第2話:『世界の真実とフロンティアの勢力』
ネオコーポレーションシティ
観月家
「それじゃあ、お母さん、行ってくるね」
「小鳥、本当に無茶しちゃダメよ。お父さんもお母さんも心配してるんだから」
「大丈夫よ、定期的に帰ってくるし、向こうに遊馬のおじさんや鉄男君たちもいるから。じゃあ、行ってくるね」
小鳥は家を出た。
『遊馬君、どうか、小鳥を見守ってあげて』
――――――――――――――――――
鬼柳家
「ミスティ、支度できたか?」
「ええ、エマリー、行くわよ」
「はーい」
2階から鬼柳とミスティの娘・エマリーが降りてきた。高校2年生の17歳だ。
「エマリー、本当にいいのか?ここに残ってもいいんだぞ」
「ううん、私も行く。戦って、元の世界を取り戻したいもの」
「…そうか。それじゃあ、いくか」
3人は家を出た。
――――――――――
ネオコーポレーションシティの街中
丸藤兄弟が歩いていた。
翔:「ねえ、兄さん。みんな、戦うことを決意したけど、それってもしかしたら死ぬ可能性が高いってことだよね。みんな、それをわかってるのかな」
亮:「みんな、自分の意志で戦うと決意したんだ。それぐらいの覚悟はあるはずだ」
翔:「でも、僕たち、全然、戦いなんて知らないよ」
亮:「これから覚えればいいさ。人間は一からやって強くなるものだ。あいつもそうだっただろ」
翔はアカデミア時代、一番お世話になった同級生を思い出す。今はもういない。死んだのだから。
翔:「そうだね」
第1OP『衝動《B'z》』
第2話:『世界の真実とフロンティアの勢力』
明日香は実家にいる両親と電話で話しをしていた。
「吹雪から話しは聞いたわ。やめなさいといいたいところだけど、止めても無駄なんでしょ」
明日香の母・天上院唯香が言う。
明日香:「ええ、私は世界を取り戻したいもの、あいつが守った世界を」
唯香:「あれから、62年。こんな世界にならなかったら、12年前の話しか。今でも、彼のこと愛してるの?」
明日香:「うん」
唯香:「そう、あなたの人生よ。あなたが決めなさいって、彼は言うわよね。子供たちにもよろしく。気を付けるのよ」
明日香:「わかった、ありがとう、お母さん」
そういって、明日香は通話を切った。
唯香の方も受話器を置く。
「やはり、明日香も行くのか?」
ソファーで新聞を読む男性、明日香の父・天上院仁が言う。
「ええ、子供たち3人も連れて行くって」
「そうか」
「あなただったら、明日香を止めてた?」
仁はしばらく黙り込んでしまう。
「最近のあいつを見ていると、あの戦いで死んだ、彼を思い出すんだ。俺は、あのとき、画面越しで彼が戦っているところを見ていたが、彼は最後まで心を曲げず、地球を守った。明日香もそうだ。心を曲げず、何事にも挑戦する。俺が口を挟んだところで、あいつの決心は変わらないだろ」
仁は再び、新聞を読む。
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十六夜邸
大きな敷地のあるアキの実家。双子の愛と一星を連れてアキは、父と母と話していた。
節子:「止めても…無駄よね」
アキ:「ごめんなさい。我が儘言って。でも、みんなで決めたことなの。だから…」
英雄:「それ以上何も言うな。私たちは止めはしない。向こうの人の話によれば、アポさえ取れば、私たちの方も本部に入れてくれるみたいだ。いつでも会える」
アキ:「本当にごめんなさい」
節子:「あなたたちも、気を付けてね」
節子が愛と一星に言う。
「大丈夫よ、お婆ちゃん。ママは私が守るから」
「そうだな」
立派な2人はそうやって節子に言う。
「それじゃあ、私たち行くわ」
「頑張って来い、アキ」
「ええ」
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ネオコーポレーションシティ
インダストリアルイリュージョン社
元々アメリカにあった会社だったが、次元振動により、このネオコーポレーションシティへ移転した。
