第137話:『結晶が作り出した世界』
バギーを倒した未来は走って先を急ぐ。
未来:『皆さん、無事でいてください』
みんなが、どこへ向かったかはわからないが、とりあえず走って、先へ中へ入ったみんなと合流しようと試みる未来。
その頃、鬼柳たちは走って先を急いでいた。
エマリー:『ママ…』
心の中でエマリーは囁いた。
第8OP『Mysterious《Naifu》』
第137話:『結晶が作り出した世界』
鬼柳一行は、博士に復讐し家族の仇を打とうとするレイバーと共に行動し、長い廊下を走っていた。
恵美:「随分、長い廊下ね。家の中とは思えないほどだわ」
出口が見えない長い廊下を走りながら、恵美は呟いた。
吹雪:「…」
鬼柳:「どうやら、アンタも築いているようだな」
吹雪の顔を見た鬼柳がそう聞いた。
吹雪:「あぁ、どうやら僕たち、さっきからずっと同じ廊下をグルグル回っているみたいだ」
その場に止まり、吹雪が周りを見渡してそう言った。
亜美:「えっ!でも私たち、ずっと真っ直ぐ走っていたよ」
エマリー:「そうですよ。そんな、同じ場所をずっと走っているなんて」
吹雪の言葉が信じられない亜美とエマリー。
レイバーは、結晶に覆われた壁に触れて、目を瞑る。
レイバー:「幻術か」
壁に手を振れたまま、レイバーはそう呟く。
恵美:「幻術…」
レイバー:「どうやら、俺たちは、この建物に入った時点で幻術にかかっていたみたいだな」
レイバーは剣タイプデュエルギアのトルネード・アロンダイトを握ってそう呟く。
鬼柳:「幻術か。俺はこの力で一度痛い目を見たことがあったな」
懐かしそうに鬼柳はそう言った。
1年半以上も前、ワックスポワロで遭ったデニムという幻術使いのデュエリスト。
俺はそいつの幻術に一度かかり、嫌な記憶を無理矢理思い出さられ、苦しい気持ちになったことがある。
エマリー:「どうするの?幻術の中にいるってことは、このまま進んでもママに会えないってことでしょ…!」
鬼柳:「だろうな」
落ち着いた表情で鬼柳は一言言った。
エマリー:「どうして、そんなに落ち着いていられるの!パパ!」
こっちは慌てているのに、冷静になっている実の父に、怒りを飛ばす。
鬼柳:「落ち着け、エマリー。俺たちはただ廊下をずっと走っていたんだ」
エマリー:「だ、だから、何よ」
パパが言っていることが理解できないエマリー。
鬼柳は、窓がある壁とは逆の壁に触れた。
鬼柳:「話しは簡単じゃねえか」
鬼柳はインフェルニティ・パイソンを手に持ち、銃口を壁に向ける。
鬼柳:「廊下じゃないところに出ればいいだけねえか」
インフェルニティ・パイソンから弾丸を数発壁に向かって発砲し、一部の壁に亀裂が入った。
その部分を、鬼柳は思い切って蹴り、人が潜るれるほどの穴が壁にできた。
吹雪:「無茶苦茶な方法だね」
エマリー:「パパ、勝手に人ん家の壁を壊しちゃダメなんだよ」
鬼柳:「緊急事態だ。今回だけは見逃してくれ」
鬼柳は、エマリーにそう言って穴を潜った。
そして、鬼柳は潜ってから周りに広がる攻撃に言葉が出なかった。
恵美:「え?」
レイバー:「なんだ…。ここは…!」
他のみんなも開いた口が塞がらない。
なぜなら、みんなの目の前に広がる光景は、滑り台やブランコ、鉄棒などよく街中で見るような公園だったからだ。
亜美「家の中に、こんな場所が…!」
吹雪:「家の中に、こんな場所が歩いわけないでしょ。どうやら、僕たちまだ幻術の中にいるみたいだよ」
自分たちがまだ幻術の中にいると思っている吹雪。
