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第163話:『ベクター 真の目的』







カイゼル・サウザンドの最奥部に戻ってきたドン・サウザンド。


そこに、ハートランドが現れ、ドン・サウザンドに向かって一礼する。


ハートランド:「申し訳ございません。まさか、奴がアラクネーの宝玉を取るとは、思いも寄らなかったとはいえ、警戒を怠っていました」
ハートランドがドン・サウザンドに謝罪する。


アラクネーの宝玉は、カイゼル・サウザンドを、人間界に出したときに使った大切な物の1つだ。


ドン・サウザンド以外が、持ち去ってはカイゼル・サウザンドが消えかねない。なぜなら、ドン・サウザンドですら、アラクネーの宝玉いや、アラクネーの宝玉だけでなく、ヴィータのペンダントや。血のデスリングについていまだ分かっていないこともあるからだ。


ドン・サウザンド:「まあいい、アラクネーの宝玉はこの手に戻ってきた。計画は最終段階に入る」

ハートランド:「では、あの2人を連れて参ります」

ドン・サウザンド:「いや、我が直々にあの2人の元に行こう」

ハートランド:「よろしいのですか?あなたがここを離れるのは…」
ハートランドが不安そうな顔をする。


ドン・サウザンド:「安心しろ。我の力を見くびるな」

ハートランド:「申し訳ございません、それもそうですね。いらぬ心配をして申し訳ございません」

ドン・サウザンドの目の前にゲートのような空間が現れる。


ドン・サウザンド:「あの二人を生贄に、カイゼル・サウザンドは人間界に真の絶望を味合わせることになる…ふはははは」
ドン・サウザンドは高笑いして、ゲートを潜った。









第9OP『HEART・BEAT《MARIA》』







第163話:『ベクター 真の目的』






凌牙ルート


バリアン8人衆の1人ピアーズを倒し、色々な罠を潜り抜けてきた凌牙。

しかし、凌牙にとって、今一番やらなければいけないことは、裏切り者ベクターに連れ去られた双子の妹、璃緒を救出することだ。


不気味な空間に浮かぶ道を走る凌牙を追う慎也たち。


葵:「彼、かなり焦っているわね」

慎也:「あぁ、まあ、当然だろ。ドン・サウザンドが言ってきたネオコーポレーションシティが滅びるまでのタイムリミットは、2時間を切っているんだ。しかも、連れ去られた妹は、今だ見つからず、どこにいるのかも検討が付かない状態だ」

葵:「まさか、ベクターが裏切るとはね。まあ、いつか何かしでかすとは思っていたけど…」
ベクターの面は悪い。雰囲気も、その辺にいるやんちゃな学生を同じ感じだ。

いずれ、何か悪いことをしてくることは、葵も予想していた。

流石に裏切るまでは、予想していなかったが…。



オブライエン:「慎也」
オブライエンが慎也に横まで走ってくる。

オブライエンは、ミッションウォッチからホログラムを出していた。

オブライエン:「ミッションウォッチの電波回線が、少しずつ回復している。うまく回線が回復すれば、他の連中と連絡が取れるかもしれん」

慎也:「わかった。オブライエンさんは、そのまま作業の続行を。とりあえず、今は前に進むしかない。手遅れになる前にドン・サウザンドを止め、神代璃緒を救出する」
慎也が周りの全員にそう言った。