そして、もう一つ変わったことといえば、海馬が経営していた海馬コーポレーションと合併したということだ。
ペガサス会長の社長室に、社長のペガサスと、副社長の海馬、海馬の弟モクバ、そして、前田隼人の4人がいた。
ペガサス:「全社員に事情を話しました。ですが、私が戦いに参加するというのを賛成する者は少なかったのデース」
隼人:「当たり前なんだな。ペガサス会長は、この会社の鏡。しばらく留守となると、社員の、みんなも焦るんだな」
モクバ:「それは兄様も同じことだぜ。副社長だから兄様も会社に残らないとダメなんだぜ」
ペガサス:「世間には、このことを公表しないということデース」
海馬:「公表しなくとも、いずれはバレるぞ。俺たちがフロンティアに合流していることなど」
ペガサス:「分かっていまーす。勿論、私も海馬ボーイも定期的にこちらに顔を出すつもりです。そうすれば、大切な会議だけには出席できます」
海馬:「フッ、うまくいけばいいがな」
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フロンティア本部
エレベーター内
ラリー、タカ、ナーヴ、ブリッツの4人が荷物を持ってエレベーター内にいた。
ブリッツが大きなため息をつく。
ブリッツ:「まさか、こうなるとはな」
ナーヴ:「なんだよ、今更。嫌なら戻ればいいだろ」
ブリッツ:「でも、みんなは行くんだろ」
タカ:「ああ、俺はそう決めたんだ。あの街を、ネオ童実野シティを取り戻すために…」
ブリッツ:「はあ、本当に戦って、世界が元に戻るのかよ。あの人の話しを聞けば論理的なことじゃねえか」
ラリー:「それでも、あの街を取り戻せるんだったら可能性に賭けようよ。遊星だったら、そう言ってたと思うよ」
ラリーの口から出た名前に、みんなの顔色が怪しくなる。
「あ、ごめんよ。俺、つい」
ラリーも元気を無くす。
ナーヴ:「別にいいさ、お前は悪くない」
タカ:「あいつが消えてからもう50年以上も経つのか。尽きない命を持っているのか、50年が早く感じまうぜ」
ブリッツ:「そうだな。けど、いつまで辛いのは、あの子だろうぜ」
4人が話しているうちに、エレベーターは止まった。
4人はエレベーターから降りる。
「おっ、来たな」
4人:「雑賀さん!」
出迎えてくれたのは雑賀だった。
ラリー:「早いね、雑賀さん」
雑賀:「俺もマーサたちと一緒にさっき来たところだ。既に何人か来て施設を見学しているようだ。俺たちも早いところ行くぞ」
4人は雑賀について行く。
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杏子と明日香、そして、結衣、ツバキ、剣代、梨香、珠里が廊下を歩いていた。
明日香:「え、それじゃあ、十代のこと」
杏子:「ええ、知ってるわ。一回だけ直接話したこともあったかな。遊戯も彼のことは気にいってたしね」
「じゃあ、ママのことも知ってたんですか?」
明日香の娘、梨香が話しに割って入ってきた。
「ええ、遊戯からあなたの話しは聞いてたし、会議室であったとき、あなたがいて驚いたわ」
剣代:「お互い、いい父を持ったな」
ツバキ:「そうだね。君たちとは仲良くできそうだよ」
珠里:「私、珠里って言います、よろしく」
結衣:「私は結衣。こちらこそ、よろしくね。普通に接していいわよ」
明日香の娘、次女の珠里と杏子の娘、長女の結衣が挨拶をする。
年齢は、次元振動によって、少しいびつになっている。
結衣が19歳、ツバキが18歳、剣代が20歳、梨香が18歳、珠里が13歳になる。
今の年齢では剣代が一番上だが、前世紀のままでいけば、勿論、剣代より、結衣が年上になる。
杏子:「彼のことは残念だと思ってる。でも、あなたが、ここへ入った理由はなんとなく想像がつくわ」
明日香:「え?」
杏子:「取り戻したいんでしょ、彼が守った世界を」
明日香は頷いた。
杏子は少し笑った。
しかし、それは嫌みの笑みではなく、嬉しい笑みであった。
ツバキ:「剣代が生まれるときには、君の父さんはいなかったんだよね」
