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第138話:『カルメの悲鳴 ベイニチア半島の終わり』







ミスティ:「この子の本当の母親よ。どうやら、この子、私をママだと思い込んでしまったみたいなの。だから、パパに頼んで、私をここまで連れてくるように頼んだらしいわ」

鬼柳:「だが、クレートの話しでは、博士の奥さんは病で亡くしている…!流石に間違えるはずがないだろ」
鬼柳は、自分が思っていることを話した。

レイバー:「ん?ちょっと待て。今、パパに頼んだと言っていなかったか?ロヴィニ博士は、この家でまだ見かけていなかったんじゃないのか?」
レイバーもまた気になったことをミスティにぶつけた。


ミスティ:「えぇ、見ていないわ。でも、この子がそう言うのよ。私と一緒にいた、あのジャガーのことをパパってね」
ミスティの口から放たれたことに、3人が少し驚く。


エマリー:「それ、どういうこと…」

鬼柳:「その子が、パパと呼ぶなら、それでいいが、お前をさらったジャガーは人間じゃない。パパと呼ぶのはおかしいだろ」
人間が動物を見てパパと呼ぶのは、論理的におかしい。


だが、彼女は、そう呼んでいるのだ。ジャガーのことをパパと…。


ミスティ:「そうね。でも、クレートさんと話した時のこと覚えている?ヴィータのペンダントに秘められた力のことを」
クレートから聞いたことを思い出す鬼柳たち。


鬼柳:「死んだ人間を蘇らせる力。博士は、この力が目当てでペンダントを見つけたんだったよな」

エマリー:「うん。でも、ペンダントにはもう一つ力があったわ。確か…」

レイバー:「人間をマインドコントロールする力」
ミスティが聞きたかった答えが、レイバーの口から出た。


レイバー:「その力が発動したとき、半径数百メートルに渡って結晶化現象が起きる。まさに、現状のこれだ」
ベイニチア半島を覆っている結晶。つまり、この事態が起きているということはマインドコントロールされた人がいるということだ。