凌牙:『璃緒、待っててくれ。必ずお前を助ける!』
凌牙は妹を必ず助けることを胸の中で誓った。






遊馬ルート




その頃、遊馬たちは、暗い空間を抜け、山の中に出てきた。

空は無論、バリアン世界のように赤く染まっている。


双六:「また、訳のわからんところに出てきてしまったな」

羽蛾:「はぁ、いつになったらドン・サウザンドってやつのところにたどり着けれるんだ?」
羽蛾の愚痴が始まったと、レベッカは心の中で呟く。

レベッカ:「敵の親玉が、早々に出てくるわけないしょ。少しは考えなさいよ」

竜崎:「けどぉ、このまま隠れ続けていても、こちらとしては不都合じゃせんか?」
竜崎の言っていることも一理ある。


このままタイムリミットが切れるまで隠れられたらおしまいだ。






アストラル:『遊馬』
アストラルが遊馬のすぐそばに出てくる。


遊馬:「どうした?」


アストラル:『例の作戦、彼に任せてホントによかったのか?敵の懐に、態々行かせておいて、もし万が一のことがあったら…』

遊馬:「アストラル、俺がどうしてあいつに、こんな作戦を任せたか教えてやろうか?」

アストラル:『?』

遊馬:「あいつの悪知恵を一番知っているのが俺だからだ」
遊馬は笑みを浮かべてそう言った。


アストラル:『言っている今がよく理解できないな』

遊馬:「お前にもすぐわかる時が来るさ。あいつの、悪知恵がどれだけすごいのかがな」

遊馬達一行は、森の中を突き進む。





バリアン世界本拠地


広くて長い階段の上に座るベクター


その近くに、璃緒が周りを警戒して座っていた。


璃緒:『周りを見ていると、自分がメラグだったときのことを思い出すわね』
璃緒はそう心の中で呟いた。


ベクター:「逃げないのか?」
寛いでいるベクターが璃緒に、そう聞いた。


璃緒:「ここがバリアン世界なら、どこへ逃げたって、すぐ捕まるだけでしょ?なら、逃げても意味ないわ」
凍り付いた怖い目で、璃緒はベクターを見つめる。


仲間を裏切り、バリアン側について、自分をここに連れてきたことにかなり怒っているのだ。


ベクター:「女にしてはすげえ覚悟だな。メラグとして戻る気にでもなったか?」

璃緒:「冗談でも、怒るわよ?」

ベクター:「既に怒ってるくせにか?」
明らかに、自分のことをバカにしている口振りに、璃緒の怒りの尾が切れた。


璃緒:「ベクター!あなた、少し自分の立場を考えた方がよろしいわよ!みんなを裏切り、こんなことをしでかすなんて、みんな怒っているに違いないわ!」

ベクター:「まあ、そうだろうな」

璃緒:「みんなが、ここに来たとき、あなたは裏切り者として殺される可能性もある。その覚悟があって?」
ベクターの目の前に立ち、指を指して璃緒は言った。


ベクター:「安心しろよ」

璃緒:「?」

ベクター:「みんなが俺を殺しに来る前に、別の奴が俺たちを殺しに来るからよ」

璃緒:「え?」
すると、ベクターの目に異次元のゲートのようなものが現れた。

ベクター:「お、噂をすれば」
ベクターは立ち上がり、階段を降りてゲートに近づく。

そして、ゲートの中からドン・サウザンドが現れた。


ドン・サウザンド:「大人しく待っていたか?ベクター、そしてメラグよ」

璃緒:「ドン・サウザンド…」
その細い目が、ベクターと璃緒を睨みつける。

ドン・サウザンドが、今自分たちの目の前に立っているのだ。


ベクター:「ああ、よかれと思って、2人で寛いでたぜ」
ベクターは、ドン・サウザンドを目の前にして、余裕の表情で立っていた。


ドン・サウザンド:「そうか。なら、単刀直入に言おう。カイゼル・サウザンドの力を完全に目覚めさせるための最終段階に突入する」
ドン・サウザンドが2人にそう告げた。


ベクターも、璃緒もドン・サウザンドが何を言っているのか理解できなかった。


ドン・サウザンド:「カイゼル・サウザンドは、この血のデスリング、そしてアラクネーの宝玉とヴィータのペンダントの力によって生み出され、そして人間世界に出現させた。しかし、それはあくまで第1過程に過ぎない。カイゼル・サウザンドの力を完全に呼び出すためには…」


ベクター:「俺たち2人を生贄に捧げる必要がある、そうだろ?」
ベクターは、ドン・サウザンドが言うことを先読みした。


ドン・サウザンド:「ほお、気付いていたか?」
ドン・サウザンドも動揺することなく、落ち着いた表情でベクターを見つめる。


璃緒:「どういうこと?ベクター」
この中で何も理解できていない璃緒も階段を降りてベクターに聞いた。


ベクター:「”闇の力を持つ平和の王子”、そして”ポセイドン海の連合国の王の妹”。この2つの魂が、初めて生け贄になることでカイゼル・サウザンドは、真の力を発揮する。闇の力を持つ平和の王子は俺、そしてポセイドン海の連合国の王の妹は璃緒、お前のことだ」
ベクターは、璃緒に自分がわかっていることを伝える。

