第28話:『ダイシャラス第2王子 隠された闇の目』
三沢が、不良組3人から女性2人を救出した、その日の夜。
小鳥:「セイ、サチ!?」
小鳥は目の前にいる女性二人を見て名前を呼ぶ。
サチ:「小鳥!?」
セイ:「それにキャットちゃんたちも!?」
2人も小鳥や鉄男たちの顔を見て驚いた。
セイ:「久しぶり!元気だった!」
キャッシー:「そっちこそ、元気だった!」
セイ、サチは、同級生の小鳥や鉄男たちと挨拶する。
三沢:「まさか、彼女たちが、小鳥たちの同級生だったとは知らなかったです」
右京:「話しは先ほど警察から聞きました。二人を助けてくれたそうで」
三沢:「いえ、当然のことをしたまでです」
右京:「三沢さん、元教え子たちを救ってくださってありがとうございます。彼女たちの元教師としてお礼を言わせてください」
右京は三沢に頭を下げる。
三沢:「いえ、でも、無事でよかったです」
三沢もサチやセイたちが友人たちの楽しく話しているところを見て笑みを浮かべる。
亮:「三沢、ちょっといいか」
そこに、亮と藤原の2人が来た。
三沢:「カイザー、それに藤原」
藤原:「宝井司令が、君のことを呼んでいるよ」
藤原がそう言うが、顔には何か悲しそうな顔をしていた。
しかし、三沢にはその理由がわかっていた。慎也から聞いている宝井がどんな人物なのかを。
Ⅲ:「それで、二人は、この国に来たんですね」
セイ:「うん、サチが大当たりを引いてくれたおかげよ」
サチ:「やめてよ、セイ。たまたまなんだから」
周りのみんなは笑って話す。
その姿を遠くで一人の女性が見ていた。
九十九未来だ。
数時間前
未来:「いいの?小鳥ちゃんに遭わなくても?」
琴羽:『ええ、そっちは仕事で来てるんでしょ?邪魔しちゃいけないでしょ』
電話相手は小鳥の母、琴羽だった。
彼女もまた、ネオコーポレーションシティのとあるデパートのおみくじで2等を当て、それが、ここダイシャラス王国行きの観光チケットだったのだ。
未来:「でも、私たち、上司の見えないところでワイワイ楽しんでるわよ」
琴羽:「それは仕事の中じゃ定番の話しよね」
琴羽は、喫茶店で電話している。
琴羽:「わかったわ。近い内にでも、小鳥と話すわ」
未来:「その方がいいわ。それじゃあ」
そう言って、未来は電話を切る。
未来は再び、小鳥たちが話している姿を見る。
本当に楽しそうねという顔で、みんなを見る。
もし今、あそこに私の息子がいたら…。
未来の頭の中で遊馬を描き、もしあの場に遊馬がいたときの場を想像する。
未来は、少し目から涙が出てきた。
しかし、それをすぐに拭いた。
そして、その場を後にする。
飛行機機内
空は真っ暗。機内も消灯している。
その飛行機に乗る一人の男。
ロスト:「さて、久しぶりにかっとビングと行くか」
四大神王者のロストがずれたサングラスを人差し指で上げる。
飛行機は行き先は、ダイシャラス王国だ。
第3OP『BRAVING!《KANAN》』
第28話:『ダイシャラス第2王子 隠された闇の目』
フロンティアSOA特務隊のメンバーが宿泊しているホテルは王国の中で一番の高級ホテルと言われている場所で、著名人も宿泊することが多い場所である。
毎年、先代の王、カルロラ・デ・テイタラの命日に開かれる特別な儀式が近日にあるため、多くの有名人や国家政府の者たちが宿泊に来ている。
そして、このホテルには貸し借りできる会議室がある。
現在、そこは、フロンティアが貸し切っている。
真ん中の椅子に座る十天老士の一人にして、今回の任務の司令、宝井。その前に三沢が立っていた。
更に、隣には慎也と、ワックスポワロ事件のときは同行していなかったが、今回の任務は同行することになった影丸がいた。
影丸は車椅子に座っている。
宝井:「呼ばれている理由はわかっているな」
三沢:「ええ」
宝井:「三沢大地、任務を放棄し何をしていた?」
