第145話:『バリアン体・遊馬』
カイゼル・サウザンドに通じるゲートをくぐる遊馬と凌牙。
カイト:「行くぞ、オービタル!」
オービタル:『カシコマリ!』
カイトと共にオービタル7もゲートの中へ入った。
小鳥:「ナンバー2のエースのマークを託された以上、私もバリアンと戦わなきゃいけない。絶対に負けないから」
次に小鳥がゲートを潜った。
その後も、次々とゲートを潜る。
アーサー:「なんじゃ、双六、お前も行くのか?」
双六:「当たり前じゃ!若者には負けていられん!」
双六はそう言ってすぐにゲートを潜った。
アーサー:「はあ、相変わらず負けず嫌いだな」
アーサーもそう言って、ゲートを潜る。
斎王:「我々は、外で待っている。気を付けてな」
エド:「あぁ、斎王たちも、もし危険と思ったらすぐに避難してくれ」
そう言い残し、エドもゲートを潜る。
因みに、ここで待機するメンバーは斎王、美寿知、トメさん、セイコ、影丸、イェーガー、マーサ、シュミット、そして春の9名だった。
みんながゲートを潜るのを見届けた影丸たち。
???:「行ってしまわれましたか」
背後から一人の男性が近づいてくる。
百々原:「予想した結果になりましたね」
影丸:「あぁ、仲間思いの強い連中じゃからな」
春:「仲間がピンチだと気付いたら、身体が勝手に動いてしまう。SOA特務隊は、そういった連中ばかりだと言っていたな」
百々原:「えぇ、だから私にも彼らを止めることはできないのですよ」
百々原が上空に浮かぶカイゼル・サウザンドを見つめる。
百々原:『無事に生還することを祈っているぞ』
百々原は心の中でそう呟いた。
第9OP『HEART・BEAT《MARIA》』
第145話:『バリアン体・遊馬』
エルフェンの森からヘリコプターでネオコーポレーションシティに向かっていた、キャットちゃん、明日香、剣代、梨香、珠里、静香、龍可、レミの8人。
しばらくヘリコプターで飛んでいると、ネオコーポレーションシティの上空が見えてきた。
龍可:「あれが、カイゼル・サウザンド…」
上空に浮かぶカイゼル・サウザンドの大きさは思っていた以上に大きかった。
明日香:「映像でわからなかったけど、ここまで大きいなんて…」
静香:「これからどうします?」
キャッシー:「とりあえず、本部に戻りましょう。もしかしたら、遊馬たちが動いているかも」
ヘリコプターはフロンティア本部に向かって飛行した。
ベイチニア半島
ネオコーポレーションシティでバリアンが動いたことを聞いて、すぐに出発を試みる鬼柳たち。
だが、1つ問題点があった。
吹雪:「戻るのはいいけど、ここからネオコーポレーションシティまではヘリコプターを飛ばしても数時間はかかる。タイムリミットまでは、間に合わない」
亜美:「そんな…」
未来:「だからといって、ここで待ち続けるにはいきません」
エマリー:「そうよ。こうしている間にも、向こうにいる仲間たちが戦いを始めているかも!」
鬼柳:「くそっ!何か、すぐに行ける方法はないのか!」
ネオコーポレーションシティにすぐに辿り着ける手段が見つからない鬼柳たち。
向こうにいる仲間たちを信じ待つことしかできないのか…。そんなことを思っていた、そのとき!
