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第183話:『希望のゼアル』









ドン・サウザンド:「そう神は何でもできる。このカードは、相手のエンドフェイズ時に、ヌメロン・サンクチュアリが場にある時、手札から発動できる特別なカード。フィールド上に存在する表側表示のカードを1枚破壊する!我は貴様の重武装の電光を破壊!」
凌牙の永続魔法が破壊され、上空の雷雲が消える。




カイト:「凌牙の永続魔法が消えた…!」

ゴーシュ:「おいおい、ってことは…」

ミザエル:「ドン・サウザンドのモンスターの力が戻るということだ」
ミザエルの言う通りで、3体のゲート・オブ・ヌメロンの攻撃力が最大の攻撃力を持っていたときと同じ数値になる。




No.Ⅳゲート・オブ・ヌメロン-チャトゥヴァーリ・ネルガル
攻撃力0→32000


No.Ⅲゲート・オブ・ヌメロン-トゥリーニ・タナトス
攻撃力0→32000


No.Ⅱゲート・オブ・ヌメロン-トゥヴェー・ホロン
攻撃力0→32000




遊馬:「っ!」




未来:「攻撃力が32000に…」

ギラグ:「それだけじゃない。効果が戻ったということはシニューニャ・ブラックホールの効果も健在となる」

アリト:「つまり、あのブラックホール野郎の特別勝利効果も元に戻ったってことだ」
それを聞いて、みんなが動揺する。


梨香:「そ、そんな…」

色葉:「次のターンが回ってきてしまったら…」

明日香:「2人の負けが確定する…」



小鳥:「世界は…破滅する…」
小鳥の一言は、更にみんなを動揺させてしまう。




アストラル:『あんなカードまで持っていたとは…』


遊馬:「流石に予想外だったな、くそっ」

凌牙:「…」



ドン・サウザンド:「我は、ドン・サウザンド!全ての世界の頂点に立つ神!その神が、今、愚かな人間に鉄槌を下す時が来た!世界中の人間共よ!絶望するがいい!」
ドン・サウザンドが世界中の人々を絶望させようと高笑いをする。