璃緒:「では、ドン・サウザンドの狙いは、最初から私たちを仲間にするのではなく殺そうとしていた…」


ドン・サウザンド:「そうだ。お前たちが、大人しくこちらに来ていればそれでよし。もし反対していたのであれば、無理矢理連れてくるまでだったが、ベクターがこちらについて来てくれたおかげで、随分手間は省けた。。ベクター、礼を言うぞ」

ベクター:「それは、どうも。だが、俺が大人しくお前の言いなりになって生け贄になるとでも思っているのか?」
ベクターは、悪巧みをする子供のような笑った表情をする。

ドン・サウザンド:「ベクター、やはり、汝は自分が生け贄になると知っていて、ここへ来たのだな。九十九遊馬に聞いたか?」
ドン・サウザンドの口から遊馬の名前が出て、ベクターが反応した。


璃緒:「ベクター、あなた…」


ベクター:「まさか、あいつが、こんなことを頼んでくるとは思ってなかったぜ」
ベクターはそう言って、数時間前のことを思い出した。





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フロンティア本部

エントランスで久しぶりに再会した遊馬とベクター。

遊馬はドン・サウザンドの影武者と戦ったことをベクターに話した。

そして、そのドン・サウザンドから伝えられたこともベクターに教えた。


遊馬:「奴は計画を遂行するために、2人の人間を必要としている」

ベクター:「俺様と、璃緒だろ」
ベクターが遊馬から目を逸らして言った。

遊馬:「お前、どうして、そのことを…」

ベクター:「さっき会ったんだよ。バリアンの1人ピアーズってやつと。そいつは、俺をバリアンに誘ってきやがった。主が必要としていると言ってな。ドン・サウザンドは、本格的に動き出したようだな」

遊馬:「決着を付けるときが来た…ってわけか…」

ベクター:「ドン・サウザンドは、容赦なく仕掛けてくるぞ。何か策があるのか」
ベクターがそう聞くと、遊馬は数秒間、何も答えなかった。

だが、ベクターの方を振り向き、口を開いた。


遊馬:「奴は、ある計画を進めていると言っていた。その計画には、4カ月ぐらい前にウェスカーに奪取された血のデスリングを含む3つの鍵が必須らしい」

ベクター:「3つの鍵…。計画って何だよ」

遊馬:「詳しいことは知らねえ。だが、裏を返せば、それがなければ、計画は進行できなくなるということだ」

ベクター:「…」

遊馬:「ベクター」
遊馬は真剣な表情で、名前を読んだ。

ベクター:「?」

遊馬:「かつてのバリアン、ベクターとメラグは、特別な存在だったのか?」

ベクター:「なんでそんなこと聞くんだよ?」


遊馬:「今更、ドン・サウザンドがお前たち2人を必要とする理由がおかしいからな」
遊馬は真剣な眼差しでベクターを見る。


「場所を変えよう」ベクターはそう言って遊馬共に表の広場に出た。



ベクターは、木にのしかかり、楽な体勢を取る。


ベクター:「俺様の前世、知ってるよな?」

遊馬:「幼いころから人を信じず、周りの人々を処刑し続けてきた狂気の皇子。そして、メラグを暗殺したのも、前世のお前だったな」

ベクター:「あぁ、そして妹を殺されたナッシュは仇を打つべく、かつてのベクターを追い込み、そして一騎打ちの末勝利した。だがな、メラグにとって、俺に向けられた矛は収められていねえんだ。当時、璃緒自身も気づいていないメラグの復讐の心。それは、俺を追い続けていた」
バリアン七皇時代の話しを遊馬に話すベクター。