ミスティ:「!」
一台のヘリコプターが、ベイチニア半島に上空を飛行し、そのままみんなの元に着陸する。
恵美:「何、このヘリコプター?」
吹雪:「フロンティア所有のヘリコプターには見えないけど…」
ヘリコプターに近寄る吹雪。
すると、1人の男性がヘリコプターから降りてきた。
???:「お困りのようですね、皆さん」
眼鏡をかけた謎の男性が、口を開いた。
敵か味方か判断がつかないみんなは、その男を警戒する。
吹雪:「キミは一体…?」
剣一:「挨拶が遅れましたね。僕は南部剣一。フロンティアの一員であり、世界勢力”四大神王者”の補佐をやっています」
男性は礼儀よく挨拶をする。
覚えているだろうか…。そう、この男は以前から顔を出している。
数か月前に行われた第5回デュエルバトルカーニバル選手権。その裏で、四大神王者スターリングと共に、ノルマンディーカンパニーの情報を追っていた人物だ。
だが、そんなことより…。
亜美:「よ、四大神王者の補佐!?」
未来:「それじゃあ、遊馬こと…」
剣一:「ええ、ご存知ですよ。バリアンが動いた以上、彼が動き出したことも分かっています」
遊馬のことを知っている剣一がほくそ笑む。
鬼柳:「その四大神王者の補佐がどうして、ここに?」
剣一:「あなた方はすぐに、街に向かいたいはず。そう思ってきたんですよ」
ミスティ:「え?」
剣一:「このヘリコプターは、少し特別でしたね。普段のヘリコプターよりも3倍早いスピードで飛行できます。ネオコーポレーションシティまでだったら、3時間弱で行けるでしょう」
恵美:「そんなに早く…!」
1ヘリコプターの性能に少し驚く恵美。
剣一:「どうします?これに乗って街に向かいますか?」
吹雪:「…僕たちが、ここにいる情報をどうやって突き止めたかは知らないけど、今は緊急事態だからね。お願いできる?」
剣一:「勿論です。無事に向こうまで送り届けますよ」
剣一はそう言って、ヘリコプターの操縦席の扉を開けた。
鬼柳:「よし、みんな行くぞ」
吹雪、恵美、亜美、鬼柳、ミスティ、エマリー、未来はすぐにヘリコプターの搭乗を開始した。
未来:『遊馬、一馬…。無事でいて…』
バリアンとのつながりが高い息子と夫を心配する未来。
みんながヘリコプターに搭乗したのを確認した剣一は、すぐにヘリコプターのエンジンを始動させて離陸した。
ヘリコプターに向かって、ロヴィニ博士、カルメ、クレートの3人が手を振る。
そして、ヘリコプターはネオコーポレーションシティに向かって飛び去った。
海馬コーポレーション整備室
ドラガン:「エンジンに問題はない。各部とも正常だ」
ブレイブ:「モニターも問題なしだ。ちゃんと映ってるぜ」
一台のバイク…いやDホイールの調整をするドラガンとブレイブ。
ジェリド:「モンド、本部から連絡はあったか?」
モンド:「九十九遊馬たちがカイゼル・サウザンドに潜入したと連絡が」
ジェリド:「そうか、俺たちも行ける準備をしないとな…」
SOA隊2係リーダー、ジェリドとSOA隊5係リーダー、モンドが近くで話しをしていた。
ハラルド:「そろそろ完成するだろう、海馬瀬人。あなた専用のDホイールが」
腕を組んでドラガンたちの作業を見守るハラルド。
その後ろに海馬コーポレーション社長、海馬瀬人が立っていた。
海馬は新たな革命を起こそうとしていた。
今、目の前にあるのは、その原点となるものであった。
海馬専用のDホイール。それは美しきあの伝説の竜を模っていた。
その頃、ゲートを潜り抜けカイゼル・サウザンドに潜入した凌牙や遊馬達。
緑色が基調とした空間いや、洞窟のような場所が目に映る。
凌牙:「ここがカイゼル・サウザンドの中か…」
周りを見渡す凌牙。
龍亜:「あのデカブツ要塞の中が、こんな風になっているとはな」
愛:「この地面って、人工的に作られてもの?それとも天然?」
しゃがみ込み地面に手を置く愛。
遊馬:「カイゼル・サウザンドは、何らかの方法でドン・サウザンドが生み出したものだ。ただの作りものだろ」
凌牙:「ここに璃緒が…」
凌牙がそう呟くと…!