第10OP『鏡のデュアル・イズム《petit milady》』









第183話:『希望のゼアル』







ドルべ:「重武装の電光が破壊された以上、シニューニャ・ブラックホールの効果が、次のターン発動するのは明白だ…」


珠里:「せっかくチャンスを作ったのに…」

葵:「このまま世界は破滅するというの…」
みんなの動揺する気持ちは隠し切れない。


それは、ここにいる者だけでなく、世界中の人々もそうだった。


つい1分前まで物凄く喜んでいた表情は暗く、死ぬことが全てのような表情だった。




エリファス:『このままでは…』
エリファスも2人が負けると、その気持ちだけでいっぱいだった。







アストラル世界

エナ:『いえ、まだです。あの2人には、ドン・サウザンドを凌駕する希望を持っている…』
エナは空に浮かび上がる映像を見て、そう呟いた。





すると、遊馬が腰につけている”ホープ・カードホルダー”が輝く。

その輝きはただの輝きではなかった。


アストラル:『遊馬、まだ我々には希望が残っている…』

遊馬:「ああ、そうだったな。運命はまだ俺たちを見離してはいねえ」
この絶望に立たされる中、遊馬の表情は笑っていた。

遊馬だけではない、隣に立つ凌牙も笑っている。



ラリー:「あの2人笑ってる…」

タカ:「こんな時に何笑ってんだ…!」

ブリッツ:「追い込まれ過ぎて頭おかしくしたか?」
ラリーたちには2人がなぜ笑っているのか理解できなかった。


ナーヴ:「あの表情…」
遊馬の表情を見て、ナーヴは亡き友の顔を重ねた。

ナーヴ:「あいつと同じだ…」
ナーヴが遊馬の表情に重ねた人物。それは、遊星だった。








愛:「え?パパが?」

アキ:「えぇ、あの人もそうだったわ。追い込まれても楽しそうに笑っていたときが…」

ジャック:「あいつらの表情はそれと同じだ」

クロウ:「あいつらはまだ…」

鬼柳:「この勝負を捨てていない…!」
遊星をよく知る人物たちがそう言った。




そして、皆が思っている亡き友は今、ラクオウジシティのフロンティア西支部にいる。



遊星:「見せてもらおうか、遊馬、神代凌牙。お前たちの希望を…」
遊星は画面に映る遊馬達を見てそう呟いた。





デュエルは5ターン目へ突入。これがラストターンになってしまうのか。




5ターン
遊馬
LP400
凌牙
LP800
ドン・サウザンド
LP800



ドン・サウザンド:「人間に運命を決める権利はない!貴様ら絶望の運命は決まったも同然!このターン、ゲート・オブ・カオス・ヌメロン-シニューニャ・ブラックホールの効果で、我は勝利するのだからな!」
ドン・サウザンドのドローフェイズ。彼は、今カードを引こうとした。


しかし、それをさせる前に凌牙が動く。


凌牙:「人間にも運命を変える権利はある!リバースカード発動!!”モーメント・エクシーズ・サモン”!」
凌牙はリバースカードを発動。一瞬、ドン・サウザンドが動揺する。


凌牙:「このターン、フィールド上にモンスターが存在しないプレイヤーは、エクストラデッキからエクシーズモンスターを任意選択し、選択したモンスターを素材に、エクシーズ召喚することができる!今、場にモンスターが存在しないプレイヤーは、遊馬だけだ。頼むぞ、遊馬!」
凌牙がそう言うと、遊馬は「ああ!」とじしんまんまん自信満々に返事を返した。


アストラル:『遊馬、今こそ、あいつを呼び覚ます時だ!』

遊馬:「俺はエクストラデッキから”No.46神影龍ドラッグルーオン”と”No.62銀河眼の光子竜皇(ギャラクシーアイズ・プレイム・フォトン・ドラゴン”2体を選択!この2体を素材にオーバーレイ!」
遊馬の場に白き竜と銀河の竜2体が天空へ羽ばたく、フィールド頭上に現れた異次元の渦に吸い込まれる。

遊馬:「2体のドラゴンでオーバーレイネットワークを構築!」
渦の中で新たなモンスターが光の中より現れる。


遊馬:「宇宙創造の鍵、今こそ闇の扉を開き、未来を、その咆哮とともに導け!降臨せよ、”No.100ヌメロン・ドラゴン”!」
地球を照らす光…、その竜はまさに黄金に輝く竜だった。


No.100ヌメロン・ドラゴン
ランク1 攻撃力0


ドン・サウザンド:「ヌメロン・ドラゴン…、ここへ来てそいつを出してくるとはな…」
デュエル開始からまだそうターン数は経過していない。

まさか、ここでヌメロン・ドラゴンが出てくるとはドン・サウザンドも思ってもいなかった。



ベクター:「こいつがうわさに聞くヌメロン・ドラゴンって奴か…」

ミスティ:「神々しいモンスターなの…」

エマリー:「これが、遊馬たちの切札…ヌメロン・ドラゴン」
誰もがヌメロン・ドラゴンの存在に見とれてしまった。



それは映像越しから見ている世界中の人々もそうだった。




ドン・サウザンド:「ヌメロン・ドラゴンが出たところで、状況は変わらない。我のターンだ」
ドン・サウザンドは改めてカードを引こうとする。


遊馬:「フッ、手札からトラップカード”ヌメロン・アストラル・コード”を発動!」
ドン・サウザンドのドローフェイズはさせまいと、遊馬が相手ターンにも関わらず、手札からトラップカードを発動する。


ドン・サウザンド:「ヌ…、我と同じやり方で…」

遊馬:「自分フィールド上に、ヌメロン・ドラゴンが特殊召喚されたとき、このカードは手札から発動でき、3つの効果の中から1つを選択し発動する!1つはヌメロン・ドラゴンの攻撃力は、エンドフェイズ時まで倍にさせる効果。2つ目は、ヌメロン・ドラゴン以外、ヌメロンと名の付くカードを全て破壊し、相手のライフを半分にする効果。そして3つ目はエクストラデッキからナンバーズと名の付くモンスターを、効果を無効にして任意の数まで特殊召喚する効果」
遊馬は3つの効果をそれぞれ説明する。