鋭い目で三沢を睨みつける。
少し動揺した三沢だが、それほど怖くなかったのかすぐに冷静になった。
三沢:「悲鳴が聞こえたので、つい足が動きました。それで、悲鳴が駆け付けたところにいったら、チンピラたちに襲われそうになっていた、女性たちを助けただけです」
宝井:「それは、任務と関係しているのか?」
宝井が三沢から視線を逸らし窓側を見る。
三沢:「関係はないです。ですが目の前で人が襲われそうになっていたのをただ見ているだけにはいかないと思って」
三沢が冷静に答える。
宝井:「それで任務に支障が出たらどうするつもりだ!」
三沢:「今回はただの聞き込みです。支障はさほど出ないと考えています」
宝井:「それを決めるのは、私の役目だ!今回、君が騒動を起こしてしまったことで、この国の警察にフロンティアの存在がバレてしまった。本来の目的は、目立つことなく情報を引き出すことだった。全てが台無しだ。この落とし前、どうつけるつもりだ?三沢大地」
宝井がテーブルを叩いて三沢に聞く。
三沢:「では、もしあなただったら、目の前で人が襲われていたらどうするつもりですか?」
宝井:「質問に質問で返すな。聞いているのは、こっちだ。俺の質問に応えろ」
宝井がしつこく三沢に聞いてくる。
すると、慎也が前に出る。
慎也:「司令、確かに今回の一件で、この国の警察に我々の存在がバレてしまいましたが、返ってそれでよかったのかもしれません」
宝井:「どういうことだ?」
慎也:「街の聞き込み調査中に、数人の交通人に言われたんです。もしかしたら、この国の王子、バギー・グ・テイタラ王子なら、何か知っているかもと。警察が掴んだ情報は、明日の朝にでも、王子の耳に入るでしょう。なので、交渉してみてはどうでしょう」
宝井:「王子との接触をか?」
慎也:「ええ」
影丸:「この国のNo.1じゃ。何か知っているかもしれん」
宝井:「…いいだろう。だが、これで、何も出なかったら、連帯責任で貴様らにも処罰を与えるからな」
慎也:「隙にしてください。それでは」
そう言って、慎也と三沢、影丸は部屋を出る。
数分後
三沢:「済まない、慎也。迷惑を掛けて」
慎也:「気にしないでください。十天老士は気に食わないんで」
影丸:「しかし、災難じゃったな。その頬の傷は大丈夫か?」
影丸は三沢の頬についている傷を見て聞く。
三沢:「対したことはないです。大丈夫です」
慎也:「とりあえず、今日は休みましょう」
三沢:「そうだな。じゃあ、先に部屋に戻らせてもらう」
そう言って、三沢は部屋に戻る。
影丸:「慎也、先ほど言っていた王子の話しじゃが」
慎也:「この国の第2王子バギー・グ・テイタラのことですか?」
影丸:「ああ、何かその男の情報は掴んでいるのか?」
慎也:「いえ、ですから、レベッカさんに調べさせています。明日には、共有できるでしょう」
慎也が影丸を見て言う。
その頃、レベッカは自分の部屋にいた。パソコンで情報収集しているのだ。
勿論、バギー・グ・テイタラのことについて調べている。
翌朝
ダイシャラス王国
王宮
第2王子バギーは、いつもの場所で朝食をとっていた。
3人のメイドに囲まれ、紅茶を飲みながら、パンを食べる。
ラットリー:「食事中、失礼します。王子」
スーツを着こなすラットリーが部屋に入ってきた。
バギー:「ラットリーか。こんな朝早くに、どうした?」
ラットリー:「実は、王子の御耳に入れておきたいことがありまして」
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バギー:「ほお、フロンティアの連中が」
ラットリー:「昨日、入国した人々のリストを見ましたが、間違いないそうです。その中には、SOA特務隊の8係リーダーの桐潟慎也と、十天老士の一人、宝井重郎の名前もありました」
ラットリーが印刷してきたリストをバギーに見せる。
