第158話:『バリアン8人衆の正体』
カイゼル・サウザンド内部
ゲートを潜り、内部へ侵入したキャットちゃんや明日香達
レミ:「ここが、カイゼル・サウザンドの中…」
龍可:「あれを見て!」
龍可が指を指した場所には8つの扉が並んでいた。
どの扉も開いたままだ。
剣代:「どうやら、分かれて進んだようだな」
梨香:「どうするの?私たちも分かれて進む?」
明日香:「この小規模の人数で、それはできないわ。ここは集団で行動して、先に進んでいる人達と合流することを考えましょう」
静香:「私もそれに賛成です」
ここにいるみんなの話しはまとまった。どれか一つの扉を選択し、みんなで扉を潜ることに決めた。
珠里:「それじゃあ後は、どの扉を潜るかだけど…」
キャッシー:「みんなが無事だということを信じましょう。どの扉を潜っても危険なのは変わりはないわ」
剣代:「そうだな」
キャッシー:「行きましょう、みんな」
キャットちゃんたちは、何も考えず、8つある扉の1つを潜った。
その扉の先にいるのは、一体…。
第9OP『HEART・BEAT《MARIA》』
第158話:『バリアン8人衆の正体』
凌牙ルート
ピアーズとの戦いを潜り抜けた後しばらくして、突然目の前に現れた扉を潜り、空間内を進む凌牙たち
凌牙:「!」
空間の奥から突然感じてきた殺気…。まだ出口が見えないのに、敵が近くにいるような感覚だ。
慎也:「どうした?凌牙」
凌牙の表情を見て慎也が聞いてきた。
凌牙:「いや、感じないか?この先から、とてつもない殺気が放たれている…」
凌牙は自分が感じていることを、みんなに伝える。
葵:「え?」
慎也:「さっきだと…?」
クロノス:「そんなもの感じないノーね」
ジャック:「あぁ、敵の気配全然しない…。気のせいではないのか」
凌牙以外、この先から感じる殺気には気付いていないようだ…。
凌牙:『いや、気のせいなんかじゃねえ。間違いなく、こちらに向けられて殺気が放たれている。だが…』
凌牙は感じる殺気に違和感を感じていた。
凌牙:「なんだ…?この殺気は。知っているようで知らない、この殺気。ドン・サウザンドとは違う殺気。俺は、殺気を放っている張本人と会ったことがあるのか…」
謎の殺気は、凌牙を動揺させる。
一体、この殺気を放っているのは誰なのか…。その正体は、先に進めば見えるはずだ。
小鳥ルート
杏子、結衣、ツバキ、隼人、龍亜、深影、シェリー、ミゾグチ、風也ことエスパー・ロビンと行動を共にする小鳥。
小鳥たちが歩いている場所は、綺麗な街の中だった。
赤い空の下に立ち並ぶ建物。しかし、その街には誰も住んでいない。当たり前だ。これは、カイゼル・サウザンドの中に作られた偽者。人なんて住んでいない。
隼人:「ホント、不気味なんだなぁ。こんなに歩いているのに誰もいないなんて」
ロビン:「ここはドン・サウザンドが作った幻の空間。人は住んでいないというのはわかりますが、こんなに大きな街を歩き続けていれば、その気持ちも理解できます」
隼人の気持ちが理解できるロビンは、マスクを取る。
小鳥:「…」
どこか落ち着きのない感じが出ている小鳥。
杏子:「小鳥ちゃん、大丈夫?」
小鳥の表情を見て気になった杏子が声をかける。
小鳥:「は、はい。大丈夫です」
小鳥の返事を聞いた杏子は、「無理しているわね」と心の中で呟く。
結衣:「何かあったの?さっきから何か落ち着きがないけど」
ツバキ:「戦うのが嫌なのかい?」
結衣とツバキが優しく小鳥に声をかけてきた。
