第159話:『思いを武器に』
シンディ:「私を助けてくれるの?」
ドン・サウザンド:『汝が望むのであれば…』
シンディ:「…」
ついさっきまで、死ぬことを覚悟していたシンディ。
しかし、ドン・サウザンドの言葉を聞いて、シンディの考えは変わろうとしていた。
ドン・サウザンドが嘘をついているのかもしれない。はったりかもしれない。信じていいのか…。答えはすぐに決まらなかった。
ドン・サウザンド:『早くしなければ手遅れになるぞ』
シンディ:「本当に私を助けてくれるの?」
ドン・サウザンド:『さっきも言ったはずだ。汝が望むのであればと』
シンディ:「私は…」
ドン・サウザンド:『ただし、条件がある』
シンディ:「?」
ドン・サウザンド:『もし、助けてほしいのあれば、人間を捨て、私の元へ来い』
シンディ:「!」
ドン・サウザンド:『汝は、バリアンとして生まれ変わるのだ。人間を越えた存在、それがバリアン』
もし生き続けたいのなら、人間を捨てバリアンとなってドン・サウザンドの元へ行く…。それに従わなければ助からない。
シンディの思考が揺らぎ始める…。
第9OP『HEART・BEAT《MARIA》』
第159話:『思いを武器に』
突然、私の前に現れた謎の黒い影、ドン・サウザンド…。
自分のことを助けてくれると言い出したドン・サウザンドであったが、その条件として、人間を捨て、バリアンとして生きる事を誓わなければいけなかった。
シンディ:「バリアンになるってことは、あなたの言いなりになれってことかしら?」
ドン・サウザンド:『はっきり言えば、そういうことになる。バリアン世界を復活させるために、少しは働いてもらおう』
シンディ:「…」
ドン・サウザンド:『どうした?決心がつかないのか?』
シンディはドン・サウザンドの言葉にすぐには頷かなかった。
人間を捨てて新たな存在として、私は生きることになる。それは、家族と別れることになるということだ。
私のことを心配していない家族なんて、はっきり言って家族でも何でもない。
でも、それでも自分を産んでくれた家族を忘れることはできない。
それに、人間を捨てるということに決心がつかない。
ドン・サウザンド:『このまま人間として生き続けても、汝は苦しむだけだ。なら、バリアンとなって新たな道を踏もうではないか』
シンディ:「新たな道…」
ドン・サウザンド:『我にはわかる。汝の気持ちが。汝は、自分を差別し、見下し、そして距離を置こうとする人間共に復讐したいと願っている…』
シンディ:「私、そんなこと!」
ドン・サウザンド:『心の奥底の気持ちが、それを願っているのだ。その気持ちはいずれ、表に出てくる…』
自分では気づいていない、本当の気持ち…。
確かに、私は、今の人間たちに復讐したいと思っているのかもしれない。
ドン・サウザンド:『その願い、いずれは叶うかもしれんぞ』
シンディ:「?」
ドン・サウザンド:『我の目的は、バリアン世界の復活。そのためには、アストラル世界と人間界を滅ぼさなければ始まらない』
シンディ:「人間界を滅ぼす…」
ドン・サウザンド:『そうなれば、汝の復讐は果たされることになる…。さあ、決めるがいい。人間を捨てるか、そのまま死ぬかの二択だ』
ドン・サウザンドが答えを求めてくる。
このまま、ドン・サウザンドの言いなりになれば生きられる。でも、その代償として人間を捨てバリアンとして生きなければいけない。
ここで断れば、あの世に行くだけだ。先ほどまで未練はないと思っていたシンディだが、まだ生きられることができるのなら、生き続けたい…。
シンディ:『…』
シンディは、自分を心配してくれていない家族のことを思い出す。
今は心配してしていなくても、昔はよく遊んでくれた。
