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第157話:『我が勇気!真剣・アマムラウンメイ』







3か月前



属性波動の習得の修行中、俺が手にしたNo.8のエースのマークについて語り出した遊馬。

遊馬は俺の手の甲を指さして、色々と教えてくれた。


ゴーシュ:「勇気?」

遊馬:「あぁ」

ゴーシュ:「その勇気がどうしたんだよ?」
何が何だからわからないゴーシュは遊馬に質問する。


遊馬:「だから、お前のエースのマークのことだよ。No.8のエースのマークに込められた言葉は勇気。自分の信念を貫く勇ましい強い心を意味しているんだ」

ゴーシュ:「勇気って言葉がね。まあ、俺はどんな強敵が来ても、立ち向かう心の持ち主だけどよ」

自分で言うなよ…と、遊馬は心の中で呟きため息をついた。

遊馬:「お前、まだエースのマークの力を完全に解放しきれていないだろ?」

ゴーシュ:「あぁ、てか自分の意志で解放なんてできるのかよ」

遊馬:「当たり前だ。エースのマークだって、それを託された人物が思いをマークに込めないと、完全な解放はしない」

ゴーシュは、自分の右手の甲を見る。


遊馬:「お前のエースのマークは、誠の勇気をエースのマークに込めることで初めて、力を発揮する。力が解放すれば、普段よりも力は増すはずだぜ」

ゴーシュ:「誠の勇気…。嘘でない、事実の勇気を、このエースのマークに込めればいいのか」

遊馬:「お前は、どんな勇気を、そのマークに込める?」
単刀直入に聞いてきた遊馬に、ゴーシュは少し悩む。

ゴーシュ:「お前や、カイト、ドロワたちと共に戦い続け、世界の平和を願う。平和が実現するまで、どんな恐怖や絶望が待ち構えようと、俺はそれに怯えず立ち向かう」
ゴーシュがそう言うと、一瞬だが右手の甲が輝いた。

ゴーシュ:「!」

遊馬:「その気持ちを忘れるな、ゴーシュ。勇気って言うのは、人間誰にでも持っている気持ちだ。だが、個人でその勇気は異なる。どんな恐怖や絶望が待ち構えようと、俺はそれに怯えず立ち向かう…、その言葉、信じてるぜ」
遊馬は、その場を後にした。


ゴーシュ:「嘘をついたつもりはないぜ、遊馬。俺の勇気は、世界一だ」
右手を拳にするゴーシュ。









そして、今、サリバンとの決着を付けるときが来る。



ゴーシュ:「俺の勇気を見せたやる。このマークに誓った、俺の勇気の力をな」
ゴーシュが右手の甲に浮かび上がるエースのマークをサリバンに見せびらかすように見せてそう言った。









第9OP『HEART・BEAT《MARIA》』








第157話:『我が勇気!真剣・アマムラウンメイ』








サリバンの幻術を破り、クサナギブレードをセカンドステージさせたゴーシュ。


余裕の笑みを見せて、サリバンを見つめる。


サリバン:「何だよ?その笑った顔は?なめてるのか?」


ゴーシュ:「別に嘗めてねえよ。むしろ、少し恐怖しているぐらいだ。幻術を使って、俺を操ったお前にな」

サリバン:「…」

ゴーシュ:「だが、俺はどんなに恐怖しようと、誠の勇気は変わらない。この気持ちが、こいつの力を解放する源だからな」
No.8のエースのマークから眩しい輝きが周りを照らす。