小鳥:「それもあるけど、なんか…」
小鳥が目の前を見る。
自分の目には、何か奇妙な空気が見えていた。
小鳥:「この街の中、様子がおかしい。何か変な感じがする…」
小鳥がそう呟くと、数人が周りを警戒する。
シェリー:「まさか…!」
ミゾグチ:「バリアンが近くに!」
龍亜:「野郎、遂に来たか…!」
シェリー、ミゾグチ、龍亜がいつでも、攻撃防御ができるように周りに目を配る。
すると、小鳥のNo.2のエースのマークが輝き出す。
小鳥:「この近くじゃないわ…。あっちよ」
小鳥が指を指した方へ、みんなは進む。
深影:「敵が近くにいるのね」
深影がそう聞くと、小鳥は頷いた。
その気配を元に、たどり着いた場所は、教会のような建物が立つ場所だった。
シェリー:「この中ね」
ミゾグチ:「私が先行します。皆さんは、私の後ろに」
ミゾグチが一枚のカードを手に取る。そのカードはミゾグチのエースモンスターである”不退の荒武者”だった。
ミゾグチ:「”薙刀-荒地”」
不退の荒武者のカードが輝き、ミゾグチの手には、両端に刃がついた薙刀が握られた。
ミゾグチは教会の扉の前に立つ。
扉の取っ手にゆっくりと触れ、「行きます」と小さい声で呟き、扉を開ける。
ミゾグチは誰よりも先に教会の中へ入り、周りを見渡す。
辺りは真っ暗。しかし、赤い空の輝きが窓から照らされている。
他のみんなも教会の中へ入る。
隼人:「誰もいないんだなあ」
教会の中には誰もいる気配がなかった。
ツバキ:『いや…。この感じ、さっきまでとは違う…』
ツバキも教会に入ってから、奇妙な気配に気付いているようだ。
そして、暗い部屋の中で、キラッと一瞬輝きを放った。
小鳥:「!」
ツバキ:「!」
それに気付いた小鳥とツバキは、大きな声で「危ない!」と叫んだ。
ヒューン!
暗い部屋の中から何かが飛んできて、ミゾグチの二の腕をかすめた。
ミゾグチ:「っ!」
シェリー:「ミゾグチ!」
ミゾグチ:「来てはなりません!お嬢様!」
こちらに近づこうとするシェリーを止めるミゾグチ。
自分に近づけば、お嬢様にも危険が及ぶ、そう思ったからだ。
飛んできたものは壁に突き刺さっていた。
突き刺さっていたのは矢だった。
杏子:「みんな、気を付けて!また来るわよ!」
杏子がみんなに危険を伝える。
その直後に、また矢は飛んできた。
小鳥:「やらせない!」
小鳥は、みんなの前に立ち、右手の甲にNo.2のエースのマークを浮かび上がらせ、バリアのようなものを展開した。
飛んできた矢は、そのバリアに触れた瞬間消滅した。
???:「あなたね、私の気配を感じとり、ここまで来たのは」
暗い部屋の奥から聞こえる女性の声。
そして、その声の持ち主が、教会の奥から顔を出す。
小鳥:「あなたは、8人衆の…」
シンディ:「シンディよ。こうやって対面で話すのは初めてね」
バリアン8人衆の紅一点シンディが小鳥の前に姿を現した。
シンディの右手にはクロスボウタイプのデュエルギアが握られていた。
ならさっきの攻撃は彼女の攻撃だろうと、みんなが察する。
シンディは、みんなの目線が自分が持つデュエルギアに向いていることに気付く。
シンディ:「私のデュエルギアよ。”CX(カオスエクシーズ)ヴァルキリア・フェアリー・イヤー”の、”ヴァルキリア・スルー”」
シンディは丁寧に、自分のデュエルギアについて名前を教えてくれた。
ミゾグチは、二の腕から出る出血を、自分の手で押さえる。
シンディ:「さっきのはご挨拶よ。次は当てるわ。誰だろうとね」