楽しい日々もあった。辛い日々は、母が支えてくれた…。
過去のことを思い出せば、涙が出てくる…。
シンディ:『さよなら…。私の人生…』
シンディは、自分の人生に別れを告げる…。
それは、死の覚悟で言った意味ではない。人間を捨てることを覚悟して言ったのだ。
シンディ:「わかったわ。私は、バリアンになる。人間を捨てるわ」
ドン・サウザンド:『よくぞ言った』
黒い影がオーラを放ち、そのオーラはシンディを包み込む。
シンディ:「っ!」
シンディの身体が異変が出てきた。
身体が輝き、その姿が変わっていく。
ドン・サウザンド:『新たなバリアンの復活だ。ハハハハハ、ハハハハハ』
黒い影は、その場から消えた。
現実世界…
シンディの身体が輝き、周りにいた先生たちが驚く。
周りの人達は目を瞑る。
数秒後、目を開いた先生や看護師たちは、周りをキョロキョロ見渡す。
医者:「私は、一体、こんなところで何をしているのだ?」
看護師:「患者もいないのに、手術の準備なんてして、私たち何やってたのかしら?」
先生たちは、自分たちがどうして、ここにいるのか理解していたなかった。
つまり、ドン・サウザンドが、シンディをバリアンとして生まれ変わらした影響で、人間たちの記憶をいじったのだ。
バリアンとなったシンディは、新たな人生を歩み始める。
バリアン世界アジト
ウェスカー:「彼女が新たに仲間になると?」
ドン・サウザンド:『そうだ。あとは、よろしく頼む』
シンディの目の前にいるウェスカーが、ドン・サウザンドの指示でシンディの面倒を見ることになった。
ウェスカー:「今日から、バリアンとして動いてもらおう。過去は忘れろ。いいな?」
シンディ:「随分なものいいね。普通名前ぐらい名乗らないのかしら?」
ウェスカーの態度が気に入らなかったのか、シンディは文句を言うかのような口調で言った。
ウェスカーは軽くため息をついた。
ウェスカー:「ウェスカーだ。ドン・サウザンドの命で、これから集まるバリアン集団をまとめるつもりだ。おまえは?」
シンディ:「シンディ。それが私の名前」
ウェスカー:「なら、シンディ。明日からの仕事について、後ほど話す。準備しておけ」
ウェスカーは、この場を後にしようとする。
シンディ:「ねえ、ウェスカー。1つ聞いてもいい?」
ウェスカーはその場に足を止めた。
シンディ:「あなたも元々は人間だったの?」
ウェスカーの身体がピクッと反応した。
ウェスカー:「あぁ、だが、過去のことは捨てた。今の俺は、ドン・サウザンド様に忠誠を誓ったバリアンだ」
シンディ:「人間を捨てることに未練はないの?」
ウェスカー:「面白いことを言うな、お前は」
シンディ:「?」
ウェスカー:「未練がないからバリアンに
なったんじゃないのか?俺は、人間として生き続ければ、面白いことなんて何もないと気付いた。だから、バリアンになったんだ」
シンディ:「…」
ウェスカー:「バリアンになったことで、俺は力を手に入れた。俺は、この力を手に入れたとき、俺を見捨てた家族を、この手で殺したよ」
シンディ:「!」
家族を…自分の手で殺した…。シンディの心の中、その言葉が呟かれた。
シンディ:「どうして、そんなこと…」
ウェスカー:「今言ったはずだ、奴らは俺を見捨てた。自分勝手な理由で、この俺を家族の輪から遠ざけたんだ。それが許せなかったから、殺した」
ウェスカーはそう言い残し、その場を後にする。
シンディ:「自分勝手な理由…」
自分の家族も似たようなものか…シンディはそう思った。
シンディ:「でも、例え人間を捨てても家族を危めることなんて…」
シンディは小さい声で呟く。
その後、バリアンは徐々に仲間が増加し、シンディは先輩的な存在になってきた。