剣代:「ああ、だから顔も知らないんだ。アカデミア時代のときの写真を母さんに見せられたぐらいだよ。でも、恨んでなんかない」
ツバキ:「え?」
剣代:「父さんは母さんを置いて、消えてしまったけど、それでも俺は父さんを誇りに思ってるよ。周りの人達を見ていると、父さんと遊びたかったなって思うときが沢山あるけど、それでも、父さんは世界を守って死んだんだ。俺は、そんな父さんを誇りに思っている。父さんを悪いように言う奴は俺が許さない」
剣代は怖い目をする。
「お兄ちゃん、怖いよ」
珠里が少し怯える。まだ13歳、中学生の歳だ。
そんな彼女も、戦いに参加するのは兄として心配だった。
梨香:「ねえ、珠里、本当に戦うの?今なら引き返せるわよ」
珠里:「やだ!私も戦うわ!心の中でパパにそう誓ったもの!」
梨香:「私と同じね。よし頑張ろう!」
珠里:「うん」
明日香は、2人を見て昔の十代に似ているなと思った。いつも前向きで、頑張るところがだ。
「久しぶりね、明日香」
1人の女性が明日香の名を呼んだ。
「最後に会ったのは、30年も前だったかしら」
明日香:「色葉…!どうして」
明日香に声をかけたのは、明日香の知っている女性、雪乃色葉だった。
杏子:「知り合い?」
明日香:「え、えぇ、まあ。私のというより十代の幼馴染何ですよ」
杏子:「十代くんの。十代くん、結構、美人な女を知っているのね」
明日香:「でも、どうして、ここに?」
色葉:「私も半年前に、ここの”SOA特務隊”に配属されたのよ」
明日香:「そうだったの?それより、SOA特務隊って?」
色葉:「あら、聞いてないの?あなたたちが配属されるエージェント組織、Security Options agent、通称SOA。その中にある特別なチーム、特務隊のことよ」
杏子:「私たち聞いてないわよ」
色葉:「そう、元帥も話し忘れていたのね。それじゃあ、私が、施設の案内をしてあげる。付いてきて」
そう言って、杏子や明日香達は色葉について行った。
杏子たち達はデュエル場に案内された。
今、その場所でデュエルがいくつか行われた。
「ジェムナイト・パールで攻撃!!」
デュエルをする青年が攻撃宣言をする。
「トラップ発動!」
迎え撃つ相手プレイヤーがトラップを発動し、攻撃を防いだ。
「ここがデュエル場よ。ここ以外にも、あと5箇所に設置してあるわ」
色葉が丁寧に説明する。
杏子:「デュエル場なんてあるんだ」
明日香:「多元世紀になって、デュエルは薄れているのに」
色葉:「それでも、やっぱりデュエルをして敵を襲ってくる者たちもいるわ。勿論、ソリッドビジョンとは限らないけど」
剣代:「だが、久しぶりに見るな、こういう光景を見るのは」
ツバキ:「うん、学校でもデュエルをする人達はもうあまりいないからね」
一行は別の場所へ行く。
「ここが道場よ、格闘系の訓練をする場所でもあるわ。勿論、他にも訓練する場所は沢山あるわ」
色葉が案内した場所は畳が敷いてある道場だった。
梨香:「色葉さん、ここって、戦力的には強い方なの?」
色葉:「ん?」
梨香:「だって、聞けば、フロンティアは本部を含め、東西南北に支部を持ってて、人の数も多いし、施設もちゃんとしてる見たいだから」
色葉:「そうね、まあ、フロンティアは、この世界にある大規模な組織、大組織の1つでもあるから戦力的には強い方よ」
結衣:「大組織?」
色葉:「ええ、さっきも言った通り、この世界には、目的を果たすために結成された組織が戦い合って、勝利を得るんだけど、その中でも、最も大規模な組織を、この世界では大組織って言われているの。その下が中組織、一番下が小組織。つい最近、とある孤島で行われた戦いはどちらも、小組織だったらしいわ」
明日香:「フロンティアは、その大組織の1つって言ってたけど、大組織は全部でいくつあるの?」
色葉:「フロンティアを含め、全部で4つよ。1つ目は、”サイファー”と呼ばれる大組織で、フロンティアに並ぶ組織よ。2つ目が”プラント”。組織の人数はフロンティアより劣るけど、噂ではその裏で、核兵器を製造してるって噂もあるわ。最後は”バッシュ王国”。ボスは何でもどこかの国王らしいわ。この4つが同時に争ったら、世界は大変なことになるでしょうね」