???:「ようこそ、カイゼル・サウザンドの中へ」
周りに響く声。
皆は動揺し、周りを見渡す。
そして、目の前が突然眩しくなり、その中から人影が出てきた。
ドン・サウザンド:「憎き人間たちよ」
眩しい輝きの中から現れたのは、ドン・サウザンドだった。
そして、ウェスカー、ピアーズ、シンディ、ペイトン、スペンサー、コルダ、サリバン、ブラナーのバリアン8人衆もそろって出てきた。
小鳥:「ドン・サウザンド…」
過去に一度目にしている小鳥にはわかる。奴から放たれる凄まじい殺気が…。
クロウ:「おいおい、いきなり親玉の登場ってか」
アキ:「向こうも、少しは焦っているのかもね」
ドン・サウザンドを見て、警戒心をMAXにするクロウとアキ。
凌牙:「ベクターは何処だ!璃緒は、璃緒は無事なんだろうな!」
妹がさらわれたことに気が動転している凌牙が、みんなより前に立つ。
ピアーズ:「安心しろよ、神代凌凌牙。あいつらは、俺たちが故郷バリアン世界で、大人しく待ってるよ」
凌牙:「バリアン世界?」
遊馬:「ってことは、ベクターも璃緒も、このカイゼル・サウザンドの中にはいないのか?」
ドン・サウザンド:「いかにも。あの二人は、我が計画を最終段階まで遂行させるために必要な素材。お前たちの手が届く場所には置いて
置けないのでな」
遊馬の質問にドン・サウザンドが回答する。
遊馬の背後に、アストラルとエリファスが出てくる。
アストラル:「エリファス、あのドン・サウザンドも…」
エリファス:「あぁ、おそらく偽者だ」
遊馬:「ホント、正々堂々と戦う意思はねえのかよ」
ボソッと呟く遊馬。
向こうに聞こえないように話したつもりだが、ドン・サウザンドが殺気のこもった目つきで遊馬を見る。
遊馬:「なんだよ?本当のことだろ」
聞こえちまったんならしょうがねえというような感じで、遊馬はそう言った。
ドン・サウザンド:「我が計画を本当に邪魔するというのか?九十九遊馬」
遊馬:「…」
サリバン:「こんなこと言うのすげえ怠いが、お前はこっち側の存在だろ?」
ウェスカー:「同じ力を持つもの同士、手を取り合う気はないか?」
バリアンたちが遊馬に対して言っている言葉には、みんな理解できなかった。
アンナ:「同じ力?」
ゴーシュ:「どういうことだ?遊馬」
気になった仲間たちが、遊馬に質問する。
遊馬:「同じことを言わせるな。俺は、お前たちと組む気はない。絶対にな」
遊馬は聞こえなかった振りをしてそう言った。
シンディ:「あくまで、私たちの敵に回るということね。それに…」
シンディは目線を、遊馬から遊馬の仲間たちに向ける。
シンディ:「みんなには見えたくないみたいね。あなたのもう一つの姿」
遊馬:「っ!」
凌牙:「遊馬のもう一つの姿?」
ギラグ:「どういうことだ?」
みんなが遊馬に注目する。
ドン・サウザンド:「なら、見せてやろう。お前たちが知らない九十九遊馬のもう一つの姿をな!」
ドン・サウザンドが掌から、闇のオーラのようなものを出し、それを遊馬に向けて放つ。
遊馬は、ドン・サウザンドが放った闇のオーラを受けてしまう。
遊馬:「ぐっ、こいつは!バリアンの力を無理矢理引き出す…」
ドン・サウザンド:「そう、それは内に秘めた話が力を呼び覚ます。さあ、目覚めよ。遊馬!」
ドン・サウザンドが遊馬に放った闇のオーラの力を引き上げる
遊馬:「うわああああ!」
闇のオーラに包まれた遊馬は叫び続けた。
アストラル:『遊馬!』
小鳥:「遊馬!」
カイト:「何が起きているんだ!」
周りにいるみんなは、何もできずにただ見ていることしかできなかった。
闇のオーラに包まれている間、遊馬は過去の記憶が蘇ってきた。
そう、あれはまだ多元世紀ではなく、前世紀での話し。
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俺が生死不明となった、あの落石事故…。今、考えたら、あれは運命だったのかもしれない…。
遺跡の名前は、”マルピアス”。周りは自然に囲まれており、その遺跡の入り口は大きな樹木の下にある。
あの時、冒険家だった俺は、マルピアスに興味を持ち、現場に向かった。
その時は、まさかこんなことになるとは思ってもいなかった。
マルピアスについて1時間ぐらい経ったときだった。遺跡全体で地震が発生し、洞窟の中にいた遊馬はすぐに外に出ようと必死に逃げた。
遊馬:「くそっ!なんだよ!今の自身は!」
愚痴を言いながら、生き延びるために遊馬は急いで外に出る入り口まで走る。
目の前に外の光が見えてきた。あともう少しで外に出られる…と思っていた。
だが、入り口の手前で天井が崩れ、崩れた岩が入り口を塞いでしまった。
遊馬:「入り口が…!」