ドン・サウザンド:「この状況で発動するとなれば…」
ドン・サウザンドは、今の状況を分析し、遊馬が発動する効果を見抜く。

そう、この状況だったら、誰も考えるでは、ドン・サウザンドのカードを破壊すること。つまり…


遊馬:「俺は2つの目の効果を選択!ヌメロン・ドラゴン以外のヌメロンと名の付くカードを全て破壊し、相手ライフを半分にする!」
フィールド頭上で黄金の鐘が鳴り響く。

そして、ドン・サウザンドの場のモンスターが次々と消え去る。


No.Ⅳゲート・オブ・ヌメロン-チャトゥヴァーリ・ネルガルが破壊され、No.Ⅲゲート・オブ・ヌメロン-トゥリーニ・タナトスも破壊、そしてNo.Ⅱゲート・オブ・ヌメロン-トゥヴェー・ホロンの3体が破壊される。


ドン・サウザンドの場に残ったモンスターはCNo.Ⅰゲート・オブ・カオス・ヌメロン-シニューニャ・ブラックホール。しかし、シニューニャ・ブラックホールもまたヌメロン・ドラゴンの神々しい輝きに包まれて破壊された。


ドン・サウザンド:「くっ」
そして、ヌメロン・サンクチュアリも崩れ落ちそうになる。

ドン・サウザンド:「ヌメロン・サンクチュアリの効果、手札に存在するヌメロンと名の付くモンスター1体を除外することで、効果による破壊を無効にする。我は手札のヌメロン・ウォールを除外!」
ドン・サウザンドは手札にあったモンスターを除外し、ヌメロン・サンクチュアリの破壊だけは阻止した。

しかし、遊馬が発動した効果により、ドン・サウザンドのライフは半分になる。


ドン・サウザンド
LP800→400


ドン・サウザンド:「おのれ…」


アストラル:『シニューニャ・ブラックホールは消えた』


遊馬:「これで特別勝利効果は無効!そして、お前のモンスターは全滅!逆転させてもらったぜ!」
遊馬はドン・サウザンドを指さしてそう言った。

みんなが今の状況に喜ぶ。


色葉:「やったわ!逆転よ!」

杏子:「あの状況から逆転するなんて…!」

藤原:「やっぱり彼らは凄い…。ドン・サウザンドをここまで圧倒するなんて」
遊馬と凌牙のプレイを見て、皆が再び絶望から立ち上がる。



ドン・サウザンドは現実を認めたのか、無言でデッキから1枚ドローする。

その表情はどこかやっとドローフェイズができると思わせるような表情にも見える。



凌牙:「当てが外れたな。人間に運命を決める権利がない…、人間をバカにすんじゃねえぞ」


遊馬:「お前から見れば、人間は愚かで弱い生物かもしれない。だからこそ、人間は強く生きているんだ。運命に決められた生き方ではなく、自分が決めた生き方を…!それに…」
遊馬の脳裏に3人の影が浮かび上がる。

遊馬:「運命に逆らって生きる人や、仲間たちと距離を置いて戦い続ける人達だっている…」




慎也:『遊戯隊長たちのことか…』
心の中でそう呟く慎也であった。



ドン・サウザンド:「人間に運命を決める権利はない。我は確かにそう言った。だが、それは、どうやら我の見間違いだったようだ」
ドン・サウザンドは手札からカードを1枚右手に持ち、それをデュエルディスクにセットする。


ドン・サウザンド:「人間には運命を決める権利がある。しかし、他人の運命を決めることなどできはしない!」
ドン・サウザンドからとてつもない殺気が放たれ、遊馬を初め、ここにいる皆が動揺する。


海馬:『何だ…』

マリク:『また雰囲気が変わった…』
ドン・サウザンドから感じる殺気は、今までとは違う殺気だった。


ドン・サウザンドの殺気は初めてあってから度々変わっていた感じがする。

しかし、今感じている殺気は、今まで以上にどこか違う殺気だ。


シンディ:『ドン・サウザンドに…限界はない…』
数時間前まで、ドン・サウザンドの下についていたシンディは、自分でも感じたことがないドン・サウザンドの殺気に胸を押さえる。



