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第189話:『デュランの秘密』









1台のヘリコプターに乗っているヴィヴィエンとデュラン。

フロンティア本部から無事に脱出でき、今、幹部が集まって日本で滞在している場所へ向かっていた。



そんなデュランは窓から外を見ていた。

夕日を見つめるデュラン。

あの男の言葉が頭から離れない。


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剣代:「顔を覗いてみたら、結構かわいいな」


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初めて言われたかもしれない。男から可愛いなんて言葉を言われたのは…。

その言葉を思い出すだけで頬が赤くなる。


ヴィヴィエン:「もうすぐ着くわよ、デュラン」

デュラン:「あ、はい」
少し慌てて返事をしたデュランに、ヴィヴィエンは「どうした?」と質問する。


デュラン:「いえ、何でもありません。次、連中にあったとき、どう痛みつけてやろうと考えていただけです」


ヴィヴィエン:「私も同じよ。天上院吹雪、あの男は私が狩るわ」
少し怖い目を見せるヴィヴィエンだった。








第11OP『夜鷹の夢《Do As lnfinity》』








第189話:『デュランの秘密』







2人の女性が逃げた次の日の午前



吹雪、剣代、城之内、シェリー、風也の5人と百々原と明智は元帥室に集まっていた。


明智:「まさか、既に敵が潜入していたとは…」
大統領も流石に油断していたようだ。

少し悔しい気持ちでそう言った。


風也:「久留実さんたちは見つかったんですか?」

シェリー:「えぇ、昨晩、この部屋のすぐ側の素材室で縛られているのを発見したわ。2人とも命に別状はないわ」
それを聞いた風也は「よかった」と一言言った。


城之内:「それで、襲ってきた連中の正体の目星はついているのか?」

百々原:「あぁ、天上院吹雪が相手していた女性が”ビューティフルジャスティス”と名乗っていたみたいだからね。すぐに、情報を集めることができたよ」
みんなの前に映像が映し出される。



百々原:「”ビューティフルジャスティス”。アメリカにアジトを置く国家政府が認めたアメリカの治安を守る女性だけで構成された小組織」

シェリー:「現実に存在するのね、映画みたいな女性だけで構成された組織なんて」

城之内:「珍しくはないだろ。フロンティアだって女性で構成された部隊が存在するしな」

吹雪:「国家政府が認めたということは、組織として成り立っている…、そういうことですよね?」

明智:「あぁ、女性だけの組織とは言え、その力は本物。特に、組織の首領と、幹部に関してはね」
みんなの前に映し出されている映像に1人の女性の写真が映った。

吹雪はそれを見て、自分が相手をした人物だと思った。

百々原:「ヴィヴィエン・リンチ。28歳。小組織”ビューティフルジャスティス”の首領だ。炎と闇の2つの属性を合わせた霊属性の使い手で、自ら表に出て任務を遂行することもある。そして、首領の下に付く5人の幹部。名を”シャインレディ”と言われている」
ヴィヴィエンの写真から5人それぞれの写真に切り替わる。


百々原:「アデラ・エイラー。”シャインレディ”のリーダー的存在。噂では、限界勢力の使い手と言う話しだ」
アデラの特徴は、キラキラ光る青い髪の毛。それから、紫色の口紅を付けているところだ。



百々原:「レクシー・アンドア。ブーメランタイプのデュエルギアを使用し、援護攻撃を得意とする」
何でも狩るような目つきをしており、写真を見た城之内は「怖い目だな」と呟いた。


百々原:「ベロニカ・サム。元はヨーロッパの軍人だったらしい。”ローズ・・ジョワユーズ”という西洋剣のデュエルギアを使用して、最前線で戦うことが多い」
西洋剣を握る女性の数枚の写真の中には、敵を斬り倒す写真もいくつかあった。

どうやら、容赦はしない性格のようだ。


百々原:「マンディ・グリーン。元プロレスラーで、組織一の筋力を持つ女だ。デュエルギアも女性があまり使わない大剣を使用するらしい」
確かに、尋常じゃない筋肉だ。殴られたら一発KOのような気がする…。誰もがそう思った。


