第1話:『新たな時代開幕!!多元世紀と呼ばれた世界』
とある孤島
いろんな場所で爆発音が鳴り続ける。
「行けっ!切り込み隊長!!」
剣を持つ鎧を付けた戦士が攻撃を仕掛ける。
「迎え撃て!異次元の女戦士!!」
女性騎士が迎え撃ち、2体の戦士の剣が交わる。
「デュエルギア!」
スーツを着た男性の背後に立つ”コマンダー”が光の粒子となり、銃となって男性の右手に持たれた。
男性はその銃を発砲し、目の前にいた男性を撃ち殺した。
他にも、剣を持って敵を斬ったり、ライフルを握って狙撃したりと、争いが絶えない。
「例え、小さい組織でも、力を合わせれば、何でもできる!!」
「それは、こちらとて同じだ!!」
両軍の長たちが向かえあって立つ。
数時間後………
激闘の末、両軍とも、沈黙。
長たちも、死亡した。
この戦いで死んだデュエリストは、100人を超える。
―――――――――――――――――――
高層ビルが立ち並ぶ、近未来の技術が詰まった大都市、『ネオコーポレーションシティ』
その中心に立つ街で一番高いビルと敷地を持った、『フロンティア』本部
その入り口を、短髪の美人女性、武藤杏子が潜る。
とある、休憩室
女性A:「じゃあ、ついこの間、スカウトした人達、全員入るの?しかも、特務隊に?」
男性A:「あぁ、上からの推薦らしい」
女性B:「でも、何で急に?」
男性A:「さあな、理由は知らねえ」
男性B:「まあ、ここも、先月で50名も失ったんだ。その埋め合わせだろ」
女性A:「”次元振動”が起きて、50年か。本当、嫌な世界よね。”多元世紀”って」
缶コーヒーを飲みながら話すフロンティアの人員たちが話す。
多元世紀50年…
世界は次元振動と呼ばれる次元の歪みによって、世界は未来と過去、平行世界、12次元世界と、全ての世界が1つになり、新たな世界が生まれた。
前世紀に生まれた者たちは年を取ることのない永遠の命を手にしまった。
それでも、死人は増える。
その理由は、争いの絶えない戦争が置き続けているから。
この世界を統一し平和にしようとする組織、世界を元に戻そうとする組織、組織によって目的は違うが、その目的と理想を成し遂げようと、デュエルモンスターズを使って戦う者たちが沢山いた。
新しい生命が生まれても、若いうちに戦いに巻き込まれ、死ぬ。そんな世界だった。
そして、多元世紀になって、50年。
戦いは新たな幕を開けようとする。
第1OP『衝動《B'z》』
第1話:『新たな時代開幕!!多元世紀と呼ばれた世界』
1か月前………
フロンティア本部、中央会議室
数名の人員が円状の机の目の前に座り、話しをする。
「先月の死人は50と4名。多いな」
「そんなのんきなことを言っている場合ではないぞ!このままでは、我がフロンティアの人員が減り続け、挙句の果ては…!」
「そんなことわかっている。我ら、”十天老士”も、そんなことはさせん!」
「しかし、どうする?このままでは、他の組織が攻めてきたとき太刀打ちできんぞ。いっその事、”四大神王者”共を呼び出すしか方法は…」
「奴らはダメだ!その力ゆえ、こちらにも危険が及ぶ。それに奴らの正体を知っているのは、世界中でもごくわずか。奴らの存在が世間でバレたら、大騒ぎだ」
「確かにな。じゃが、このまま、何もしないというわけにもいかんだろ」
中央会議室がシーンと静まる。
すると、中央に座る老人が目を開ける。
「ならば、奴らと親しかった奴らを仲間に入れるのはどうだ?」
白髪で髭を生やした老人が口を開ける。
「奴らの親しかった奴らをですか?元帥」
「それでは、奴らの正体が…!」
「勿論、彼らの正体は伏せる。できる限りな。それに、それは、”国家政府”の連中もそういうだろ」
元帥がサングラスをかけた男性に言葉をかける。
「しかし、何も知らない彼らを、いきなり、加入するのは!」
サングラスをかけた男性が立ち上がっていう。
「勿論、交渉はする。決めるのは、自分たち次第だ。そうだろ、遊城健三執行官」
元帥が立ち上がったサングラスをかけた男性に言う。