ドン・サウザンド:「我はマジックカード”特異点・ヌメロン・パラドクス”を発動!!」
ドン・サウザンドがデュエルディスクにセットしたカードがフィールドに現れた瞬間、フィールド全体が闇のオーラに包まれる。



同時に、カイゼル・サウザンドそのものも赤く輝いていた。




セイコ:「また、何かが起きようとしている…」

斎王:「一体何が始まるというのだ…」
赤色に輝くカイゼル・サウザンドを見て、怯えるセイコ。

かつて運命を見通す力を持っていた斎王。今は運命を見通すことはできないが、それでもこれからまたとてつもないことが起きることを直感していた。






ドン・サウザンド:「特異点・ヌメロン・パラドクス、このカードは、自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、自分フィールド上に存在するヌメロン・サンクチュアリと、墓地に存在するNo.ⅠからNo.Ⅳのエクシーズモンスターを素材に、エクストラデッキから真のカオスナンバーズを特殊召喚する!」
ドン・サウザンドの背後に巨大な黒い影が現れる。


エリファス:『真のカオスナンバーズだと…』
エリファスは小さい子で呟いた。

アストラルは過去の記憶を頼りに、あのカードを思い出した。

アストラル:『まさか、”CNo.1000夢幻虚神ヌメロニアス”か』
かつてドン・サウザンドが使用してエースモンスターの1体であり、その攻撃力は初期から10000という桁違いのステータスを持っていた。



ドン・サウザンド:「アストラル、お前はまだわかっていないようだな」

アストラル:『何…!?』

ドン・サウザンド:「ここは神の領域!我のデュエルは、全て神の力であるが故、お前たちの想像を超える!」
フィールドに広がっていた黒いオーラとドン・サウザンドの背後に現れていた黒い影が集約される。

そして、ドン・サウザンドの墓地に眠るNo.Ⅰ~No.Ⅳの4体のモンスターと、ヌメロン・サンクチュアリで新たな神が目を覚ます。


ドン・サウザンド:「我が力により、今新たな神を呼び覚ます!現れろ!CNo.1000!全ての闇の中心に立つ幻影の塊よ!世界を闇に染め、光を奪い、永遠の力を得よ!”夢幻虚帝神ヌメロニアス・シンギュラリティ”!!」
夢幻虚神ヌメロニアスをも凌駕するような、その姿に遊馬と凌牙は目を丸くする。


遊馬:「こいつが…」

凌牙:「ドン・サウザンドの新たな切札…!」


CNo.1000夢幻虚帝神ヌメロニアス・シンギュラリティ
ランク12 攻撃力10000





Ⅳ:「攻撃力10000だと…!?」

Ⅲ:「初期から10000の攻撃力を持っているなんて…!」


徳之助:「あんなのどうやって倒せばいいウラ!」

アンナ:「ドン・サウザンド、卑怯な手使いやがって…」
ドン・サウザンドの力に限界はない。

だが、限界がないにしても、あまりにも力の差があり過ぎる。




ドン・サウザンド:「夢幻虚帝神ヌメロニアス・シンギュラリティの効果発動!このカードを特殊召喚したとき、オーバーレイユニットが5つあるとき、エクストラデッキから”CNo.1000夢幻虚神ヌメロニアス”を効果を無効にして特殊召喚する!」
かつて、遊馬と凌牙を苦しめたカオスナンバーズが、ヌメロニアス・シンギュラリティの効果でフィールドに現れる。


CNo.1000夢幻虚神ヌメロニアス
ランク12 攻撃力10000




凌牙:「くっ、ヌメロニアスまで出てくるとは…」


ドン・サウザンド:「まだだ、夢幻虚帝神ヌメロニアス・シンギュラリティの更なる効果!このカードのオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手フィールド上に存在するエクシーズモンスターを全て破壊する!」