エマリー:「も、もしかして…」

鬼柳:「その子は、マインドコントロールを受けているということか…」
鬼柳たちはミスティの膝に眠るカルメを見て、そう言った。






第8OP『Mysterious《Naifu》』






第138話:『カルメの悲鳴 ベイニチア半島の終わり』






ミスティの口から語られたこと。

それを聞いた鬼柳たちは、カルメを見つめる。



エマリー:「この子、ヴィータのペンダントに操られているの?ママ」

ミスティ:「あくまで私の予想よ。確信はないわ」
あくまで、今言ったことはミスティがそう思っているだけであって真実ではない。


鬼柳:「だが、その可能性は高いかもな」
鬼柳はミスティを見る。

ミスティは鬼柳の目を見て頷いた。

ミスティ:「あのジャガーの首にぶら下がっているもの。あれは間違いなくヴィータのペンダントよ」


レイバー:「あのバギーってやつが欲しがっていたからな。間違いないだろ」
ジャガーの首にぶら下がっているのが、本物だという確証はない。


だが、もし彼女がマインドコントロールされているのであれば、あのペンダントを破壊さえすれば、彼女は本当の現実を見てくれるはずだ。



鬼柳:「まだまだ話したいことはあるが、ここは危険だ。一旦、外に出るぞ。彼女も一緒に」

ミスティ:「そうね」
ミスティは、彼女を避けてそっと立ち上がる。


カルメ:「う…」
しかし、カルメは目を覚ましてしまった。


エマリー:「あ…」

ミスティ:「カルメちゃん」
ミスティはカルメの顔を覗く。


カルメ:「ママ…」
カルメは周りを見渡す。

カメラ映像に映っていた人たちが、周りに立っていることに驚くカルメ。


カルメ:「!、ママ…!この人達、誰…!」
カルメはミスティの裾を握り締めて、鬼柳たちを警戒する。


ミスティ:「わ、私の知り合いよ。カルメちゃん、ここは危険だから、私と一緒に外に出ましょ」
ミスティがカルメの腕を握ろうとする。

カルメ:「いやっ!」
カルメはずっと側にいたミスティから離れる。

ミスティ:「カルメちゃん!?」

カルメ:「私、ここから出ない!ママと一緒に、ここにいる!」
窓の直ぐそばに立って、カルメはそう言った。


エマリー:「ここは危険なの!お願い、言うこと聞いて!」
エマリーもカルメに強く呼びかけた。

手を差し伸べてエマリーは近づく。


カルメ:「いや、来ないで!」

エマリー:「カルメちゃん…」
いきなりそう言われたことに少しショックを受けるエマリー。


ミスティ:「カルメちゃん。目を覚まして。私は、あなたの本当のママじゃないわ」

カルメ:「!」

ミスティ:「パパも、あのジャガーじゃない、本当のパパがいるのよ。あなたは、それを忘れるつもり」
真実を教えるミスティ。


カルメは首を軽く振る。


カルメ:「私のママは、ママだけ…!ママだけなの!パパも、パパも、あれが私のパパなの!」
現実から逃げているつもりなのか、ミスティの言葉に反発するカルメ。


鬼柳:「いい加減に目を覚ますんだ」

ミスティ:「カルメちゃん!」



カルメ:「パパもママも、ずっと一緒なのー!」
カルメが大きな声で叫ぶと、周りの結晶体が輝き出した。



更に、ベイニチア半島を覆う結晶体も輝き出し、そして結晶化の増殖が再開された。








その頃、避難所は結晶化の再開を確認したいつでも、動けるように準備をしていた。



クレート:「急いで、動ける準備をするんだ!早く!」
クレートは周りに人々に指示を出す。








その頃、結晶が作った仮想の公園でネビル・コック&ランサー・デーモンと戦う恵美と亜美は―。

悪魔の調理師:『とっとと失せろっ!人間が!』
刃こぼれした包丁のような剣をブーメランのように投げ飛ばすネビル・コック。

恵美:「その言葉、そのままお返しするわ!」
恵美のブーメランタイプのデュエルギア”レフィキュル・コルタール”を投げて、ネビル・コックが投げた剣を弾き飛ばす。
弾き飛ばした剣は、近くの滑り台に突き刺さった。

悪魔の調理師:『!』

恵美:「これで終わらせるわ!」
自分の手元に戻ってきたレフィキュル・コルタールをキャッチする。


そして、レフィキュル・コルタールが眩しい輝きに包まれる。

その輝きは珍しく青く光っていた。


恵美:「光属性の波動を纏ったレフィキュル・コルタールは、躱せないわよ!」
恵美の身体の中に一番流れているデュエルエナジーの属性は光属性。

その属性波動をデュエルギアに送り込んだことで、青く輝き出したのだ。

恵美は、青く輝いたレフィキュル・コルタールを投げ飛ばす。


悪魔の調理師:『何が躱せないだ。そんなただ投げた武器など、普通に躱せる!』
ネビル・コックは、恵美が投げ飛ばしたレフィキュル・コルタールを簡単に躱した。

悪魔の調理師:『ヒャハハハ、これでお前も終わりだな。丸腰の人間がモンスターに敵うはずがない!』
ネビル・コックは、レフィキュル・コルタールの攻撃を完全に躱したと思い込み、恵美に接近する。


すると、恵美は右手をゆっくりと自分の顔付近に持ってきた。

恵美:「マルティブル・スパインキュア」
恵美はそう呟き、右手で指パッチンを鳴らした。



恵美が投げたレフィキュル・コルタールが、回転したまま静止。すると、球体のようなものが生成し、そこから無数の棘が四方を襲う。


悪魔の調理師:『ぐわっ…!』
ネビル・コックの胸に、その棘が突き刺さる。



悪魔の調理師:『へ…、やるじゃねえか…。人間を侮るのは、これっきりにした方がいいみたいだな…』
ネビル・コックは、光の屑となって消えた。


恵美:「人間も戦う生き物に過ぎないの…。戦ってはいられない生物。だから私たちも、戦っている。守るべきものを守るため。そして、救うものを救うために」
恵美の手元にレフィキュル・コルタールが戻ってきた。