「それに、交渉する人物たちには、大体目途がついている」
元帥が目の前にあるホログラムの画面に映る個人情報と写真が映った映像を見て言う。
ネオコーポレーションシティ、住宅街
「それじゃあ、お母さん、行ってくるよ」
ブレザーを着用した身長が160センチぐらいの小柄な学生、武藤ツバキが玄関で靴を履いて言う。
「ええ、いってらっしゃい。気を付けるのよ」
ツバキの母、杏子がエプロンで手を拭いて言う。
「わかってるよ。じゃ」
ツバキは家を出た。
「結衣、あなたも急ぎなさい。遅刻するわよ」
「わかってるよ」
ツバキとほとんど身長が変わらない女性、武藤結衣が制服を急いで着用する。
すると、目の前に、父・遊戯が映る写真が目に入った。
「行ってきます」
小さい声で呟いた。
「それじゃあ、行って来まーす!」
「いってらっしゃい」
杏子は長女、結衣を見送る。
我が子を見送った杏子がリビングに戻る。
「今日も、二人は元気で学校に行ったわ。次元振動で、時空が揺らいで、あの子たちは13年後の未来からやってきたみたいだけど、それでも、私たちの子供たちには変わりないわよね。あなたが消えて、50年。この世界はいろいろ変わったけど、戦えない私たちは平和に暮らしているわ」
杏子はリビングに置いてある夫・遊戯の写真や若いときに2人で撮ったプリクラの写真を見て呟く。
すると、インターホンがなった。
「はーい、今出ます」
杏子は玄関の扉を開けた。
すると、そこには、スーツを着た男性が1人立っていた。
「あの、どちら様で?」
「私は、”フロンティア”に所属する者です」
「あの大組織の…」
「はい。武藤杏子さん、一緒にご同行願いないでしょうか?実は、あなたと話したいと言っている人がいまして」
――――――――――――――
とある孤島
金髪ロングヘアの女性が、花束を持って、孤島の中心地にある慰霊碑に近づく。
女性は、慰霊碑の前に花束を置く。
「ごめんなさい。最近忙しくて、全然来れなくて。実は、昨日、フロンティアの人が私のところに来てね。私と話したい人がいるから、本部に来てくれって言われたわ。翔君や兄さんも同じみたい。それで、今日、本部に顔を合わせに行くわ。ちょっと怪しいけど、みんな行くっていうから、私も行くことにしたの」
金髪ロングヘアの女性、天上院明日香が立ち上がる。
「でも、よかった。次元振動で、地理や歴史が変わってしまったけど、あなたの伝説と、この慰霊碑は残ってて。ホント、私は運がいいのか、悪いのか。それじゃあね、十代。愛してる」
明日香は振り向き歩き出す。
――――――――――――――――――
ネオコーポレーションシティ
とある病院
「はい、おしまい。薬出しておくから、ちゃんと飲むのよ」
赤髪の女性医師、不動アキが笑顔で言う。
男の子:「はーい、ありがとう、先生」
男の子の母親:「ありがとうございます」
アキ:「お大事に」
アキは患者を見送った後、少しため息をついた。
「暑い」
アキはYシャツのボタンを1つ外す。
綺麗な谷間が見えてしまっている。
アキは自分の谷間を見る。
『お前は美人なんだ。少しは用心しろ』
頭の中に今でも愛している行方不明の夫・遊星の声が響いた。
「余計なお世話よ。私を置いて居なくなったくせに」
アキは少しいじけた。
「先生」
1人の看護師が中に入ってきた。
「どうしたの?」
「それが、先生にお客様がお見えになっています。なんでも、フロンティアの関係者みたいで」
「フロンティアの…?私に何のようかしら」
アキ:『戦えない人達に差別して、何も教えないくせに、一体…』
―――――――――――――
観月家
「小鳥!あなた今日、仕事は?」
緑色の髪をした美人の女性が2階の部屋にいる娘に言う。
「今日は休みよ。心配しないで」
小鳥はベッドでゴロゴロしていた。
小鳥はテレビをつけた。
『昨日、西にある孤島で再び激しい戦闘が繰り広げられました。両軍の組織の名は…』
小鳥は付けたばっかのテレビの電源を消した。
「嫌なニュースばかりね」
リモコンを枕もとの横に置く。
ため息をつく小鳥。