シンディはヴァルキュリア・スルーを小鳥たちに向ける。
小鳥:『何だろう…。この人から感じる気配…。何か不思議な感じ…』
小鳥はそう思いながら、前に一歩ずつ出てきた。
杏子:「小鳥ちゃん…!」
いきなり前に出る小鳥に声をかける杏子。
シンディ:「エースのマークを持つ者として。私とやる気みたいね」
小鳥:「そうじゃないわ」
シンディ:「?」
小鳥:「私は、あなたのことをもっと知りたいだけよ」
小鳥の表情は戦う意思を持つような表情ではなかった。
シンディ:「私のことを知りたいか。面白いことを言うわね。でも、私があなたに教えることなんて何もないわ!」
シンディは、ヴァルキュリアスルーを小鳥に向けて矢を放つ。
小鳥:「っ!」
小鳥は再びエースのマークの力によるバリアを展開し身を守る。
シンディが放った矢は、バリアに触れた瞬間に消滅した。
その間に、小鳥はフェアリー・チア・ガールの弓タイプのデュエルギア、”フェアリー・アーチャリー”を握り、弓から光の矢を放つ。
無論放った矢は1本。そんな攻撃、シンディは小細工もせずに躱せた。
小鳥:「フェアリー・ダンス・アロー-ハイリヒ!!」
1本の矢をフェアリー・アーチェリーから放つ。
その矢は放たれた瞬間、拡散されシンディに襲いかかる。
シンディ:「私も似たような攻撃を持っているわ」
ヴァルキュリア・スルーの先端にエネルギーが集約される。
シンディ:「コンパーション・ソング!」
ヴァルキュリア・スルーの引き金を引き、矢を放つ。
そして、次の瞬間、矢は拡散し小鳥が放った無数の矢とぶつかり合う。
周りに白煙が立ち、お互いに敵が見えない状態になる。
結衣:「敵の姿が見えない!」
ロビン:「気を付けるんだ!小鳥!敵はこれを利用して攻撃してくるぞ!」
ロビンの言っていることは、小鳥も承知の上だ。
だから、周りを警戒している。白煙を利用して、移動しているかもしれないからだ。
しかし、周りを見渡すが、シンディの姿は見えなかった。
すると―!
小鳥:「!」
白煙の中からシンディが飛び出てきた。
小鳥:『真っ正面から!』
シンディ:「次の攻撃は、エースのマークでも防ぎきれないわよ」
シンディはさっきと同様、ヴァルキュリア・スルーの先端にエネルギーを溜めていた。
でも、さっきよりも溜めているエネルギーの量が違うのがわかる。
シンディの背後に、天使のような精霊の幻影が現れる。
そうこれが、ヴァルキュリア・スルーに宿る精霊、CX(カオスエクシーズ)ヴァルキリア・フェアリー・イヤーの姿である。
ヴァルキリア・フェアリー・イヤーは光の粒子となって、ヴァルキュリア・スルーの先端に溜められているエネルギーと一つになる。
シンディ:「エターナル・ヴァルキュリア!!」
溜めていたエネルギーを矢にして放つ。
小鳥はNo.2のエースのマークの力を使って、バリアを展開する。
シンディが放った矢が、小鳥が展開したバリアと接触する。
先ほどの矢は、接触した瞬間、シンディが放った矢は消えていたが、今度のは違った。
矢は消えず、ましてやバリアを貫こうとしていた。
小鳥:『さっきまでとは違う…!でも、やっぱり、この攻撃は…!』
小鳥は心の中で、そう呟く。
放たれた矢は、バリアの力に耐え、そしてついにバリアにヒビが入った。
結衣:「バリアにヒビが入ったわ!?」
龍亜:「このままじゃ、危ねえぞ!」
小鳥が展開しているバリアが破られそうなことに、みんなが気付き始める。
そんなことを思っている間に、シンディの攻撃は小鳥のバリアを打ち破り、小鳥を襲う…!