入国したフロンティアのメンバーの名前が並べられていた。
バギー:「フロンティアに加入したという噂は聞いていたが、海馬瀬人に、ペガサス・J・クロフォードも、ここに来ているのか」
ラットリー:「この者たちは、半年前のワックスポワロの事件に関係する者たちばかりです。もしかして、狂言についてのことを」
バギー:「だが、俺があっちに行ったときは既に建物は倒壊して何もできなかった。とすると、あの情報がバレたのか…?」
ラットリー:「どうします?始末しますか?」
バギー:「そんなことしてみろ。次は国家政府が動いて面倒になる。来週には、式典があるんだぞ」
ラットリー:「そうですが…」
バギー:「それに、あの慎也がいるとなると、そう簡単に型が付くとは思えないしな。なんにせよ、向こうからの接触があるはずだ」
ラットリー:「接触があった場合はどうします?」
バギー:「全て俺に回せ。話しだけでも聞いてやるさ」
バギーはパンを食いちぎる。
昼間
街中
小鳥、キャッシー、アンナ、セイ、サチの5人は街で観光を楽しんでいた。
サチ:「3人ともいいの?本当は任務中なんじゃ」
小鳥:「慎也さんが許可を出してくれたの。久しぶりの再会だから、楽しんで来いって」
キャッシー:「上にはバレないかしら?」
アンナ:「あの兄ちゃんなら何とかしてくれるんじゃねえか。それより、あっち行こうぜ」
アンナは指を指した方向に走る。
セイ:「アンナは昔から変わらないわね」
サチ:「乙女は、そう簡単に卒業できない者よ」
セイとサチは少し呆れた感じで言う。アンナの行動がまるで子供のように見えたからだ。
キャッシー:「アンナ、私たち、夕方には戻らなきゃいけないんだからね」
アンナ:「わかってるって」
そして、5人の観光は数時間続いたのだった。
夕方
フロンティアのメンバー全員が、宿泊先の会議室に集合する。
司令である宝井が周りを見る。
宝井:「全員、揃っているな。では、始める。慎也」
宝井が慎也の名を呼ぶ。
慎也は返事をして立ち上がり、前に出る。
慎也:「では、俺の方から話しを進める。この国に来て2日経過したが、街の人々に話しを聞いた結果、狂言らしき人物の情報は1つも入っていない。だが、街の人々に聞いていると60%の確率で、この国の王子に話しを聞いてみればという回答が返ってきた」
慎也の横にあるモニターにダイシャラス王国の王子の写真が出てきた。写真の映像は王子が別の国の王と握手をしている場面だ。
シェリー:「この国の王子に聞いてみたら…、住民の人々は、王子をとても尊敬しているのね」
シェリーが腕を組んでしゃべる。
ブレイブ:「俺も、何十人って人に話しを聞いたが、よくバギー王子に聞けばって答えが返ってきたぜ」
頭の後ろに両手を回すブレイブが言う。
ロビン:「その王子とは、どんな方なんですか?」
いつも通り、マスクをつけるロビンが慎也に聞く。
慎也:「それについて、レベッカさんに調査してもらった。レベッカさん、お願いします」
慎也の頼みにより、レベッカが前に出てきた。
レベッカ:「ダイシャラス王国の第2王子”バギー・グ・テイタラ”。数年前、父が他界し、それを受け継いで第2王子の座に就いたわ。日常は、街中を出歩いて、みんなに挨拶したり、他国の王と会談してお互いの国のために真剣に話し解決法を導いたりしているわ」
ラリー:「何か、立派な王子だよね」
牛尾:「住民の人々に信頼されるわけだ」
レベッカ:「でも、王子にも裏があるわ」
静香:「どういうことです?」
レベッカが頷いて話しを続ける。
レベッカ:「実は、王子の下には、”四天王”と呼ばれる側近がついているんだけど、国家政府を初め、この国の住民は、その人達のことを知らないのよ」
ミゾグチ:「国にいるのに、見たことがない」
ドラガン:「確か、この国は毎年、先代王子の命日に式典を行っている。その式典にも顔を出さないということか?」