百々原:「そして、組織で一番の最年少”デュラン・バリモア”。20歳。ヴィヴィエンと共に本部に潜入した女性だ」
つまり剣代が相手をした女性だ。

風也:「顔つきは、日本人に見えますが…」

百々原:「あぁ、彼女の履歴を確認すると、日本生まれで、両親も日本人らしい」

吹雪:「では、デュラン・バリモアと言う名は…」

百々原:「本名ではないだろう。彼女の履歴については、あまりデータベースに記述されていない。過去に何かあったのかもしれないな」
百々原がそう言うと、剣代は戦っている中、彼女が言っていた言葉を思い出す。



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デュラン:「家族のために!」
デュランはそう言っていた。

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この言葉が剣代には引っかかっていた。






吹雪:「組織の構成についてはわかりましたが、こっかせい国家政府が認めた組織が、なぜ麗しのブランイヤリングを?」

城之内:「大方、美貌になる力を手に入れるために狙ったんじゃねえか。もしくは金目当てか」

明智:「うむ、確かに考える理由はその辺だろう。しかし、ビューティフルジャスティスにはいろいろと裏があってな」

風也:「裏?」

明智:「あぁ、話しを聞けば影でビューティフルジャスティスを操る組織がいるという話しが、最近政府の調べでわかった」

剣代:「一体、どこのだれが?」

明智:「そこまではまだ突き止めていないが、ただ噂ではあまり、いい同盟を結んでいるわけではないらしい」
ビューティフルジャスティスの裏には、何があるのか。吹雪や剣代はそれを気にする。


城之内:「それでどうするんだ?予定だと明日、シークレットサービスの研究所に運ぶことになっているんだぜ」


吹雪:「ビューティフルジャスティスには、こちらの情報が漏洩されている。このまま任務遂行は危険だと思いますが…」

明智:「私も昨日のことを気にアメリカ政府に話しを付けたのだが、物を早く届けるように強く依頼してきたな。それに、ビューティフルジャスティスがそんなことするがないと、強く反発もしてきた」

吹雪:「国家政府が認めた組織ですからね。アメリカ政府が信じないのも無理はないですよ」

明智:「かなり危険な任務になってしまったが、予定通り任務は明日決行する。日本とアメリカの関係性も崩したくないからね」

百々原:「なお、今回の任務、リーダーは君にやってもらうよ、天上院吹雪」
百々原がそう言うと、吹雪は少し驚いた表情をする。

百々原:「キミはヴィヴィエンとも戦ったし、向こう側では、君の顔はすぐに広まるだろうからね」

吹雪:「わかりました。引き受けます。剣代くん、君は僕のサポートをお願い」
吹雪が剣代にそう言うと、剣代は悩むことなく承諾した。


明智:「特に明日まで行動を制限するつもりはないが、くれぐれも作戦のことは話さないように」

風也:「了解です」
風也は返事をして、部屋を出る。


城之内:「あ、やべえ!」

剣代:「どうしたんですか?」

城之内:「わりい、俺、これから用事があるんだ!」
城之内は急いで部屋を出て走ってどこかへ行く。

百々原:「まったく緊張感がない連中だ」

明智:「いいじゃないか。緊張しない方が、任務はスムーズに遂行される。彼らもそんなことを言ってたじゃないか」
明智は百々原の肩を叩いてそう言った。


明智:「SOA特務隊の連中は、少しずつ彼らに似てきているよ」
明智は思い出し笑いをしてそう言った。







その頃、日本に潜伏しているビューティフルジャスティスのボスと幹部たちが集まって話し合っていた。



幹部たち5人が手に持つタブレットには、5人の顔写真が映っていた。

フロンティアのメンバーで、吹雪、剣代、城之内、シェリー、風也の写真だ。


ヴィヴィエン:「天上院吹雪、天上院剣代、城之内克也、シェリー・ルブラン、奥平風也。以上5名が、アメリカのシークレットサービス管理下の研究所まで麗しのブランイヤリングを運び込む予定になっている」