その頃、ランサー・デーモンと戦闘する亜美も、有利な立場になって戦っていた。



ランサー・デーモン:『ち、近づけん…』
右手についているスピアを床に突き刺し、目の前に堂々と立つ亜美を見てそう言った。


亜美の手には、ブーメランタイプの”スフィア・エッジ”が握られている。

亜美:「近づけさせないようにしているのよ。私のデュエルギアは、遠距離メインの攻撃しかないから」

ランサー・デーモン:『小娘1人に、ここまで苦戦するとは思っていなかったぞ。だが、これでもっと本気を出して戦える!』

亜美:「その言い方、まるで今まで本気を出していなかったみたいな言い方ね」

ランサー・デーモン:『本気を見せてくれる!”ミスト・ボディ”!!』
ランサー・デーモンの身体が霧となり、その場から消える。


亜美:「!」
目の前にいたはずのランサー・デーモンが消えたことに少し動揺する亜美。

ランサー・デーモン:『お前には、見えまい。俺の姿が。お前はもう俺に触れることすら敵わない』
周りから聞こえるランサー・デーモンの声。

周りを見渡しても、ランサー・デーモンの姿はない。

亜美:「すぅー、はー」
息を吸っては、すぐに息を吐き、心を切り返す。


亜美:「大丈夫。私だって、こういうことが起きることを想定して、強くなろうと努力してきたんだから」
スフィア・エッジを両手で持ち、頭上で回転させる。

スフィア・エッジは、亜美の頭上で静止して回転していた。

更に、スフィア・エッジが眩しく光る。


ランサー・デーモン:『なんだ!この光は!ただの光じゃないな!?』

亜美:「私に刃を向ける敵を見つけるための光よ」

ランサー・デーモン:『ぐわっ!』
スフィア・エッジから放たれる光によって、ミスト・ボディの効果が切れた。


亜美:「そこ!アンフィニ・スライサー!」
亜美の頭上で回るスフィア・エッジの周りについている数えきれないほどの青い羽がブーメラン本体から分離し、一斉にランサー・デーモンに向かう。


