第156話:『スワロウテイル・リバレイト』
白煙が立つ場所から眩しい輝きが放たれる。
サリバン:「ん?」
サリバンがその輝きに気付く。
操られているゴーシュも、その輝きの方を見る。
ドロワ:「まだ終わりではない」
白煙が無くなり、輝きの中心にドロワが立っていた。
ドロワ:「セカンドステージ…。ゴーシュ、お前を幻術から解き放つ!」
フォトンパピヨンクロスがセカンドステージ!
6枚の蝶の羽が先端についているクロスボウが、ドロワの手に持たれる。
これがフォトンパピヨンクロスの進化した姿だ。
タカ:「セカンドステージか…!?」
藤原:「みたいだね。見た感じ、怪我もないみたい」
凛とした立ち振る舞いに、目を持って行かれてしまった藤原たち。
サリバン:「しつこい女だぜ。そこまで助けたいということは、こいつに惚れているのか?お前?」
ドロワ:「私にとって、そいつはただの相棒だ。私が惚れている男は他にいる」
どこか、今の状況を楽しんでいるように見えるドロワは戦いを眺めているサリバンを見る。
第9OP『HEART・BEAT《MARIA》』
第156話:『スワロウテイル・リバレイト』
サリバンの幻術を受け、精神操作されているゴーシュ。
一方で、ゴーシュを助けようと、フォトンパピヨンクロスをセカンドステージさせたドロワ。
サリバン:「例え、セカンドステージしたところで、そいつを俺の幻術から覚まさせることは不可能だぜ。さっきも言ったが、俺の幻術はドン・サウザンド様の力のによって、そこら辺の幻術とはわけが違う。そいつの本来の心は、もう身体の奥底だぜ」
本当のことなのか嘘のことなのかわからないが、サリバンは笑ってそう言った。
ドロワ:「そうか、それは都合がいい」
サリバン:「あ?何言ってんだ?」
ドロワ:「私の力を試せる丁度いい機会だ」
ドロワも楽しそうな笑みを見せてそう言った。
サリバン:「女だからって調子乗りやがって、構わねえ!そいつを殺しちまえ!」
サリバンがゴーシュに命令すると、ゴーシュはドロワに向かって走る。
ドロワはセカンドステージしたフォトンパピヨンクロスをゴーシュに向ける。
ドロワ:「マリポッサ・ルーフェン!」
フォトンパピヨンクロスの引き金を引いたドロワ。
次の瞬間、1回しか引き金を引いていないのに、無数の矢が同時に放たれ、ゴーシュを襲う。
この技は、一度に100本の矢を放つ技だ。
ゴーシュの衣服類が数か所敗れる。
サリバン:「そっちも容赦しねえってことか。なら!」
サリバンが、その場で突然メガロック・ハードを振り回す。
すると、メガロック・ハードが紫色に輝く。
サリバン:「アタッシュ・シュタルク!」
メガロック・ハードにエネルギーが溜まっていく。
そして、弾ったエネルギ―を解き放ち、そのエネルギーはゴーシュの身体に与えられる。
ゴーシュ:「ぐわああああああ!」
操られてからずっと口を閉じていたゴーシュがいきなり叫び出す。
ドロワ:「こ、これは…!」
いきなり叫び出すゴーシュに驚くドロワ。
藤原:「一体、何が起きているの…!」
ジム:「ヨハン…!何か感じるか…?」
ヨハン:「あぁ、ゴーシュの身体から突然、奇妙なオーラを感じる…。おそらく、闇の力だ」
ヨハンは、ゴーシュの身体から感じるオーラに、拳を握った。
ドロワ:「ドン・サウザンドの力か…」
サリバン:「違うな。これは俺がこいつに溜めた闇のエネルギーを、そいつに与えただけだ」
メガロック・ハードを見せて、そう言ったサリバン。
つまり、ドン・サウザンドの力ではなく、単なる闇の力がゴーシュの力を倍増にしているのだ。
サリバン:「行けっ!お前の相棒をその手で殺めろ!」
