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第170話:『存在してはならない者達』








フェイカー:「さらばだ、ハートランド。ガーベージ・トリニティ・デッドエンド!2体目のガーベージ・メア・トークンに攻撃!!」
フェイカーが再びガーベージ・トリニティ・デッドエンドに攻撃命令を下す。

ハートランド:「待ってください!ドクター・フェイカー様!」
負けるのが怖いのか、最後の最後でかつて従っていた者を様付けで呼ぶハートランドだったが、その直後にトークンは破壊され、ハートランドに効果ダメージが襲う。

ハートランド:「ぐわああああ!」


ハートランド
LP1000→400→0



血塗られし偉大なるバアルが破壊され、ミスター・ハートランド、敗北!!



地面に仰向けで倒れるハートランドの姿が、人間の姿へと戻る。


デュエルは一馬、トロン、フェイカーたちの勝利だ。


終わった…。フェイカーはそう思いながら、息を吐いた。

一馬:「ナイスかっとビングだ、フェイカー」
Dゲイザーを取り外し、親指を立てる一馬。

トロン:「これで、君のケジメも付けたわけだ」

フェイカー:「一馬、バイロン、ありがとう。私に付き合ってくれて」
この2人がいたからこそ、自分はハートランドを倒すことができた。彼ら2人には感謝しかない。


トロン:「さて、後は…」
トロンが倒れているハートランドを見る。


ハートランドはゆっくりと目を開ける。

フェイカー:「ハートランド、お前の負けだ」

ハートランド:「…」

一馬:「ドン・サウザンドも落ちた。こちら側の勝ちだ」
一馬がそう言うと、ハートランドは突然小さい声で笑いだした。

その笑いは不気味な笑いだった。

ハートランド:「まだですよ」

トロン:「何?」

ハートランド:「まだ、ドン・サウザンド様は破れてなどいない。ウェスカーは焦っていたが、私にはわかる。あの方は、まだ死んでなどいない」

フェイカー:「どういうことだ…!ハートランド!」

ハートランド:「その答えはすぐにわかることでしょう」
ハートランドは倒れた状態で、目線だけをフェイカーたちに向ける。

ハートランド:「先に地獄で待っていますよ」ハートランドがそう言うと、天から光の柱がハートランドを照らした。


フェイカー:「ハートランド!!?」

ハートランド:「さらばです…」
ハートランドは光の柱に包まれながら、そう呟いた。



光の柱が消えた時には、そこにハートランドの姿はなかった。

フェイカー:「ハートランド…」

一馬:「今の光は一体、何だったんだ…」

トロン:「戦いは、まだ終わらないと言うのか…!」
デュエルに勝ったものの、表情の雲行きが怪しい3人であった。






第9OP『HEART・BEAT《MARIA》』






第170話:『存在してはならない者達』





遊馬達は、暗い空間を抜け、遺跡のような建物と自然が広がる場所に出てきた。


羽蛾:「期待はしていなかったが、また変な場所に出てきたな」

竜崎:「もううんざりや。早いとこ、バリアンを全滅させて、戦いを終わらせようや」
歩き疲れたのか、息を少しだけ切らす竜崎が文句を垂らす。

レベッカ:「あのねぇ、あなたたち、何もしてないでしょ。疲れ果てたような顔しないで頂戴!」
レベッカの言う通りで、羽蛾と竜崎は、嫌々カイゼル・サウザンドに来て遊馬と共に行動している。