しかし、鬼柳が空けた穴を潜ってから、床を触るレイバーがこう言った。
レイバー:「今、幻術の力は感じない。」
レイバーは立ち上がってそう言った。
吹雪:「じゃあ、僕たちの目に映る、これは…!」
レイバー:「本物の光景か。しかし、この光景は一体…!」
鬼柳たちが周りを見渡している中、ロヴィニ・ジャガーの影が、彼らにバレないように近づく。
ロヴィニ・ジャガーは1本の電柱の上に現れる。
ロヴィニ・ジャガー:『結晶が生み出した仮想世界で、お前たちは娘を楽しませてくれるか』
ロヴィニ・ジャガーは空を見上げた。
そして、視線の先に2つほどピカッと輝いた。
それを見たジャガーは満足したのか、その場から消えた。
そして、ピカッと輝いた場所から2つの影が徐々にこちらに近づいてくる。
その影に、鬼柳たちは気付いておらず、近づいてくる何かが、鬼柳たちに向かって攻撃を放った。
レイバー:「!」
何か攻撃が近づいてくることに即座に気付いたのはレイバーと鬼柳であった。
鬼柳:「みんな、伏せろ!」
鬼柳の慌てた声を聞いたみんなは、言われるがままに深くしゃがみ込んだ。
レイバーもトルネード・アロンダイトを持っていたが、攻撃が一つではないことに気付き、みんなと一緒にしゃがみ込む。
放たれた攻撃は、自分たちがここへ入ってきた穴の側にヒットし、その穴は今の攻撃で塞がれてしまった。
???:『ヒャハハハ、誰か来たかと思えば、人間じゃねえか!』
???:『退屈しのぎにもなりやしない』
宙を浮かぶ2体のモンスター。
悪魔の調理師:『地獄の鍋にすぐに放り出してやる。ヒャハハハ!』
刃がボロボロの包丁のような剣と、右手に海賊の鈎手がついて”悪魔の調理師(ネビル・コック)”。
ランサー・デーモン:『人間を敵にしても楽しくないが、俺のランスですぐに突き刺してくれる』
両手にスピアが装備されている骸骨の面をつけた”ランサー・デーモン”。
鬼柳たちに向かって攻撃を放ったのは、この2体であった。
亜美:「も、モンスター…!どうして、こんなところに!」
鬼柳:「こんな場所に現れたんだ。おそらく、あのジャガーの手下だろうな」
吹雪:「つまり、ヴィータのペンダントの力だね」
吹雪がそう言うと、鬼柳は「あぁ」となぜか嬉しそうに言った。
ランサー・デーモン:『俺が先にやらせてもらうぞ』
悪魔の調理師:『あ!このぉ!抜け駆けはなしだ!』
悪魔の調理師を置いて、ランサー・デーモンが、鬼柳たちに接近する。
自分たちにランサー・デーモンが近づくに連れて、両手についているスピアが恐ろしく見える。
ランサー・デーモンが、右手のスピアを突き刺す。
恵美:「レフィキュル!」
全身包帯が撒かれ、前髪が刃物のようになった天使が現れ、接近するランサー・デーモンに一発蹴りをお見舞いする。
ランサー・デーモン:『うっ!』
ランサー・デーモンは、一度後ろに下がる。
悪魔の調理師:『へっ!抜け駆けするからだ!俺の獲物だ!』
キラッと海賊フックが光る。
亜美:「スフィア・エッジ!」
亜美が円状のブーメランを悪魔の調理師に向かって投げ飛ばす。
悪魔の調理師は、右手の海賊フックでそれを受け止める。
悪魔の調理師:『ぐおっ!』
予想以上のパワーだったのか、悪魔の調理師は一度後ろに下がる。
ランサー・デーモン:『貴様も、他人のこと言えんな』
悪魔の調理師:『チッ』
そう言われて悔しかったのか舌打ちをする悪魔の調理師。
ランサー・デーモンに一発蹴りをお見舞いした”堕天使ナース-レフィキュル”が、恵美の前に立つ。
