第16話:『動き出す波乱』
大組織サイファーに所属するクザン。
”水流のクザン”とも呼ばれており、サイファーのαG8隊の隊長をやっている。
クザン:「よし、俺たちも引き上げるぞ」
クザンは、”神秘の石版”の調査をする部下たちに作業の中断を指示し、島を引き上げようとしていた。
だが、彼は、知らない。まさか、戦い終わったばっかりの、この島が、次なるステージの始まりになることになるとは。
第2OP『Jungle P《5050》』
第16話:『動き出す波乱』
ワックスポワロでの死闘を終え、フロンティアの本部があるネオコーポレーションシティに帰ろうとする、慎也たちSOA特務隊のみんな。
初めての任務だったのか、ほとんどの人が、自室の部屋で寝ていた。
慎也は、船のコントロール室にいた。腕を組んで、窓の外を見ている。
水平線から太陽が昇ってきた。
慎也:「もう朝か」
昇ってきた太陽を見てそう呟く慎也だった。
その頃、自室で一人椅子に座って、休んでいる女性、杏子も窓から外を見る。
…………………
杏子:『多元世紀1年、それは、始まりではない。多元世紀が始まるまでの200年間、そこが全ての始まり。だが、その歴史を知ってはいけない。知れば、人類は再び、闇へと染まる。鍵は人間が持つべきものであり、持たなければいけないもの。歴史は、世の平和を乱す。人類に始まるはあるが、終わりはない。無限の歴史は、人類が作ってこそ意味を成す。』
…………………
ワックスポワロにあった神秘の石版の文章。わけのわからない文字で書いてあったものを自分は読めた。
杏子:『あの文字を見た瞬間、頭がボーッとして、いつの間にか、あの石版の文字を読んでいた』
それに読めたのは自分だけではなかった。
杏子:『それに、明日香ちゃんも、アキちゃんも、石版を見たとき、文字をスラスラ呼んでたけど、そのあと話しを聞けば、頭がぼーっとしたって、私と同じこと言ってたし』
杏子は、自分の胸に手を当てる。
杏子:「遊戯……」
今は、どこにいる愛する遊戯の名前が口から出て来てしまった。
その頃、船のコントロールルームにいる慎也の元に、哲平が来た。
哲平:「慎也、本部との連絡が取れた。元帥が報告を聞きたいそうだ」
慎也:「そうか。今行く」
そう言って、慎也は通信室へと向かった。
哲平:「すべて話すのか?」
慎也:「あぁ、元帥は信用できる。十天老士のジジイ共とは違うしな」
慎也と並んで前へ進む哲平。
通信室
大きなモニターに、フロンティアの元帥、百々原が映っていた。
部屋には、慎也が立っており、哲平は部屋の外で、腕を組んで待っていた。
百々原:『そうか、ライトが…』
慎也:「申し訳ございません。自分がついていながら」
慎也は握りこぶしを作る。
百々原:『自分を責めるな。お前は悪くない。よく頑張ってくれた』
慎也:「……」
百々原:『首謀者は、プリズンに連れ去られた。となると、近い内に中央裁判室で判決が下るだろう』
慎也:「どんな裁判が下されようと、奴にはきっちり責任を取ってもらいます」
百々原:『うむ。ワックスポワロでの話しは大体、わかった。報告書は、本部についてからまとめてくれ。だが、気になることが、他にある』
慎也:「神代凌牙と、天城カイトのことですか?」
百々原:『ああ、まさか、こんなに早く覚醒するとは思わなかった』
百々原の言う通りであった。
慎也も、このことは少し驚いている。
数時間前
ワックスポワロを出てすぐのことだった。
凌牙やカイト、小鳥たちは、慎也のところに来ていた。
慎也:「手に紋章が?」
カイト:「ああ、見たことのない紋章だった」
凌牙:「今は消えているが、間違いない。あのとき…。俺たちがキュミルにやられそうになったとき、光に包まれ、気付けば、俺たちの手に紋章が浮かび上がっていた」
小鳥:「もしかしたら、慎也さんだったら、知っているじゃないかと思って」
慎也:『まさか』
話しを聞いた慎也は、何か思い当たることがあるようだった。
慎也:「そのマーク、一体、どんなマークだった?」
カイト:「形は同じだが、色が違った。そして、真ん中の数字もな。俺は、白で4の数字が刻まれていた。凌牙は、青で3の数字が入っていた」
慎也:「…”エースのマーク”」
一馬:「エースのマーク…」
トロン:「なんだい、それは?」