凌牙:「何っ!?」

遊馬:「くっ!」
エクシーズモンスターが全て破壊するということは、遊馬と凌牙に取って絶体絶命を意味することであった。

なぜなら、2人の場にあるのは、エクシーズモンスター1体ずつだったからだ。



夢幻虚帝神ヌメロニアス・シンギュラリティ
オーバーレイユニット:5→4


ドン・サウザンド:「消えろ、永遠の闇の中に!インフィニティ・ヘルゾーン!」
膨大な闇のオーラが放出され、ヌメロン・ドラゴンが飲み込まれる。



イシズ:「そんな…」


小鳥:「ヌメロン・ドラゴンが…!」
ヌメロン・ドラゴンに続き、クリスタル・ゼロ・ランサーも飲み込まれそうになる。




凌牙:「クリスタル・ゼロ・ランサー効果発動!フィールド上に存在する、このカードが破壊されるとき、代わりにオーバーレイユニットを一つ取り除くことで、破壊を無効にする。オーバーレイユニットが減ることで、クリスタル・ゼロ・ランサーの攻撃力はダウンする」
クリスタル・ゼロ・ランサーはオーバーレイユニットを吸収し自身の身を守った。

しかし、攻撃力は500ポイント下がってしまった。


FA-クリスタル・ゼロ・ランサー
オーバーレイユニット:2→1
攻撃力3200→2700


凌牙:「遊馬!」


遊馬:「わかってる!ヌメロン・ドラゴンの効果発動!このカードが効果で破壊された時、フィールドのモンスターを全て破壊する!」
ヌメロン・ドラゴンがいた場所に残る光が、フィールドに散らばる。

その輝きが全てのモンスターを襲う。


ドン・サウザンド:「無駄なことだ。夢幻虚帝神ヌメロニアス・シンギュラリティの効果発動。このカードが存在する限り、我のヌメロンモンスターは、カード効果では破壊されない!」

つまり、ドン・サウザンドの場にいる2体のモンスターは破壊されないということだ。


凌牙:「くそっ!」

遊馬:「このままじゃ、クリスタル・ゼロ・ランサーだけが…!」


凌牙:「クリスタル・ゼロ・ランサーの効果!オーバーレイユニットを使用して破壊から身を守る!」
クリスタル・ゼロ・ランサーは再びオーバーレイユニットを使用し、ヌメロン・ドラゴンの破壊効果から身を守った。

もっともオーバーレイユニットが無くなったことで攻撃力は元に戻ってしまった。


FA-クリスタル・ゼロ・ランサー
オーバーレイユニット:1→0
攻撃力2700→2200


ドン・サウザンド:「このまま攻撃と行きたいところだが、特異点・ヌメロン・パラドクスを発動したターン、我はバトルフェイズを行うことができない。カードを1枚セットし、ターン終了」
ドン・サウザンドのターンが終了した。


遊馬と凌牙は思った。このままバトルが始まっていたら敗北していたと…。


遊馬:「なんとか助かったな…」

凌牙:「あぁ、だが奴の場には攻撃力10000のモンスターが2体。この状況をひっくり返すのは至難の業だ」

ドン・サウザンド:「この状況でも諦めはしないか。ならば―」
ヌメロニアス・シンギュラリティのすぐ側に異次元の渦が現れる。


遊馬:「!」


ドン・サウザンド:「夢幻虚帝神ヌメロニアス・シンギュラリティの効果発動。エンドフェイズ時、このターン、ヌメロニアス・シンギュラリティの効果で破壊したエクシーズモンスターを、我のフィールドに特殊召喚する!」


凌牙:「っ!」

遊馬:「くっ、俺のヌメロン・ドラゴンを奪う気か…」

ドン・サウザンド:「フッ、現れろ!ヌメロン・ドラゴン!!」
ドン・サウザンドの場に黄金の竜、ヌメロン・ドラゴンが降臨する。


No.100ヌメロン・ドラゴン
守備力0


アストラル:『ヌメロン・ドラゴンを奪うとは…』

ドン・サウザンド:「それだけではない。ヌメロニアス・シンギュラリティが場にいる限り、相手ターンは、必ず夢幻虚帝神ヌメロニアス・シンギュラリティに攻撃しなければならない。更に、夢幻虚帝神ヌメロニアス・シンギュラリティが存在する限り、相手フィールド上に存在するカオスナンバーズの効果は無効化される!」