サリバン:「誠の勇気だと?そんなもん、何の役にも立たないぜ」

ゴーシュ:「おいおい、少しは俺の言葉に賛同してくれもいいじゃねえか。ノリが悪いぜ」

サリバン:「貴様のノリに付き合うつもりはない!行け!メガロック・ゴーレム!!」
サリバンが指示を出し、メガロック・ゴーレムは、その拳をゴーシュに落とそうとする。



ゴーシュ:「アメノムラクモ改!」
セカンドステージしたクサナギブレードを一度大きく振り、オレンジ色の斬撃を出す。

しかし、1度振っただけで5つの斬撃を出し、メガロック・ゴーレムの拳にぶつけた。


だが、1つだけはメガロック・ゴーレムの顔にヒットし、体勢を崩した。


ゴーシュ:「まずは、お前を倒す!クラージュ・メテオ!」
No.8のエースのマークが輝き、セカンドステージしたクサナギブレードの刀身が輝く。


そして、ゴーシュの目の前にブラックホールが現れる。



ゴーシュ:「はあ!」
そのブラックホールをクサナギブレードで断ち切るゴーシュ。





そして、セカンドステージしたクサナギブレードの刀身が更に強い輝きを放ち、ゴーシュは、その状態でメガロック・ゴーレムに突っ込む。


ゴーシュ:「うおおおおおお!」
ゴーシュは叫びながら気合を入れ走る。


サリバン:「態勢を立て直せ!」
メガロック・ゴーレムに指示を出すサリバン。


メガロック・ゴーレムは急いで体勢を立て直すが、時すでに遅し、ゴーシュはもうすぐ側にいた。

ゴーシュ:「くらえ!デカ物野郎!まずは、お前を消す!」
セカンドステージしたクサナギブレードを大きく振り、特大の斬撃を飛ばす。

メガロック・ゴーレムは両腕で、その斬撃を受け止める。

受け止めた瞬間、風圧が周りを襲い、倒壊寸前の建物の窓が次々と割れる。



ジム:「みんな耐えろ!」
ジムの言う通り、みんなは足に力を入れて風圧に耐える。

ドロワはしゃがみながら、風圧に耐えた。



ゴーシュ:「いけえ!」

斬撃に耐えるメガロック・ゴーレムだったが、遂に耐えきれず、斬撃はメガロック・ゴーレムの身体を真っ二つにした。

倒されたメガロック・ゴーレムは、そのまま塵となって消える。


ゴーシュ:「ゴーレムは倒した。次はお前だ」
ゴーシュがサリバンを見る。


サリバン:「めんどくせえことは嫌いなんだよ!一気に勝負をつけてやるぜ!」
メガロック・ハードを前に突き出し、輝かせる。


サリバン:「セカンドステージ!メガロック・ハード!」
モーニングスタータイプのデュエルギア”メガロック・ハード”がセカンドステージ。

鎖で繋がれた鉄球が大きくなり、数本の棘もそれぞれ異なった形になっている。

サリバン:「お前は、俺の手ですぐに殺す!」
サリバンがゴーシュに向かって突撃する。


ゴーシュ:「幻術を使わずに、自らの手で戦うことにしたか。いいノリになってきたじゃねえか!」
セカンドステージしたクサナギブレードを構えるゴーシュ。


サリバンはセカンドステージしたメガロック・ハードの鎖で繋がれた鉄球をゴーシュにぶつける。

対するゴーシュはクサナギブレードで対抗する。

衝撃で後ろに少し押されるゴーシュ。だが、対したことじゃなかった。


だが、次の瞬間、受け止めたメガロック・ハードの鉄球が少し輝く。


ゴーシュ:「!?」


サリバン:「ふん、ロック・ディザスタ」