慎也:「人間世界ではない、別の世界によって選ばれた者たちに宿る紋章だ。エースのマークは、全部で8つあり、真ん中の数字は、そのエースのマークの覚醒した順番を示している」
璃緒:「つまり、凌牙は3人目、カイトは4人目ということになりますわね」
等々力:「とどのつまり、既に2人は、そのエースのマークを覚醒しているということですね」
鉄男:「一体、このマークには、どんな力が宿っているんだ。シャークとカイトは、あのとき、いきなり力が漲ってきたと言っているが、実際のところ、どうなんだ?」
慎也:「さあな、俺も、そこまで詳しくは知らない」
慎也は、近くにあった椅子に座る。
未来:「慎也君、さっき、人間世界ではない、別の世界って言っていたけど、その別の世界っていうのは?」
一馬の隣に来た未来が話しに加わる。
慎也:『そう聞いてくるよな。まあ、言ったところで問題はないか』
慎也は口を開く。
慎也:「まだ、明確ではないが、その別の世界とは…、”アストラル世界”と言われている」
徳之島:「ええええ!」
小鳥:「アストラル世界…!」
ドルべ:「懐かしい名前が出てきたな」
みんなが驚く中、二人は落ち着いていた。
未来:「やっぱり」
未来はため息をついてそういう。
小鳥:「え、遊馬のお母さん、知っていたんですか!?」
一馬:「俺と未来は、アストラル世界にいたんだ。エースのマークに似たようなマークを何度か見たことがある」
ミザエル:「しかし、なぜ、そのマークがカイトたちに…。まさか、アストラル世界の住人が、あの戦いを見ていたのか…!」
慎也:「さあな」
そう言って慎也は、この話を打ち切った。
……………………………
百々原:『奴は、こうなることを予想していたと思うか?』
慎也:「自分にはわかりません」
百々原:『それに、3人目と4人目。1人目は置いといて、2人目は一体、誰なんだ?』
慎也:「今回、覚醒したのは、2人でした。つまり、ナンバー2の者は、この船にいない者だと」
百々原:『エースのマーク。これも、まだ謎が多い。改めて、”Xデータファイル”の中を後ほど調査してみる必要があるな』
慎也:『Xデータファイル。フロンティアが厳重に保管している、四大神王者のデータファイル。そのファイルを巡って、小競り合いを起こしたことも何度もある。四大神王者は世界にとって、必要である存在であり、恐るべし力を持っているということか』
慎也は心の中で呟く。
百々原:『慎也、武藤遊戯の件はどうするつもりだ?』
慎也:「どうするというと?」
百々原:『私もまさか、こうも早くばれるとは思わなかったんでな。十天老士共は、カンカンになって怒っていた』
慎也:「四大神王者の力に怯え、孤独の法を与えた奴らだ。遊戯隊長の生存が知られたら、世間が騒ぐことに怯えているんでしょう」
百々原:『遊戯の奥さんは?』
慎也:「今は部屋に閉じこもっています」
百々原:『そっとさせておこう。とにかくご苦労だった。あとは本部で聞く。ゆっくり休みたまえ』
百々原が通信を切った。
慎也も、部屋を出る。
そこには、ずっと待っていた哲平がいた。
哲平:「終わったのか?」
慎也:「ああ、ゆっくり休めとのことだ」
哲平:「そうか。なら、お言葉に甘えさせてもらう」
慎也:「あぁ、ネオコーポレーションシティまでは、時間がかかる。ゆっくり休め」
そう言って、二人はそれぞれ部屋に戻る。
慎也も部屋に戻る。
カーテンは閉まっており、部屋中は暗い。
慎也は靴を脱ぎ、ベットに腰をかける。
すると、布団がもぞもぞ動いた。
慎也はなんだ?という思いで、布団を剥いだ。
すると、慎也の目に入ったのは、青いキャミソール姿で睡眠している葵だった。
慎也:「なあ!うおわ!」
驚いた慎也は、ベットからずり落ちた。
大きな物音に気付いたのか、葵が目を開き、起きあがった。
葵:「ん…」
葵が周りをきょろきょろ見る。
慎也:「お前、いつの間に俺の部屋に…。ん、葵?」
葵からの返事はない。ずっと、周りをきょろきょろ見ている。
そして、慎也と目があった。
慎也:「あ、あお…!」
すると、突然、葵が慎也の腕を掴みとり、自分の胸に引き寄せ、そのまま寝転んだ。
そして、そのまま眠りについた。
慎也:「むぐ…!あお…あおい!!い!」
葵は慎也の顔を自分の胸に押さえつけているため、慎也は息が苦しかった。