遊馬:「モンスターを召喚しても、攻撃力10000のモンスターに攻撃しないといけねえのか」


凌牙:「かといってモンスターを召喚しなければ、攻撃力10000のダイレクトアタックの餌食になる…」

再び絶体絶命のピンチに立たされる凌牙と遊馬。




遊馬:「俺はまだ諦めないぜ。勝負はまだ決まってねえんだからな」
遊馬の心は折れていなかった。


ドン・サウザンド:「これでもまだ心が折れないか」

遊馬:「当たり前だ。世界の運命が俺たちに掛かってるんだ。どんな状況に立たされても、絶対に最後まで立ち塞がってやる」

ドン・サウザンド:「お前も薄々気付いているはずだ。我を倒しても、世界の破滅が止まることはない。この事態の現況を生み出した奴を倒さなければな」
ドン・サウザンドは、そのオッドアイで遊馬を見つめる。

遊馬は一瞬目を逸らし拳を握る。


マルタン:「この事態の現況を生み出した奴?」


ジェリド:「あいつ、何を言ってやがる?」


羅夢:「この事態を生み出したのは、お前のはずだ。ドン・サウザンド!」
カイゼル・サウザンドを生み出し、バリアンを利用し世界を破滅に導く。それをやっているのは誰が見てもドン・サウザンドだ。


ドン・サウザンド:「我もまた掌で操られている者に過ぎない」


小鳥:「え?」

ドン・サウザンド:「この事態を生み出し、我を掌で操る者。そいつこそが、この事態の現況を作りし人物」

凌牙:「一体、誰のことを言っている!」

ドン・サウザンド:「お前のすぐ側にいるではないか」
ドン・サウザンドがそう言うと、凌牙は「俺のすぐ側…」と呟き、目を丸くして横を見る。

凌牙が見たもの。それは遊馬だった。

凌牙:「…」

ドン・サウザンド:「そう、九十九遊馬こそが、お前たちの本当に倒すべき敵であり、世界を救うための敵だ」
ドン・サウザンドが遊馬を指さしてそう言った。


ドン・サウザンド:「そいつも、バリアンの力を持つ存在。その時点で敵だとなぜ、認識しなかった?」
ドン・サウザンドが、皆にそう問いかけた。



この状況は、全世界に中継されている。


今、世界を守ろうとしている男こそが、人類が本当に倒さなければいけない敵だと。

世界中がそれを聞いてざわついた。




フロンティア西支部


映像を見ている遊星。口を開くことなく、映像を見つめていた。

遊星:『隠し事はいずれ明かされる…。それがまさか、こんな形で広まるとはな…』
遊星は、映像に映る遊馬を見てそう呟いた。





ネオコーポレーションシティ付近

ヘリコプターの操縦席に設置されているモニターを見つめる剣一。

その目は、どこか冷たい目線を感じた。

しかし、どこか責任感を感じているような表情をしている感じにも見える。






ドン・サウザンド:「この事態も、我がここにいるのも、そしてバリアンが復活したのも、全ての現況はアストラル世界とのつながりが深く、バリアンの力を持つそいつがいるからだ」
遊馬を責めるドン・サウザンドに、仲間たちは激怒する。


小鳥:「デタラメよ!そんなの!」

キャッシー:「そうよ!世界を破壊しようとしているのはあなたの方じゃない!」

徳之助:「ウラ!遊馬は全然関係ないウラ!」
必死に遊馬を守ろうと口を出す小鳥たち。


ドン・サウザンド:「部外者は黙ってもらおう」
ドン・サウザンドの目が小鳥たちに向いた瞬間、足が動かないほど小鳥たちは動揺してしまう。

キャットちゃんに至っては、足の力が抜け、地面に座り込んでしまった。


未来:「大丈夫…!キャットちゃん」
キャットちゃんの心配をする未来が駆け寄り、倒れないようにキャットちゃんの肩を掴む。


キャットちゃんは冷汗のようなものを顔から垂らしていた。


一馬:『たった一言で、こうなってしまうとは…。やはり、ドン・サウザンドは普通じゃないということか。だが、そんなドン・サウザンドを遊馬達は前にしているんだ…』

トロン:『遊馬たちが感じている気迫は、我々以上のもののはず…』
一馬とトロンが心の中で呟く。



ドン・サウザンド:「世界の破滅は、お前から始まったのだ、遊馬。お前が我を倒したところで、お前と言う存在がいる限り、このカイゼル・サウザンドは止まらない。世界を壊すために起動し続けるだけだ」
ドン・サウザンドの言葉を聞いて、遊馬は下を見つめていた。