レベッカ:「それはわからないけど、ネットの情報を見て、その四天王の呼ばれている人達の顔写真は載っていないのよ」
レベッカが持ってきた写真には、バギーが中心に映っているだけで、特に四天王が映っている写真はなかった。
剣山:「王子の近くに映っている側近はどうだドン。胸元のバッチからして、王子と一緒に来たボディーガードみたいな感じがするドン」
剣山が指を指して言う。
レベッカ:「その線は低いかもね。私も、式典の写真を片っ端から見たけど、毎年のようにボディガードの人たちが変わっているのよ」
レベッカの言う通りだった。全ての写真に映っているボディガードの顔は別人だ。
ラフェール:「国家政府も、その存在をあまり知らないというのも気になる」
アメルダ:「ああ、国家政府は、この多元世紀の頂点。隠しごとなんてできないはずだ」
宝井:「まあ、こんなところで、王子が何者なのかを責めても何も出はしないだろ。そこで、俺の方から、この国の王子に会談の依頼をしてきた。本当は、この国には極秘で調査を続けるつもりだったが、昨日の騒動で、もうそれは無と化したからな」
宝井がチラッと三沢を見る。
三沢は腕を組んで、目を瞑っていた。
宝井と目を合わせてくないのだろう。
宝井:「まあ、その話はいいだろう」
ペガサス:「よく向こうは会談に応じましたネ」
宝井:「向こうも何か考えて応じたのかもしれんがな」
イェーガー:「罠かもしれない場所に乗り込むということですか。あまりにも危険では…」
宝井:「そこで俺の方から、3日後の会談に同行するメンバーを選抜した。死ぬ覚悟で、俺を守護しろ」
宝井が立ち上がる。
海馬:『あくまで、自分を守るための道具ということか』
杏子:「慎也から聞いていたけど、ホント嫌な感じね」
杏子が軽く睨む感じで宝井を見る。
宝井:「では、メンバーを紹介する。まずは、慎也、お前だ」
慎也:「了解です」
慎也が手に持つ資料を置いて言う。
宝井:「それから、幼い頃から戦闘の経験があるということで、オブライエン、お前を同行させる」
宝井からオブライエンの名が出て、本人は軽く頷いた。
宝井:「それから、入ってすぐにセカンドステージを取得した、天上院剣代。お前も同行させる」
宝井から剣代の名が出て、剣代は驚いた。
明日香:「ちょっと待ちなさい!息子が出るなんて聞いてないわ」
明日香が立ち上がる。そりゃあ、そうだ。実の息子が危険なところに行くなんて何も聞いていないからだ。
梨香:「ママ!」
宝井:「これは決定だ。天上院明日香、お前の意志は関係ない」
明日香:「なら私も行くわ!」
宝井:「許可できないな。悪いが、君に着いてこられては足手まといになる」
宝井が嫌な目つきで明日香を見る。
ジュンコ:「そんな言い方!」
ももえ:「あんまりですわ!」
明日香の友人であるジュンコとももえも立ち上がる。
宝井:「これ以上、口を開けば、罰を与えるぞ」
宝井が脅す。
剣代:「母さん、心配しないでくれ。オブライエンさんもついてるし、大丈夫だって」
明日香:「剣代…」
オブライエン:「安心しろ、剣代は俺が必ず守る。君と十代の大切な命だからな」
明日香:「オブライエン…、わかったわ。でも、無茶だけはしないでね」
明日香の言葉に剣代が頷く。
宝井:「話しを続けるぞ。最後にドルべ、お前だ」
宝井の口からドルべの名が出て、ドルべが反応する。
周りのみんながドルべを見る。
宝井:「お前は、沈着冷静に物事に対処できる。慎也もそれぐらいの対処はできるだろうが、もしものときは、お前にその役目を委ねる」
慎也:「俺の推薦だ。頼むぞ、ドルべ」
慎也がドルべの肩を叩く。
ドルべ:「わかりました」
ドルべがそういうと、慎也がドルべの耳元で囁く。
慎也:「あとで少し話がある」
慎也はそう言って持ち場についた。
ドルべは心の中で首を傾げた。
宝井:「会談は3日後の昼だ。以上解散」