アデラ:「任務の決行は明日みたいね。どうする?ブランイヤリングのある場所が分かっているなら、今日の夜に出も潜入してブランイヤリングを奪う?」

ヴィヴィエン:「私たちの潜入がバレている以上、ガードは更に固くなるはずよ」

アデラ:「それもそうね」

マンディ:「ならどうするんだい?アメリカまで持って行かれたら、正直面倒だよ」

ヴィヴィエン:「安心しなさい。既に手はずは整っているから。それよりも、今回の任務に参加する5人の戦力を知りたいわね」
ヴィヴィエンがタブレットに映る写真をスライドさせる。


???:「厄介な男を敵に回したねぇ」
デュランが持つタブレットを背後から現れた男性に取られ、タブレットに映る写真を見る。


???:「この剣代ちゃんは、かなり手ごわいぜ」

ヴィヴィエン:「レイド…」
6人の前に現れた男性。それは、FBIに指名手配されている連続殺人犯レイドだった。

かつて、剣代たちを苦しめた人物でもある。

レイド:「少しは感謝してよね。君たちが、麗しのブランイヤリングを盗むって言うから、俺は君たちにフロンティアの情報を提供したんだから」

ベロニカ:「馴れ馴れしいわね。あなた、一体何を企んでいるの?」

レイド:「別に何も企んでいないさ。俺も、麗しのブランイヤリングに少し興味を持っている。だから、アンタたちに協力することにした。もっとも、ブランイヤリングを盗んだ後は敵対させてもらうけどな」
みんなが座る椅子の前にあるテーブルに座るレイド。