サリバンがそう言うと、ゴーシュが持つクサナギブレードの刀身が黒いオーラに纏われ、ゆっくりとドロワに近づく。
ドロワ:「ゴーシュ…、お前を救い出すためには、あれを使うしかないようだ」
ドロワはボソッと呟く。
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3か月ほど前
ある日の修行を終えた夜の話しだ。
ドロワ:「幻術を解放する技だと?」
遊馬:「あぁ、ドロワ、お前ならそれを習得できるかと思ってな」
フロンティア本部のエントランスに、サングラスをかけた遊馬と、ドロワ、そして羅夢の3人が椅子に座っていた。
羅夢:「デュエルモンスターズの力や、デュエルエナジーを使って、幻術の力を使うことができるのは、あなたも知っているはずだ」
ドロワ:「あぁ、話しによればワックスポワロの主犯の1人デニムという男が、そうだったと聞く」
遊馬:「この世には、他にも幻術を使う奴なんて山ほどいる。だから、それに対抗する手段も考えなきゃいけねえ」
羅夢:「幻術は他の力と違って、デュエリストの才能が重要になる。それは逆もしかり。幻術を解く技もそうだ」
ドロワ:「その幻術を解く技を、私が…」
少し驚いた表情をするドロワ。
遊馬:「あぁ、いずれは幻術を使えるほどになれるかもしれないって、俺のボスは言ってるぜ」
遊馬はテーブルの上にあるペットボトルに入った水を飲む。
ドロワ:「お前のボス…、まさか、その人は…!」
遊馬:「あぁ、初代キング・オブ・デュエリストの武藤遊戯さんだ」
遊馬の口から出た人物の名。それは、デュエリストなら誰でも知っている名である。
世間では死んでいることになっているが、実は生存しており、しかも四大神王者のリーダーであることが、世界中の一部の人間には知れ渡っている。
遊馬:「フロンティアに入ってきている連中のデータは、元帥を通して、四大神王者にも流れてくるんだ。だから、遊戯さんも、みんなの力を見極めようとしている。その中で、ドロワ。遊戯さんは、お前が幻術を使う才能があると判断されたんだ」
遊馬が再び水を飲む。
ドロワ:「私が幻術を…」
羅夢:「だが、幻術を使うには相当な修行が必要だ。だから、まず幻術を解く技を身につけるのが優先だ」
遊馬:「それが完璧に使えるようになって、初めて幻術の力を身につける修行に入れる」
遊馬がそう言って。ドロワを指さした。
ドロワ:「幻術を解く力…」
羅夢:「この力は、自分のためというより、仲間を助けるための力でもある。身につけていて損はない」
そう言って、羅夢は席を立つ。
遊馬:「属性波動の修行はそれなりに進んでいるし、明日からドロワは特別メニューで修行する。準備しておいてくれよ」
他人事のように遊馬は笑って言った。
しかし、ドロワは「わかった」と一言言って、明日からの特別メニューに備えた。
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ドロワ:『まさか、実戦で初めて使う相手が、ゴーシュになるとはな』
ドロワは3か月前のことを思い出しながらゴーシュを見つめる。
ドロワ:『まずは、動きを封じなければな』
ドロワはセカンドステージしているフォトンパピヨンクロスを構える。
ドロワ:「プレヒティヒ・パーピリオ!」
セカンドステージしているフォトンパピヨンクロスに光の属性波動を流し込むドロワは、その状態で引き金を引いた。
放たれた矢は、アゲハ蝶を象り、ゴーシュに向かう。
サリバン:「弾き飛ばしちまえ!」
サリバンがゴーシュにそう命令すると、ゴーシュはクサナギブレードを強く握り、アゲハ蝶を象る矢を弾き飛ばす。