長くいれば、周りの環境にもなじんでくる。
いつも嬉しそうな顔や、面白そうな顔で周りの仲間たちと話すシンディ。
だが、バリアンになってからずっと、どこか心のどこかに穴が空いているような感じがして仕方がなかった。
そんな気持ちを胸に抱えながら、シンディはバリアンとして戦い生き続けてきたのだった。
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シンディ:『昔の記憶、思い出しちゃったわね』
シンディが心の中で呟く。
シンディの話しを聞いていた小鳥たちは、バリアン8人衆の正体を聞いて未だに驚きを隠せなかった。
杏子:「バリアン8人衆が元々人間だったなんて…」
ツバキ:「人間を捨て、バリアンとなり、ドン・サウザンドに忠誠を誓う。それってつまり、奴の言いなりになるってことだよ…!」
結衣:「あなたは、それでもいいの!このまま、あいつの言いなりになれば、自分自身を見失うわよ!」
シンディの話しを聞いた結衣が、自身の生き方を見直した方がいいように訴える。
シンディ:「あなたに、私の何がわかるのかしら?私は、自分の意志で、バリアンになることを誓った」
シンディがそう言った瞬間、自分が人間を捨てたときのこと、ウェスカーと初めて会い、彼のやってきたことを聞いた時のことを思い出してしまったシンディは、また心の奥で迷いを見せた。
シンディ:「私は人間を許さない。バリアン世界復活のために、人間界が滅びるのなら、私は喜んでドン・サウザンド様の計画に協力するわ。それを邪魔するなら、容赦はしないわ」
ヴァルキリア・スルーを、結衣に向けるシンディ。
杏子:「結衣」
杏子は、結衣の前に立つ。
娘に指一本触れさせないつもりだ。
小鳥:「あなたの相手は、私よ、シンディ」
フェアリー・アーチャリーを持つ小鳥が、前に出て、杏子たちを守ろうとする。
シンディ:「そうだったわね。今の相手は、あなた。まずは、あなたを倒すわ」
ヴァルキリア・スルーを小鳥に向ける。
シンディ:「コンパーション・ソング!」
エネルギーが集約され、引き金を引いた瞬間、矢が放たれ無数に拡散する。
小鳥の右手の甲に浮かび上がるエースのマークが、小鳥の周りにバリアを張り、小鳥を守る。
シンディが放った無数の矢は、バリアに触れた瞬間、消滅した。
小鳥:「フェアリー・ダンス・アロー!」
フェアリー・アーチャリーから光の矢を放つ。
シンディもヴァルキリア・スルーから矢を放ち、お互いに放った矢がぶつかり合う。
小鳥:「!」
ぶつかり合った矢に気を取られ、目の前にいたはずのシンディが、いつの間にかその場からいなくなっていた。
シンディ:「気付かれないように飛んだつもりなんだけど、やっぱりバレちゃったわね」
小鳥が上を見ると、シンディは背中から天使のような翼をつけ、宙に浮いていた。
隼人:「飛んでるんだなあ!」
シェリー:「もしかして、限界勢力!」
精霊と宿主が心を通わせ通じ合ったとき初めて、デュエルモンスターズそのものを身体に取り込んで力を発揮する力、それが限界勢力である。
シンディ:「CX(カオスエクシーズ)ヴァルキリア・フェアリー・イヤーは、今私の身体の一部になっているわ。格の差を見せてあげる!」
シンディから放たれる気迫。
だが、その気迫に殺気はないことに、小鳥は気付いていた。
小鳥:「シンディ…やっぱりあなたは…」
可愛そうな目で見つめる小鳥。
シンディ:『っ!何よ、その目は、私はあなたを本気で殺そうとしているのに、その目はなに?』
シンディがヴァルキリア・スルーのグリップを強く握り占める。
シンディ:「ドン・サウザンド様の計画は必ず、成功させる…!たとえ、人間世界がほ滅びることになろうと!」
