣代を追う。
アデラ:「いいの?彼、デュランに負けるわよ?あの子、剣士として物凄く強いから」
吹雪:「それはこっちも同じだよ。剣代君も、立派な剣士、いや戦士だよ。父親と同じでね」
吹雪は剣代のことを心配していない。いや、する必要がない。
彼は強いから…。
アデラ:「そう…」
アデラの背後に”裁きの代行者サターン”の幻影が現れ、アデラの身体と1つになる。
アデラ:「裁きのカッシーニ!」
右拳を突き出し、輪っか状の衝撃波を放つ。
吹雪は衝撃波を躱し、レッドアイズ・ブラック・ドラゴンのデュエルギア”レッドアイズ・ガレオン”の銃口からビームを放つ。
アデラは余裕の笑みを見せ、背後に”英知の代行者マーキュリー”の幻影が現れ、アデラと1つになる。
その直後、アデラの背中から青い羽が生えてきた。
アデラ:「シャーティルの羽!」
アデラは飛び上がり、空を飛ぶ。
アデラ:「これで、私は空をも味方につけたわ。昨日の戦いとは違うわ」
吹雪:「空、飛べたんだね…。さて、どうやって対応しようかな」
吹雪は小さい声で呟いた。
ネオコーポレーションシティ国際空港
1台のプライベートジェット機が、たった今離陸しようとしていた。
そのプライベートジェット機の翼には、フロンティアの紋章が刻まれている。
そして、そのジェット機には、彼が乗っていた。
10年前、バリアンとの決着を付け、そして自分自身にも決着を付けた男。九十九遊馬が…
数時間前
フロンティア本部
元帥室
遊馬:「麗しのブランイヤリングですか」
百々原:「君はよく知っているはずだ。このブランイヤリングがどういうものなのかを…」
遊馬:「表向きは、誰もが欲しそうな軽い力だが、裏では膨大な力を備えている危険なイヤリング…、俺はそれぐらいしか知らないですよ」
百々原:「あぁ、君の言う通りだ。そしてさっきも言ったが、数日前にフロンティアはブランイヤリングの1つを回収した。そして、今、麗しのブランイヤリングの持ち主であるシークレットサービスの研究所へ送り届けている」
遊馬:「麗しのブランイヤリングを研究しているという話しは本当だったんですね」
百々原:「あぁ、しかし、小組織であるビューティフルジャスティスが麗しのブランイヤリングを狙って、ここへ潜入してきた。だから、今回の任務危険だと判断したんだが、シークレットサービス側は今すぐに届けてくれとうるさくてね」
遊馬:「それで、風也たちを任務に?」
遊馬は百々原のデスクの上にある資料を見て言った。
百々原:「丁度、空いていたのが、この5名だったからな。だが、ビューティフルジャスティスは小組織とはいえ、数は多い方だ」
遊馬:「なるほど、それで俺がここに呼ばれたわけですか」
百々原:「わかるか?」
遊馬:「あなたは心配し過ぎですよ。風也たちも、この10年で物凄く強くなっている。絶対に死んだりしませんよ」
遊馬は自信満々に答えた。
百々原:「それはわかっている。しかし、数が…」
遊馬:「わかってます。勿論、増援には行きます」
百々原:「あぁ、頼む。キミの独断で、共に行く者達は選んでも構わない。1時間以内に空港に来てくれ」
1時間で共に行く仲間を集めるのは正直辛いと、遊馬は思っていた。
しかし、以外にも仲間は集まった。
ジェット機に乗る遊馬は、共に乗っている者達を見る。
そこには、小鳥、慎也、亜美、そして舞たち他数名の者達が乗っていた。
遊馬:「アンタのおかげで助かったぜ、慎也」
慎也:「麗しのブランイヤリングを回収していたことは聞いていたからな。遅かれ早かれ、持ち主に手渡す任務が下るとは思っていたさ。それに、任務についている者たちを心配して、志願した人達もいる」