サリバンがそう呟くと、輝く鉄球部分から岩が飛び出てきた。

ゴーシュは少し驚き、後ろに下がる。

サリバン:「逃げても無駄だぜ!」
サリバンはメガロック・ハードを振り回し、鉄球部分を岩にぶつける。

すると、岩は砕け、そして石粒となって、ゴーシュに向かって飛んでくる。


飛んでくるスピードはまるで弾丸だ。ゴーシュの頬と衣服をかすめたのだから…。


ゴーシュ:「くそっ」
ゴーシュはクサナギブレードで1回石粒を弾き飛ばすが、全て対応するのは無理だと判断し、その場を離れる。

ゴーシュ:「!」
しかし、走った先にサリバンが待ち構えていた。

サリバン:「俺の手で、殺す!」
セカンドステージしたメガロック・ハードを振り被り、ゴーシュを殺そうとする。


ゴーシュはクサナギブレードを横に構え、メガロック・ハードを受け止める準備をする。


サリバン:「あめえぜ」
サリバンは体制を変え、ゴーシュの腹に1発蹴りをお見舞いする。

ゴーシュ:「ぐふっ」
ゴーシュは腹を押さえて後ろに下がる。

ゴーシュ:「ごほっごほっ」

サリバン:「防御が甘いぜ。メガロック・ハードに気を取られ過ぎだぜ」
サリバンは休むことなくゴーシュに攻撃を仕掛ける。

ゴーシュ:「あー、流石に今のは効いたぜ。だが、もう通用しねえよ」
さっきと同じようにクサナギブレードを横にして構えるゴーシュ。


そのまま攻撃を受け止める…かと思いきや…!


ゴーシュ:「光弾波!」
刀身の中央部分に光の球体が生成され、それをサリバンに向けて飛ばす。

サリバン:「くっ」
サリバンはその攻撃を躱す。


ゴーシュ:「まだまだ行くぜ!」
光の球体を連続で飛ばし、サリバンに当てようとする。

無論、サリバンはその球体を躱し続ける。

サリバン:『光属性の波動を使った技。なら、いずれ使用者の体力が消耗していくはず』
サリバンはゴーシュの体力が消耗し、隙を見て攻撃するつもりだ。


そして、攻撃を躱し続けるサリバンがある一定の場所に着いた瞬間、ゴーシュはニヤッと笑い、セカンドステージしたクサナギブレードを地面に突き刺す。




すると、次の瞬間、サリバンの足元に陣が張られる。


サリバン:「これは!?」


ゴーシュ:「やっと、狙いの位置に来てくれたな」


サリバン:「お前、俺をここに誘導するために、連続で攻撃を!」
サリバンが動こうとした瞬間、ピクッと足が止まる。

ゴーシュ:「無駄だ。その陣の中にいる間、お前は動けない」
地面に突き刺したセカンドステージしたクサナギブレードを抜き、構えるゴーシュ。

ゴーシュ:「俺の必殺剣、見せてやるよ!」
ゴーシュの右手の甲に浮かぶエースのマークが輝き、ゴーシュに力を与える。

サリバン:「くそっ!動けよ!」
サリバンが足を動かそうとするがゴーシュが張った陣の所為で全然動かない。


ゴーシュ:『…』
ゴーシュは目を瞑り、集中する。

ゴーシュを纏うオーラを感じたサリバンは冷や汗を掻く。

サリバン:『な、なんだ…、こいつ。さっきと雰囲気が…』
そのオーラにサリバンは少し怯えていたのだ。だから冷や汗を掻いているのだ。

ゴーシュ:「人間っていうのはな、どんな状況でも、恐れず立ち向かう時があるんだ。それを勇気って呼ぶんだぜ」
目を瞑ったままいきなり語り出すゴーシュに、サリバンは口を開く。