ランサー・デーモン:『こ、こんなことが…!』
自分の負けが信じられない。そう思ったときには、ランサー・デーモンの身体は斬られていた。


ランサー・デーモン:『ぐわああああ!』
無数の小さい青い羽がランサー・デーモンの身体全体を斬り刻んでいく。


亜美:「今のは、光の属性波動を使った攻撃よ。あなたは、闇属性。あなたにとっては相性最悪ね」
亜美が頭上で回転するスフィア・エッジを手に持つ。

ランサー・デーモン:『お、おの…れ…』
バタッと倒れたランサー・デーモン。光の屑となって消える。




これで、恵美も亜美も敵との勝負に勝ったことになる。




未来:「恵美さん!」
自分たちが入ってきた扉から未来が入ってきた。


恵美:「未来さん!」

亜美:「よかった。無事だったんだ!バギーは?」

未来:「とりあえず折って来れないようにはしたわ。それよりも、さっき外を見たんですが、また結晶化の増殖が始まっているようです」

恵美:「なんですって!?」
未来が言った発言に驚く恵美。


亜美:「上で何かあったのかな…」
パパたちが入っていった扉を見つめる亜美。

未来:「急いだ方がいいかもしれませんね」

恵美:「えぇ、行きましょ」
恵美たち3人は、吹雪や鬼柳たちが開けた扉の向こうへ進む。

扉を潜った瞬間、結晶が作った仮想の世界が崩壊し始めた。








その頃、同じく結晶によって作り出されたビルの屋上で、デーモンズ・ミラー軍団と戦う吹雪は、相棒とも言えるレッドアイズ・ブラック・ドラゴンと共に、敵を駆逐していた。


レッドアイズ・ブラック・ドラゴンが黒炎弾を放ち敵を倒していく中、デーモンズ・ミラー数体がレッドアイズの背後に回り、手に持つ鏡からビームを放ちレッドアイズを襲う。

レッドアイズは、苦しそうに雄叫びを上げる。

吹雪:「レッドアイズ!」
吹雪はレッドアイズ・ガレオンの銃口を、レッドアイズの背後に回ったデーモンズ・ミラーに向けて、赤い弾丸を発砲し倒していく。



吹雪:「大丈夫か!レッドアイズ!」
吹雪がレッドアイズに呼びかけると、レッドアイズは、吠えながら立ち上がった。

吹雪:「よかった、無事みたいだな」
レッドアイズの無事を確認して安心した吹雪。


しかし、大量にいるデーモンズ・ミラーの方を見て、顔の表情は一変する。


吹雪:「流石に、この数相手にゆっくりはしていられないよね」
吹雪がそう言うと、レッドアイズがいきなり雄叫びを上げた。

吹雪:「レッドアイズ…」
レッドアイズ・ブラック・ドラゴンの気持ちを受け止める吹雪。

レッドアイズも吹雪を見つめる。

吹雪:「フッ、そうだな、レッドアイズ。あれを使って、敵を倒すとしよう!」
吹雪が1枚のカードを手に取る。


吹雪:「更なる闇よ。黒炎の炎となってレッドアイズを新たな姿へと顕現せよ!」
レッドアイズ・ブラック・ドラゴンが炎に包まれ、真の姿を現す。

吹雪:「レッドアイズ・ダークネス・ドラゴン!!」
黒き竜は、新たな闇の力を手に入れ進化した。それが”真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネス・ドラゴン)”だ。

そして、レッドアイズが進化したと共に、吹雪が手に持つレッドアイズ・ガレオンも姿を変える。


吹雪:「レッドアイズ・ガレオン-ダークネス!!」
見た目はレッドアイズ・ガレオンと同じだが、砲身下部についている刃の形状が変化し、細部の色も変化した吹雪の新たなデュエルギア”レッドアイズ・ガレオン-ダークネス”。



吹雪:「ダークネス・ギガ・フレイム!!」
レッドアイズ・ダークネス・ドラゴンが口から火炎を噴射し、デーモンズ・ミラーを次々と倒す。



吹雪:「ふん!」
レッドアイズ・ガレオン-ダークネスの銃口を、デーモンズ・ミラーに向けて、レーザーのように真っ直ぐ飛ぶ炎がデーモンズ・ミラーを撃ち抜いた。

撃ち抜けれた敵は、その場所から炎に包まれ燃え尽きる。


さっきも言ったが、ゆっくりはしていられない。

吹雪とレッドアイズは、協力し合い敵軍団を次々と倒す。





カルメの部屋――



叫ぶカルメに反応するかのように、結晶体が増殖を始める。


それは外だけではなく、家の中を覆う結晶も同様だった。


鬼柳:「また増殖か…!」
窓の外から結晶体が増殖していることに気付く鬼柳。


そして、廊下に広がっていた結晶体が、カルメの部屋の中にまで広がってきた。


レイバー:「チッ、中にまで広がってきたぞ!」
扉をこじ開けて、増殖する結晶体を見て、少し慌てるレイバー。



カルメ:「パパも、ママもずっと一緒なの!!」
涙を流すカルメ。


エマリー:「現実を見て!カルメちゃん!」
エマリーがカルメに呼びかける。


カルメ:「これが現実なの!ママは渡さない!!」
カルメがそう言った瞬間、窓から入ってきた結晶体が、氷柱のように先が鋭くなり、如意棒のように伸びて、エマリーを襲う。