シンディがヴァルキリア・スルーを小鳥に向ける。
シンディの背中にある翼が光を灯す。
そして、翼に光のエネルギーが溜められる。
翼に溜められたエネルギーはシンディを通して、ヴァルキリア・スルーに送られる。
シンディ:「エンジェル・インパルス!」
翼に溜めたエネルギーを矢にし、それを放つ。
放たれた矢はしばらくすると、突然消えた。
小鳥:「矢が…!」
シンディ:「この攻撃に防御は不可能よ。なぜなら、この矢はヴァルキリア・フェアリー・イヤーの力が込められた矢。空間を移動し…」
小鳥がエースのマークのバリアを展開していた。
しかし、バリアを張っていたはずなのに、シンディが放った矢が、自分の目の前に現れ、飛んできた。
小鳥:「っ!」
咄嗟のことに、矢を躱す小鳥だったが、頬にかすり傷を負った。
龍亜:「今のは、何だ…!?」
深影:「飛ばした矢が消えたと思ったら、バリアを越えて、小鳥ちゃんに…!」
何が起きたのか理解できない龍亜と深影が動揺する。
それは、小鳥も少しだけ動揺していた。
展開していたバリアを消した小鳥は、シンディを見る。
シンディ:「あなたには、できない攻撃でしょ?早く終わらせてあげるわ」
シンディが再び小鳥に矛を向ける。
小鳥:「本当にそう思っているの?」
シンディ:「何ですって?」
小鳥:「あなた、本当は戦いたくないんじゃない?」
シンディ:「!」
小鳥にそう言われたシンディは、一旦ヴァルキリア・スルーを持つ手を下げようとするが、そんなバカなことがあるかと言わんばかりに、もう一度ヴァルキリア・スルーを小鳥に向ける。
しかし、その手は震えていた。
照準が全然定まらない。
シンディ:『何してるの?敵は目の前よ…!打たなければ、倒せないじゃない…!』
シンディは、自分自身に声をかけて、小鳥を倒せと訴えかける。
小鳥:「シンディ…本当のあなたは苦しんでいるのね…」
小鳥がそう呟くと、シンディは「黙りなさい!」と言って矢を放った。
しかし、その矢は小鳥に当たらず、彼女の足元に突き刺さった。
小鳥:「どうして当てなかったの?今の攻撃、脅しじゃないわよね?」
シンディ:「どうして、さっきから攻撃が外れるのよ…!」
シンディは震える右手を左手で押さえる。
小鳥:「シンディ、あなた本当はバリアンになんてなりたくなかったんじゃない?」
シンディ:「っ!」
小鳥:「バリアンになるために、覚悟を決めて人間を捨てたって言ってたけど、ホントは自分を見捨てた家族のことを、忘れられないんじゃない?」
シンディ:「黙りなさい、小鳥!それ以上、変なこと言ったら、本当に心臓を射貫くわよ!」
ヴァルキリア・スルーを構えるシンディ。
普通、心臓を射貫くなんて言われたら、言われた相手はビビるはずだ。
だが、小鳥は恐怖するようなそぶりは見せず、逆にシンディを強い目で見つめた。
シンディ:『そんな目で私を見ないで…。はっ、私、人間に恐怖しているの?どうして…。たかが、人間なのに…』
シンディが心の中でそう呟いた。
???:「余計な感情が、残っているようだな」
シンディの頭の中に聞き覚えのある声が響いた。
シンディ:「ドン…サウザンド様…」
小鳥:「え?」
「ドン・サウザンド」彼女は確かにそう言った。
???:『お前は人間を捨て、バリアン世界を復活させるために、人間を捨てる覚悟を誓った。だが、心の奥には、まだ人間としての思いや感情が眠っているようだ』
シンディ:「人間としての思いや感情…」
???:『それらが、お前を狂わせている。目の前にいる人間共に、同情しているのだ。お前自身は認めたくないみたいだがな』
シンディ:「あ…あぁ…」