凌牙:「遊馬、しっかりしろ!」
隣に立つ凌牙が声をかけるが、遊馬は顔を上げようとしない。


アストラル:『遊馬…』



カイト:「遊馬の様子がおかしい…」

ゴーシュ:「まさかあいつ、ドン・サウザンドの言葉を本気で受け止めてるんじゃねえよな?」

ドロワ:「まずいぞ。この状況は、世界中に公開されている。人々に誤解を広めてしまうぞ」

ハルト:「しっかりして!遊馬!」
みんなが遊馬に声をかける。


シンディは周りを見て何かを探していた。

この状況が世界中に公開されているのなら、カメラがどこかにあるはず。

シンディはせめて、それを壊して映像を止めようとしていた。


シンディ:『見つからない。カメラ事態をカモフラージュで消してるんだわ…』
悔しそうな顔をしてドン・サウザンドを見た瞬間、目が合いドン・サウザンドも満足そうな顔を出笑った。


シンディ:「くっ」
ずっとあいつの下にいたはずなのに、私はあいつのことを何も知らない…。

シンディは自分を責め続けた。


ドン・サウザンド:「お前は、人類として、そちらにいるべきではない。さあ、こちらに来い、遊馬」
ドン・サウザンドが遊馬を味方に誘い出す。


遊馬はドン・サウザンドに向かって前進し出した。


エリファス:『遊馬!?』


小鳥:「行かないで!遊馬!」



アストラル:『遊馬!しっかりするんだ!』
アストラルが遊馬を追いかけ止めようと声をかけるが、遊馬は止まることなく進む。



仲間たちの声は遊馬の耳に入っていなかった。


明里:「遊馬…」
明里が弟の名前をボソッと口にした。姉の私が大声を出しても止まらないのだから…。

すると、明里のミッションウォッチに通信が入った。

明里は「え?」と口にして、通信をONにした。






春:『こらあ!ゆうまーーー!』
明里のミッションウォッチから聞こえたのは、遊馬と明里の祖母である春だった。


明里:「お、お婆ちゃん!」
声の主を聞いて驚く明里。

前進していた遊馬も、その場で止まった。




春:「勝手にどこに行こうとするんじゃ。お前さんには世界中の人々が見守っておるんじゃぞ!」
春がそう言うと、ドン・サウザンドは「フッ」と笑った。





ドン・サウザンド:「この状況を見て世界中の人間共は、遊馬を敵視したか。遊馬、お前はもう、地球には―」

春:『何を言っとるんじゃ。誰も、遊馬を敵視してなどおらんぞ』

ドン・サウザンド:「?」


百々原:『今、全員のミッションウォッチに世界中の映像を流す。見てくれ』
明里のミッションウォッチの向こうから元帥の声が聞こえた。


カイゼル・サウザンドの中にいる皆が、自分たちのミッションウォッチのホログラムを起動し、百々原から送られた映像を見る。

そこには、世界中が遊馬を応援する姿が映っていた。


中には、「頑張れ!遊馬!」と書かれたプラカードとかを上げて応援している人達もいた。






ネオコーポレーションシティ


避難している人達が全力で遊馬を応援する。


男性A:「頑張れ!遊馬!!」

男性B:「世界を守ってくれ!」
赤の他人である遊馬を全力で応援する者達は、避難することを忘れていた。



応援する人達の中には、勿論遊馬のことをよく知るものたちもいた。


琴羽:「頑張って!遊馬君!」

サチ:「私たち、遊馬君のこと信じてるから!」

セイ:「ダイシャラス王国で私たちをかっこよく助けてくれたみたいに、みんなにいいところ見せてよね!」
小鳥の母親である琴羽、遊馬や小鳥の同級生であるセイやサチも全力で遊馬を応援する。