弾かれた矢は地面に突き刺さる。
ドロワ:『一本目…』
ドロワは心の中で「よしっ」という気持ちで呟く。
黒いオーラに纏われてるゴーシュは、そのオーラをクサナギブレードに伝達させる。
クサナギブレードを振り、黒い斬撃を放つ。
ドロワ:「くっ!」
ドロワはその斬撃を躱す。
斬撃は、ドロワの背後にあった倒壊寸前の建物に当たった。
無論、そのショックで、その建物は壁にヒビが入り倒壊した。
タカ:「建物が倒壊した…!?」
翔:「ボロボロだったとはいえ、いとも簡単に建物を壊すなんて…!」
ジム:「さっきの斬撃はデストロイだな…」
今まで見たことのないゴーシュの斬撃に、息を飲むジムたち。
だが、それでもドロワは引くつもりはないようだ。
ドロワ:『残り3本…!すぐに決める!』
ドロワはセカンドステージしているフォトンパピヨンクロスを構える。
ドロワ:「マリポッサ・ルーフェン!」
引き金を引き、100本の矢を同時に放った。
サリバン:「さっきと同じ技か。そんなものとっとと躱せ」
ゴーシュはジャンプして、ドロワの攻撃を躱す。
ゴーシュはクサナギブレードを構え、ドロワに接近する。
ドロワ:「いくら躱そうと、私の攻撃が止むことはない!」
セカンドステージしているフォトンパピヨンクロスの引き金を引き、矢を放つ。
その矢は、特に何も施されていない矢で、ゴーシュはクサナギブレードで、矢を簡単に弾いた。
ドロワ:『残り、2本…』
ドロワはそう呟いている間に、ゴーシュはクサナギブレードから黒い斬撃を放った。
その黒い斬撃はドロワの足元に落ち、その影響で砂ぼこりが辺りに広がり、ドロワの視界を封じる。
ドロワ:「私の視界を封じる作戦か…!」
ドロワは、こちらに近づく気配を感じ、その方向を見ると、クサナギブレードを持つゴーシュが襲ってきた。
セカンドステージしているフォトンパピヨンクロスで、クサナギブレードを受け止めるドロワ。
周りに広がる砂ぼこりから脱出するため、一度後ろに下がる。
後ろに下がったおかげで、砂ぼこりから脱出し、フォトンパピヨンクロスを砂ぼこりの中にいるゴーシュに向ける。
ドロワ:「プレヒティヒ・パーピリオ!!」
引き金を2回引き、2本の矢が放たれる。
放たれた2本の矢は光の属性波動によってアゲハ蝶を象り、砂ぼこりの中へ突っ込む。
串刺しになれば一溜まりもない…。だが、矢が弾かれた音が砂ぼこりの中から聞こえ、次の瞬間、クサナギブレードを大きく振ったゴーシュが姿を現し、周りに広がっていた砂ぼこりが消える。
弾かれた2本の矢は、それぞれ地面に突き刺さる。
ドロワ:「はぁ、はぁ」
流石に体力を使い過ぎたのか、息を切らすドロワ。
サリバン:「調子のいいことを言ったわりに、体力の方は限界のようだな」
「流石にわかるか…」とドロワはサリバンを見る。
このままゴーシュと戦闘するのは流石にもう危ない。ドロワは、息を吸い、軽く吐いて背筋を伸ばして立つ。
サリバン:「どうやら、諦めたようだな。これで最後だぜ」
サリバンがそう言うと、ゴーシュは一歩ずつ前に出る。
ドロワにトドメを刺そうとしているのだ。
藤原:「危ない!」
闇川:「師匠、今が行く時です!」
闇川が黒刀・霧雨を手に持って言う。
六十郎:「いや、待て」
六十郎が、ドロワを助けようと動こうとする弟子や仲間たちを止める。
なぜなら、ゴーシュの周りに4本の光の柱が突然現れたからだ。
サリバン:「!?」
ドロワ:「シュメッターリング・タンツェン」
ドロワはそう呟くと、4本の光の柱から無数の蝶が現れ、ゴーシュを囲い陣を張る。
サリバン:「こ、こいつは…!」