ミスティ:「エマリー!」
ミスティはエマリーを守るかのように覆いかぶさる。




ロヴィニ・ジャガー:「カルメ!」
窓からロヴィニ・ジャガーが、部屋の中に入ってきた。


カルメ:「パパ…」

ロヴィニ・ジャガー:「カルメ、どうしたんだ?何があった?」

カルメ:「パパは私のパパだよね…?」
カルメの質問が理解できなかったのか、ジャガーは「え」とつい言葉が出てしまった。


カルメ:「パパは、パパだよね?」
同じことをもう一度聞くカルメ。

ロヴィニ・ジャガーは一度息を飲んでこう言った。

ロヴィニ・ジャガー:「勿論だ。私は、カルメのパパだ」
ジャガーは優しい声でそう言った。


カルメ:「よかった…」
カルメに笑顔が戻る。


ミスティ:「ちょっと、待って!カルメちゃん!その人は…!」
ミスティがカルメに声をかけようとしたとき、エマリーが母親の手首を握る。


エマリー:「ママ!ここは危険だから、一旦外に出よう!」

鬼柳:「急げ!ミスティ!!」
部屋の中にずっといたら危ないのは、自分でもわかっている。

今は、一度下がるしかないの…。そんなことを思いつつ、エマリーに引っ張られながら、ここを出ようとする。



カルメ:「あっ、パパ。ママが連れていかれる!止めて!」
カルメが指を指してそう言うロヴィニ・ジャガーはミスティたちの方を振り向き、首にぶら下がるヴィータのペンダントが輝く。