杏子:「でも、50年も経って、どうして、一度も同時に争ったことがないの?目的を果たすんだったら、一度ぐらい同時に戦ったときがあるんじゃない?」
色葉:「いえ、一度もないですよ。4つの組織には、それぞれ、世界のバランスを保つためにある国家政府公認の勢力があるからね」
珠里:「なんですか?それ」
色葉:「国家政府は流石に知ってるわよね?」
剣代:「勿論です。世界をまとめ上げてる、国際組織。それが国家政府」
色葉:「そう、国家政府は、4つの組織の味方でも敵でもない。世界を見届けるためだけにある国際組織。その国家政府が世界のバランスを保つために作ったいくつかの勢力があるのよ」
杏子:「それを、フロンティアは持っているってこと?」
色葉:「ええ、4人で構成された男たち、”四大神王者”と呼ばれているみたいで、国家政府が公認した勢力の中でも最も最強とも呼ばれているわ。フロンティアではSOA特務隊の1係から4係までのリーダーを任されているみたいよ。何でも、中組織を1人で潰せる力を持っているみたいよ」
珠里:「そんな怖い人達がいるなんて、一体、どんな人なんですか?」
色葉:「さあ、私も会ったことがないわ。本名も知らないし」
ツバキ:「知らない?」
色葉:「ええ、このフロンティアでも、彼らの正体を知っているのは、上層部の人間と、ごく一部の人員だけ。聞けば、4人とも上層部に追放されて今は、行方不明らしいけど」
色葉が色々と説明していると、背後から柄の悪い男たちが来た。
男性A:「よっ、色葉、なんだ?新人連れか」
色葉:「あなたたちには関係のないことでしょ」
男性B:「ふっ、特務隊が調子に乗りやがって。ここは先輩の言うことを聞くべきだろ」
男性Bが明日香に近づく。
男性B:「へえ、美人だな、20代か?ちょっと、遊ばない?」
明日香は怖い目で見る。
男性Bは「なんだよ、その目?」といい怯える。
明日香:「私、こう見えて30超えてるし、もうおばさんよ。あんまり、調子に乗らないことね」
男性B:「んだと!」
男性Bが明日香に触れようとする。
そのとき、剣代が男性Bの腕を掴む。
「そんな汚れた手で母さんに触るな」
剣代の目も怖い目をしていた。
男性A:「んだよ、こいつら!おい、行くぞ」
男性B:「あ、ああ」
男性Bは腕を振り払い、立ち去ろうとする。
男性B:「1つだけ言っとくぜ。特務隊に入るからには、それそうの覚悟はしておけよ」
2人は立ち去った。
梨香:「なぁに、あの人達は」
色葉:「別の隊に所属する奴らよ。SOA特務隊は嫌われ者だから」
結衣:「え?どうして?」
色葉:「さっきも言った通り、SOAはエージェント部隊のことをいうだけど、その中でも私たちが所属するSOA特務隊は、百々原元帥が設立した者で、自己判断で行動することが許されている自由な組織なのよ」
剣代:「なるほど、それに気に食わない奴がいるってことか」
色葉:「ええ、危険視もされているわ。上層部の一部もね。まあ、私たちは無視してるけど。それじゃあ、私たちの現場でも行きましょう」
色葉はみんなを連れてエレベーターに乗る。
しばらくして、色葉たちは現場の近くにある会議室へ来た。
既に、その部屋には、あのとき呼ばれた人達が全員来ていた。
「遅かったな、色葉」
みんなの前に立つ、男性が言う。
「ごめんなさい。でも、大丈夫でしょ」
「まあいい、お前は前に来い。他の皆は空いてる席に座ってくれ」
色葉は前へ行き、杏子たちは一番後ろの椅子へ座った。
「揃ったところで、始めたいと思う。俺は、フロンティアSOA特務隊8係リーダー、桐潟慎也だ。よろしく」
アメルダ:「8係?」
色葉:「SOA特務隊はいくつかのグループに分けられているんです。そして、慎也は、その8係のリーダーってことです」
「と言っても、君たちは来たばかりだ。色葉同様で、どこのグループにも所属しない、フリーマンってとこだ。早速だが、ここにいるみんなにこれを渡したい」