それからというもの、彼らは何もしていない。


レベッカの攻めに、羽蛾と竜崎は何も言えなかった。

言い返せる言葉がないというよりも、レベッカの2人を見る目線が鋭く、羽蛾と竜崎の心は怖れという言葉だけを感じていた。

レベッカ:「まったく…」
呆れたのかレベッカは大きなため息をついた。


鮫島:「赤い空の下に広がる遺跡か。バリアンと深いつながりがある場所なのか?」
周りを見渡す鮫島。

よく見ると、近くに大きな樹木が1本遺跡の中に立っていた。


明里:「ここって確か…」

遊馬:「俺に対する嫌がらせのつもりか…」
軽い怒りが遊馬を苛立たせる。


カーリー:「どうしたの?ここが、何のか知っているの?」
明里と遊馬の反応を見て、カーリーが聞いた。


遊馬:「ここは”マルピアス”。かつて、人間界とバリアン世界を結ぶゲートがあったと言われている場所だ」

明里:「そして前世紀、遊馬が行方を眩ませて場所でもあるわ」
明里の語ったことに、みんなが驚き遊馬を見る。


そう、遊馬にとって、再びドン・サウザンドと会ってしまった場所、遊馬がバリアンの力を手にしてしまった場所でもある。


遊馬:「!」
遊馬は何かに気付き、その場に止まる。


何だ…。邪悪な力が漂っている。


アストラル:『遊馬?』
遊馬を見つめて呼びかけるアストラル。


遊馬はアストラルに呼びかけに返事をしなかった。







その頃、ドン・サウザンドを倒したベクターと璃緒は、戦いの中で受けた軽い傷の手当てを済ませていた。


璃緒:「これでよ。どう?」

ベクター:「あぁ、問題ねえよ。大丈夫だ」
ベクターが立ち上がり、腕を振り回して自分が元気であることを証明する。


璃緒:「さて、あとは回収するものをとっとと集ましょう」
璃緒が倒れているドン・サウザンドを見る。


ベクター:「分かってるよ。血のデスリングにヴィータのペンダント、アラクネーの宝玉。こいつさえ、奴から奪い取れば、カイゼル・サウザンドは活動を停止するはずだ」
ベクターは、ドン・サウザンドに近づき、取らなくてはいけないものをとっとと取ろうとする。



???:『なるほど、遊馬以外もやはり侮れないということか』
ベクターと璃緒の頭の中に声が響き、2人が動揺する。


そして、目の前に倒れていたはずのドン・サウザンドが粒子の塵となって消えた。


ベクター:「何ッ!?」

璃緒:「き、消えた!?」
突然のことで動揺を隠し切れないベクターたち。

???:『分身とはいえ、我を倒すとは、元バリアンだけのことはあるな』
2人の頭の中に聞こえる声。その声の主は、すぐに分かった。


ベクター:「お前、ドン・サウザンドか!」

璃緒:「そんな、それじゃあ、私たちが倒しのは…!?」

ドン・サウザンド:『あれは、我の分身にしか過ぎない。九十九遊馬から聞いていないか?』

ベクター:「分身だと…?なら、本物のお前は、どこにいる!」

ドン・サウザンド:『もちろん、カイゼル・サウザンドの中だ。お前たちを出向くのに、我が直々に迎えるわけがない』
本物のドン・サウザンドは、ずっとカイゼル・サウザンドの最奥部にいたのだ。

ベクター:「くっ、ならデスリングとか、そっちにあるのか?」



カイゼル・サウザンド最奥部


ドン・サウザンド:「無論だ」

ベクター:「くっ」

璃緒:「私たち、まんまと騙されたみたいね」
ベクターと璃緒が、ドン・サウザンドに騙されていたことに悔しがる。




ドン・サウザンド:「もっとも、お前たちが変に粘るおかげで、我自身もそちらに力を注ぎこんでしまった所為で、人間界崩壊のタイムリミットを伸ばしてしまったがな。まあ、そんなことはどうでもいい。別に止まっているわけではないのだからな。こちらの仕事が終わったら、今度は完全に貴様らを葬り去る。人間界とアストラル世界の最後をそこでじっと待つことだ」

ベクターと璃緒との話し合いを閉じたドン・サウザンド。


ドン・サウザンド:「人間界を滅ぼす時間が伸びてしまった以上、少し奴らを懲らしめてやるとしよう」
ドン・サウザンドの側に置いてあるアラクネーの宝玉が輝く。



すると、カイゼル・サウザンドの外装に赤や青、緑色のラインが施される。






その頃、ベクターと璃緒は、通信機能を使い、ドン・サウザンドがまだ生きていることをみんなに告げる。



小鳥ルート


小鳥:「それじゃあ、まだドン・サウザンドは…!」



璃緒:「えぇ、残念ながら、まだ生きています」
小鳥の言葉に答える璃緒。


小鳥たちの方は、みんな戦いが終わっていないことに落ち込む。




遊馬ルート

エリファス:『ドン・サウザンド、まだ分身を持っていたか…』

アストラル:『もう少し用心しておくべきだったか…』
カイゼル・サウザンドが現れる少し前に、ドン・サウザンドが遊馬に接触してきたときも分身だったため、分身の力を持っていることを知っていたアストラルとエリファス。