目覚まし時計のすぐ横にある写真立てを見た。そこに映っているのは、行方不明の恋人、九十九遊馬とのツーショット写真だった。
「次元振動なんて起きてなかったら、今頃、私60代のおばちゃんよ。歳を取らないから生きていられるのはいいけど、人生辛いことばっかしだわ」
小鳥:『遊馬…』
小鳥は自分の顔を枕に押し当てる。
「何なんですか?あなたたちは!!」
下から動揺する母の声がした。
小鳥は急いで下へ行く。
「どうしたの?お母さん」
小鳥が下へ行くと、玄関に2人の男性が立っていた。
「我々はフロンティアの者です。観月小鳥さん。失礼なことはしません。我々と一緒に本部までご同行してもらえないでしょうか?」
小鳥は少し警戒した。
その頃、結衣とツバキが通う学校にも、フロンティアの者たちが訪れた。
「結衣さん、ちょっといい」
授業中、教室に入ってきた教頭先生が結衣を連れて行く。
同様に、高校2年の弟・ツバキも連れて行き、2人で応接室に連れて来られた。
応接室には既に、スーツ姿の男性が座っていた。
その頃、他の者たちもフロンティアに所属する者たちに接触した。
――――――――――――――――――
中央会議室で話しをしていたサングラスをかけた執行役の遊城健三が部屋で誰かと電話する。
『無茶だ。50年、何も知らない。彼らを参加さようなんて』
遊城健三:「そんなこと俺もわかっている。だが、元帥が決めたことだ。俺が変に口出すことはできない」
フロンティア西支部
「やるかやらないかは、自分たちで決めろということか」
健三:『ああ、そういうことになる』
「この時代になって世界は変わった。話を聞いて、彼らがどういう反応を見せるのか。元帥は何を考えているんだ?」
フロンティア本部
健三:「さあな。必要なことだけを話すと言っていた」
『あなたは立ち合わないですか?』
健三:「ああ、話しは元帥だけでする。それに、俺が急に出てきたら、それこそ、何人かは驚いて話しが進まなくなる」
『確かに』
健三:「ともかく、全ては彼らが全て決めることになる。開発部チーフであるあなたは、近々、本部へ来てもらうことになるはずだ。そのときは、よろしく頼む…不動博士」
不動博士:「了解」
あの伝説を残した遊星の実の父親、不動博士が通話を切る。
次元振動によって、ゼロ・リバースが起きていない平行世界からやってきた不動博士だ。
「フロンティアも、ついに本気を出すということか」
不動博士は窓の外を見る。
――――――――――――――――
フロンティア本部
40階、会議室
そこに、杏子と結衣、ツバキの3人が入ってきた。
「杏子さん」
杏子を呼びかける声。聞き覚えのある声だ。
「静香ちゃん!?それに、城之内に本田も」
城之内:「よっ」
本田:「お前も来てたのか」
杏子さん:「えぇ、まあ、無理矢理来させられたといってもいいけどね。それより、ここにいる人達って」
城之内:「ああ、俺たちと同じだ。いきなり、ここの連中に話しかけられ、連れて来られたようだぜ」
椅子には沢山の人が座っていた。
そこには、杏子が知る者もいれば、知らない者もいた。
杏子は1人の女性に目が行った。
天上院明日香だ。
遊戯から話しを聞いていたのだ。亡き英雄の神、遊城十代の恋人以上の存在だって。
隣には3人の子供の姿もあった。
杏子:『あの子も来てたのね…』
アキ:「それじゃあ、ミスティたちも、ここの人達に連れて来られたの?」
ミスティ:「ええ、京介とエマリーと一緒にね」
隣には、夫・鬼柳京介と娘のエマリーがいた。
エマリーはアキの双子の子供たち、愛と一星と話していた。
小鳥:「遊馬のおじさんたちも来てたんですね」
一馬:「ああ、一家揃って拉致された」
小鳥の恋人、遊馬の実の父親、一馬が帽子を取り机の上に置く。
未来:「小鳥ちゃん、ママはどうしたの?」
小鳥:「連れて来られたのは私だけです。母は家にいます」
春:「まったく、このおいぼれまで連れて来られるとは、何を考えているのやら」