ドロワ:「シュメッターリング・タンツェン…。蝶の陣だ。この陣に取り込まれた奴は、身体が痺れてしばらく身動きが取れなくなる」
身体が痺れている所為だろうか、何となくゴーシュの顔色が悪いように見える。
サリバン:「そいつの動きを封じている間、俺を倒そうという算段か?悪いが、お前みたいな女に倒される俺じゃないぜ」
サリバンはドロワを見下すかのように言った。
大抵こう言われた人は頭に血が上り、反撃に出るが、ドロワは違った。
ドロワはフッと笑い、サリバンを見る。
サリバン:「?」
ドロワ:「残念だが、お前を倒すのは私の役目ではなく、このバカの役目だ。私がお前を倒したのとなれば、こいつは俺の獲物を横取りしやがってと駄々をこねるからな」
サリバン:「お前、何をするつもりだ?」
ドロワ:「こいつの幻術を解くだけだ」
ドロワはセカンドステージしているフォトンパピヨンクロスを構える。
ドロワ:「この技は、私が修行の中で身に付けたものだ!」
ドロワの目つきが変わる。
ドロワ:「スワロウテイル・リバレイト!」
光の属性波動が込められた矢を放ち、矢は陣の壁を突き抜き、ゴーシュの目の前で分散し光の粒子を撒き散らす。
ゴーシュの心の中で無数のアゲハ蝶が飛びまわる。
ゴーシュ:『こ、こいつは…』
本来のゴーシュの心が、周りに飛びまわる蝶を見つめる。
サリバン:「お前、幻術を解く技を持っていたのか…。だが、貴様のような解放技では、俺の幻術を破ることはできない。さあ、その結界を敗れ!」
サリバンがそう言うとゴーシュの身体が黒いオーラに纏われ、パワーを上げる。
しかし、ゴーシュの身体は行動を起こそうとしなかった。
サリバン:「俺の幻術に対抗しているだと…!そんなバカな!」
ドロワ:「悪いが、しばらく見ててもらおうか」
ドロワはそう言うと、舌打ちをするサリバン。
サリバン:「俺から人形を奪おうなんて100年早いぜ!」
メガロック・ハードを上に掲げるサリバン。
すると、背後に”CX(カオスエクシーズ)メガロック・ゴーレム”が現れる。
ドロワ:『モンスターを使って邪魔をするか…』
ドロワは呟く。
サリバン:「お前の怪力で、結界を破壊しろ!メガロック・ゴーレム!!」
メガロック・ゴーレムが、陣に取り込まれているゴーシュに近づく。
ドロワ:「スワロウテイル・リバレイト-ポルン!!」
ドロワがそう叫ぶと、ゴーシュを取り囲む陣から、光の粉がまき散らされた。
身体の大きいメガロック・ゴーレムが、その光の粉に触れ続けると、いきなり身体が動かなくなった。
サリバン:「どうした!?メガロック・ゴーレム…!」
突然動きを止めたメガロック・ゴーレムを見て動揺するサリバン。
そして、いつの間に光の粉はサリバンの方まで届いていた。
サリバンが、その粉に触れた瞬間―
サリバン:「っ!!」
突然、身体に衝撃が走り、激痛が走った部分を押さえる。
サリバン:「こいつは…」
ドロワ:「スワロウテイル・リバレイト-ポルンは、光属性の波動で作った粉をまき散らすことで、その粉に触れたものは一時的に身体へダメージを受け身動きを封じる。スワロウテイル・リバレイトで、ゴーシュの幻術を解いている間、そこで大人しくしてもらうぞ」
ドロワの言葉に悔しがるサリバンは歯を立てる。
サリバン:「小細工なことをしやがって…。あーあ、めんどくせえ」
サリバンは小さい声でそう呟く。
ゴーシュの意識の中…
無数の蝶が周りを飛びまわる。
ゴーシュ:『俺は、一体…』
自分の身に何が起きたのかを思い出そうとするゴーシュ。
ゴーシュ:『そうだ…!俺は、あのバリアンの奴の攻撃を知らない内に受けて…』