そして、亜美が悪魔の調理師に向かって投げ飛ばした”トラファスフィア”の、ブーメランタイプのデュエルギア”スフィア・エッジ”が、亜美の手元に戻ってくる。
スフィア・エッジ。円状で、周りには青い羽のような形をした刃が無数についている。亜美専用のデュエルギアだ。
吹雪:「2人とも!」
いきなり前に出た二人に驚く吹雪。
恵美:「ここは、私と亜美が対処します」
亜美:「みんなは先に行って!」
亜美が、みんなに行くように指示を出す。
エマリー:「で、でも!」
一緒に、ここまで来てくれた亜美がそう言ったことに戸惑ってしまう。
亜美:「ママを助けるんでしょ?」
エマリー:「あ…」
亜美:「なら、あなたは行かなくちゃ」
恵美:「さあ、早く!」
恵美が吹雪と鬼柳を見てそう言った。
吹雪:「恵美…、亜美。わかった。ここは、2人に任せるよ。鬼柳君、行くよ!」
鬼柳:「わかった。エマリー!」
吹雪と鬼柳、そしてレイバーは先を急ぐ。
エマリー:「ありがとう、恵美」
亜美:「ミスティさんを必ず助けてね、エマリー」
エマリー:「ええ」
エマリーもパパたちを後を追った。
悪魔の調理師:『お前たちが相手か?ヒャハハハ、その度胸は認めてやるよ!』
ランサー・デーモン:『女が相手になるとはな。尚更、敵にならんな』
ランサー・デーモンが、そう呟く。
恵美:「あら、女って言うのは、本気になると怖いのよ」
あまり見ない恵美の怖い目。右手を前に出すと、堕天使ナース-レフィキュルが紫色の光に包まれ、恵美の手にデュエルギアとなって姿を変えた。
恵美:「レフィキュル・コルタール」
病院でよく見るメスのような形に似たブーメランが恵美の手に持たれる。
恵美専用のブーメランタイプデュエルギア”レフィキュル・コルタール”。堕天使ナース-レフィキュルから変化したデュエルギア。
悪魔の調理師:『投げ飛ばす武器か。そっちの女の奴もそうだが、当たらなければ意味がないぞ』
2人をバカにするような口調で、悪魔の調理師入った。
亜美:「あなたたちに構っている暇は私たちにはないの。女を怒らせると怖いってことを、あんたちに教えて、私たちは先を急ぐわ」
亜美はそう言って、スフィア・エッジを投げ飛ばした。
その頃、カルメの部屋にいたミスティ。
自分の膝ですやすや眠るカルメの頭を撫でていた。
カルメ:『ママ!』
頭の中に響くカルメの声。なぜ、自分のことをママと呼ぶのか。それがずっと気になっていたのだ。
ベットの側にあるテーブルの上にある写真立てを見るミスティ。
そこには、小さい頃のカルメとロヴィニ博士、そして亡くなった母親と思われる人物が映っていた。
ミスティは写真立てを手に取り、写真に映るカルメの母親ヴィラを見つめる。
自分自身が認めるほど、よく似ている。
世界には自分に似た人が3人はいると言われているが、それはあくまでことわざみたいなもの。
本当にいるとは信じていなかった。だが、この写真を見て、その言葉を信じたくなった自分が、ここにいる。
しかし、それでも、自分はカルメの母親ではない。
本人も知っているはずだ。本当の母親は既に死んでいることを…。
なら、私が別人だとすぐにわかるはずだ。
それともう一つ。彼女の父親だ。
ミスティ:『私が、ここに来てから、ロヴィニ博士の姿は見ていない。けど、カルメちゃんは、あのジャガーをパパと呼んでいた』
人間ですらない生き物を「パパ」と呼ぶなんておかしい。
それに、彼女の実父ロヴィニ博士は母親のヴィラと違って生きている。ずっと、彼女の世話をしていたはずなのだから、彼女自身が忘れるはずがない。