レイド:「あんたらが、フロンティアから物を盗むまで、俺をあんたらに付いていくさ」
レイドは目の前にいるデュランのピンク色の髪の毛を触っていった。

デュラン:「触らないで。それと、何か天上院剣代と因縁があるみたいだけど、あいつは私の獲物よ。手出ししないで」

レイド:「はいはい、わかったよ。剣代ちゃんは、君に任せるよ」
レイドはタブレットをデュランに返却する。



???:「これから、厄介な者達を相手にするのに、緊張感がないな」
更にもう一人男性の声が扉の近くから聞こえた。

フードを被り、素顔が見えない。



レクシー:「ファクト団の手の元…?」

アデラ:「どうして、ここに…」
少し嫌な顔をするアデラ。

そして、レクシーの口から言い放たれた謎の言葉、ファクト団。団と名前が付くぐらいだから、どこかの組織名のことだと思うが…。


???:「君たちの組織は、我々の配下にいることを忘れないでいただきたい。どこに行こうが、すぐに見つけられる」



アデラ:「それじゃあ、ストーカーと同じじゃない。勝手に私たちを縛らないでくれる」
アデラはテーブルを叩き立ち上がる。

レイド:「おお、怖い怖い」
レイドは急いでテーブルから降りた。

???:「ヴィヴィエン、部下のしつけがなっていないようだな」


ヴィヴィエン:「アデラ、落ち着いて」
ボスであるヴィヴィエンにそう言われてしまっては言う通りにするしかなかった。

アデラは黙って椅子に座る。


ヴィヴィエン:「それで何のようなの?日本まで来たってことは、大事な話なんでしょ?」

???:「ボスからの伝言を預かってきた」

ヴィヴィエン:「?」

???:「ビューティフルジャスティスが麗しのブランイヤリングの奪取に失敗した場合、同盟を破棄するとのことだ」

ヴィヴィエン:「っ!」
衝撃の言葉にヴィヴィエンは少し驚いた。






デュラン:「依頼を受けた時、そのような契約は入っていないわ!」

ベロニカ:「そちらの勝手な判断はやめてほしいわ!」
デュランとベロニカが少し激怒した口調でフードを被った男性に言った。


???:「これはボスの決定だ。ファクト団の配下にいるお前たちに拒否権はない。それに、成果を出せば、何も問題ない」

アデラ:「いつもいつも、勝手なことを…!」

ヴィヴィエン:「いいわ」
みんなが怒っている中、ヴィヴィエンはそう口にした。


レクシー:「ヴィヴィエン…」

ヴィヴィエン:「要は、麗しのブランイヤリングを盗めばいいんでしょ?それで問題ないはずよ」

???:「ボスだけはわかっているようだな」


ヴィヴィエン:「作戦を遂行する前に怪我人を出したくないもの」

???:「伝えたいのは、それだけだ。失礼する」
フードを被った男は黙って部屋を出る。


レイド:「不気味な奴だな」

マンディ:「アンタが言えることかい」

レクシー:「アンタも出てってくれる?ここからは女だけの話しだから」

レイド:「はいはい、じゃあ俺も失礼するよ。じゃあね、小猫ちゃん」
レイドはデュランの頭を撫でながらそう言った。

デュランはレイドの手を振り払った。


レイドが部屋を出て、部屋の中は女性5人だけとなった。


デュラン:「いいですか?ファクト団の隙にさせて!」
デュランはヴィヴィエンに追求した。

ヴィヴィエン:「落ち着いて、デュラン。別に問題ないわ。麗しのブランイヤリングを盗むことに成功したら、こちらから奴らと同盟を切るつもりだからね」

デュラン:「その話し、本気だったんですね」

アデラ:「ビューティフルジャスティスがいつまでも、あいつらの言いなりになるわけにはいかないでしょ。あんな組織、こっちから同盟を切ってあげるわ」


ヴィヴィエン:「麗しのブランイヤリングを手に入れれば膨大な光の力を手に入れられる。そうすれば、ファクト団を倒す力を手にして、ビューティフルジャスティスは自由な組織になるのよ」
彼女たちが麗しのブランイヤリングを手に入れる理由。それは、金ではなくやはり力だった。

力を手にして、自分たちを縛るファクト団と言う組織を潰すこと。それが彼女たちの一番の目的だ。




ヴィヴィエン:「アデラ、アメリカの本部に連絡して。組織全体を動かして、必ず麗しのブランイヤリングを手に入れるわよ」

アデラ:「了解」

ヴィヴィエン:「私たちは、この5人の戦力を調べるわ。天上院吹雪と天上院剣代は力はそれなりに把握したけど、残りの3人についてはまだ不明よ。レクシー、ベロニカ、マンディ、残りの3人の調査を開始して。明日には出発するから、急いで」
ヴィヴィエンはタブレットに映る3枚の写真、城之内、シェリー、風也を調べるよう幹部3人に命令する。