慎也は舞と亜美を見てそう呟いた。
そして、遊馬たちが乗るジェット機は離陸し、目的地のシークレットサービスの研究所まで向かった。しかも、かなりのスピードで…。
島に着くなり、みんなの援護に向かおうとする剣代。
だが、背後からビューティフルジャスティスのシャインレディの1人デュランが追ってきていた。
このまま援護に向かうのは、戦闘を混乱させると思った剣代は近くにある廃墟に入って行った。
ここで彼女を撒くつもりなのか…。
デュランも、剣代が廃墟に入って行ったのを確認し、そこへ向かう。
中へ入った途端、目の前に剣代の姿は見えなかった。
おそらく、どこかに隠れているのだろう。
デュランは”七支月桃”を構え、いつでも対応できるようにゆっくりと慎重に前へ進む。
周りを見渡すが、剣代の姿はどこにもない。
デュラン:「くっ、一体、どこに隠れてるのよ…」
段々と冷静さを無くし、イライラしているのがわかる。
デュラン:「私は別に鬼ごっこをしているつもりじゃ…」
デュランが呟いていると、少し先で物音が聞こえた。
デュランは音が聞こえた方へ走り、七支月桃を強く握っていつでも対応できるようにする。
だが、音が聞こえてからデュランは更に冷静さを無くしていた。
デュラン:「くっ、一体、どこにいるのよ!天上院剣代!」
デュランは大きな声で叫ぶ。その行為は、自分の居場所を教えているようなもの。こんな場所で取るような行動じゃない。
剣代:「残念だったな」
デュランの首元に1本の刀身が後ろから迫ってきた。
デュラン:「!」
剣代:「悪いが俺の勝ちだ」
余裕の表情で剣代は、デュランに言った。
後ろを向いていないので、デュランは今、剣代の表情は見えない。
だが、こちらをバカにしているような口調だけは感じた。
デュラン:「くっ、何なのよ!どうして、そこまで私を気にするの!私とあなたは敵。赤の他人なのよ」
デュランは振り向き、剣代にそう訴える。
剣代:「そうだな。俺とお前はただの他人だ」
デュラン:「それなら、早く私を殺しなさいよ!勝負はあなたの勝ちなんだから!」
デュランは恐怖を堪えてそう叫ぶ。
デュラン:「さあ、早く…!」
恐怖で、涙がこぼれていた。拳を握り締め、死ぬ覚悟を決めたように見えた。
剣代は、少し笑って、デュランの首元に構えていた”光燐之太刀”を下ろす。
デュラン:「!?」
剣代:「俺の目的は、麗しのブランイヤリングを、研究所に届けることだ。それに、俺は人殺しじゃない。だから、お前の命も欲しいわけじゃない」
剣代は敵が前にいるのにも関わらず、光燐之太刀を収めた。
デュラン:「なんで、…敵を前にして、そんな態度を取れるのよ…」
デュランも七支月桃を地面に落とし、泣き崩れた。
命を救われたこと。しかもそれが敵である男に救われた。現実で起きていることが理解できずにいた。
だが、自分は殺されずに済んだ。それが、彼女の心を安心させたのだった……。
その頃、シェリーは、ベロニカと激しい戦闘を繰り広げていた。
ベロニカが日本人に対する復讐は、物凄く強いものだった。
シェリー:「さっきも言ったはずよ!例え、復讐しても両親は帰って来ないわ」
シェリーはベロニカにそう訴えた。
ベロニカ:「あなたに言われなくてもわかっているわ!」
ベロニカは、再びシェリーに近づき、ローズ・ジョワユーズの刃をシェリーに向ける。
シェリー:「ならどうして!」
ローズ・ジョワユーズの刃を聖剣-シュヴァリエで受け止める。