ゴーシュは飛びまわる蝶の大群の中を走る。
ゴーシュ:『どこだ…。みんな、どこにいるんだ…』
ゴーシュは周りを見て、みんながいないか確認する。
しかし、走っても走っても見えるのは蝶の大群だった。
ゴーシュ:『はぁ、はぁ』
息を切らしても走り続けるゴーシュだったが、しばらくして何処からか声が聞こえるようになってきた。
???:『ゴーシュ…、ゴーシュ、目を覚ませ!』
女性の声…。だが、俺は、この声が誰なのかすぐに分かった。
ゴーシュ:『ドロワ…。ドロワなのか…!』
ゴーシュが、一度その場に止まり、声が聞こえる方を確認する。
すると、目の前で蝶の大群が光の輪を描き、その中心が輝く。
ドロワ:『ゴーシュ!目を覚ませ!』
光の輪からドロワの声が聞こえてきた。
ゴーシュは何も考えずに真っ先にその輪に向かって走った。
光の輪に飛び込んだゴーシュ…。周りが眩しい光に包まれる。
ドロワ:「ゴーシュ!目を覚ませ!」
ドロワは大きな声を出してゴーシュに呼びかける。
タカ:「くそっ、やっぱりダメなのか…!」
ブリッツ:「今は黙って信じるしかない…!」
陣に囲まれているゴーシュは動きこそないが、ドロワが呼びかけても返事はなかった。
サリバン:「あーあ、めんどくせえ!もううんざりだぜ!」
サリバンの身体がどす黒いオーラに纏われる。
ドロワ:「!?」
サリバン:「こんな奴の力にドン・サウザンド様の力を使うつもりはなかったが、仕方ねえ。俺をイラつかせたんだ」
サリバンの周りに飛び散る光の粉が、サリバンの身体から出ている黒いオーラの影響で、消えて行く。
サリバン:「手加減なしで、お前を叩きのめす」
今まで見せたことのない目つきで、ドロワを見るサリバン。
ドロワは、その目線に少し怯えてしまった。
ドロワ:『なんだ…、こいつ。急に雰囲気が…』
ドロワの心が乱れた所為か、ゴーシュを取り囲んでいた陣が消えた。
ドロワ:「しまった…!」
自分が張った陣が消えたことにすぐに気付くドロワ。
あれだけ呼びかけてもゴーシュに返事はなかった。ということは、まだ幻術が解けていないということだ。
御伽:「彼を囲んでいた結界が…!」
ヨハン:「消えた!」
翔:「これ、かなりマズいんじゃない」
翔の言う通り、ドロワは技の使い過ぎで体力が消耗しているはずだ。
今の状況で、敵2人を相手させるのはヤバイ。
サリバン:「結界が消えたか。それに、メガロック・ゴーレムも動けるようになったみたいだな」
ダメージを受け動きを止めていたメガロック・ゴーレムだが、目を輝かせ両拳を合わせ、気合を入れるようなポーズをする。
サリバン:「俺を怒らせた礼だ。そいつじゃなく、俺の手で始末をつけてやるぜ」
サリバンがメガロック・ハードを振り回し、ドロワに走って近づく。
ドロワにはもう躱す体力すらなかった。
御伽:「マズい!」
闇川:「間に合うか…!」
闇川が黒刀・霧雨を持ち、ドロワの援護に向かおうとする。
サリバン:「今更、動いたって―」
サリバンがドロワにトドメを刺そうとする。
しかし、目の前に刃が出てきて、すぐにサリバンは躱した。
サリバン:「くっ…、お前、正気を…」
後ろに下がったサリバンは、目の前を見てドロワの前に立つ男性を見る。
ゴーシュ:「こいつに、手出してんじゃねえよ。ここからは俺が相手だ!」
ドロワ:「ゴーシュ!」
いつものゴーシュがクサナギブレードを持って私の前に立っていた。
六十郎:「おお!」
ヨハン:「正気に戻っていたのか!」
翔:「よかった!」
ゴーシュが元に戻ったことに喜ぶ仲間たち。
ドロワは、激しい体力の消耗により地面に膝を付ける。
ドロワ:「はぁ、はぁ」