クレート:『マインドコントロール』
ミスティの頭の中に、クレートの言葉が浮かび上がった。
避難所でクレートから聞いた話を思い出すミスティ。
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クレート:『ヴィータのペンダントは、死んだ人を蘇生させる謎の力を持っています。ですが、本当にそれだけなのか。私は少し前から胸騒ぎがして、個別でヴィータのペンダントについて調査をしたんです。そして、此間見つけてしまったんです。ヴィータのペンダントに宿るもう一つの力を』
エマリー:『もう一つの力?』
クレート:『それは、人間をマインドコントロールしてしまう力。ヴィータのペンダントに埋め込まれている宝玉を見てしまったものは、その綺麗さに取り込まれるかのように、精神操作されて、意志を持たないはずのペンダントに乗っ取られてしまうと言う能力らしいです』
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ミスティ:「!」
あの時はあまり信じていなかった。
でも、もしクレートさんの言っていることが本当だったら…。
カルメがパパと呼ぶ、あのジャガーの首にはヴィータのペンダントがぶら下がっていることに、ミスティは気付いていた。
ミスティ:『まさか、あのペンダントの力で精神操作を受けているんじゃ…』
あのジャガーが、カルメちゃんの精神を乗っ取っている…。
ミスティはそう思った。だが、そうとも言い切れない。
ミスティはカルメに気遣うジャガーも姿を思い出す。
人間のように優しく、彼女が望むことを何でもやってくれる彼が、彼女を精神操作しているようには正直見えない。
本当の家族のように接する2人を見たら、あれが偽りの家族に見えなくもない。
ミスティは再び写真に映るロヴィニ博士を見る。
さっきも言ったが、ロヴィニ博士は今だ見つかっていない。
そう見つかっていないのだ。この家の中にもいる形跡がないのだ。
そんなことを思っていと、ミスティの頭にジャガーの顔と声が思い浮かばれた。
ミスティ:『もしかして…。いや、クレートさんの話しの中じゃ、人間をマインドコントロールする力のことしか言っていなかったわよね……。でも、もしまだ隠された力があるとしたら……!』
ミスティが色々と思い込んでいると、寝ているカルメの頭が動く。
気持ちよさそうに寝ているカルメを起こすわけにはいかない。
ミスティは写真立てをテーブルに再び起き、彼女を起こさないよう、じっと座った。
恵美と亜美を置いて、先を急ぐ鬼柳、エマリー、吹雪、そしてレイバー。
結晶で作られたと思われる階段を上っていた。
実は、あの謎の公園を出た後、天井が見えないほど高い広場に出てしまい、ずっと続く階段を上っていたのだ。
エマリー:「この階段、いつまで続くの…」
少し疲れたのか、息を切らしながらエマリーは言った。
レイバー:「くそっ、あのジャガーの仕業か。家の中を無造作に変えて…」
吹雪:「僕たちは、あの生き物に遊ばれているだけみたいだね」
鬼柳:「それでも、今は前に進むしかねえんだ!」
先頭を走る鬼柳が、更に早く走る。
すると、目の前に扉が見えてきた。
妙なところに扉があるため、気にはしたが、今は考えている暇はない。鬼柳は、扉の直ぐそばに立つとドアノブをすぐに回し、扉を開けた。
扉の向こうから、眩しい光が、こちらを照らした。
鬼柳:「ここは…」
扉を開けた瞬間に見えたもの。
光り輝く太陽が、すぐ側にあるように見えた。