ベロニカ:「私の怒りが、悲しみが、大きな復讐の塊になっているのよ!復讐は大きければ大きいほど、消えないもの。私の復讐は、もう誰にも止められないの」
ベロニカは怖い目でシェリーを見つめる。
シェリー:「くっ!」
シェリーは聖剣-シュヴァリエで、ローズ・ジョワユーズを弾き返し、ベロニカと距離を取る。
ベロニカ:「逃がさないわよ!ローズ・ラッシュ!!」
ローズ・ジョワユーズから薔薇の斬撃をシェリーに向けて飛ばす。
シェリー:「復讐なんて、何も生まれないわ」
斬撃が迫る中、シェリーは小さい声で呟いた。
シェリー:「どうして、それがわからないの…」
シェリーは聖剣-シュヴァリエを構える。
シェリー:「フルール・ド・ウラガン!!」
花びらの竜巻を飛ばし、ベロニカの攻撃をかき消す。
ベロニカ:「くっ」
ベロニカは急いで、その場を離れ、攻撃の巻き添えを喰らわないようにする。
シェリーが放った攻撃により、周りの立ち木が次々と現される。
大きな木は倒れ、小さい木は竜巻の餌食になる。
そして、竜巻の餌食になった木は、竜巻と共に舞う花びらによって、更に切断されていく。
巻き込まれていたら、ただでは済まなかったと、ベロニカは唾を飲み込んだ。
シェリー:「私も、かつて復讐の心に囚われていた。でも、結局復讐しても親は戻って来ない。どれに気づかされた時、私は今まで何やってたのかしらって、自分を見直したことがあったわ」
ベロニカ:「お説教のつもりなら、遠慮するわよ。私の復讐は決して消えることはないから」
シェリー:「説教をするつもりはないわ。あなたが進む道を私が止める権利はないもの。でも、今ならまだ間に合うわ」
シェリーは、聖剣-シュヴァリエの柄を強く握り、そして構える。
ベロニカ:「あなたがその気なら、私も対応するまでよ」
ベロニカもローズ・ジョワユーズの柄を握り、構えた。
ベロニカの背中に、紫色の花びらが散り、その花びらで翼が生成され、ベロニカの背中に翼が生えた。
翼を羽ばたかせ、ベロニカは空を飛ぶ。
ベロニカ:「行くわよ!」
ローズ・ジョワユーズを上に突き出し、紫色の花びらが散らばる。
対するシェリーは、聖剣-シュヴァリエを振り回し、刀身にエネルギーを蓄える。
同時に、周りの様々な大気が混ざり合っているのか、陽炎のような現象が起きる。
宙を舞う薔薇の花びらがローズ・ジョワユーズの刀身を包み込み、ベロニカは真っ正面から突っ込む。
シェリーは、聖剣-シュヴァリエを地面に突き刺す。
そして、陽炎の現象が起きている場所から3匹の桃色の狼が姿を現し、エネルギーを纏ってベロニカに突っ込む。
ベロニカ:「ルヴァンシュ・ロジエ!!」
ローズ・ジョワユーズの刀身を纏って薔薇が巨大な刃を形成し、そしてローズ・ジョワユーズが大剣の姿となって、シェリーに迫る。
シェリー:「ブリュム・ドゥ・シャルール!!」
3匹の狼は更にエネルギーを纏って、ベロニカに突撃する。
ベロニカ:「はっ!!」
花びらによって形成された刃で、大剣となったローズ・ジョワユーズを振り回し、接近する狼たちを消し飛ばそうとするも、3匹の狼はギリギリで攻撃を躱した。
シェリー:「そんなものでは、その子たちは止められないわ」
3匹の狼は、まるでそこにいなかったかのように消えた。
ベロニカは動揺し、目をパチクリさせる。
すると、1匹の狼がいつの間に、ローズ・ジョワユーズの薔薇で政権された刀身が、いつの間に食われていた。
ベロニカ:「いつの間に…ぐっ!」
更にもう1匹の狼は、もう片方の腕を狼に噛まれ、両手が塞がれる。
ベロニカ:「こんなもので、私を止められると思わないことね!」