マンディ:「了解だ。手荒な真似でもいいんだよね?」

ヴィヴィエン:「作戦に支障がなければね」

レクシー:「わかっているわ」

ベロニカ:「作戦を始める前に怪我をするつもりはないわ」
マンディたち3人のやる気は十分あるようだ。


アデラ:「本部に連絡した後、私も調査に参加するわ」
アデラがそう言うと、ヴィヴィエンは頷いた。


デュラン:「私も調査の参加を。でも、その前に…」

ヴィヴィエン:「?」

デュラン:「仕事をする前に、少し自由な時間を頂けませんか?」
デュランがヴィヴィエンに頭を下げてお願いする。

ヴィヴィエンはデュランを肩に触れる。

ヴィヴィエン:「作戦は明日よ。長くならない程度にね」

デュラン:「ありがとうございます」
デュランは急いで部屋を出る。


ヴィヴィエン:『やっぱり、故郷の日本を忘れることはできないみたいね』
ヴィヴィエンは心の中で呟いた。





デュランはいつも仕事中に来ている服を脱ぎ捨て、私服へと着替える。

白いスカートに、黒のノースリーブニットを着て、外に出る。








その頃、吹雪は部屋の中に閉じこもっていた。

麗しのブランイヤリングを狙って、1つの組織が動いている。つまり、常識通りに動いたところで、敵の襲撃を受け守るべきものも守れないということだ。

今までの経験を思い出しながら、吹雪はそう結論付けた。


吹雪:「敵の欺くためにはどうするべきか…。簡単には思いつかないね」
吹雪は椅子から立ち上がり、部屋を出た。


亜美:「あれ、パパ?」
そこに偶然、娘の亜美が通りかかった。

吹雪:「亜美」

亜美:「お出かけ?」

吹雪:「うん、ちょっとね」
父の表情を見て亜美は不自然な感じがした。

亜美:「パパ、何か隠してない?」

吹雪:「べ、別に何も隠していないよ」

亜美:「ふーん、ならいいけど」
亜美はその場を立ち去った。


立ち去ったあと、亜美は父の表情を思い出す。

亜美:『あれは、絶対に何か隠しているわね…』
亜美は心の中でそう思った。




その頃、吹雪は一安心したのかため息をついた。


今回の任務は味方でも他言無用となっているため、例え娘でも話すわけにはいかないからだ。








その頃、自由時間を得たデュランは、ネオコーポレーションシティからバスに乗って30分ぐらいで辿り着ける街”ルゴールシティ”を訪れていた。


ネオコーポレーションシティほどではないが、ここもかなりの都会で高いビルが立ち並んでいる。



デュランは、その街にある病院を訪れていた。



デュランは、看護師と共にある部屋に向かっていた。


看護師:「少しタイミングが悪かったわね。さっき2人とも寝てしまったのよ」

デュラン:「顔を見に来ただけです。寝ていても構いません」

看護師:「そう」
看護師は、その部屋の扉を開けた。

看護師:「ゆっくりしていってね。消灯時間までは、まだ時間あるから」

デュラン:「ありがとうございます」
デュランは頭を下げて、部屋の中へ入り、看護師は彼女が入ったことを確認して扉を閉めた。


部屋の中には、二つのベッドがあり、それぞれ男性と女性が1人ずつ眠っていた。


2人とも気持ちよさそうに寝ている。


デュランは、過去のことを思い出した。


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数年前


ルゴールシティとは別の街にある病院


医師A:「ご両親の身体は、化学では解明できない病に侵されています。残念ですが、ここでは手の施しようが…」
そう言って、その病院では2人を治す手術はできなかった。



そして、数年後、別の病院では…

医師B:「命を奪うような病気ではないようだが、治すのは困難だ。申し訳ないが、私には手の出しようがないよ」
その町の病院でも、2人を治すことはできないようだ。


それから何度もいろんな病院を巡ったが、2人の身体…いやデュランの両親の身体を治すことのできる病院は見つからなかった。


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ここの病院もそうだ。2人の身体を調べてくれたが、やはり不治の病ということで、治すことができないと言って、ただ部屋に置いているだけだった。