サリバン:「そういう面倒なことは嫌いなんだよ!お前の力で、俺に敵うわけないぜぇ!」
サリバンからとてつもない邪悪なオーラが放たれ纏われる。

サリバン:「うおおおおお!」
ドン・サウザンドの力が、サリバンの身体を完全に乗っ取ろうとしているのだ。


ゴーシュ:「終わらせてやる。俺の勇気という名の力でな」
ゴーシュはサリバンに向かって走り出す。

セカンドステージしたクサナギブレードを両手で持ち、凄まじいオーラを纏ったゴーシュはサリバンへ段々近づく。


ドロワ:『行け、ゴーシュ』
ゴーシュの勝利を信じるドロワと仲間たちが見届ける。


サリバン:「うおおおおおお!」
サリバンを覆うオーラがゴーシュを襲ってきた。


しかし、ゴーシュはクサナギブレードを前に構え、そのオーラを斬り裂く。


ゴーシュ:「真剣」
その体勢のままサリバンに突進するゴーシュ。


ゴーシュ:「アマムラウンメイ!」
技名を叫んだ時には、既にゴーシュはサリバンの後ろにいた。



そして、サリバンの右肩に深い傷がつけられ、大量に出血し、サリバンは苦しむことなく、その場に倒れる。


同時に、サリバンを纏っていたどす黒いオーラが消えて行く。



???:『おのれ、人間…。またもや、我の人形を…』
黒いオーラは最後に一言残して完全に消えた。




御伽:「どうやら、勝負あったみたいだね」
ゴーシュの勝利に一安心した御伽。


ドロワはサリバンが倒れている場所に向かう。

同じくゴーシュもサリバンの元とへ歩く。


サリバン:「ホント…面倒な…ことは嫌い…だぜ」
サリバンは倒れながら呟く。まだ意識はあるようだ。


ゴーシュ:「見たか、俺の…いや人間の勇気ってやつを」

サリバン:「あぁ…恐れ入ったよ。どうやら、俺は人間を…甘く見ていたようだ…。こんな形で敗れるとは…想像もしてなかった…ぜ」


ドロワ:「人間は、お前たちバリアンが思っているほど弱くはない。何事も恐れず立ち向かえば、強い気持ちになれる。こいつみたいにな」
こいつというのは、ゴーシュのことを言っているのだろう。

ゴーシュは俺のことを言ってんだなとドロワを見る。


サリバン:「フッ…。俺の…負けだ。さっさと、この奥へ進め」
サリバンの身体が輝き出す。


ゴーシュ:「早くしないと…手遅れになるぜ…。ドン・サウザンド様の…計画は、着実に進んでいるんだ…からな…。」
サリバンは、そう言い残し、光の粒子となって消えた。



ブリッツ:「殺すほどのダメージを与えたのか?」

ゴーシュ:「いや、あれぐらいの攻撃じゃ死にはしねえ。だが、奴は消えたということは」

ヨハン:「敗者には、盛大なバツをってやつか。ドン・サウザンドに消されたんだろ」

翔:「あのどす黒いオーラだね。おそらくあのオーラが、サリバンが時々言っていた、ドン・サウザンドからもらった力」

藤原:「その力が、彼を用無しと見なして消したんだろうね」

六十郎:「自分の部下を簡単に殺めるか。ワシとは仲良くなれんタイプだな」
六十郎はドン・サウザンドの性格に怒りを覚える。



ドロワ:「急ぐぞ、ゴーシュ。時間が迫っている」

ゴーシュ:「お前、体力は大丈夫なのか?」

ドロワ:「お前が奴と戦ってくれたおかげで、十分に回復できた。問題ない」


ゴーシュ:「そうか、なら、この先へ。ドン・サウザンドが待っている場所に向かう」
ゴーシュは崩壊した街の中を更に進む。









カイゼル・サウザンドの所々にある黄色い線の模様がピカピカと輝いている。



ネオコーポレーションシティは今だに避難誘導が進められていた。


何千万人が住む街だ。避難には時間がかかることぐらい、フロンティアのメンバーは気付いていた。




その頃、フロンティア本部の屋上に一台のヘリコプターが着陸し、中から数人の人々が降りてきた。


キャッシー:「やっと着いたニャ!」
つい興奮すると語尾に”ニャ”を付けてしまう口癖、そうキャットちゃんだ。


静香:「ヘリコプターから見えたけど、物凄く慌てているわ」

龍可:「こんなことが突然、起きたのだから慌てるなという方が無理がありますけどね」
静香に龍可、それから明日香、剣代、梨香、珠里、レミ、エルフェンの森に向かっていたメンバーが本部に到着したのだ。


明日香:「キャットちゃん、あの子は?」

キャッシー:「相当疲れてたんでしょうね、ここに来る途中に眠ってしまいました」
7歳の少年アドレーは、ヘリコプターの椅子の上で寝ていた。


梨香:「緊急事態なのに、よく眠っていられるわね」

剣代:「今はそっとしてやろう」

レミ:「とりあえず、元帥の元へ向かいましょう。今の状況を確認しないと」

珠里:「うん」
エルフィンの森から帰ってきたメンバーは、急いで元帥の部屋に向かった。






元帥室




百々原:「奴らが言っていたタイムリミットまで時間がない。急いで避難を進めてくれ」
百々原は街の避難活動をしている避難誘導隊のメンバーたちに急ぐように伝え、通信を切る。