深影:「ああ!」
杏子:「小鳥ちゃん!!?」
小鳥の姿が見えないほど、白煙や埃が舞う。
攻撃の影響で、窓ガラスにもヒビが入る。
ロビン:「小鳥!」
ロビンが小鳥の名前を叫ぶ。
段々と白煙などが消え、小鳥の姿が見えてきた。
結衣:「小鳥…!」
深影:「よかった、無事で」
小鳥は、多少の擦り傷があるぐらいで、対したケガではないようだ。
シンディ:「…」
シンディは小鳥を見つめる。
ロビン:「大丈夫かい?小鳥」
小鳥:「うん、平気。むしろ、躱していたら危なかったわ」
ロビン:「え?」
躱していたら危なかった?小鳥の発言が理解できないロビンであった。
シンディ:「どうして、攻撃を躱さなかったのかしら?」
シンディは小鳥にそう聞いた。
小鳥:「躱す理由がなかった…それが答えじゃおかしいかしら?」
シンディ:「あなた…」
小鳥:「ここへ来て、あなたを見てから、気になっていたの。あなたからは殺意を感じられない…。戦う意思が見えない」
シンディ:「私のことを何も知らないくせに、よくもそんなことが言えるわね」
小鳥:「ええ、私はあなたを全然知らない。でも、あなたは、目の前にいる敵ではなく、他の敵と戦っているように見えるわよ」
小鳥の真剣な眼差し…。シンディは、その眼差しに観念したのかため息をついた。
小鳥:「教えて…。あなたは一体、何者なの?」
シンディ:「敵に教えるつもりはなかったし、教えたら私の怒りが徐々に爆発しそうだから、ホントは嫌なんだけど、もう隠し通せないわね。まあ、いずれバレることだろうし、九十九遊馬も私たちの正体に気付いているだろうから、ここで言わなくても無意味だろうから、ここで隠しても意味ないわね」
シンディが目を閉じて呟いた。
シンディ:「私…いいえ私たちバリアン8人衆は、別にバリアン世界で生まれたからバリアン8人衆を名乗っているわけではないわ。主であるドン・サウザンドに忠誠を誓い、そして強き身体を手にし、私たちを差別してきた人間が住む世界を壊すために、構成された集団…」
シェリー:「あなたたちを差別した人間?」
小鳥:「シンディ、あなたは一体…」
シンディの、バリアン8人衆の正体が、今明らかになろうとする…。
そう彼女たちも…。
シンディ:「私たちも、元は人間だったのよ」
シンディの口から語られた真実。
その言葉に、小鳥を初め、この場にいる全員が驚いた。
ロビン:「バリアン8人衆全員が、元々は人間…」
深影:「そんな…」
驚愕の真実に、言葉が出ない深影たち…。開いた口が塞がらない者も中にはいた。
小鳥:「あなたも、元々は人間だったの…?」
シンディ:「えぇ、私の本当の名前はシンディ・カブライア。九十九遊馬や観月小鳥、あなたと同じDTW時代の生まれよ」
小鳥:「カブライア…、もしかして、あなたイタリアの外務大臣の…」
シンディ:「ええ、イタリア外務大臣、ルジェン・カブライアは、私の父よ」
小鳥:「やっぱり…」
予想が的中し、小鳥はボソッと呟いた。
ロビン:「さっき君は、自分たちを差別した人間って言ってたよね?それって…」
ロビンは気になっていたことをシンディに聞いた。
シンディ:「私は物心つく頃から、身体が弱く、家の中にいることが常だったわ。それに、父が外務大臣ってこともあって、好きに友達と遊ぶこともできなかったわ。でも、中学生を過ぎたとき、私はどうしても周りの人達と遊びたくて、周りの友達に声をかけたの…。そしたら…」
過去を思い出すシンディ。唇を噛みしめる。
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同級生A:「ええー、お前と遊んだって、身体弱いし、何をやっても足手まといなんだよなー」
同級生B:「どっかいけよ!病弱者が!」
同級生C:「カブライアさんって身体弱いんでしょ?倒れたりして、外務大臣のお父さんに文句言われるの嫌だから、遊べなーい」
同級生D:「ごめーん!私たち、今からテニスするんだ。身体が弱い、あなたにはできないしょ?」
そんなことを言って、みんな私から離れていく…。
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シンディ:「友達なんて、自分の思い過ごし。弱い身体というだけで、全てから差別され、結局何もできなかった…」
結衣:「酷い…」
シンディの過去に悲しみの感情を見せる結衣は口を塞いだ。
シンディ:「私だけじゃないわ。身体が弱かったのは、バリアン8人衆全員がそうよ。他の、みんなも身体が弱く周りの人達に差別され、何もできないでいた。そのタイミングで人間に復讐する気持ちが出てきた者もいたわ」
シンディが拳を握る。
シンディ:「そして、高校卒業間際のときだったわ。私は、不治の病にかかり、寝たっきりの生活になってしまった。治療方法はわからず、余命はわずか。もう人間として生きる価値もないと、神が私に天罰を与えてきたのかもね…」
不治の病にかかった当初、お見舞いに来た友人なんて1人も来なかった…。
ましてや…、仕事を優先する父も見舞いには来なかった…。
シンディ:「でも、神の天罰に逆らうかのように、あのお方はやってきた…」
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不治の病に侵されたシンディは突然、容態が急変する…。
医者:「急いで、医務室に運ぶぞ!」
看護師A:「はい!」
看護師B:「先生!彼女のご両親と連絡がつきません!」
医者:「またか。キミは引き続き、彼女の家族に連絡を!他の者たちは急いで、手術の準備だ!」
シンディの容態が急変したのを知った医者や看護師たちが手分けして行動する。
先生たちが、こんなに急いでいるのに、家族は私の元に来ない…。
私、見捨てられたんだ…。
手術室に運ばれている間、シンディの意識はまだ微かにあった。
涙を流すシンディ…。
もう私が生きる価値なんて…。
辛い、悲しい、寂しい、痛い…。胸が張り裂けそうだった…。
もう死ぬ覚悟はできている。ううん、死んだほうが、天国で楽な生活が待っているわ…。
シンディの覚悟は覚悟を決めて、この世を去ろうと決めていた。未練はない。どうせ、私が死んでも悲しむ人なんていないんだから…。
シンディは、心の中で呟いた。
???:『汝に、新たな命を授けよう…』
シンディの意識に誰かが割り込んで来た…!