デュランは悔しくて拳を握る。

デュラン:『お父さん、お母さん。2人の身体を治す手掛かり必ず見つけるから。待っててね』
デュランはそう心の中で呟き部屋を出た。

部屋にいた時間は、5分ほどだろう。

外に出るときも、看護師さんに「もういいの?」と言われたが、デュランは「仕事があります」のでと言って、ネオコーポレーションシティ行きのバスに乗って、街へ向かった。


デュランは組織のために戦っている。だが、それ以上に家族のために戦っているのだ。





すっかり陽も沈み夜になった。

フロンティアが麗しのブランイヤリングをシークレットサービスに届ける任務遂行の前夜だ。



剣代は街中を歩いていた。任務開始前に緊張しては、失敗する可能性がある。

剣代は任務開始まで時間があるなら、こうやって外に出て気分転換することが多い。





その頃、その近くをデュランが歩いていた。

彼女はビューティフルジャスティスのみんながいる場所に小走りで向かっていた。


このとき、お互いは気付いていない。

少しずつ2人の距離が縮まっていることに…。


剣代はゆっくりと歩いている。デュランは小走りしている。

2人とも目の前に、十字路が見えてきた。


そして、デュランは突然、角から出てきた男性に衝突してしまい、尻餅をついてしまう。

デュラン:「す、すいません。私の不注意で」


剣代:「いえ、こちらこそ…って」
剣代は倒れた女性の顔を見て目が点になる。

デュラン:「え?」
デュランも唖然とする。


剣代:「お前は、デュラン・バリモア…!」

デュラン:「天上院…剣代」
昨日戦った敵が目の前にいる。

普通なら、ここで斬り倒すだろう。普通なら…。

しかし、周りには街の住民たちが沢山歩いている。

下手にデュエルギアを構えるわけには行かない。だが、それに気づいているのは、剣代だけだった。

デュラン:「また会ったわね。でも。これも何かの縁よ。ここで倒させてもらうわ」
デュランはカードを1枚手にする。

おそらくそれは”武神姫-アマテラス”のカードだろう。

初めて遭遇したときも、そのカードを使用してデュエルギアを出していた。

あの武器が、この女の愛用する武器だと剣代は気付いていた。


剣代は、目を閉じて、デュランを無視するように隣を通り過ぎた。


デュラン:「ちょっ、どういうつもり!?敵を目の前にして背中を見せるなんて」
無視された感じがして、デュランは激怒した。

剣代:「ここで戦う気か?こんな場所じゃ、目立ってしょうがないだろう」

デュラン:「あなたを倒すためなら、私は―」

剣代:「国家政府に認められた組織の幹部なんだろう。なら、目立つ行動をすれば、明日の奇襲に影響が出るんじゃないのか?」
剣代はそう言って、首を90度回して、彼女を見る。


剣代:「少し、君と話しがしたい」
剣代はそう言って、歩き出した。


剣代は、デュランと戦うつもりはないようだ。

戦う気があるなら、敵に背中を見せるはずなんてない。それに殺気とかも感じない。

デュランは黙って剣代の後をついていく。しかし、警戒は怠らなかった。


暫く歩くと、剣代は目の前に見えてきた公園の敷地へと入った。

もう夜だ。子供なんて遊んでいない。

いるのは犬の散歩をする人ぐらいだ。


剣代は、公園にあるベンチに座った。


剣代:「座らないのか?」

デュラン:「…」

剣代:「俺は戦うつもりで、君をここに連れてきたわけじゃない。さっきも言っただろ?話がしたいって」
嘘を言っているようには見えない。本当に話がしたいだけのようだ。

デュランは、剣代が座るベンチに腰を落とす。

しかし、この男はあくまで敵。剣代と距離を置いてベンチの端っこに座った。







デュラン:「変なことしたら、すぐ斬るから」
デュランがそう言うと、剣代は「はいはい」と返事をした。


デュラン:「それで話しって何?」
剣代を見ることなくただそう一言発したデュラン。

剣代:「君は何のために、ビューティフルジャスティスに入ったんだ?」

デュラン:「…」

剣代:「君はどう見ても日本人だし、日系にも見えない。それに初めて戦ったとき、君はこう言った。”家族のために”ってね」
その言葉を聞いた瞬間、デュランの目が少し大きくなった。