宝井の解散の合図で、みんなが席から立ち上がる。
数分後、慎也とドルべは、休息室にいた。
ドルべ:「慎也さん、話しってなんです?」
慎也:「ああ、実は、この国に来る前、フロンティアの資料保管庫で、この国の王子バギーについて、俺独自で調査をしていたんだが、そこで妙な情報があってな」
ドルべ:「妙な情報?」
慎也:「ああ、数年前、先代王子が死んだときのことだ。当時のニュースや新聞の記事では、病死という扱いになっているんだが、どうやら、そうじゃないみたいだ」
ドルべ:「え」
慎也:「先代王子は何者かに暗殺された可能性が高い」
ドルべ:「どういうことです?」
慎也:「先代王子が死んでから、まもなくして身体の鑑定した結果、王子の体内から毒物が発見されたそうだ」
ドルべ:「でも、ニュースとかでは病死だったんですよね?」
慎也:「あぁ、だが、世間には本当のことを語らず、偽の情報を流出させたみたいだ。そして、それができたのは、翌日、既に第2王子の座に着いたバギーだけだ」
ドルべ:「どうしてですか?」
慎也:「当時、バギーは先代王子の代わりに、周りの人と接客することがあったらしい。それをうまく利用すれば…」
ドルべ:「………」
慎也:「そこで、ドルべ。会談中、王子の様子を監視してほしい。お前は人を見る目があるからな」
慎也が手元にある缶コーヒーを飲む。
ドルべ:「それで私を」
慎也:「すまんな、変な役回りで。このことは、宝井司令には言わんでくれ。あの人は苦手だからな」
慎也がもう片方の手に持つ缶コーヒーをドルべに渡す。
ドルべはそれを受け取る。
慎也:「オブライエンさんと剣代には、俺の方から話しておく。頼むぞ」
ドルべ:「わかりました。お役に立つように頑張ります」
ドルべは缶コーヒーを飲む。
あれから3日が経った。
その日の昼、宝井、慎也、オブライエン、剣代、ドルべの5人は王宮の門の前にいた。
門が開き、奥からスーツ姿の男が現れた。
ラットリー:「お待ちしておりました、宝井様ですね。わたくし、バギー第2王子の直轄のガードマンをしております、ラットリーを申します」
礼儀よく挨拶をするラットリー。
宝井:「大組織フロンティア十天老士の宝井だ。他4人は、俺のガードマンみたいなものだ」
親指を立てて慎也たちに指を指す。
剣代:「何か、勇敢な仲間たちだみたいな挨拶で閉めたな、この人」
ドルべ:「気に入らない…」
小さい声で話す剣代とドルべ。
ドルべ:『しかし、何だ?この人から放たれるプレッシャーは…』
ドルべは気付いていたラットリーから放たれる気迫のようなものに。
ラットリーを見るドルべの視線に剣代が気付いた。
慎也:『さすがだな。もう、この男のプレッシャーに気付いている。俺も長年の経験でわかる。この男、相当危ない…』
慎也もラットリーを見る。
オブライエン:『最悪の事態も考えておくべきか…』
オブライエンも心の中で呟く。
宝井たちは、応接室と呼ばれる部屋で王子が来るのを待っていた。
椅子には、宝井と慎也が座っている。
その後ろに、オブライエン、剣代、ドルべが立っていた。
扉のすぐ側には、メイド2人が立っていた。
オブライエンは辺りを見渡す。
四方の天上に監視カメラが付いている。
更に、壁にも数台カメラが取り付けられている。
オブライエン:「どうやら、かなり警戒されているな」
慎也:「あぁ、この広さの部屋に、このカメラの数は多すぎる」
小さい声でしゃべる二人に対し…。
宝井:「無駄口は、そこまでにしろ。逆に怪しまれる」
目を瞑って2人に注意する宝井。
宝井:「そろそろ来るぞ」
宝井の予想は的中した。
その言葉を放って10秒も経たないうちに、扉が開いた。
扉の向こうから2人の男性が入ってきた。
1人はラットリーだ。そして、もう1人は…。
バギー:「お待たせして申し訳ない。私が、このダイシャラス王国の第2王子バギー・グ・テイタラだ。この度はよろしく頼む」