明里:「次元振動の影響で戦争は勃発。このフロンティアも、その戦争に参加する組織。戦えない人達には、その機密をばらさないと聞いてるけど」
一馬:「その機密をばらす気にもなったのか…」
小鳥と突く、九十九家が話していると、そこに、みんなが知っている人達が入ってきた。
インダストリアルイリュージョン社、デュエルモンスターズの生みの親、ペガサスとその助手、前田隼人。更に、元海馬コーポレーション社長で今はインダストリアルイリュージョン社の副社長、海馬瀬人と助手の弟・モクバが入ってきた。
御伽:「ペガサス会長…!」
マリク:「それに海馬。君たちも、ここに呼ばされたのか?」
ペガサス:「ええ、昨日、私の方に電話があって、ここへ。詳細は聞いていないのデース」
獏良:「そちらの方で、このフロンティアのことは調べてないの?」
モクバ:「何度も調べようとしたさ。でも、セキュリティが厳重で簡単には入れないところだ」
海馬:「この俺でも、知らない、ここが一体、何のようだ…」
城之内:『偉そうに…、次元振動で海馬コーポレーションは無くなっちまって、お前はもう社長じゃねえだろう』
城之内が心の声で呟く。
そう、次元振動はいろんなものを無くした。例えば、海馬が経営していた海馬コーポレーションが消え去った。
他にも、万丈目の実家、万丈目グループも次元振動の影響で経営がうまくいかず倒産。万丈目の兄たちは、今、普通の生活を送っている。
そんな世界にしてしまったのだ、次元振動は…。
すると、会議室にある大きな画面に人が映る。
『揃ったようだな。では、着席していただきたい』
画面に映る老人が言う。
ジャック:「あんたは確か、ネオコーポレーションシティの市長」
亮:「百々原清太郎だったな」
画面に映る老人の名を言う丸藤亮が腕を組んで椅子に座る。
『ああ、だが、市長というは表の役職。裏の役職は、このフロンティアをまとめ上げる”元帥”だ』
剣山:「元帥って…!」
深影:「トップだったのね、あなたは」
凌牙:「それで話とはなんだ?戦えない俺たちを勝手に呼んで、下らない話だったらただじゃ置かねえぞ」
凌牙ことシャークが怖い目で百々原を見つめる。
「目が怖いわよ、凌牙。でも、私も一理あるわ。戦えないものを差別して、多元世紀の細かいことを教えてくれない、組織ですもの」
「50年、平凡に暮らしていた俺たちを呼んだ理由はなんだ?」
璃緒とカイトが百々原に追求する。
『では、単刀直入に話そう。我々、フロンティアに君たちの知恵と力を貸してほしい』
百々原の言った言葉に反発するものが立ち上がる。
牛尾:「ふざけるな!いきなり呼んで、いきなり力を貸してをほしいだ!笑わせるな!」
クロノス:「確か~に。話が唐突すぎるノーね」
鮫島校長:「うむ、我々ならともかく、若い子供たちまでとは、これは一体、どういうことなのか説明してもらわないと困ります」
『よかろう。では、着席していただこう。話が長くなるのでな』
百々原の言う通り、皆が着席する。
『まず、さっき言っていた”差別”についてだが、これについては深く謝ろう。申し訳なかった。だが、これは、君たちのためでもあったんだ』
リシド:「私たちのため…?」
『そうだ。世界は多元世紀と呼ばれ、混沌の時代を迎えてしまった。世界中の人々がな。だが、ここにいる皆は多元世紀になる以前から、苦しい戦いを経験をしたものばかりだ。見覚えはあるはずだ』
百々原の言う通り、ここにいる皆は、デュエルで危険な目に遭っている。
エド:「だから、僕たちを50年間、戦いに巻き込まなかったのか?」
『大きな理由はな。だが、他にもある。それは、デュエルエナジーの覚醒だ』
双六:「デュエルエナジー?なんじゃ、それは」
アーサー:「私も初めて聞く用語だ」
『デュエルエナジーとは、特定の人間に流れるエネルギーのことだ。人によって個人差はあるが、戦うものは、これを操ることで、戦いに参加することができる』
ジュンコ:「その何とかエナジーっていうのが、私たちにもあるっていうの?」
『まだ、少量だがな。だが、それを完全に引き出すことができれば、戦うことはできる』
バン!!