入り口はここしかない。もう外に出る手段が消えたことになる。
そして、遊馬が立つ天井も崩れ始めた。
遊馬の上に岩が落ちてくる。
遊馬:「うわあああああっ!」
遊馬は叫びながら、岩の下敷きになる。
それから、自分に何が起きたかはわからない。
ずっと、息苦しかったことは覚えている。
だが、そんなときに、目の前に不気味な光が見えた。
優しい光じゃない。明らかに周りを照らすような光ではない。
???:『バリアンと繋がりがある、この遺跡に人間が訪れるとはな…。しかも、我がよく知る人物ではないか…』
遊馬の耳に入る謎の声…。
だが、遊馬にとって、この声は聞き覚えのある声だった。
???:『九十九遊馬…、我が宿敵よ…』
遊馬:『その声は…』
???:『覚えているか?我の声を。我のことを』
遊馬:『忘れるもんかよ…。人間界やアストラル世界を襲ったお前を、俺は忘れねえぞ。ドン・サウザンド!』
遊馬の耳に聞こえていた声は、ドン・サウザンドであった。
かつて、凌牙ことシャークと共に倒した、バリアン世界の神である。
遊馬:『なぜ、お前がここにいる!お前は、あのとき俺たちが…!』
ドン・サウザンド:『確かに、あのとき我は貴様らに敗北し消滅した。しかし、魂の一部は消滅することなく、バリアンと繋がりがある、この遺跡に留まった…』
遊馬:『この遺跡がバリアンと繋がりがあるだと…。遺跡のナンバーズがあった場所と同様ってことか』
ドン・サウザンド:『ここは、大昔、バリアン世界と人間界を繋ぐゲートにもなっていた場所でもある…』
それは初耳だ。勿論、当たり前のことだが、もしそれが本当なら、今自分の目の前にいるドン・サウザンドの魂の一部を野放しにはできない。
だが、遊馬の身体は動かなかった。
ドン・サウザンド:『無駄だ。お前の身体は、この空間の中では動くことはできない』
遊馬:『くっ…』
ドン・サウザンド:『だが、お前は利用価値がある』
ドン・サウザンドがそう言うと、遊馬は「何?」と言葉を発した。
ドン・サウザンド:『我はいずれまた蘇る。新たなバリアンたちと共に。それまで、貴様には枷をつけさせてもらおう。我の新たな駒になるまで』
ドン・サウザンドがそう言うと、遊馬の目の前に謎の輝きが現れ、7枚のカードが出てきた。
遊馬:『こ、こいつは…、オーバーハンドレッド・ナンバーズ!』
”オーバーハンドレット・ナンバーズ”、それはかつて、ドン・サウザンドがバリアン七星に用意した101から107番のナンバーズである。
だが、このカードは…。
遊馬:『このカードも、既に消滅していたはずだ…!』
数秒間、遊馬の思考が動いた。そして、結論が出た。
遊馬:『そうか…、お前の魂の一部が、ここにあると同じで、こいつらも消滅を免れたのか』
ドン・サウザンド:『如何にも。そのカードは
貴様にやろう。だが、その代わり…!』
ドン・サウザンドがそう言うと、7枚のオーバーハンドレット・ナンバーズは、遊馬の身体を包み込む。
遊馬:『何だ…!?』
ドン・サウザンド:『言ったはずだ。枷をつけさせてもらおうと』
オーバーハンドレット・ナンバーズから放たれる輝きと共に、遊馬の身体も輝きに包まれる。
遊馬はその輝きに驚き、目を瞑ってしまった。
ドン・サウザンド:『遠い未来、貴様の前に現れるのは、我の新たな駒たち。バリアン七星を後を継ぐ者たち。”バリアン8人衆”。そして、貴様も、いずれこの集団に入る。その時こそ、バリアン世界の復活が再び実現する。それまで、生き延びよ。九十九遊馬』
最後にドン・サウザンドは、そう言い残した。
遊馬は目を開いた。すると、自分は瓦礫の上に立っていた。
瓦礫で完全に塞がっていたはずの入り口も、小さい隙間があり、そこから外に出ることは可能に見えた。
夢でも見ていたのだろうか…。ドン・サウザンドが、俺の前に現れた…。いや、本当に現れたのだろうか…。
実際、ドン・サウザンドの声しか聞こえておらず、姿は見ていない。
だが、遊馬の、これが夢でないことにすぐ気付いた。
何故なら、自分の手に持っていた7枚のカード。
そこには、7枚のオーバーハンドレット・ナンバーズのカードを持っていたからだ。
そして、もう一つ。自分に起きた信じられない出来事…。
瓦礫の隙間から差し込む外の光が、遊馬の身体の一部を少し照らす…。
遊馬:「…!」
自分の手は、こんな感じであっただろうか…。
いや、どう見ても、自分の手は人間の身体じゃない。
自分の顔を触る遊馬。
ドン・サウザンドの言葉を振り返る遊馬。あの時、奴が言った言葉…。
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ドン・サウザンド:『我はいずれまた蘇る。新たなバリアンたちと共に。それまで、貴様には枷をつけさせてもらおう。我の新たな駒になるまで』