周りに散らばる刀身がまるで手裏剣のようにベロニカの動きを封じる2匹の狼たちを襲う。
ベロニカの動きを封じる2匹は、その攻撃の影響で、対象から口を離してしまった。
ベロニカ:「これで、あなたに…!」
ベロニカはシェリーに攻撃しようとするが、すぐ目の前に映ったのは、もう1匹の狼だった。
口を大きく開けて、ベロニカに突っ込む。
ベロニカ:「っ!」
ベロニカの肩を噛む狼。ベロニカはもがき、自分の肩から離そうとする。
空を飛ぶベロニカだが、今の所為でコントロールを失い、地上に落ちる。
シェリー:「狼たちに気を取られたわね。悪いけど、私の勝ちよ」
シェリーが聖剣-シュヴァリエに、風の属性波動を送る。
刀身が緑色に輝き、シェリーの背後に女性の騎士の幻影が現れる。
ベロニカ:「!」
幻影の騎士を見て、ベロニカは動揺する。
更に、周りに優しい風が吹かれる。
シェリー:「輝きなさい!聖剣-シュヴァリエ!」
刀身が緑色に輝く聖剣-シュヴァリエが更に強い輝きを放つ。
シェリー:「この一撃が、あなたの復讐の呪縛から解き放つわ」
シェリーがベロニカに向かって走る。
ベロニカはやっとの思いで、肩に噛みついていた狼から離れることででき、ローズ・ジョワユーズを強く握り締めシェリーに接近する。
ベロニカ:「嘗めないで!私のローズ・ジョワユーズは、刀衆の1本!そこら辺のデュエルギアとはわけが違うのよ!」
言うまでもないがローズ・ジョワユーズは刀衆の1本である。
刀衆の1本であるというプライドを捨てるわけにはいかない。
心の中でそう思いながら、ベロニカはシェリーに突っ込む。
シェリー:「刀衆だからと言って勝てないことはないわ。デュエルギアはデュエリストとの信頼で一回りも二回りも進化し続ける。そして、強くなれるのよ!」
聖剣-シュヴァリエの刀身の形状が、緑色の輝きと共に変化する。
シェリー:「スプリング・ウィンド・ソン!」
太陽の輝きが、聖剣-シュヴァリエの刀身を照らす。
ベロニカ:「私は絶対に、負けない!復讐を果たすまでは!」
ベロニカは連続でローズ・ジョワユーズから薔薇の花びらの斬撃を繰り出す。
しかし、シェリーは刀身の形状を変えた聖剣-シュヴァリエで、その攻撃を弾き飛ばす。
それを見たベロニカは更に動揺する。
ベロニカは、このとき一瞬思ったかもしれない…。
勝てないかもと…。
シェリー:「これで最後よ!」
シェリーは、両手で聖剣-シュヴァリエを握り、そして…。
ベロニカ:「っ!」
ローズ・ジョワユーズで防御したものの、ローズ・ジョワユーズの刀身は折れ、ベロニカの顔面ギリギリに、聖剣-シュヴァリエの刀身が止まっていた。
ベロニカは、足の力が抜け地面に崩れる。
シェリー:「私の勝ちね」
シェリーが刃を、ベロニカから離す。
同時に、聖剣-シュヴァリエの刀身が元に戻る。
ベロニカ:「どうして、私を斬らなかったの…」
情けでもかけられてような気分だ。
だからこそ、怒りが増す。敵なら、斬って殺す。それが、普通だ。だけど、この女は斬らなかった…。
シェリー:「あら、私は斬ったつもりよ」
ベロニカ:「え?」
シェリー:「私が斬ったのは、あなたの復讐心。これで、今までのあなたは死んだわ」
シェリーはそう言って、ベロニカに後ろ姿を見せる。
戦いが終わったから、この場を立ち去ろうとしているのだ。
ベロニカ:「くっ、ふざけないで!敗者の運命は死だけよ!それに、私の復讐は消えたりなんて―」
シェリー:「いえ、もう消えたわ」
ベロニカのセリフに上書きするかのように、シェリーは言葉を発した。