頭の中に聞こえる声と、自分自身の気持ちに恐怖するシンディ。
背中に生えている翼が、少しずつ黒く染まってきた。
小鳥:「シ、シンディ…!」
???:『お前はバリアンとなったのだ。心の奥底に眠る、捨て切れていない感情を我が捨ててやろう。お前に渡した、ドン・サウザンドの力でな』
シンディの身体がどす黒いオーラに染まる。
シンディ:「待って…!私は、この力がなくとも、人間たちを倒すと、自分で決めた!だから、この力は使わない」
どす黒いオーラに纏われながらも、その力に抵抗するシンディ。
ロビン:「何が起きているんだ…!」
龍亜:「あいつ、様子がおかしいぜ」
シンディの様子に戸惑うロビンたち。
???:『我の力を解放すれば、人間の感情を完全に捨て、お前はバリアンとして本当の強さを手にする』
シンディ:「その代わりに、この力は自身の感情をおかしくする可能性がある危険な力…!だから、私は絶対に使わないと決めていた…!なのに…どうして、私の意志に反応しないの!?」
シンディ自身は、ドン・サウザンドからもらった力を解放したくないようだが、どす黒いオーラは、シンディの意志に関係なく、彼女を包み込もうとする。
???:『ゆけ、シンディ。その力で、目の前にいる人間共を殺すのだ』
シンディ:「ああああああ!」
シンディの身体全体が、ドン・サウザンドの力によるオーラに覆われた。
小鳥:「シンディ!!」
小鳥がシンディに呼びかける。
しばらくすると、シンディを覆っていたオーラが消えた。
しかし、さっきと違うのは背中に生えている翼が完全に黒く染まっていることと、彼女から放たれる殺気だった。
鋭い目つきで小鳥を見つめる。その目線は、今まで見せたことのない目つきで、初めて、彼女から恐怖を覚えた。
小鳥:「シンディ…」
小鳥がそう呟くと、シンディはヴァルキリア・スルーを小鳥に向け、黒い矢を放った。
矢の速度がさっきまでとは違うことに小鳥はすぐに気付いた。
黒い矢は、小鳥のすぐそばにある椅子にヒットしたが、ヒットした瞬間、物凄い爆風が周りを襲う。
小鳥:「きゃあああ!」
教会の窓ガラスが次々と割れる。
ツバキ:「なんてパワーなの…!!」
放った矢、そのものが物凄くパワーアップしているのだ。
シェリー:「彼女、さっきまでとは様子が違うわね…」
杏子:「さっき、ドン・サウザンドって呟いてたけど」
結衣:「ドン・サウザンドの力でパワーアップしているんだわ、きっと…!でも、その力の所為で、心を無くしているんだわ!」
今のシンディは、完全に人間を殺すために動く殺人人形だ。
小鳥:「ドン・サウザンド…!目的のためなら手段は選ばないってわけね」
先ほどの爆風で吹き飛ばされた小鳥が立ち上がる。
小鳥:「いいわ。私の本当の力を見せてあげる。この力で、シンディを助けるわ」
小鳥がNo.2のエースのマークを輝かせる。
隼人:「助けるって…!」
ミゾグチ:「敵を助けるのか?」
小鳥:「私にはわかる。シンディは、心のどこかで、人間に戻りたいと願っているわ。だから、私に攻撃するとき殺気が感じられなかったのよ」
ロビン:「でも、助けるたって、どうやって…!今の彼女は、完全にドン・サウザンドの力に操られている。それに、このパワーだ。彼女に振れることすらできないよ!」
小鳥:「大丈夫。私が何とかしてみせるわ」
ロビンに笑顔を見せる小鳥。
相当自身があるようだ。
小鳥:「セカンドステージ!フェアリー・アーチャリー!」
フェアリー・アーチャリーがセカンドステージをして形状を変える。
シンディの身体から闇のオーラが放出され、ドン・サウザンドと思われる影が姿を現す。
???:『絶望せよ、人間…』
影はその巨大な姿を見せ、小鳥を恐怖へと落とそうとする。