百々原:『遊馬たちがに潜入してから、カイゼル・サウザンドの活動が止まる気配はない。やはり、苦戦を強いられているのか…!』
今、カイゼル・サウザンドの中がどうなっているのかはわからない。

今、どういう状況が気になる百々原。せめて、死人が出ていないことだけを祈っていた。



キャッシー:「元帥!」
元帥室にキャットちゃんたちが入ってきた。


百々原:「君たちは!慎也から聞いていたがエルフィンの森に行っていたはずでは…!」

珠里:「さっき帰ってきたんです」

明日香:「色々とお話ししなきゃいけないことはありますが、その話しは、この状況を脱してから話します」

剣代:「現在の状況を教えてください」
みんなが、元帥に迫る。

剣代たちもそれなり慌てているのだ。


百々原:「うむ、避難誘導隊のおかげで、街の住民たちの避難は順調に進んでいる。しかし、カイゼル・サウザンドの中に潜入した遊馬たちの状況が把握できていない。あの物体の所為で、あの中と、こことの通信は完全に遮断されているようだからな」
窓の外からカイゼル・サウザンドを見る百々原は、拳を握る。


龍可:「それじゃあ、潜入したみんなが無事かどうかもわからないってことですか?」

百々原:「あぁ」
龍可の質問に正直に答える百々原。


レミ:「でも、バリアンを何とかしないと、この街はおろか、世界は崩壊します。早く対策を立てないと…!」

明日香:「これだけの事態なんです。国家政府は、どう対応しているんですか?それに、フロンティアの上層部も」
明日香が強い言葉で質問すると、百々原は歯を立てる。


百々原:「政府は、この事態に手を出さない。バリアンが全ての現況なら、それと繋がりが深い遊馬に全てを任せると、こちらに要求してきた。私も反対はしたが、結局聞いてはもらえず、ここの上層部もその決定に賛成した…」
悔しい気持ちをあらわにしながら百々原は、みんなに全てを伝える。

静香:「そんな…」


剣代:「政府は、この世界がどうなってもいいって言うのかよ…!」
政府の考えに納得がいかない剣代も怒りが爆発しそうだ。


梨香:「元帥は避難しないんですか?」
梨香が一番気になっていたことを質問する。


すると、元帥は顔を上げて、こう答えた。


百々原:「私は、フロンティアの元帥であり、この街の市長でもある。街の人々が、全員避難できるまで、ここに残るつもりだ。それに、私は、あの中に潜入した彼らを、信じている」
百々原は再び窓の外を見て、カイゼル・サウザンドを見つめる。