バギーは軽く礼をする。そして、顔を上げた瞬間、ニヒッ少し笑う。
ドルべ:「!!?」
その顔を見てドルべがゾワッと体が震えた。
ドルべ:『なんだ…。この男から出てくる不気味な空気は…』
ドルべが気付いていた。バギーからは周りのみんなからは見えないドス黒いオーラが出ていた。
ドルべ:『この男…、何かある』
数分後、バギーも椅子に腰かけ、会談が始まった。
宝井:「まずは、この度の会談の申し出を受けてくださってありがとうございます」
バギー:「いえ、私もフロンティアの者たちと話せる機会ができて光栄です。百々原元帥は、こちらにいないのですか?」
慎也:「ええ、残念ながら」
バギー:「そうですか。それは残念だ。あの人の噂は、この国にも広まっている。一度お会いしてゆっくり話をしたかったです」
バギーはテーブルの上にある紅茶を口にする。
宝井:「それはまたの機会にしましょう。本人にも話しておきます。それより、本題に入ってもよろしいですか?」
バギー:「そうですね。確か、人探しでしたよね?」
宝井:「ええ」
宝井が慎也を見て言う。
慎也は宝井とアイコンタクトを取って、懐のポケットに入れていた1枚の写真をテーブルに出す。
それは、狂言の写真だった。
慎也:「写真に映る男は、先日、プリズンによって身柄を拘束され、中央裁判室にかけられた男です」
バギー:「この男がどうかしたんですか?」
慎也:「実は、この男が拘束されてから我々の方で調査したところ、この男は定期的にこの島に入国していたと思われる情報が入りました」
バギー:「この国にですか?」
宝井:「確かな情報です。そこでフロンティアは、極秘で、この男が何故、この国に入国していたのかを調査していたんです。まあ、もう極秘ではないですが」
慎也:「そこで、王子。もしかしたら、あなたなら、この男のことを知っているのではないかと思い、本日に至ります」
慎也が、写真をバギーのところまで持ってくる。
バギーは写真を手に取り、その顔をじっくり見る。
バギー:「お前、この男見たことあるか?」
バギーは後ろに立つラットリーに写真を見せる。
ラットリーはタブレットで名簿のようなものを見る。
ラットリー:「私、個人では見たことないですね。王子と会談した名簿にも、この男と会談した経歴はないです」
タブレットの電源を切るラットリー。
バギー:「残念ですが、見覚えないですね」
少し笑って、写真を返すバギー。
ドルべ:『そんなはずはない。この顔、この男は必ず、狂言のことを知っている』
ドルべはバギーの顔を見て心の中で強く呟く。
宝井:「そうですか…」
宝井は、そう言って、慎也は貸していた写真を受け取る。
バギー:「ところで、任務と言っていましたが、この国にはいつまで滞在を?」
慎也:「予定では4日後には、この島を出ます。島にいる以上、任務はそのまま継続させてもらいます。よろしいですね?」
バギー:「ほどほどにしてください。明後日には、毎年行われている式典が行われます。ぜひ、参加してください」
バギーがその言葉を放った瞬間、ちょっと目つきが変わった。
慎也:「?」
ドルべ:『なんだ…。何を企んでいる…。』
ドルべは感じたバギーから放たれる闇…。
この闇は、のちに起きる、あの大悲劇に繋がることになる……。
第2ED『空とキミのメッセージ《choucho》』
次回予告
ナレーション:偶然、母と再会した小鳥。
嬉しい日時を過ごす中、ドルべたちは、会談について話しを続けた。
ドルべが感じたバギーの闇。そして、狂言の行動。全てが謎のまま、3日が経過し、ダイシャラス王国で毎年開かれる式典が始まった。
しかし、この式典は、街中の人々が思ってもいなかった方向へと向かってしまった。
小鳥:次回、遊戯王5DXAL「テイタラファミリーの策略 ダイシャラス王国の危機」
小鳥:「戦争を理想する世界なんて…民が幸せになれるはずが…!」