こちらを振り向いてはいないが、口調からどこか怒りをぶつけているようにも聞こえる。
シェリー:「あなたの復讐、正直言えば私には、その気持ちがわかるわ。私も両親を殺されているから」
シェリーは拳を握る。
シェリー:「復讐して、父と母の仇を打とうとした。けど、復讐しても何も戻っては来なかったわ。でも…」
シェリーはベロニカの方を振り向いた。
シェリー:「いいこともあったわ。頼もしい仲間との出会い。そして、楽しい思い出も沢山できたわ。そして、復讐が消えた時、それらのことがもっと幸せに感じたわ」
ベロニカ:「復讐が消えた時…」
シェリー:「親の仇を打つために、日本人を殺すって言ってたけど、それじゃあ、あなたが新たな復讐を呼ぶことになるわ。あなたに殺された日本人の肉親が、次はあなたを殺しに来ること、想定したことある?」
シェリーがそう聞くと、ベロニカは何も言わなかった。
シェリー:「復讐から生まれるのは、復讐だけ。何も満足なんてできない。だから、私は、あなたの復讐心だけを斬ったのよ。もし、満足しないなら、また相手になるわ」
シェリーはその場から立ち去ろうとする。
シェリー:「あなたが何度、私の元へ来ようと、私は何度もあなたの復讐を斬るだけだから」
シェリーはそう言い残し、その場から走って立つ去る。
ベロニカは立ち去るシェリーを追わなかった。
自分は負けた。今、追いかけてもみっともなく感じたからだ。
ベロニカはすぐ側に落ちてある刀身が折れたローズ・ジョワユーズを拾い、それを見つめる。
ベロニカ:「お父さん、お母さん…、日本人を斬って復讐するって言ったけど、やらなくていいかな?」
ベロニカは死んだ父と母の顔を思い出してしまった。
優しくされたとき、怒られたとき、父と一緒に遊んだ時、母のうまい手料理
どれもいい思い出だ。
復讐して、新たな復讐を生むのだけはベロニカ本人も反対なのだ。
ベロニカ:「仇打てなくて、ごめんね」
ベロニカは崩れ落ち、涙を流す。
1人で、そして大きな声で泣いたのであった。
研究所の周りに広がる森林の中を彷徨うレイド。
彼は、今、退屈していた。
レイド:「さて、ビューティフルジャスティスかフロンティアが勝つまで、何してようかな」
レイドは歩きながらそう呟く。
すると、レイドの目に1つの廃墟が映った。
レイド:「ん?」
レイドは何かを感じた。そして、軽く笑って、その廃墟に向かった。
その頃、研究所の中で、外の様子を確認していたビューティフルジャスティスのボス、ヴィヴィエンは、幹部のマンディ、レクシー、ベロニカが敗れたことを確認する。
ヴィヴィエン:「彼女たちを倒すなんてね…。余裕はないか」
ヴィヴィエンは、次の策に映ろうとする。
そして、その頃、ビューティフルジャスティスの幹部シャインレディのリーダー的存在であるアデラと吹雪が激しい戦いを繰り広げていた。
第12ED『Sky chord~大人になる君へ~《辻詩音》』
次回予告
ナレーション:ビューティフルジャスティスの幹部も残るは2人。
その幹部のリーダーでもあるアデラと吹雪が強くぶつかり合う中、アデラは吹雪にあることを伝えた。
それは、これからの戦いの脅威になるかもしれない。
吹雪は、戦いの中そう思ってしまった。
吹雪:次回、遊戯王5DXAL「吹雪VSアデラ ファクト団の存在」
吹雪:「それが、ビューティフルジャスティスを操っている組織…」
遊戯王5DXAL豆知識コーナー!!
シェリー:「私が愛用するのが、”フルール・ド・シュヴァリエ”の剣タイプのデュエルギア”聖剣-シュヴァリエ”よ。風属性の波動と相性がよく、強力な技を放てるわ。」