まさか、ベクターと璃緒の接触にも分身を寄こすとは思いもしなかった。

アストラルとエリファスは、もう少し対処するべきだったと自分たちを責める。


それは、遊馬も同じだった。



凌牙ルート

凌牙:「戦いは、また振り出しか…」
凌牙は小さい声で呟いた。



すると、突然、凌牙たちの周りの空間が歪みだした。


凌牙:「何だ…!?」

右京:「空間が…!」
周りの異変に、みんなが動揺する。



そして、この現象は、他のところも同じだった。




ゴーシュ、アンナルート


ゴーシュ:「空間が歪みだしたぞ!」

ドロワ:「何が起きている!?」
下手に動けば危ないと言ってもいいほど、周りは物凄く歪みだす。






Ⅴ、ドルべルート



ドン・サウザンド:『このカイゼル・サウザンドにいる人間共!』
皆の頭の中にドン・サウザンドの声が響く。


明日香:「この声…!」

Ⅴ:「ドン・サウザンド…!奴か!」
邪悪な声に満ちた、その声の主は、ドン・サウザンド。バリアン世界の神である。


ドン・サウザンド:『お前たちの強さ、賢さ、そして希望。認めてやろう。やはり、お前たちは強い』
ドン・サウザンドが、人間たちの強さを認めるようなことを放つ。




カイトルート



ドン・サウザンド:『だが、まだ我の計画が止まったわけではない!タイムリミットこそ、伸びたものの、人間界が滅びる時間は刻一刻と迫っている』


カイト:「…」
ドン・サウザンドの話しを黙って聞くカイトたち。



先ほどハートランドを倒した一馬、フェイカー、トロンもドン・サウザンドの声を聞いていた。



ドン・サウザンド:『このまま、お前たちを計画が遂行されるまで、カイゼル・サウザンド内を彷徨ってもらうつもりだったが、下手に空間を破壊し、カイゼル・サウザンドを荒らされても困る。よって、お前たちを特別な場所へ招待しよう!』
ドン・サウザンドがそう言うと、カイゼル・サウザンド内の空間が強い光に包まれる。




それは、外でも同じだった。


カイゼル・サウザンドの外装部分が強く光っている。



皆の帰りを待つ者達が、それを見ていた。


春:「あの光は何じゃ…!」

セイコ:「皆さんの身に、何かあったのでしょうか…!」

トメ:「そんなこと言っちゃダメよ、セイコちゃん。みんなの無事を信じなきゃ」
トメさんの言う通りだ。みんな、頑張って戦っているはずなのだから、信じてあげないと…。

セイコは祈るように両手を合わせる。





カイゼル・サウザンド内の輝きに包まれた、みんな。

輝きが収まり、目を開くと、さっきとは別の場所に立っていた。



凌牙ルート


ジャック:「どうなっている?さっきとは風景が違うぞ…!」

クロノス:「ママミーヤ…」

オブライエン:「俺たち、全員、別の空間に強制的に転移させられたのか…!」

本田:「今にも崩れそうな家が沢山並んでいるだけじゃねえか…!」
赤い空の下に並ぶ遺跡の建物を見て本田は、建物の壁を蹴る。




小鳥ルート


小鳥:「何、ここ…」
何か寒気を感じる小鳥は自分の身体を抱きしめる。


杏子:「大丈夫?小鳥ちゃん?」

小鳥:「はい、何か寒気を感じて…」

龍亜:「別に寒くなんてねえけど」

小鳥:「そういう寒いとかじゃなくて、言葉にはできないけど、この辺り全体に、妙な空気を感じると言うか。そう、あの木を中心に」
小鳥が指さした場所には、随分を大きな樹木が立っていた。


ツバキ:「随分大きな木だね」

結衣:「どこかの遺跡かしら…」

全員の、ミッションウォッチの通信機能はONの状態のため、みんなの話し声は聞こえている状態だ。



遊馬ルート

唯一、空間が歪んだにも関わらず立っている場所が、空間が歪む前と変わらない遊馬たち…。


通信の向こうから聞こえる仲間たちの話しを聞いて、すぐに遊馬は、あることに気付いた。


自分たちがいる場所も、遺跡と自然が広がる遺跡と、大きな樹木がある場所だ。しかも、そこは遊馬がかつて訪れたことのある場所だ。

みんなの話し声と照らし合わせると、そのほとんどが、かつて自分が、この辺りで見たものと一致した。


ドン・サウザンド:『懐かしいだろ?九十九遊馬?ここは、お前が我の魂と接触し、バリアンの力を手にした地マルピアスだ』
遊馬がバリアンの力を手にした場所。つまり、遊馬が落石事故に遭い、50年以上も行方を眩ませた最初のきっかけになった場所ということだ。