そして、慎也も、苦しい眠りについた。
その頃、ワックスポワロでは…。
クザンの部下たちが、”神秘の石版”をカメラで写真を撮る。
クザンには、石版に書かれている文字は解読できない。
部下:「隊長、石版のデータを収集しました」
クザン:「よし、すぐに、本部にデータを送り、解読班に解読させろ!」
部下:「了解」
サイファーには、石版を解読するチームがある。
そこにデータを送れば、1日で解読してくれる。
クザン:『神秘の石版には、必ず世界を一つにする情報があると聞くが、本当にそんなことが書かれているのか?』
クザンは、そう心の中で呟く。
数分後、クザンたちは、船の側に来ていた。
クザン:「よし、撤退するぞ。急げ」
クザンは島を離れることを部下たちに言う。
すると、そこに、1台のヘリが上空を飛行していた。
クザン:「なんだ?」
ヘリの中
???:「ん?あれは、サイファーの連中か」
パイロット:「どうします?若」
???:「面倒だな、始末するか」
パイロット:「では、自分が、」
???:「いや、お前は、ここにいろ。俺一人で十分だ」
そういって、ヘリの後部座席に座っていた男は、扉を開ける。
空を飛んでいるから、物凄い風が、自分の体を襲うが、そんなことも気にせず、男は飛び降りた。
部下:「おい、誰か、飛び降りたぞ!」
部下の一人が、指を指して叫ぶ。
クザン:「あれは…」
クザンは、飛び降りた男の顔を確認する。
男は、短い茶色の短髪で、黒いグラナート:ミラコスタを着用していた。
クザン:「あ、あいつは、バギー・グ・テイタラ!」
部下:「バギー・グ・テイタラ…?」
クザン:「バギー・グ・テイタラ…。ダイシャラス王国の第2王子と言われている男だが、その裏では、闇に通じていると言われている男だ」
部下:「そんな奴が、なぜ」
バギー:「水流のクザン。だが、俺の敵ではない」
バギーは、クザンの部下たちがいるすぐ側に地面に着地した。
部下:「なんだ…?」
バギー:「邪魔者は排除しなくちゃな」
バギーは歯を出して笑う。
そのとき、鋭い風が吹き出し、数秒間、沈黙が続く。
すると、次の瞬間、周りにいた部下たち数人が、一斉に斬り刻まれた。
部下たち:「「「「ぐわあああああ!」」」」
部下たち:「「「「うわああああ!!!!」」」」
クザン:「お前ら!」
クザンは、叫ぶが、斬られた部下たち全員は、地面に倒れた。
部下A:「ば、化け物!よくも仲間たちを!」
部下B:「やっちまえ!!」
部下数人が、バギーに牙を向ける。
クザン:「よせ!お前ら!!」
クザンは止めるが、バギーは何も動作することなく、突風を起こし、その突風でクザンの部下たちを一掃する。
部下:「ひ、ひいい」
部下たちは、クザンの後ろに隠れる。
クザン:「バギー・グ・テイタラ。貴様」
バギー:「フッ、次は、お前が相手か?水流のクザン」
クザン:「よくも部下たちを…。貴様、何が目的だ?」
バギー:「今から殺す敵に目的を教える意味があるのか?」
バギーは、掌に小さい竜巻を作る。
クザン:「ふっ、殺せるものなら、殺して見ろ!悪王子!」
クザンが手に槍を出す。これがクザンのデュエルギアのようだ。
クザンは、その槍でバギーを突き刺す。
クザン:「よし……な、何!?」
すると、クザンが刺したバギーが突然、風の渦となった。
そして、そのまま、クザンを襲う。
クザン:「ぐわああ!」
クザンの服が所々引き裂かれる。
クザン:「くっ」
クザンは地面に膝を付ける。
そして、目の前に人と同じぐらいの高さの竜巻が現れ、その中から、バギーが現れた。
バギー:「風の分身。よくできているだろ」
クザン:「くっ」
部下たち:「「隊長!」」
クザン:「来るな!」
クザンが部下たちの足を止める。
クザン:「こいつは、お前たちの手に負える敵じゃない。噂には聞いていたがやはり、風属性の使い手。なら、広範囲の技を持っているに違いない」
バギー:「ほう、俺の情報。だが、その情報がどこまで役に立つかな!」
バギーが掌に作った竜巻を投げる。
クザン:「ぐっ」
クザンは、その攻撃を躱す。
バギー:「フェザー・ハンド・ガン!」
バギーが右手を指鉄砲にした。
すると、そこから風でできた弾が連射され、クザンを襲う。
クザンは弾を躱しながら、走る。
バギー:「どうした?逃げることしかできないのか?」