しかし、小鳥はそれに動じてなどいなかった。
小鳥:「悪いけど、今のあなたを見ても全然怖くないわよ。部下を操って、自分はこそこそと隠れている人に恐怖なんてしないわ」
セカンドステージ状態のフェアリー・アーチェリーが輝く。
同時に、No.2のエースのマークが強い光を放つ。
小鳥:「かっとビングよ、私!」
遊馬の口癖を言うときは、勇気を持って一歩踏み出すこと。どんなピンチでも諦めないこと。
小鳥は、今、ドン・サウザンドに操られているシンディを助けるために、その矢を放つのであった。
ドン・サウザンドの影が引っ込み、代わりに混沌に染められたヴァルキリア・フェアリー・イヤーの幻影が現れる。
そして、目の前に魔法陣を展開した。
対する小鳥もNo.2のエースのマークの力を解放し、足元に魔法陣を展開する。
更に、展開された魔法陣の周りに小さい精霊たちが立ち並び、小鳥を囲う。
ヴァルキリア・フェアリー・イヤーの幻影が光の粒子の塊となり、ヴァルキリア・スルーに矢となって装填された。
小鳥を囲う精霊たちは胸元にエネルギーを溜め、それに自身の思いを込める。
同時に小鳥は光で生成した赤い矢を手に持ち放つ準備をする。
シンディ:「カオス・ビギンズ・エンゼル」
シンディは小さい声で呟き、ヴァルキュリア・スルーに装填されていた矢を魔法陣に向けて放つ。
矢が魔法陣と接触した直後、魔法陣から特大のビームが放たれた。
小鳥:「これは私の、いえ私たちの思いを武器にした攻撃よ!ソウト・イルミナ・サンクチュアリ!!」
フェアリー・アーチェリーから赤い矢を放った直後、魔法陣の周りに立つ精霊たちも手元に溜めていたエネルギーを矢に向けて放つ。
小鳥が放った赤い矢と精霊たちが溜めていたエネルギーが一つになったとき、赤い矢は狼のような姿へと変わり、シンディの攻撃とぶつかる。
龍亜:「みんな、隠れろ!」
龍亜たちは近くの本棚や壁際に隠れて衝撃を押さえる。
お互いの攻撃は、教会の屋根を壊した。
勿論、屋根の瓦礫は教会の中へ落ちる。
???:『バリアンの力を嘗めるな…!』
小鳥:「なら、人間の力も嘗めないでよね!」
小鳥がそう言うと思いが伝わったのか、エースのマークが強く輝き、シンディの正気が一瞬戻る。
シンディ:「私は…、人間を…」
小鳥:「シンディ!あなたの中に眠る闇の力を浄化するわ!」
小鳥が放った矢もとい狼の姿をした攻撃がシンディの攻撃を打ち消した。
そして、その狼がシンディの身体を通り抜ける。
シンディ:「っ!」
シンディは、その場に倒れる。
そして、狼の口には黒い影が咥えられていた。
シェリー:「あれは…!?」
杏子:「もしかして、彼女の身体にいたドン・サウザンドの力…!」
狼に加えられている黒い影に驚く杏子たち。
???:『おのれ、またしても人間に…!』
小鳥:「消えなさい、他人を人形にする邪魔なオーラ」
小鳥がそう呟くと、狼は黒い影をかみ砕いた。
黒い影は悲鳴を上げながら、消え去った。
第10ED『さすらいびと《DASEIN》』
次回予告
ナレーション:シンディの身体に眠る闇の力を消した小鳥。
だが、シンディは自分の心を否定し、小鳥たちを拒絶して、その場から消え去った。
一方、その頃、凌牙にドン・サウザンドの罠が待ち構えていた!
混沌の具現たる軍神が、かつての主人に矛を向ける!
次回、遊戯王5DXAL「ドン・サウザンドの罠!凌牙VSナッシュ!?」
凌牙:「俺を惑わせているつもりか!ドン・サウザンド!」
遊戯王5DXAL豆知識コーナー!!
小鳥:「私の身体に宿るNo.2のエースのマークには”思い”という言葉が込められているわ。優しい思い、切ない思い、悲しい思い、それらの思いが、仲間をそして、赤の他人でも助ける力にもなるわ」