一馬:「ここが、マルピアスなのか…」
一馬も始めてみる、この場所。遊馬が落石事故に遭ったことを知り、ここへ来ようとしたときがあったが、その時は辺りが進入禁止になってしまったため入ることができなかった。






ドン・サウザンド:『九十九遊馬、やはり貴様とはちゃんと決着を付けなければいけないようだな。お前なら、我の居場所がわかるはずだ。無論、簡単にこちらに来させるつもりはないがな』
みんなの頭の中に響くドン・サウザンドの声は、その言葉を最後に聞こえなくなってしまった。




アストラル:『ドン・サウザンドが待っている場所』

エリファス:『それはつまり―』
アストラルとエリファスが一緒の方向を見つめる。

そして、遊馬も2人に釣られるかのように同じ方向を見て呟いた。


遊馬:「あの悲劇があった場所か…」
遊馬は胸に手を当てて、この辺りで一番目立つ大きな木を見つめた。







凌牙:「少し前に聞いた話が本当なら、お前は、あの木の近くにある遺跡の入り口に入り、その中で奴から力をもらったと言っていたな」
通信の向こうにいる遊馬に話して凌牙は言った。





遊馬:「あぁ、おそらくあそこにドン・サウザンドがいる」




カイト:「ドン・サウザンドは、もうすぐそこだ。それに、俺たちは今、同じ空間にいる。合流もしやす」




ゴーシュ:「あぁ、早いとこ奴のところに行って、この悲劇を終わりにしようぜ」

アンナ:「そうだ!奴に世界は渡さねえ!」
みんなのドン・サウザンドへの怒りはMAXのようだ。




Ⅴ:「できるなら一度、合流しよう」

ドルべ:「目的地は、あの木なのだからな」



小鳥:「急ごう、遊馬。どんな罠が待っていても、私たちがやらないと!」
小鳥も、戦う気力が全開のようだ。




遊馬:「みんな…。そうだな。急ごう!ドン・サウザンドの元に!」
一瞬、みんなを巻き込んでしまったことに申し訳なさを感じたが、遊馬は何も言わず、みんなを信じ、ドン・サウザンドの元へ急ぐことにした。




ドン・サウザンドは、もうすぐ側まで来ている。


何度も言おう。遊馬達には人間界とアストラル世界の命運がかかっている。

打倒!ドン・サウザンドまで、あともう一歩!







バリアン世界本拠地


カイゼル・サウザンド内部にいないベクターと璃緒は、ワープすることなく、ここに取り残されてしまった。



璃緒:「どうやら、みんなドン・サウザンドの元へ行ったみたいね」

ベクター:「俺たちも急ぎてえが、”バリアンズスフィアキューブ”を持っていねえ以上、ここからワープすることはできねえな」
バリアンズスフィアキューブがあれば、バリアン世界へワープできる。なら、その逆もできるはずだが、その肝心なバリアンズスフィアキューブが、手元にない以上、ゲートを開くことはできなかった。



璃緒:「どうする?ここで、みんなを信じて待つ?」
璃緒がベクターにそう聞くが、ベクターは即答せず、どうするかを考えていた。



???:『ゲートなら、俺が開いてやるよ』
どこからが声が聞こえ、2人は驚き、警戒する。


すると、目の前にバリアンズスフィアキューブから展開されるゲートと同じ形状のものが現れ、その向こう側から1人のバリアン住民が現れた。



ベクター:「お前は…、ピアーズ…!」
バリアン8人衆の1人であるピアーズ。凌牙に敗れたときの傷が身体中に残っている。


璃緒:「確か、バリアン8人衆の1人だったわね。ドン・サウザンドが私たちの生け贄に失敗したから、バリアンを送り出してきたのかしら」
璃緒が、ドン・サウザンドの命令でピアーズがここへ来たのかと思った。