なぜなら、彼らが着いた場所は、高層ビルの屋上だったからだ。
エマリー:「今度は、ビルの屋上…!」
レイバー:「これも、幻術によるものじゃないな」
扉を潜ってすぐの地面を触って、幻術ではないよレイバーが断言した。
鬼柳は、屋上から真下を見下ろした。
かなり高いビルだが、気になることが一つあった。
車が一台も走っていない。それどころか通行人の姿すらいなかった。
鬼柳:「さっきの公園と同じだな。ここは……ん?」
鬼柳は上空を見た。
何かがこちらに近づいてくるのに、鬼柳は気付いた。
鬼柳:「あれは…」
1つや2つじゃない。無数の何かが上空を飛んでいる。
鬼柳は目を細めて見ると、丸い鏡を持った小さい龍たちがこちらに来ている。
鬼柳:「くそっ、また敵だ…!」
近づいてくる奴らが敵だとわかった鬼柳。
吹雪たちも、鬼柳が見る方を見た。
レイバー:「あれは確か…」
吹雪:「悪魔の鏡。デーモンズ・ミラーだね」
こちらに来ているのはデュエルモンスターズの通常モンスターでもある”悪魔の鏡(デーモンズ・ミラー)”であった。
その数は、目で追えないほど大量にいた。
デーモンズ・ミラーは、手に持っている鏡から鬼柳たちに向かって、光線を放ってきた。
エマリー:「こ、攻撃してきたよ!?」
レイバー:「やるしかないか」
レイバーは、トルネードトルーパーのカードを手に持ち、モンスターを召喚して反撃を試みる―。
吹雪:「”レッドアイズ・ブラック・ドラゴン”!!」
と思ったら、吹雪が赤い眼の黒い竜を召喚した。
デュエルモンスターズ界の中でも、有名なレアカード”真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラック・ドラゴン)”だ。
吹雪:「黒炎弾!!」
レッドアイズ・ブラック・ドラゴンが、口から炎で生成された球体を放ち、デーモンズ・ミラー軍団が放ってきた攻撃をかき消し、更にそのまま、敵を多数倒した。
吹雪:「君たちは先を急ぐんだ!ここは僕が相手をする!」
吹雪は、鬼柳たちの方を振り向いてそう言った。
鬼柳:「アンタ…」
吹雪:「奥さん、必ず助けるんだよ。鬼柳君」
30代後半と言う年齢にも関わらず、女性のような美貌を持つイケメンな吹雪が、鬼柳に向かってウインクをする。
鬼柳:「フッ、ああ。恩にきる」
鬼柳は、ミスティとレイバー、3人と一緒に、このビルの屋上にある入ってきた扉ではないもう一つの扉を開ける。
レイバー:「な、なんだ…、こいつは…」
唖然とするレイバー。
屋上にいるはずなので、下に降りるための階段があると思えば目に映ったのは、宇宙空間のような場所で、宙に浮いた階段が上へと向かっていた。
鬼柳:「その反応、もう無意味だぞ。どうせ、俺たちは敵の陣営の中にいるんだ。さっきの公園といい、ビルの屋上といい、妙な世界に迷い込んでいるんだ。今は、突き進むのみだ」
鬼柳は先頭を走って行く。
エマリー:「あ、待ってよ!パパ」
エマリーが後を追い、更にその後ろをレイバーが追う。
吹雪:「行ったみたいだね」
鬼柳たちが行ったことを確認する吹雪。
目の前を再び見る吹雪。
さっきの攻撃で減らしたと思うが、あまりにも多い数のデーモンズ・ミラーなので、その実感が沸かない。
吹雪:「さて、レッドアイズ。僕と一緒に戦ってくれるよね?」
吹雪がそう聞くと、吹雪に応えているつもりなのか、大きく雄叫びを上げた。
吹雪:「うん、流石は僕のレッドアイズ。それじゃあ行くよ!」
吹雪が右手を前に差し伸べる。