慎也は手元に腕時計のようなものを出す。
三沢:「腕時計?」
影の薄い三沢が言うと…
翔:「あ、三沢くんいたんだ」
三沢:「いたよ!この歳になって、そういう反応するのやめてくれないか」
三沢は突っ込みを入れる。
慎也:「これは、フロンティアのとある開発者が作り上げた”ミッション・ウォッチ”というものだ。見た目は腕時計だが、このようにホログラムを出し調べ物をしたり、受信機にもなる。他にも設定すれば」
慎也は腕時計のボタンを押す。すると、いきなり、慎也の左腕にデュエルディスクが出てきた。皆が驚く。
「このように、デュエルディスクを出すことができる。だから、フロンティアのほとんどの人は、このミッション・ウォッチの中に、デュエルディスクや、Dホイールをプログラムとして格納している」
矢薙:「近未来の道具じゃな」
氷室:「ああ、あれさえ、あれば何でもすぐにものが出せるぞ」
慎也:「男性用と女性用のがある、皆、腕につけてくれ」
みんなは、配られたミッション・ウォッチを腕に身に付ける。
男性のは、G-SHOCKのような少し思い腕時計、女性のは、小さい女性らしい腕時計をつけた。
慎也:「みんな付けたな。戦いに出るときもそうだが、それは身につけて置くようにしてくれ。役に立つものだ。次に、SOAについて話したい。Security Options agen通称、SOA。フロンティアに数少ないエージェント部隊だが、みんなは俺と同じ、その中の特務隊に所属してもらう。特務隊にはエージェントを主流としているが、その他にも情報係や医療機関もある特別な隊だ。そして、他のところが断然、違うところは自己判断で単独行動が赦されているエージェント部隊なところでもある」
その言葉に、みんなが反応する。
「そのためか、他の部門には嫌われ、上層部の一部も、俺たちを危険視している。ここに配属されるということは、敵だけでなく、フロンティアの人員も敵に回すことになるかもしれないということだ。みんなには、その覚悟があるか?」
慎也は真剣にみんなに聞く。
皆はしばらく黙っている。
すると、Ⅳが鼻笑いをする。
Ⅳ:「今更、そんな質問をするなよ、俺たちは覚悟を決めたから、ここに来たんだ」
トロン:「それに僕たちは組織のために戦おうなんて思ってないよ」
Ⅲ:「我々は、この多元世紀を終わらせるために戦うのだ。君たちの思惑通りにはいかない」
慎也:「ふっ、やっぱり、俺たちは似たもの同士だな」
Ⅴ:「どういうことだ?」
色葉:「SOA特務隊にいる、みんなは君たちと同じ気持ちを持っているものばかりが集う場所よ。だから、いつも、上層部の人達とはケンカばかり」
レイ:「じゃあ」
慎也:「君たちが、世界を元に戻したいというなら、俺たちは全力で協力しよう」
カーリー:「私たちと同じ気持ちの人たちが、この組織にはいたんだ」
龍可:「これは頼もしいわね」
そして、慎也はしばらく、世界のバランスなど、このフロンティアのことなど、いろんなことを話す。
ギラグ:「それじゃあ、今まで、このフロンティアが無事だったのは、その四大神王者がいたからってことか?」
肩に狸を乗せるギラグが言う。
慎也:「ああ、国家政府が公認した勢力、その中でも、一番最強とも呼ばれている勢力が、フロンティアが持つ四人で構成された勢力、四大神王者。そいつらは、それぞれとてつもない力を所持しており、中組織ぐらいの組織だったら1人でも壊滅させることができる奴らばかりだ」
ボマー:「だが、特務隊のリーダーにも関わらず、ここにいないとはどういうことだ?」
慎也:「”孤独の法”をかけられて、このフロンティアから追放されたんだ」
天兵:「孤独の法?」
色葉:「フロンティアが持つ刑の1つよ。それにかけられたものは、特定の接触と会話しか許されず、破れば即処刑とも言われているわ」
慎也:「上層部の一部、特に、”十天老士”と言われた上層部の組織が、彼らを危険視し、このフロンティアから追放したんだ。奴らがいれば、組織はいずれ壊滅するってな」