しかし、ベクターは気付いていた。ピアーズから殺意がないことを…。


ベクター:「何しに来た?」
特に警戒心を高めていないように見えるベクターを、璃緒は不思議そうに見た。



ピアーズ:「…」

ベクター:「俺は一度、深い闇に落ちた。だからこそわかるぜ。今のお前に戦う意思はねえ」

ピアーズ:「元バリアンだった奴に、そこまで言われちゃ敵わねえな」
ピアーズの表情は暗いようで、安心したような表情だった。


ピアーズ:「俺はバリアンとして、この世界を救いてぇ。だから、ドン・サウザンド様に忠誠を誓った。だが、神代凌牙と戦って気付かされた。所詮俺たちは、あの方の道具だということに」

ベクター:「…」

ピアーズ:「現に俺の身体にあった、あの方の力が無くなっている。つまり、俺はドン・サウザンド様に見捨てられたということだ」
凌牙との戦いのことを思い出しながら語るピアーズは、拳を握る。


ピアーズ:「ドン・サウザンド様、いやドン・サウザンドは、自分が神になるために、バリアン世界を救おうとしている。だが、それは自分の欲望のため。そして、俺たちバリアンは、その欲望のために動かされている人形その者。存在してはいけない連中だ」
自分がやってきたことを振り返ると、そのすべてがドン・サウザンドに言われたままのことを行ってきただけであり、そして考えれば、それは自分が勝身になろうとするために、自分たちを振り回していただけに過ぎないことにピアーズは気付いてしまった。


ベクター:「それで、どうしろっていうんだ?」


ピアーズ:「…」

ベクター:「まさか、殺してくれなんて言わねえだろ?」
ベクターは、珍しく真剣な目でピアーズを見る。


ピアーズ:「俺たちは人形かもしれねえ。だが、俺がバリアン世界を救いたいという気持ちは一緒だ。だからこそ、ドン・サウザンドにこう言いてぇ。お前に、世界を好きにはさせねえって」


璃緒:「それって、私たちの味方になるって言ってるのかしら?そう簡単に信用するわけないでしょ」

ピアーズ:「わかってる。だが、これが俺のケジメだ」
ピアーズは真剣な眼差しだった。嘘は言っていない。それはベクターも璃緒にも伝わった。


ベクター:「時間がねえ。早いとこ、カイゼル・サウザンドへ行くための、ゲートを開いてくれよ」
ベクターはピアーズに、ゲートを開くよう要求する。


璃緒:「いいの?ベクター。そう簡単に信用して」

ベクター:「今は、急いでカイゼル・サウザンドに行くのが先のはずだ。なら、奴の力を借りるしかねえ。もし、裏切るような真似をすれば、すぐ俺が殺してやる。いいな?」
少し怖い表情でベクターはピアーズに聞いた。


ピアーズ:「あぁ、それでいい…―!」
ピアーズをとりあえず味方につけることを認めたベクター。

すると、ピアーズは何かの気配に気付いた。


ピアーズ:「急げ。嫌なお客さんだ」
バリアンズスフィアキューブを使い、ゲートを開くピアーズ。

ベクター:「そんなこと、おめえに言われなくても分かってるっつうの」

璃緒:「急ぎましょ」
ゲートへとピアーズ、璃緒、ベクターが潜り抜け、ゲートはその場から消えた。



そして、入れ違いで別のゲートが現れ、その中からウェスカーが現れた。


ウェスカー:「チッ、ベクターと神代璃緒は、ここから脱出したか。影とはいえ、ドン・サウザンド様を倒すとはな」
ウェスカーは周りを見てそう呟く。






遊馬や凌牙たちがカイゼル・サウザンドで世界の命運をかけた戦いに望んでいた、その頃、ネオコーポレーションシティの避難誘導は、順調に進んでいた…とは残念ながら言えない。

街の人口から、避難がそう簡単に進むわけがない。


そして、そんな中、ネオコーポレーションシティの市長であり、フロンティア元帥である百々原は、その責任を感じ、本部に残っていた。



百々原:「SOA特務隊が、あの中に潜入して、既に2時間以上…。中は一体、どうなっている…」
中に潜入した部下たちを心配する百々原。

百々原は、一ミリも他人事だと思っていない。むしろ、自分が中へ行けなくて悔しいと思っている。

自分は、いつも上の立場と言う責任があるため、ここで命令することしかできない。

それが、元帥である自分の役目なのはわかっている。

だが、それでも頼むことしかできない自分が許せないと、百々原は自分に対して怒りをぶつけている。



すると、緊急通信コールの音が鳴り響いた。

着信音を聞いた瞬間、百々原はため息が出そうだった。

音を聞いた瞬間に分かったのだ。相手が誰なのか。


通信機能をONに、ディスプレイには”国家政府”のマークが映った。



???:『状況はどうなっている?百々原』
年を取った老人の声、その声は、焦っているような、怒っているような声だった。

百々原:「残念ですが、こちらから九十九遊馬たちへの通信は不能。状況は把握できておりません」
百々原は椅子に座り、”国家政府”のマークしか映っていないディスプレイを見つめる。