頭の中に声が響く。
シンディ:「え?誰!?」
自分以外誰もいないはずの、私の意識の中。
けど、意識の中、私の目の前に、黒い人影が突然と、その場に現れた…!
シンディ:「あなた、一体、何…!」
???:『汝に、新たな生命を与えるもの…とでも言っておこう』
シンディ:「新たな生命…?もしかして、神様か何か?」
???:『人間から見たら、そう見えるのかもしれないが、私は神なのではない。』
シンディ:「それじゃあ、あなたの名前は?」
黒い影から名前を聞き出すシンディ。
???:『ドン・サウザンド…。それが、我の名前』
シンディ:「ドン・サウザンド…?」
ドン・サウザンド:『バリアン世界を気付いた調律者だ』
シンディ:「そんなあなたが、私に何のよう?」
シンディが目つきを変えて聞いた。
ドン・サウザンド:『汝の身体は、もう少しで、この世から果てる』
シンディ:「そんなこと、あなたなんかに言われなくても分かっているわ。でも、私が持つ病気は不治の病。誰にも治すことはできない。だから、覚悟を決めて、あの世に行こうとしているんじゃない」
シンディが少し怒った口調で口を開く。
ドン・サウザンド:『汝は、早とちりし過ぎだ。私の力を持ってすれば、汝の身体を苦しめる敵を消すことができる』
シンディ:「え?」
ドン・サウザンドは、私を助けようとしている…。
シンディ:「私を助けてくれるの?」
ドン・サウザンド:『汝が望むのであれば…』
シンディ:「…」
ついさっきまで、死ぬことを覚悟していたシンディ。
しかし、ドン・サウザンドの言葉を聞いて、シンディの考えは変わろうとしていた。
ドン・サウザンドが嘘をついているのかもしれない。はったりかもしれない。信じていいのか…。答えはすぐに決まらなかった。
ドン・サウザンド:『早くしなければ手遅れになるぞ』
シンディ:「本当に私を助けてくれるの?」
ドン・サウザンド:『さっきも言ったはずだ。汝が望むのであればと』
シンディ:「私は…」
ドン・サウザンド:『ただし、条件がある』
シンディ:「?」
ドン・サウザンド:『もし、助けてほしいのあれば、人間を捨て、私の元へ来い』
シンディ:「!」
ドン・サウザンド:『汝は、バリアンとして生まれ変わるのだ。人間を越えた存在、それがバリアン』
もし生き続けたいのなら、人間を捨てバリアンとなってドン・サウザンドの元へ行く…。それに従わなければ助からない。
シンディの思考が揺らぎ始める…。
新第10ED『さすらいびと《DASEIN》』
次回予告
ナレーション:明かされたシンディの過去。
生きるために、人間を捨てバリアンとなった彼女は、バリアン世界のために戦い決意を小鳥にぶつける!
しかし、それでもシンディの攻撃に殺意がないことに気付く小鳥は、彼女の思いを理解しようと応戦する。
そのとき、シンディの意志とは関係なく、あの力が彼女を蝕む!
小鳥:次回、遊戯王5DXAL「思いを武器に」
小鳥:「シンディ…本当のあなたは苦しんでいるのね…」