マルタン:「え、でも彼らがいたから、ここは今まで無事でいたんだよね」
慎也:「そう考えない奴もいるってことだ。勿論、元帥や上層部の一部は、その意見に反対したが、それでも、追放をする支持が多くてな。それで、刑が決まり、4人はここを出たんだ」
斎王:「酷いな」
美寿知:「ええ、勝手過ぎる」
恵美:「それで、彼らは?」
慎也:「ここを出て、既に10年以上にもなるが、今現在、行方がわからないままだ」
ヴァロン:「わからないといえば、正体を知っているのもわずかしかいないと言っていたな」
慎也:「ああ、知っているのは、上層部の奴らとごく一部のものたちだけ。それは、どの組織もそうだろ」
色葉:「ちなみに慎也は、彼らの正体を知ってるけど、教えてくれないのよね」
慎也:「だから、言ったろ、むやみに彼らの正体を教えるわけにはいかないんだ」
アキ:「それにも、理由があるの?」
慎也:「ああ、4人は、この世界の秘密をいくつも知っている。上層部でも知らない秘密もな」
慎也:『ま、それだけじゃないがな』
慎也は心の中で呟く。
慎也:「今、彼らについて話せるのは、彼らはそれぞれ、”アッシュ”、”バーン”、”スターリング”、”ロスト”というコードネームが付いているということだけだ」
色葉:「秘密ね…もしかして、多元世紀が作られた理由を知っているとか」
慎也:「それについては、俺たちの管轄外だ。何も答えられない」
色葉:「ですよね」
鮫島:「だが、それでも気になることがある。彼らが追放されたならば、敵はチャンスとばかりにここを襲ってくるはずでは?」
慎也:「それができないんですよ。なぜなら、このフロンティアの最重要機密のデータに、彼ら四大神王者のデータが隠されているからです。敵には、彼らの力を欲する者たちもいる」
ナポレオン:「なるほど、下手に襲えばデータが消えるということでアールな」
慎也:「そういうことです」
影丸:「色々と複雑じゃな」
100歳を超える老人、影丸が言う。
ジャック:「俺たちが知らない50年間の間で、いろんなことが起きていたとはな」
クロウ:「ああ、改めて驚くぜ。よく、これだけのことが長い間、内密にできたものだぜ」
慎也:「だが、全て事実だ。今、この世界は混沌に包まれている。俺たちは解放に向けて、立ち上がるときだ」
――――――――――――――――――
慎也たちが話しを進めていく中、その頃、フロンティア本部、70階、中央ホールに10人の男性が話しをしていた。
男性A:「元帥は何を考えている、あんな奴らをSOA、しかも特務隊に入れさせるとは!」
男性B:「元帥の身勝手な行動にも困ったものだ」
男性C:「まったくだ。老人まで加入させたそうだぞ」
彼ら10人は、フロンティア最高権力の1つ、「十天老士」と呼ばれた50代~70代の男性たちで構成されたものだ。
男性D:「元帥のことはどうでもいい。今は、こっちの話だ」
ちょび髭を生やした男性Dがテーブルからホログラムを出し、それに乗っているデータをみんなに見せる。
男性E:「西の方角にある孤島、”ワックスポワロ”。そこにある謎の施設の話しか」
男性D:「ああ、見るからに怪しい施設だ。”サイファー”も警戒しているらしいぞ」
男性F:「ほう、奴らもか。これは、下手に人員を送るわけにはいかんな」
男性G:「だが、もうすでに、特務隊の方に話しを通しているそうだぞ」
男性A:「何!では、これは奴らがやるのか」
男性G:「おそらくな」
男性H:「これも、元帥の差し金か?」
男性I:「さあな、だが、言ってしまった以上、奴らに任すしかあるまい」
男性J:「ふん、早死にしなきゃいいがな」
10人の男性は、話しを終える。
――――――――――――――――――
その頃、百々原元帥は自分の机に置いてあるパソコンを見ていた。
画面には、”Xデータファイル”と書いてあった。
百々原元帥は、右手でキーボードを叩き、パスワードを打ちこむ。
Xデータファイルの中身が画面に公開された。
どうやら、個人情報のようだ。
百々原元帥はそれを真剣に拝見する。