すると、部屋全体の風景が変わった。いや、変わり過ぎだ。

まるで、草原のような風景が、自分たちの前に広がる。


レイバー:「くっ、また、あのペンダントの力か…!」
ジャガーの首にぶら下がるヴィータのペンダント。それを憎たらしい目で見るレイバー。



エマリー:「どこかに入り口があるはずだよ!」
ミスティの手首を引っ張り、なんとしてもここから出ようとするエマリー。




ロヴィニ・ジャガー:「させるか!」
ロヴィニ・ジャガーがエマリーに向かって飛び掛かる。


エマリー:「!」

ミスティ:「エマリー!」
娘を守るために、エマリーを抱きしめるミスティ。


その光景を見たカルメは、何かを思い出したかのように、表情が少し変わった。


随分昔にも、同じようなことがあった…。

病気で倒れて、入院した人に強くぎゅっと抱きしめられた…。

でも、顔が思い出せない。


カルメ:「うっ!」
頭痛に苦しめられるカルメ。



ロヴィニ・ジャガーが、エマリーとミスティに迫る。


だが、別方向から攻撃が放たれ、ロヴィニ・ジャガーは空中で、その攻撃を躱し一度後ろに下がる。


鬼柳:「俺の妻と愛娘に手出しはさせない!」
鬼柳が、インフェルニティ・パイソンの銃口をジャガーに向けてそう言った。



エマリー:「パパ!」

鬼柳:「こいつは、俺が何とかする。ミスティ、お前はお前の使命を果たせ!」
鬼柳にそう言われ、ミスティは頷いた。



カルメ:「頭が…痛い…」
涙を少し流しながら頭を抱えるカルメ。

その様子を見たミスティが、彼女に近づく。


エマリー:「ママ!」

ミスティ:「大丈夫よ。ここはママに任せなさい」
愛娘に笑顔でそう言って、ミスティは今自分がやらなければいけないことを…使命を果たそうとする。


レイバー:「あの女、こんなときに何をしようとしているんだ!」
この状況で、妙な動きを見せたミスティに強く疑問を抱くレイバー。


エマリー:『ママ…、エマリーちゃんを助けようとしているんだね』
母の背中姿を見て、エマリーは思った。


ママは、彼女を救うために、わざわざここにずっといたんだ。パパは、そんなママを信じたんだ…。



ロヴィニ・ジャガー:「カルメに近づくな!」
ジャガーが走ってくる。



鬼柳:「ストロング・ゼロ-ランダムシュート!!」
黒い光の弾丸を放って攻撃するストロング・ゼロの乱れ打ちがジャガーの動きを限定する。


ロヴィニ・ジャガー:「くっ」
放たれた弾を躱すのに精一杯で、カルメの方に近づけないロヴィニ・ジャガー。


鬼柳:「悪いが、妻の邪魔はさせないぜ」
インフェルニティ・パイソンを右手にカッコよくポーズを決めて鬼柳は言った。




ミスティ:「カルメちゃん!」
ミスティは彼女の名前を叫んだ。


カルメ:「いや、来ないでー!」
頭を抱えて、カルメは大きな声で叫んだ。





外の結晶体の増殖が更に早まる。



避難している島の住民たちもどうすればいいのか分からず慌てていた。



クレート:「くそっ、ここまでか。住民たちを最後の地区に移動させる!急げ!!」
クレートの指示で、研究仲間たちが住民の避難を開始した。


住民たちはクレートたちの指示で移動を始めた。





その頃、デーモンズ・ミラー軍団と戦う吹雪とレッドアイズ・ダークネス・ドラゴンは、最後の仕上げにかかっていた。


吹雪:「ダークネス・ギガ・フレイム!!」
レッドアイズ・ダークネス・ドラゴンが口から地獄の炎を放射し、次々とデーモンズ・ミラー軍団を倒していく。


それでも、まだ多少の数は残っていた。

吹雪:「さて、最後の仕上げだね」
だが、吹雪に取って、それは想定の範囲内であった。


レッドアイズ・ガレオン-ダークネスを構えて、銃口にエネルギーをチャージする。

細部の赤いラインが光る。


狙いを定め、吹雪は引き金を引いた。


吹雪:「ダークネス・カロリック!!」
チャージしたエネルギーを放ち、敵を次々と倒す。


吹雪:「はああ!」
380度回転し、周りにいる敵を一掃する。


デーモンズ・ミラー軍団を全て撃破。

レッドアイズ・ダークネス・ドラゴンは、その場から消え、吹雪もデュエルギアを収める。



亜美:「パパ!」
屋上の扉の向こうから亜美と恵美、そして未来が走ってきた。


恵美:「よかった。無事だったのね」

吹雪:「あぁ、君たちも無事で何よりだ」
妻と娘の顔を見て一安心した吹雪。

未来:「それで、他の皆さんは?」

吹雪:「あの扉の奥だよ」
吹雪が指を指した方にある違和感のある扉。


恵美:「急ぎましょう。早く手を打たないと」
恵美がそう言うと、吹雪が「そうだね」と頷き、その扉の向こうにある階段を上がって行く。









草原のような仮想世界で戦う鬼柳とロヴィニ・ジャガー。

激しい攻防戦が繰り広げられていた。


ロヴィニ・ジャガーは、威嚇しながら鬼柳に飛びついて来ようとする。

鬼柳:「!」
インフェルニティ・パイソンの銃口をジャガーに向けて弾丸を放つが、ジャガーは躱し鬼柳に接近する。


今動いても、もう遅い。そう思った鬼柳は、ジャガーの攻撃を受けることを覚悟した。



レイバー:「ガスト・スライサー!」
風の斬撃がジャガーを襲い、鬼柳は難を逃れた。

鬼柳はすぐ側に来たレイバーを見る。

今の攻撃はレイバーが持つトルネード・アロンダイトから放たれたものだ。


鬼柳:「レイバー…」

レイバー:「勘違いするな。俺は俺の役目を果たすだけだ。奴の首を落とし、ペンダントを破壊する!」
トルネード・アロンダイトを両手で握り、ジャガーに牙を向いた。

ロヴィニ・ジャガー:「貴様に、このペンダントを渡すわけにはいかない」

レイバー:「渡されるつもりもない。今言ったばっかしだが、俺の目的は、お前の首をもらい、そのペンダントを壊すことだ!でえええい!!」
トルネード・アロンダイトを手放さないよう強く握り占める。