海馬が立ち上がる。
「どうやら、無駄話のようだな。テレビでもやっていたが、貴様らが引き起こしている戦争など、俺には関係のないこと。失礼させてもらうぞ」
海馬が部屋を出ようとする。
『待ちたまえ。海馬瀬人、君は知らなさすぎる』
「なんだと…?」
『なぜ、この世界にあるいくつもの組織が戦い合うのかを教えてやろう。色々あるが、多くの理由は、この多元世紀を終わらせ、元の世界を生活を人々を取り戻そうとしているのだ』
フェイカー:「多元世紀を終わらせる…?」
『我々、フロンティアもそうだ。好きで戦争をしているわけではない。元の世界を取り戻すために、戦っているのだ。敵の組織の中には、この世界を統一するなど、理想の時代を作り代えるなどと目的が違うから戦っているのだ』
イシズ:「話し合いはしないのですか?そうすれば。人はわかり合えるはずです」
『何度も交渉はした。だが、拒否されるだけ。この時代になって、話だけで済むことはない』
ラフェール:「だから、我々もフロンティアの理想のために戦ってくれとそう言いたいのか」
ラフェールの問いに百々原は黙ってしまった。
「ふざけるな!例え、どんな理由があろうとも、組織のために戦うなんてまっぴらごめんだ」
「その人の意見に賛成だ。俺も組織のために戦うんだったら、この話は聞かなかったことにする」
城之内とオブライエンが言う。
『ならば元の世界に戻したくないということでいいのか?』
百々原の問いに城之内とオブライエンが答えなかった。
右京:「1ついいですか?さっきから、世界を元に戻すために戦っていると言っていますが、その元に戻す方法はわかっているのですか?」
小鳥たちが中学時代、担任を務めていた教師、北野右京が手を挙げて言う。
『いや』
翔:「じゃあ、わからないのに戦っていたってこと!」
『まだ、はっきりとわかっていないだけだ。それを突き止めるためにも我々は戦っている』
シェリー:「行き当たりばったりの戦いをしてるだけってことね」
アンナ:「何が目的なのかわからないぜ」
ゴーシュ:「まったくだ」
ももえ:「ここに入るということは、戦うということですよね。普通の生活に戻れなくなるのでは」
『多少の害はあるだろうが、我々が君たちの生活に文句は言わん』
ハルト:「けど、戦うと言っても、50年間、普通の生活を送っていた僕たちでも、この世界のこと、よく知らないし、それに、戦い方も」
『それについては心配はいらん。基礎については、この組織の優秀な者たちが教えよう。それに、君たちのご両親にも詳しい話は我々の方からする。それから、年寄、特に50代後半の者たちには、特別な役を与えたいと思う』
ヨハン:「なあ、1つだけ確認させてくれ。本当に戦いの後に待っているものは平和なのか?」
ジム:「ヨハン…」
ヨハン:「俺の知り合いに世界のために戦って散った奴がいた」
ヨハンの言った言葉に明日香が反応した。
「母さん」
明日香の隣にいた、我が子・剣代が声をかける。
「あいつの二の舞を俺は二度と作りたくない」
『無論だ。平和は必ずある』
「約束だぞ」
『ああ』
クロウ:「それと、これも言わせてくれ。俺たちは組織のために戦うんじゃない。世界のために戦うってことをな」
『よかろう』
龍亜:「クロウ、かっこいいぜ」
クロウを褒める龍亜。
「そうか?」