正直、誰にも話したくはなかった。いや、話したところ、何かが変わるわけでもなかったから、今まで口にしなかったのかもしれない。


ベクター:「笑ってもいいんだぞ。前世紀の話しだ。そんなときのことを話したところで、今更遅いことぐらいわかってんだからよ」

遊馬:「今から、大惨事が起きるかもしれねえってときに笑える話かよ。それに、別にお前を恨むつもりはねえ」

ベクター:「?」

遊馬:「人には、それぞれ自分の生き方ってもんがある。お前の前世は、周りの人々を信じなかったいわば、臆病な人間だったってことだ」

ベクター:「お前、誰が臆病だ」
遊馬の言葉に少しだけ機嫌を損ねたベクター。それを見た遊馬は、面白かったのか少し笑った。

遊馬:「そうだ」

ベクター:「あぁ?」

遊馬:「それが今のお前だ。今のお前は臆病じゃない。強い人間だろ?」

ベクター:「遊馬、お前…」
自分のことを褒めているのか…。

ベクター:「はっ、褒めたところで、何も上げねえぞ」
ベクターは拗ねるような表情をするが、それは内心照れているのを隠すための演技に過ぎなかった。


遊馬:「ゆっくりはしていられねえ。ドン・サウザンドは、バリアンを利用して、お前たち2人を拉致しに来る」

ベクター:「はっ、そうなる前に返り討ちにしてやるよ」

遊馬:「いや、それじゃあ、敵の攻撃が増すだけだ」

ベクター:「ならどうすんだ?見す見す連れ去られるのは御免だぜ」
ベクターは、嫌嫌そうな表情で発言した。

遊馬:「だろうな。敵を欺くには、まず味方からって奴を試すか」

ベクター:「あぁ?」

遊馬:「奴の計画を阻止する。そして、それをやり遂げるのはお前だ、ベクター」
遊馬がベクターを指さした。


遊馬:「悪いが、お前にはバリアン側についてもらうぞ」

ベクター:「はあ!言ってる意味がわからねえぞ!」
冗談で言っているようには見えない。その表情は本気だった。

しかし、ベクターにとって、バリアン側につくということは、みんなを裏切るという答えにたどり着く以外、何も思い付かなかった。

遊馬:「奴は、どんな手を使おうと、ベクターたちを連れ去りに来る。なら、こっちから行ってやろうじゃねえか」

ベクター:「それやるの、俺だろ?」

遊馬:「お前になら、できる」

ベクター:「簡単に言ってくれるなよ」

遊馬:「なら、やめるか?」
遊馬が真剣な目で、ベクターを見つめる。

その眼差しにベクターは観念したのか、深いため息をついた。


ベクター:「俺に被せられた濡れ衣は、お前が張らしてくれよ」

遊馬:「わかってるよ。頼むぞ、ベクター」
そうして、2人の真の作戦が決行された。





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ドン・サウザンド:「……」
まんまと遊馬の作戦に乗せられたかのような表情をする。



璃緒:「それじゃあ、あなたは裏切ったわけじゃなく、裏切った振りをして、ドン・サウザンドの計画を止めようとしていたのね」

ベクター:「あぁ、ホントは、お前を連れてくるつもりもなかったが、裏切った振りがバレねえよう、リアルに裏切ったかのように見せるためには、お前を連れ去るしかなかったんだ」

璃緒:「なら話してくれたら、協力していたわ!」
璃緒がベクターの顔のすぐそばで叫んだ。


ベクター:「敵を欺くには、まず味方って言ったろ」

璃緒:「もう、まどろっこしいわね、まったく。なんか、何も知らなかった、私が恥ずかしくなってくるじゃない」
璃緒が頬を膨らませて言った。

ベクター:「けど、何も知らなかった、お前が連れ去られたことで、凌牙たちも俺に本気で怒っていたし、それがバリアンの連中を騙せたことに繋がったんだ。おめえは、いい仕事をしたぜ」
璃緒を小ばかにするベクター。


ドン・サウザンド:「もういい、うんざりだ」
ベクターの話しに聞き飽きたのか、ドン・サウザンドが突然殺気を放つ。


ドン・サウザンド:「お前たちが、ここに来た時点で、我の計画の礎になることは決定している。逃れることはできない」
そう言って、ドン・サウザンドは手に大剣の形をしたデュエルギアを持った。