既に外は夜。暗い部屋で真剣に見ているデータは一体、何なのか。
――――――――――――――――――
その頃、ベクターは、自分が暮らす部屋に来ていた。
「1人暮らしするには十分な部屋だな」
ベクターは周りを見渡す。
トイレもついているシャワー室もある。ふかふかな大きなベッド。窓から外を見渡せば綺麗な夜景が見える。
『俺をのけ者にして、これからは俺も暴れさせてもらうぜ』
ベクターはニヤッと笑う。
――――――――――――――――――
女性専用大浴場
アンナ:「それで、明日から俺たちは何をするんだ?」
キャットちゃん:「勿論、戦いのコツでも教わるんじゃないの」
ドロワ:「私たちは、今まで何も知らなかった人間だ。スタートは、そこからだろ」
アンナ:「けどよ、デュエルと違って実戦なんだろ!怪我するぜ、絶対」
ドロワ:「これからは、毎日、覚悟を決めて一日を過ごさなければいけないな」
3人の女性は湯船に浸かって、話しをしていた。
しかし、その隣では…
男性用大浴場
「徳之助くん、やめた方がいいですって、殺されますよ」
等々力こと、委員長が壁をよじ登り徳之助を止めようとしていた。
そう、徳之助は女性浴場を覗こうとしていたのだ。
徳之助:「大丈夫ウラ、バレないウラよ」
「20歳にもなって、何をやってるんだが」
「まったくだ」
湯船に浸かるミザエルとドルべが呆れる。
「そうだぞ!この先は天国が待っているのだ!」
九十九明里の自称恋人、チャーリーが徳之助と一緒に壁をよじ登る。
「止めても無駄みたいだね」
かつて、エスパー・ロビンを演じた奥平風也が委員長の隣に立って呆れる。
等々力:「もう知りませんよ」
二人を残して委員長たちは大浴場を出る。
ミザエル:「ま、死なないようにしろよ」
ミザエルはドアを閉める。
チャーリー:「あと少しだ。頑張るぞ!」
徳之助:「はいウラ!」
そして、先にチャーリーが屋根の上に手を伸ばした。
チャーリー:「よし、ゴールイ…ン?」
チャーリーの前に1人の女性が映った。バスタオル一枚で身体を包んでいる。
明里:「やあ、チャーリー、何をしてるのかな?」
チャーリー:「やあ、マイハニー、ご無沙汰…」
明里:「誰がマイハニーだ!!」
明里は石鹸を投げ、チャーリーの額に当てた。
「ぶはっ!」
チャーリーは手を滑らせ、下に落ちる。
徳之助:「大丈夫ウラか!くそっ、負けてたまるウラか!」
徳之助は再びよじ登り、屋根の上に手を伸ばし、顔を見せる。
そこには、明里ではない女性が顔を出していた。
徳之助:「…小鳥…さん」
小鳥はニコッと笑う。そして、次の瞬間、風呂で使う桶を徳之助、目掛けて投げメガネを割った。
徳之助は叫びながら下に落ちる。
徳之助とチャーリーは湯船に浮かぶ。
そこに、右京先生と、一馬が入り、二人とも驚く。
女性用大浴場
小鳥:「まったく、これじゃあ、ゆっくり入ってられないわ」
「まあ、これで、2人も少しは懲りたでしょ」
九十九未来が笑って答える。
小鳥:「そうですけど」
未来は小鳥の顔を見る。
小鳥:「どうかしました?」
未来:「小鳥ちゃんって、今でも遊馬のこと好きなの?」
小鳥:「えっ…///それは、その…、はい」
未来:「そう、それはよかった」
小鳥:「え?
未来:「遊馬が消息不明になって、もう50年以上にもなっているでしょ。だから、みんな、遊馬のこと一欠片も思っていないんじゃないかなってね」
小鳥:「そんなことありません!みんな、遊馬のことは仲間だと思っていますよ!」
未来:「そう、そう思ってくれる人がいっぱいいて、母として私は嬉しいわ」
未来が笑う。
夜空の下で大浴場に入る、みんな。
明日から厳しい日々が続くことになる。
第1ED『あふれる感情がとまらない《生沢佑一》』
次回予告
ナレーション:世界の戦いを知った、一行は、ついにそれぞれ修行を開始する。
その第一段階は、基礎の基礎、デュエルモンスターズの武器を出す力だった。
そのコツを知る、みんなの成果はいかほどになるのか。
城之内:次回、遊戯王5DXAL「デュエルギア」
行くぜ!これが俺のデュエルギアだ!