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その言葉の意味がだんだん分かってきた。
アストラル:『遊馬!無事か』
アストラルが遊馬の背後に現れる。
皇の鍵を通して、遊馬の身に何かあったことを察知したアストラル。
だが、遊馬を見て、アストラルの驚愕した。
アストラル:『遊馬…、その姿は…!』
開いた口が閉じないアストラル。
遊馬:「あいつの言っていたことは、こういうことかよ。これじゃあ、みんなのところに帰れねえじゃねえか」
自分の掌を拳に変えて、ギューッと強く握り占める。
アストラル世界
とある建物のベランダにアストラル世界の統治者であるエリファスと、ここの住民であるエナが立っていた。
エナ:「再び、争いが始まるのですね…」
エリファス:「倒したと思っていたが、まさか、こんな形で再び我々の前に現れることになるとは…」
2人は、遊馬の身に起きたことを察知していたのか、ドン・サウザンドの災いが、再び人間界を、そしてアストラル世界を滅ぼしに来ることを予想した。
遊馬:『ドン・サウザンド…。俺は、ぜってえに、お前に屈するつもりはねえぞ』
遊馬は、心の中でそう呟いた。その言葉には怒りが込められていた。
ドン・サウザンドが放った闇のオーラに包まれている遊馬。
みんなは、それを見つめることしかできなかった。
ドン・サウザンド:「枷を外せ、遊馬。そして、我が駒になるのだ」
ドン・サウザンドがそう言うと、闇のオーラの内側から遊馬の声が聞こえた。
遊馬:「駒扱いしていると、痛い目見るぞ、ドン・サウザンド…」
ドン・サウザンド:「…」
遊馬:「それに、お前の仲間になるつもりはねえ」
闇オーラが少しずつ消え、遊馬の姿が見える。
だが、それはさっきまでの遊馬の姿ではなかった。
一馬:「遊馬…」
明里:「アンタ…」
小鳥:「そ、そんな…」
目の前にいる遊馬の姿を見て、みんなは驚愕する。
現実に起きていることを正直認めたくはなかった。
凌牙:「お前…、なぜその姿に…!」
遊馬:「みんなの前で、この姿にはなりたくなかった…」
右手の掌を見て、自分が今、どのような姿でいるかを認識する遊馬。
遊馬の姿は、紛れもないバリアン体、そのものだった。
カイト:「バカな…!」
ハルト:「遊馬が、バリアンの姿になるなんて…」
今から戦う敵と同じ姿の遊馬を見て、驚きが隠せないカイトたち。
哲平:「慎也は、このこと知っていたのか?」
慎也:「流石に俺も初めて知ったよ。遊馬がバリアンの力を持っていることなんてな」
四大神王者と関わりのある慎也でさえ、遊馬の、この姿を見るのは初めてであった。
エリファス:『ドン・サウザンドと接触する以上、遊馬の意志とは関係なくバリアンの姿になると警戒はしていたが…』
アストラル:『遊馬は、アストラル世界とバリアン世界、2つの力を合わせ持つ人間へとなってから、その生き方は変わってしまった。仲間を避け、自分を襲う運命と戦い続けてきた』
遊馬と共にいたアストラルが、そう語る。
遊馬にとって、バリアンは敵でしかない。しかし、そんな敵の力を自分は持っている。
遊馬:「ドン・サウザンド、俺に、こんな力を与えたのを不運と思った方がいいぜ」
ドン・サウザンド:「?」
遊馬:「お前が俺にどんな力を与えようが、俺はお前に屈するつもりはねえ。お前が俺を…いや、みんなを襲ってくるのであれば、俺は、この力を使ってでもお前を倒す!」
バリアンの姿となった遊馬の目つきは、今まで以上に鋭いものだった。
遂に、激戦が始まる。バリアン世界を復活させようとする者たちと、人間界とアストラル世界を守ろうとする人間たちの戦いが…!
第9ED『Prototype《石川智晶》』
次回予告
ナレーション:遂に、互いの世界の運命をかけた激戦が始まる!
凌牙たちは、それぞれの道に進み、全ての現況であるドン・サウザンドが待つ場所へ向かう!
そんな中、凌牙の前に、バリアン8人衆の1人ピアーズが現れた!
ピアーズは、その雷鳴と共に怒涛の攻撃を凌牙にぶつけてくるのであった。
凌牙:次回、遊戯王5DXAL「凌牙VSピアーズ 水を襲う雷の衝撃!」
凌牙:「チッ、俺が一番嫌いな種族か…!」
遊戯王5DXAL豆知識コーナー!!
アストラル:「かつて、私の失われた記憶として人間界に散りばめられた100枚のナンバーズ。今では、遊馬が愛用するエクシーズモンスターとして使われている。そして、ドン・サウザンドがバリアンに用意した101から107までのナンバーズを”オーバーハンドレッド・ナンバーズ”と呼ぶ」