”CNo.1000 夢幻虚神ヌメロニアス”の大剣タイプのデュエルギア”イマジナリー・ヌメロニア”だ。



ベクター:「ここからは存分に暴れさせてもらうぜ」
ベクターは、”アンブラル・グール”の大鎌デュエルギア”アンブラル・ファルチェ”を構える。







その頃、遊馬は遠い場所で、ベクターのことを信じていた。


遊馬:『頼むぞ。ベクター』
遊馬の心の声は決してベクターに届くことはない。

しかし、それでも、あいつが勝つことを信じていたかった。遊馬は強く願う。ベクターが勝つことに。






ベクター:「行くぜ!ドン・サウザンド!」
ベクターがアンブラル・ファルチェを持って、特攻する。


ベクター:「ダーク・ザード-ドロップ!!」
アンブラル・ファルチェを思いっきり振り、ドン・サウザンドの頭上に向けて、大鎌から、無数の黒い針を飛ばす。

無数の黒い針は、1つになり巨大な刃と変化し、ドン・サウザンドに落ちる。


ベクター:「こいつは惨いぜ。人間界ではギロチンって言って、斬首刑に使う首を切断するものよ!」
ドン・サウザンドに、巨大な刃が落ち、周りに埃などが立ち上る。

誰もが、倒したと思う場面だろうが―

ベクター:『ま、こんなもんでやられるあいつじゃねえよな』
ベクターがそう思っていると、剣を振う音が聞こえ、地面に落ちた巨大な刃が粉々に砕けた。


ドン・サウザンド:「こんなもので、我を倒せるとでも?笑わせてくれる」
ドン・サウザンドはそう言うと、その大きなイマジナリー・ヌメロニアを片手で振って、自在に操って周りの物を切った。



ベクター:「改めて見ると化け物だな。流石は、バリアンの神と言われる存在のことだけはあるか…」

ドン・サウザンド:「汝も知っているはずだ。我がどれだけ恐ろしいかを」

ベクター:「自分で、自分のことを恐ろしいって普通言わねえだろ」
呆れたかのようにしゃべるベクター。


ドン・サウザンド:「では、これからお前を絶望の崖へと落としてやろう。そうすれば、我がどれだけ恐ろしいのか改めてわかるはずだ」
ドン・サウザンドは、左手に持つイマジナリー・ヌメロニアを掲げる。


ベクター:「?」
何してんだ?そう思ったベクターは、危険だと察知し、構える。


ドン・サウザンド:「滾る…滾るぞ、血が!」
ドン・サウザンドが呪文めいたことを言っていると、イマジナリー・ヌメロニアの妙なオーラがまとわりついてきた。


そして、そのオーラを放出していた源は、ドン・サウザンドの左中指につけている血のデスリングだった。


璃緒:「もしかして、血のデスリングの力を、あのデュエルギアに送っているの…!?」
断定はできないが、璃緒はそう思った。


真っ赤なアームにルビーが埋め込まれた血のデスリングは、一瞬ピカッと輝き、その瞬間、ベクターにとてつもない殺気が襲ってきた。


ベクター:『こりゃあ、本当にやばいかもしれねえな』
ベクターが片方の足を一歩後ろに下げた。

ベクターの心は恐怖心でいっぱいだった。





ドン・サウザンドが持つ血のデスリングについているルビーが強い輝きを放つ。


イマジナリー・ヌメロニアの大きな刃両面に刻印が刻み込まれた。

ドン・サウザンド:「顕現せよ、神の力…!」
ドン・サウザンドはイマジナリー・ヌメロニアを両手で持ち、背後に黒い巨大な影が現れる。


ベクターは、その影を見てつい動揺してしまった。


しかし、ここで逃げたら、誰があいつを倒すんだ。そんな言葉が頭をよぎり、すぐに心を切り替える。


ドン・サウザンド:「受けよ。サングエ・ヌメロン」
ドン・サウザンドは刻印が刻み込まれたイマジナリー・ヌメロニアを振り、ベクターに向けて斬撃を放つ。



ベクターはすぐに防御態勢に入った。


ベクター:「アンブラル・ディフェンス!」
アンブラル・ファルチェを前に突き出したベクターは、円を描くようにアンブラル・ファルチェを両手で回しシールドを張った。


ドン・サウザンド:「そんな、単純な防御で止められるわけがない」
ドン・サウザンドは、自分の力は絶対的なものだと確信している。

なぜなら、自分は神なのだから!