クザン:「くそ、なめるな!」
クザンは隙を見て、手に持っていた槍を投げる。
槍はそのまま、バギーの顔に真っ直ぐ向かう。
バギー:「そんなもの」
バギーは顔を少し傾け、槍を躱す。
槍は、そのまま、地面に突き刺さる。
クザン:「っ!!」
バギー:「悪いな、ハエが飛んできたかと思って、つい躱しちまった」
バギーは、そういうと、一瞬でクザンの側まで来た。
まるで、瞬間移動だ。
そして、勢いよく、クザンを殴り飛ばす。
部下:「隊長!!」
クザンはそのまま近くにあった岩に背中からぶつかり、倒れる。
ヘリから戦闘の場を見るパイロット。
パイロット:「相変わらず容赦ないですね、若は」
パイロットは、ヘリを操縦して、ビルに近づく。
クザン:「狙いは、あの建物にあるのか。なら…」
クザンは、手元にリモコンを持つ。
バギー:「ん?」
クザン:「あまりやりたくはなかったが、仕方ねえか」
クザンは、手に持ったリモコンのスイッチを押す。
すると、次の瞬間、ビルが大爆発を起こす。
これを見たバギーは驚く。
パイロット:「くそっ、爆弾をセットしてたのか!」
パイロットはすぐにビルから離れる。
バギー:「ちっ、面倒なことを。ん?」
爆発したビルの瓦礫の山の上にある物を見て、バギーは直視する。
バギー:「ありゃあ、神秘の石版か?あの爆発でビクともしてねえとは大したもんだ。だが、あんなものに興味はない。それより」
バギーは目線を、クザンに向ける。
バギー:「面倒なことをしてくれたな!」
バギーは高速移動して、クザンに近づき、そのまま胸倉を掴む。
そして、そのまま、降り投げる。
クザン:「ぐわあ!」
クザンは再び、岩に背中をぶつける。
クザンはうつ伏せで倒れそうになるが、そうはならず、ギリギリのところで、バギーに蹴り飛ばされた。
クザンは、胸を押さえながらせき込む。
しばらくして、顔を上げるが、目の前にバギーの姿はなかった。
すると、後ろから殺気が伝わってきた。
クザンは後ろを振り向いた瞬間、首を掴まれた。
バギー:「これが、水流のクザンの力か。思ったほどじゃねえな」
バギーは思い切って、クザンの首を絞める。
クザン:「くっ」
バギー:「このまま、絞殺しても面白くねえな。俺の風で八つ裂きにしてやる」
バギーが空いている左手に竜巻を作る。さっきのとは少し大きめの竜巻だ。
その竜巻の所為でバギーの服と髪の毛が靡く。
部下:「隊長!」
部下たちは叫ぶしかできなかった。
今、近づけば、必ずやられると確信していたからだ。
バギー:「お前らもあとで、隊長のところに送ってやるから安心しろ」
バギーの指がピクピク動く。
バギー:「死ね」
バギーは掌に作った竜巻を、クザンにぶつけようとする。
クザンは目を閉じる。
バギーはニカッと笑う。
???:「そこまでだ」
ギリギリのところでバギーの手が止まる。
部下たちも、「えっ」という感じで沈黙する。
???:「俺の目の前で人殺しはよしてくれよ」
バギーの後ろに立つ男性。
サングラスをかけており、マフラーをつけていた。
そして、クザンの部下たちは、その男の腕についていたバンクルを見る。そのバンクルには模様が刻まれ、漢字で”四”の文字が書かれていた。
部下:「あ、あれは!」
部下:「まさか!」
バギーもそのバンクルを見て、確信した。
そして、クザンの首を絞めている右手をゆっくり離す。
クザン:「はぁ、はぁ」
息が切れるクザン。
???:「もし続けるとでも言ってみろ。そのときは、容赦しないぜ」
太陽の光の影響で、男のサングラスがキラッと光る。
この男は、一体…!!!!
次回予告
ナレーション:クザンの危機に突然、現れた謎の男
その男とバギーが火花を散らし、闇が広がる。
緊迫な空気が続く中、バギーが取った行動とは。
そして、謎の男がクザンに言った言葉が、破門を広げる。
慎也:次回、遊戯王5DXAL「緊迫!ロストVSバギー」
クザン:「てめえが、どうして」
遊戯王5DXAL豆知識コーナー!!
慎也:「フロンティア本部があるネオコーポレーションシティは日本大陸にあり、人口と街の面積は日本一になる。高層ビルが立ち並び、綺麗なところでもあり、近未来の街と言われている。そして、ここの市長が、フロンティアの元帥でもある、百々原清太郎だ。一体何を考えているのか想像もつかなねえから、怖いんだよな」