ロヴィニ・ジャガーは少しずつ目つきを変え、雄叫びを上げた。







結晶体に囲まれたカルメ。


ミスティ:「カルメちゃん…」
ミスティがゆっくりと近づく。

カルメ:「いや、来ないで!私にはパパもママもいるんだから!」
カルメがそう叫ぶと、ミスティの目の前に一本の結晶の柱が現れ、ミスティの行く手を阻んだ。


ミスティは少し驚いた。

ミスティ:『私のことも見えていない。本当のパパとママ、そして仮想のママである私と、あのパパも見えていないんだわ』
鬼柳、レイバーと戦うロヴィニ・ジャガーを見るミスティ。


ミスティは目の前に現れた結晶の柱を避けて、再びカルメに近づく。



ミスティ:「いつまでも現実から目を逸らしてはいけないわ、カルメちゃん」
ミスティがそう声をかけると、カルメは強く首を振る。


ミスティ:「あなたの本当のパパとママは、すぐ側であなたのことを見ているはずよ」
ミスティは優しい声でカルメに言った。

カルメは少しずつ目を開く。

すると、すぐ側には一枚の写真が落ちていた。



いつの写真だろう。写真の真ん中にいる自分は、まだかなり幼い気がする。

けど、それ以前に私を挟んで立つ男と女は誰…。


???:『カルメ、パパと一緒に遊ぼうか』

カルメ:『わーい!パパ、鬼ごっこしよう!パパが鬼ね!』

???:『いいだろう。けど、パパは早いぞ。そら逃げろー!』
男は逃げる楽しそうに悲鳴を上げるカルメを追いかける。


そんな楽しそうな2人を見つめる女性。


カルメ:『ママ!一緒に遊ぼうよ!』
カルメはシートの上に座る女性に手を振った。


自分のことを優しく見てくれた2人の顔が思い出せないカルメ。


カルメ:「私の、パパと…ママ…。うっ!ああああああ!」
今まで以上に強烈な頭痛がカルメを襲う。

結晶体が更にカルメを囲う。

ミスティ:「カルメちゃん!」


ロヴィニ・ジャガー:「これ以上、娘を苦しませはしない!」
鬼柳とレイバーに向けていた目線がミスティに向けられる。


鬼柳:「ミスティ!逃げろ!奴は、お前を狙っているぞ!」
ジャガーの目線がミスティに向いたことに気付いた鬼柳は、ミスティに急いで呼びかける。

だが、ミスティはその場から逃げず、逆にジャガーに目線を向けた。


エマリー:「ママ!」
逃げようとしないママの行動に驚くエマリー。


ロヴィニ・ジャガー:「娘から離れろ。お前の存在が、娘を苦しめている…!」

ミスティ:「いえ違うわ。彼女を苦しめているのは、あなたよ」

ロヴィニ・ジャガー:「何…!」

ミスティ:「あなたの存在がカルメちゃんを、現実から引き離そうとしている。そのペンダントの力でね」
ミスティがジャガーの首にぶら下がるヴィータのペンダントを指さす。

ミスティ:「ここへ来てからずっと思っていたの。あなたが一体、何者なのか」

ロヴィニ・ジャガー:「……」

ミスティ:「あなたも目を覚ましなさい!ロヴィニ博士!」
ミスティがジャガーに向かってそう叫んだ。

鬼柳やエマリー、レイバーはそれを聞いて、目を点にした。







第8ED『あしあと《Clair(クレア)》』






次回予告

ナレーション:現実から目を逸らすカルメに、優しく語り掛けるミスティ。

そんな中、ロヴィニ博士に復讐を誓うレイバーが、抑えていた牙を剥き出しにする!

どんなことをしても復讐を誓おうとするレイバーに自分を重ねた鬼柳は、彼を止めようと動き出す。

この戦いに終止符は打たれるのか。いや、終止符を打つのは一体誰なのか!

鬼柳:次回、遊戯王5DXAL「家族の絆は永遠」


鬼柳:「レイバー、歯を食いしばれ!」



遊戯王5DXAL豆知識コーナー!!



吹雪:「僕が愛用する”レッドアイズ・ガレオン”はリボルバー銃の砲身にブレードが付いた近距離中距離を得意とするデュエルギアだよ。エネルギーを溜めて放つ赤い光線フレア・バーンで敵を倒すよ」
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