ドン・サウザンドが放った攻撃が、ベクターに直撃した。


ベクター:「ぐわあああああ!」


璃緒:「ベクター!!」
物凄く吹き飛ばされたベクターは、壁に激突した。


ベクター:「う…」
壁に埋め込まれたベクターの身体は、地面に落ちた。

ドン・サウザンド:「バリアンの力を失った、お前など敵ではない。まあ、バリアンの力を持ってしても敵ではないがな」
ドン・サウザンドが持つイマジナリー・ヌメロニアの刃にあった刻印が消える。


血のデスリングの輝きも無くなった。


ベクター:「くそがっ…」
頭から血を流すベクターは立ち上がろうとするが、身体のダメージがひどくうまく立ち上がることができなかった。


ドン・サウザンド:「我の計画の礎となってもらうぞ、ベクター。この剣に刺されたとき、お前の命はカイゼル・サウザンドに捧げられる」
イマジナリー・ヌメロニアの鋭い刃が、ベクターに近づく。


呆気ない終わり方だな…。ベクターは心の中で呟いた。


情けない、悔しい、そして謝罪の言葉が、ベクターの脳裏に浮かび上がる。


遊馬に信じてもらったのによ、何だよ…。これで終わりかよ…

ベクターは目を閉じた。


ドン・サウザンドは、ベクターの命をもらい受けようとする。


ドン・サウザンド:「!」
しかし、そのとき別の方向から斬撃が飛び、ドン・サウザンドは後ろに下がる。


今、この中には3人しかいない。

自分と、ベクター、そして…。


ベクター:「璃緒…!」
たった一人の女性、璃緒だ。


璃緒は、”零鳥獣シルフィーネ”の大鎌タイプのデュエルギア”シルフィーネイーター”を持って、ベクターの前に立つ。


璃緒:「あなたらしくないわよ、ベクター。仮にも、一度はドン・サウザンドの身体を一つにした、あなたが簡単にあいつに負けてどうするの」
璃緒は倒れるベクターに振り向き、そう言った。


心配してくれているような表情。ただ、それとは裏腹にどこか、情けないわねと言わんばかりの表情が隠れているようにも見える。


ドン・サウザンド:「メラグ、我の邪魔をするか」


璃緒:「ドン・サウザンドを倒すわよ」

ベクター:「お前には無理だ。引っ込んでろ」

璃緒:「今の攻撃で思い知られたでしょ。あなた1人でも無理よ。でも、2人で戦えば、きっと勝てるわ」
ドン・サウザンドを見た奴らは大抵、その姿に怯える。だが、璃緒は見慣れているのか、全然ドン・サウザンドに恐怖していなかった。


ベクター:「…ふ、フハハハハハ、おもしれえ奴だ。こんな絶体絶命の時に逃げねえなんてよ。お前、女じゃねえだろ?」

璃緒:「失礼ね、逃げたかったらとっくに逃げているわよ。でもね、今は、人類の危機が掛かっているの。逃げていたら、何も始まらないわ」

ベクター:「言うじゃねえか」
ベクターは立ち上がり、璃緒の横に来る。


ベクター:「ならやろうじゃねえか。一緒に!」



ベクターと璃緒のタッグマッチが、ドン・サウザンドに挑む!!






第10ED『さすらいびと《DASEIN》』







次回予告

ナレーション:ベクターと璃緒が、かつて自分たちを利用してドン・サウザンドにバトルを挑む!

ドン・サウザンドの圧倒的な力に怯むことがなく、攻撃を仕掛ける2人に対し、ドン・サウザンドも、2人に絶望を味合わせようと、攻撃を繰り出し続けてくる!

そして、2人の軌跡の攻撃が、ドン・サウザンドを打ち破ることになる!?


璃緒:次回、遊戯王5DXAL「VSドン・サウザンド 零鳥の影」


璃緒:「準備はいいかしら?ベクター」







遊戯王5DXAL豆知識コーナー!!


ベクター:「俺様が使う”アンブラル・ファルチェ”は”アンブラル・グール”からなる大鎌デュエルギアだ。攻撃だけでなく防御にも一応使えるんだが、ドン・サウザンドの攻撃は防ぎきれなかったぜ。次こそ、絶対に防いでやるよ!」
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