デュラン:「そんなこと言った覚えないわ」

剣代:「君はそうかもしれないが、俺は確かに聞いたぞ。組織のため、家族のためってな」
覚えてない。いや、私自身もそう言ったことは覚えている。

確かに私はそう言った。口を閉ざすことができなかった。言わないと、本気で戦いに集中できなかったから…。


剣代:「別に言いたくないなら言わなくていい。けどな、1人で戦っても何も解決できないぞ」
剣代がそう言うと、デュランは立ち上がった。


デュラン:「何?敵である私に説教でもしているつもり?ふざけないで!」

剣代:「そこまで必死になるってことは、相当なことってことだな。キミの家族に何があったかは知らないが、剣を交えて俺には伝わったぜ。お前の執念って奴が」

デュラン:「くっ」
デュランはベンチに再び座り込んだ。

しかし、ただ座ったわけではない。


”武神姫-アマテラス”のデュエルギア”七支月桃”を周りから目立たないように剣代に突き出す。

デュラン:「死にたくなかったら答えなさい。明日の任務について洗いざらい吐くのよ」

剣代:「情報を盗んで、仲間たちに教えるのか?」
武器を突き出されているのに、剣代は怖がることなくデュランから目を逸らしてそう言った。


デュラン:「こっちを見なさい!あなた、状況分かってるの?剣を突き出されているのよ」

剣代:「バリアンとの決戦から10年。俺はいろんな修行をしてきた。悪いが、君が剣を突き出しても、俺は跳ね返すぜ」
剣代はチラッとデュランを見た。

デュランは自分が馬鹿にされていると思ったのだろう。

少し笑って「いい度胸じゃない」と口にする。

デュラン:「痛い目にあって謝っても遅いから!」
デュランは、七支月桃で剣代を突き刺そうとする。


???:「おにいちゃーん」
女の子の声が聞こえ、デュランの手が止まる。


珠里:「お兄ちゃん、そこで何してるの?」
こちらに手を振っていたのは、剣代の妹の珠理だった。

隣には、母の明日香もいた。

デュランは舌打ちをして七支月桃を納める。


剣代:「俺の母と妹だ。残念だったな、俺を突き刺すことができなくて」
剣代は立ち上がり、2人の場所へ歩き出す。

剣代:「キミが本気でぶつかってくるのなら、俺も容赦はしない。正直、君とは、こんな形で会いたくはなかったけどな」
剣代がデュランにそう言った。それが、この日、剣代がデュランに対して言った最後の言葉だ。

デュランは、その場から立ち上がり、その場を後にした。




剣代は、2人の前に立つ。


明日香:「さっきの彼女は?友達?」

剣代:「ん?いや、この街になれてないみたいだったから、少し道案内しただけだ」

珠里:「ママみたいに綺麗な人だったね。お兄ちゃん、もしかして狙ってた?」

剣代:「中学生のお前が言うには速い言葉だ」
剣代は珠里の額にデコピンを喰らわせた。

珠里は「痛っ」と額を触るが、表情は笑っていた。別に怒っていないってことだ。



剣代:「母さんたちは、どこに行ってたんだ?」
3人は歩きながら話していた。

明日香:「珠里の学校よ。フロンティアに入ってからまともに授業受けれなかったけど、その分のカリキュラムも、この間終わってね。これで無事に中学校と高校の分は全て終わりなのよね」

剣代:「へぇ、よかったな」

珠里:「ずっと13歳なのはいいけど、ずっと学生なのは嫌だからね」

剣代:「確かにな」
そう、珠里は多元世紀になってからずっと13歳で生きている。

13歳というと、中学校を通っている歳だ。

だが、珠里は、これからもフロンティアで戦うことを考え、中学校と高校のカリキュラムを、バリアンとの決着が着いてから10年の間で、全て終わらせたのだ。勿論、フロンティアの任務と並行しながらやっていたため、こんなに長くなってしまったが…。


剣代:「それなら、今日は御馳走だな」

明日香:「勿論、そのつもりよ。梨香も入れて久しぶりに家族だけでご飯にしましょ」

珠里:「賛成!」
3人は楽しそうに話しながらフロンティア本部へ向かった。






その頃、明日の任務を引き受けている吹雪、城之内、シェリー、風也もそれぞれ気分転換で、本部を出ていた。


しかし、そこに忍び寄る影が、4人に近づいていた。









第12ED『Sky chord~大人になる君へ~《辻詩音》』






次回予告

ナレーション:任務開始前日の夜

ビューティフルジャスティスの幹部たちが、吹雪たちの戦力を確かめるべく襲ってきた。

吹雪たちもまた、敵の力を確かめるべく、ビューティフルジャスティスの幹部たちと交戦し、反撃に出る。

任務開始前日の小競り合いで、両者は何を得とくするのか…!


吹雪:次回、遊戯王5DXAL「任務開始前夜の小競り合い」


吹雪:「前の日に襲ってくるなんて、やり方卑怯過ぎない?」





遊戯王5DXAL豆知識コーナー!!



吹雪:「今回は”ビューティフルジャスティス”についてだよ。アメリカにアジトを置く女性のみで構成された小組織だ。国家政府に認められた組織で、普段はアメリカの治安を守っている」
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