ゴーシュ:「わりい、面倒かけちまったみたいだな」
ドロワの方は見ず、サリバンの方を見ながらゴーシュは謝った。
ドロワはクスッと笑った。
ドロワ:「気にするな。対したことではない」
ゴーシュ:「お前の身に何かあったら、カイトに殺されるからな」
ドロワ:「それが嫌だから、誤ったのか?」
ゴーシュ:「そう言うわけじゃねえよ…。お前は休んでてくれ。後は俺の仕事だ」
ゴーシュが一歩ずつ前に出る。
ドロワ:「気を付けろ、ゴーシュ。幻術が解けたとはいえ、再び同じ技を喰らえば―」
ゴーシュ:「わぁってるよ。安心しろ」
手を振るゴーシュ。
ドロワは手を振るゴーシュの背中を見て、あいつを信じることにした。
ゴーシュはサリバンの前に立つ。
サリバン:「仲間とのお別れは済んだか?」
ゴーシュ:「お別れ?何言ってんだ?お前?」
サリバン:「?」
ゴーシュ:「お別れなんて必要ねえだろ。俺は、この戦いに絶対に勝つんだからな」
余裕の笑みを見せて答えるゴーシュ。
その表情を見て、サリバンは頭に来たのか歯を立てる。
サリバン:「どうやら、また同じ絶望に合わないと、その軽口は閉じないようだな」
サリバンはメガロック・ハードを振り回し始めた。
同時に、サリバンの身体を覆う黒いオーラが周りに放出される。
サリバン:「岩幻縛り」
不気味な感じで、そう呟いたサリバン。
ゴーシュを幻術へ落としたときの技名だ。
藤原:「また同じ方法で彼を操るつもりだ…!」
ドロワ:「気を付けろ、ゴーシュ!」
またゴーシュが操られてしまっては、さっきの二の舞が起きてしまう。
それだけは防ぎたい。だが、どうすればいいのか分からず、自分の身が危険だということをゴーシュに伝えるしか考えは出なかった。
サリバン:「さあ、再び俺のものとなれ。そして、奴らに絶望を与えようぜ」
周りに広がるどす黒いオーラが、ゴーシュを包み込もうとする。
しかし、ゴーシュの右手の甲が突然輝き出す。
ピイィィィ
右手の甲にNo.8のエースのマークが光を放つ。
そして、ゴーシュの周りにバリアのようなものが張り巡らされ、自分を包み込もうとしたオーラを跳ね返す。
ゴーシュ:「わりいが、もう同じ手は喰らわないぜ」
さっきと表情を変えていないゴーシュが、そこにいた。
サリバン:「バカな…!俺の幻術を跳ね返しただと…!?」
予想もしなかったことにサリバンが驚く。
それは、ドロワたちも同じだった。だが、それならそれで嬉しいことだ。
もう幻術を受ける心配はないようだ。
ゴーシュに幻術が通用しないことに動揺する表情が出ているサリバン。
ゴーシュ:「ノリが悪いな、そんなに驚くことじゃねえだろ」
ゴーシュが手に持つクサナギブレードが輝き出し、セカンドステージした状態のクサナギブレードがゴーシュの手に握られる。
ゴーシュ:「俺の勇気を見せたやる。このマークに誓った、俺の勇気の力をな」
ゴーシュが右手の甲に浮かび上がるエースのマークをサリバンに見せびらかすように見せてそう言った。
ゴーシュとサリバンの真の戦いが始まる!!
第9ED『Prototype《石川智晶》』
次回予告
ナレーション:サリバンの幻術を跳ね返し、我が身の力で戦うゴーシュ
エースのマークに込めた勇気を胸に、ゴーシュは新たな技を放ち、決着を付けようとする!
その頃、エルフェンの森にいたキャットちゃんたちがフロンティア本部に到着!
キャットちゃんたちは、戦っている仲間たちの元にすぐ向かおうと、カイゼル・サウザンドの中へ潜入することを試みるのであった!
ゴーシュ:次回、遊戯王5DXAL「我が勇気!真剣・アマムラウンメイ」
ゴーシュ:「俺の必殺剣、見せてやるよ!」