なぜ、そんなディスプレイを見て話す必要があるのか…。それは、話している相手が、国家政府のトップに位置する者たちだからだ。


???:『バリアンがこうも早く動くとは…、九十九遊馬はこれを予想していなかったのか』

???:『四大神王者も落ちたものだ。世界を守るために影となって動いているはずが、こうも世界を危機に晒してしまうとはな』

5人の老人で構成されている国家政府の最高権力者”五輪帥星”。

四大神王者を含む”世界勢力”の発案した者たちでもあり、その正体は謎に包まれたままである。


百々原:「お言葉ですが、四大神王者も完璧ではありません。予想できないこともあります」


???:『予想できないこと事態が、奴らにとって許せないことなどだ。今回の件に関しては、バリアンと繋がりが深い九十九遊馬に全ての責任を負ってもらおう。そして、お前にもだ百々原』

百々原:「!?」

???:『お前、九十九遊馬だけでなく、他の連中も向かわせたようだな』

百々原:『もうその情報が…』
正直隠し通すつもりだったが、もう国家政府には、遊馬以外にも仲間たちがカイゼル・サウザンドの中へ潜入していることを知っているようだ。


???:『我々は、何と言った?九十九遊馬に、全てを任せろと言ったはずだ。仲間たちを同行させたということは、我々に対する命令無視だぞ』

???:『わかっているだろうな?ドン・サウザンドを止めなければ、世界は終わる。連中には荷が重すぎる。力を持たない連中にはな』
通信の向こうでコロコロと声が変わる老人の声に百々原は、イライラしていた。

誰もが、遊馬に責任を負わせ、その仲間たちを軽蔑していたからだ。


???:『弱い連中を送り込んだだけでは話にならない。世界の命運をかけた戦いに―』
国家政府の最高権力者であろうと、部下たちを軽蔑する連中を許せなくなった百々原は、机を強く叩き立ち上がる。

百々原:「彼らも頑張っているんだ!口を閉じててもらおう!」
百々原の怒りの声は、五輪帥星を惑わせた。

百々原:「話しが以上なら、通信は終わらせてもらいます!」
百々原は通信を切った。

切る直前に、向こうから「待て!」という声が聞こえたような感じもしたが、百々原は迷わなかった。



百々原は、窓の外を見て、空に浮かぶカイゼル・サウザンドを見つめる。


百々原:『何度も言わせてくれ。無事で帰ってきてくれ』
百々原はカイゼル・サウザンドの中にいる部下たちを信じる。



そして、フロンティア本部の屋上にも、仲間たちや家族を待つ斎王、美寿知、トメさん、セイコ、影丸、イェーガー、マーサ、シュミット、春たちが、避難せずにみんなの帰りを持っていた。





その頃、一台のヘリコプターが、フロンティア本部に近づいていた。


そのヘリコプターに搭乗していたのは、ベイチニア半島に向かっていた者たちだった。








第10ED『さすらいびと《DASEIN》』






次回予告

ナレーション:ベイチニア半島から戻ってきたミスティたち。

ミスティたちは、迷いもなく展開中のゲートから急いで、カイゼル・サウザンドへ潜入を試みようとしたとき、あの男が爆音を鳴らして、カイゼル・サウザンドへ飛び込んで走り去っていく!

そして、カイトの前に再びスペンサーが現れ、2人の間に火花が散らされる!

真のギャラクシーアイズ使いをかけた戦いが、また開幕する!


カイト:次回、遊戯王5DXAL「怒涛の銀河!」


カイト:「俺たちの戦いは、誰にも止められない!」



遊戯王5DXAL豆知識コーナー!!


ベクター:『エクシーズモンスターがカオス化した”CX(カオスエクシーズ)”は、バリアン専用と言っても過言ではねえ、エクシーズモンスターの一種で、”RUM-バリアンズ・フォース”などを使って変化を遂げるぜ。下手にカオスエクシーズ・チェンジしたら良からぬことが起きるぜぇ…』
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