クロウは頬を掻く。
「ふん」
海馬は腕を組んで呆れたような鼻笑いをする。
「仕方ないね、僕たちも力を貸してあげるとしよう」
「せやな、ワシらがいないと始まらんしな」
メガネをかけた小柄な男性と、帽子を被った男性が笑って言う。
本田:「なんだ?羽蛾に竜崎じゃねえか。お前たちいつからいたんだ」
羽蛾:「最初からいた!」
竜崎:「気づかなかったんかい!!」
みんなが笑う。
杏子も軽く笑っていた。
『遊戯、どうやら、あなた不在で世界のために戦うことになるみたいよ』
杏子が窓の外を見て心の中で囁く。
明日香:『世界のためか…。私もあなたのところに行くのはそう遠くないかもね…』
明日香の頭の中に、一番愛した男の後ろ姿が見えた。
画面越しから会議室を見る百々原。
『うまく意見がまとまったようだ』
百々原は近くに置いてあるパソコンの電源を付ける。
『彼らには、ここに配属してもらうとしよう』
パソコンの画面には”SOA”と書いてあった。
『彼らには、お似合いの場所だろ。これから厳しい戦いになるだろうが、それでも、元の世界を取り戻すためにも我々は…』
百々原は目を瞑って呟く。
フロンティア本部
とある部屋。
1人の女性が、シャワー室から出てきた。
バスタオルで体を包んでおり、手には腕時計を持っていた。その腕時計からホログラムが出ており、”call”と書いてあった。
「それじゃあ、全員、入ったの、フロンティアに」
『ああ、お前と同期になるどろうな』
「私の方が半年前先に入ってるわよ」
『あまり変わらないだろ』
「それでも、上は上よ。それで、私に話しって?まさか、教育係を押し付けるんじゃ」
『そんなことはしない、入ったばっかのお前にはな』
「じゃあ、何のようなの?慎也」
『実はある任務があってね。もしかしたら、新入りとお前に、その任務を任せることになるかもしれない』
「ちょ、私はともかく、今日、入ったばっかのみんなには!」
『上からの命令だ。勿論、俺たち8係も協力する』
女性はため息をついた。
「拒否権はなしか。それじゃあ、その代償で1つ聞きたいことがあるんだけど」
『ん?』
「フロンティアが持っている国家政府に認められた世界勢力、”四大神王者”。その4人って誰なの?」
『それをどうして教える必要がある』
「それは勿論気になるからよ。ねえ、教えなさいよ」
『残念だけど、教えることはできない。新米のお前にはね』
「だから、私は…」
『半年前だろうが関係ない。これは、フロンティアでもかなりの機密事項。簡単に教えるつもりはない』
「ケチ…」
『それじゃあ、明日には、みんなにあいさつしとけよ』
そう言って男性は通話を切った。
「まったく…」
バスタオル一枚の女性は腕時計をテーブルの上に置く。
その近くにある本棚の上には警察官帽子が置いてあった。
「多元世紀…謎の多い時代か。いつになったら、平和が来るのかしらね…」
女性はコップの中にある水を飲む。
第1ED『あふれる感情がとまらない《生沢佑一》』
次回予告
ナレーション:ついに、始まった多元世紀の物語。
フロンティアへ加入した杏子たちは、この世界の裏を追求しようとする。
しかし、彼女たちが知った真実はとてつもない複雑な事実だった。
杏子:次回、遊戯王5DXAL「世界の真実とフロンティアの勢力」
デュエルスタンバイ!