キャッシー:「元帥…」



???:「わしたちも元帥と同じ気持ちだ」
背後から聞こえた老人の声に、みんなは扉の方を見る。


影丸:「わしたちも、彼らがバリアンを、ドン・サウザンドを止めてくれると信じている」


明日香:「影丸理事長…」


100歳の歳を越える影丸理事長と、影丸が乗っている車椅子を押す斎王と、その隣には妹の美寿知が立っていた。


斎王:「あの中に入った者たちから連絡はないが、私たちは彼らが無事だと、後ろを振り向かず前に進んでいることを願っている」

美寿知:「だから、私たちが避難をする必要はないわ」
斎王と美寿知も、今思っていることをそのまま口にする。


斎王:「ヘリコプターが見えたので、まさかと思って来てみたら、君たちだったとは」
影丸が乗る車椅子を押しながら斎王は部屋に入ってきた。






百々原:「何かカイゼル・サウザンドに動きがあったのか?」


美寿知:「調査したところ、あの物体は空に出現してから徐々に下降しているのがわかりました」
その言葉に部屋にいる人々が絶句する。


百々原:「なんだと…!?」

影丸:「ドン・サウザンドが言っていた世界の崩壊は、嘘ではない。今、現実に起きていることなんじゃ。早いとこ、手を打たねばなるまい」

百々原:「くっ」

斎王:「幸いカイゼル・サウザンドへ繋がっていると思われるゲートは閉じていません。今からでも増援に向かわせた方が…!」
斎王が増援を向かわせるように要求する。

しかし、百々原はすぐに返事をしなかった。何か悩んでいるのだ。

その間に、キャットちゃんが周りのみんなと目線を合わせる。

静香、龍可、明日香、それに他にみんなも首を立てる振った。


キャットちゃんが机をバンッと強く叩いてこう言った。


キャッシー:「私たちが増援として向かいます!」

百々原:「!」
キャットちゃんが言った言葉に驚く百々原。


キャッシー:「元帥が考えていることは何となくわかります。政府は、この問題を遊馬に一任した以上、フロンティアも簡単に増援を出すような状況ではないと。あなたが許可しても、他の上層部は許可しないだろうと。でも私たちは、SOA特務隊の一員です。自己判断で単独行動が赦されているエージェント部隊です。だから上層部が何と言おうと私たちは行きます」


レミ:「それに、遊馬達ってことは、みんなもあの中に行ってるんですよね?なら問題はないはずです」

レミの言葉を聞いた百々原は少しの間、口を閉ざすが、答えは1つしかなかった。

百々原:「わかった。君たちもカイゼル・サウザンド内部へ向かってくれ」
百々原は、そう言ってキャットちゃんたちをカイゼル・サウザンドへ向かわせることを決意する。





十数分後

百々原はキャットちゃんたちを引き連れて、カイゼル・サウザンドへ入るゲートが展開されている屋上へと連れてきた。


トメ:「あら、明日香ちゃん!それにみんなも!」
そこには、トメさんにセイコ、イェーガー、マーサ、シュミット、春たちが待機していた。


明日香:「トメさん…!トメさんも避難していなかったんですか?」

トメ:「みんなを信じてるからね。それに、私だって年だし、あまり走りたくないんだよ」
おそらく後者が本音だろ…と思った明日香は「そ、そうですか…」と返す。



百々原:「あれが、カイゼル・サウザンドの中へ入るためのゲートだ」
百々原が指を指した場所にゲートは展開されていた。

レミ:「あれを潜れば、中へ行けるんですね」

百々原:「くれぐれも無茶はするな。中へ入れば、こっちとの通信は完全に遮断されるからな」
百々原が、みんなにそう言うとキャットちゃんや剣代、珠里たちが頷いた。


キャッシー:「それじゃあ、行ってきます」
キャットちゃんが先にゲートを潜る。

その後に明日香や龍可、静香たちも潜る。



セイコ:「皆さん…」

トメ:「あの子たちなら、絶対にやってくれるよ、セイコちゃん」
トメさんが、セイコを安心させようと声をかける。


セイコは小さい声で「はい」と返した。








カイゼル・サウザンド内部のとある空間


赤い空の下に建つ1軒の建物

形から教会のように見える。




その教会の中に、人影があった。


シンディ:「これで、私も解放されるときが来たのかしら」
バリアン8人衆の紅一点シンディが、教会の中にある十字架を見て呟いた。


シンディ:「ドン・サウザンド…、あなたのおかげで今の私がある。…でも、その代償として、私は人間を捨て、あなたの駒として動くようになってしまった…。その呪縛から逃れるためには…」
自分の掌を見つめるシンディ。

すると、シンディの身体が薄い黒いオーラに纏われる。

シンディ:「やっぱり、このオーラには対抗できないか…」
シンディはそう呟いた。


シンディ:「来たわね…」
シンディが、こちらに近づく団体を察知した。


その団体…、そうそれは小鳥たちだった…。







第9ED『Prototype《石川智晶》』






次回予告

ナレーション:4人のバリアン8人衆を倒してきたフロンティア一行。

そして、小鳥の前に、8人衆の紅一点シンディが現れる!

小鳥と戦うシンディだが、彼女の攻撃には迷いがあった…。

そして、戦いの中、シンディから驚きの真実が明かされる!


小鳥:次回、遊戯王5DXAL「バリアン8人衆の正体」


小鳥:「シンディ、あなたは一体…」




遊戯王5DXAL豆知識コーナー!!


ゴーシュ:「No.8のエースのマーク。こいつには、”勇気”という意味が込められている。何事にも恐れず、立ち向かう勇気が力となって、俺を強くしてくれるぜ」
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