右京:「世界中の、人々が遊馬君を応援している…」
右京はミッションウォッチのホログラムに映っている映像を見て少し感動していた。




アキ:『あの時と…』

明日香:『同じ…』
アキと明日香が過去のことを思い出していた。


遊星が”Z-ONE”からネオ童実野シティを守ろうとしたとき、世界精霊大戦で十代が人類を守ろうとしたとき、あの時も今の同じように、沢山の人々が応援してくれた。






ドン・サウザンド:「砂利が集まったところで…」

遊馬:「ドン・サウザンド!」
弾丸のような強く速い言葉が飛んできた。

そして、次は本当に弾丸が飛んできた。

弾丸はドン・サウザンドの頬を擦れた。


ドン・サウザンド:「遊馬、貴様…」
ドン・サウザンドの目に映るのは、銃タイプのデュエルギアの銃口をこちらに向ける遊馬だった。


遊馬の手に握られているのは、希望皇ホープの銃剣可変のデュエルギアの”ナディエージダ”だ。


凌牙:「遊馬、お前…」


遊馬:「そんなに顔すんなよ、シャーク。俺は俺だ。あいつに縋るつもりはねえよ」
遊馬は、その笑顔を凌牙に見せた。


遊馬:「婆ちゃんも、大袈裟すぎるぜ」
遊馬の声は、明里のミッションウォッチを通して聞こえていた。




春:「それは悪かったのぉ。お前さんが、てっきり世界を守ることをさぼると思ってな」
春も面白そうに笑って言った。





遊馬:「世界を守ることをサボるって、それじゃあ遊戯さんに合わせる顔がねえって」



ドン・サウザンド:「我の言うことをまだ拒むか」

遊馬:「お前の言葉に落ちたりはしねえ。俺は、俺の意志で生きる。そして、俺は誓ったんだ。あの人と。あの人達と…」
遊馬には、あの3人の背中が見えたような感じがした。


四大神王者のNo.4。つまり、4人いる四大神王者の中で、遊馬はは一番の下っ端ということだ。

力の差もある。だから、四大神王者の中でも自分は足手まといだと思ったことも沢山あった。

しかし、それでも俺にしかできないこともある。

遊馬は、心の中でそう呟いた。





フロンティア西支部


画面に映る遊馬を見て、遊星は呟いた。


遊星:「お前の力、見せてみろ」
その言葉が届いたのか。


遊馬は右腕を上げた。


ミッションウォッチを通して、世界中の声が聞こえる。

この歓声は、遊馬は浴びたことがあった。


そう、ワールド・デュエル・カーニバル決勝戦。会場にいるみんなは必死に自分を応援してくれた。

その時と同じだ。



遊馬:「あの時と同じだ。俺たちには、みんなから託された思いと未来がある!ここで諦めてたまるか!」
遊馬が首にぶら下げている皇の鍵が輝く。


アストラル:『行くぞ、遊馬。我々の光が、世界を絶望から救う』


遊馬:「ああ!!」
遊馬とアストラルの身体が輝く。


遊馬:「俺は俺と、」
アストラル:『私で』
「『オーバーレイ!』」

2人の身体が宙を舞い、そして一つの光となって、大地に立つ。

ドン・サウザンド:「所詮、貴様らは、あの時と変わっていない。その力も、かつてと同じものだ」
遊馬とアストラルを愚弄するドン・サウザンド。しかし、遊馬たちはそんなことを気にせず、新たな姿となって現れる。


遊馬、アストラル:「『強き絆が光を導く!エクシーズ・チェンジ・ゼアル!』」
赤いボディに金髪ヘア。遊馬とアストラルが1つになった姿だ。


レミ:「遊馬とアストラルが1つに…!」


アンナ:「あれが遊馬とアストラルの絆の力…!」

小鳥:「ゼアル!」
久しぶりに見たその姿に、小鳥たちは感激した。



慎也:『これが四大神王者No.4だけが使える技…、ゼアル…。遊馬の真の姿…』
慎也は心の中で呟いた。
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