吹雪:「レッドアイズ・ガレオン!!」
レッドアイズ・ブラック・ドラゴンを模った吹雪専用のデュエルギア。
リボルバー銃とナイフが合わさったリボルバーブレードタイプのデュエルギア”レッドアイズ・ガレオン”だ。
吹雪:「はっ!」
レッドアイズ・ガレオンから粒子を圧縮してできた赤い弾丸を連続で放ち、デーモンズ・ミラーが持つ鏡を次々と割っていく。
そして、レッドアイズ・ブラック・ドラゴンが黒炎弾を放ち、敵を次々と倒していく。
レッドアイズ・ガレオンはリボルバータイプだが、弾は粒子を圧縮して生成した弾を放つため、装弾数はない。つまり、シリンダーは飾り。
吹雪:「!!」
いつの間に背後にもデーモンズ・ミラー軍団が周り込んでいた。
吹雪:「こんなに大勢いるのに、後ろを取るなんて、卑怯だね。そういう奴には、容赦しないんだ」
レッドアイズ・ガレオンの銃口にエネルギーを溜める。
吹雪:「フレア・バーン!!」
引き金を引いた瞬間、赤い光線が放たれ、背後に回っていたデーモンズ・ミラーを一掃した。
その頃、ネビル・コックとランサー・デーモンと戦いを繰り広げる恵美と亜美も全力で立ち向かっていた。
亜美:「ママ、大丈夫?」
恵美:「えぇ、心配ないわ」
お互いに心配し合う2人。
悪魔の調理師:『こ、こいつら…』
さっきまで相手をバカにするかのように笑っていたネビル・コックが悔しがるような表情をする。
ランサー・デーモン:『人間の癖に、以外にやる…』
どうやら、恵美と亜美に苦戦を強いられているようだ。
よく見たら、恵美と亜美は身体にダメージを負っているようには見えない。
対する2体のモンスターは、所々にダメージを負っていた。
恵美:「悪いけど、娘と一緒に死ぬつもりはないの。だから、手加減なしよ」
真剣な表情、でも口は笑っていた。
その頃、上へと続く階段を上っていた鬼柳、エマリー、レイバーの3人。
しばらく走ると、出口のような場所が見えてきた。
エマリー:「パパ!」
鬼柳:「ああ、出口だ」
鬼柳たちは、急いで上を目指し、出口に向かった。
そして、その出口を抜けると、結晶に包まれた廊下に出た。
壁の色が、玄関入ってからしばらく見ていた家の中にそっくりなことから、今自分たちが見ているのは、結晶で作られた世界ではないようだと認識する。
長い廊下には、扉がいくつも存在した。
ロヴィニ博士の家がどれだけ広いのか、何となくわかる。
周りを確認しながら鬼柳たちは前へ進む。
扉がいくつもあるとはいえ、そのほとんどが結晶体の所為で開閉できないようになっている。
鬼柳:「ん?」
しかし、その途中、1つの扉が周りの扉と違って、結晶体に覆われていなかった場所があった。
不自然だなと思った鬼柳は、その扉に向かう。
その頃、自分の膝にカルメを寝かせるミスティは、特に何もせず、彼女をゆっくりと寝かせていた。
ミスティ:「!」
すると、部屋の扉がゆっくりと開いた。
そして、部屋の中へ入ってきたのは…。
鬼柳:「…ミ、ミスティ…!」
自分が本当に愛している男、鬼柳京介だった。
ミスティ:「京介…!」
彼が、ここにいることに驚くミスティ。
エマリー:「あ!ママ!」
エマリーも部屋の中へ入って、母の元へ走る。
エマリー:「よかった。無事だったんだね」
ミスティ:「えぇ、心配かけてごめんなさい」
娘に心配をかけさせてしまったようだ。そんなことを思いながら、ミスティは謝った。
鬼柳とレイバーも、部屋の奥までやってきた。
ミスティ:「あ。あなたは…」
レイバーを見て、ミスティは少し驚いた。
レイバー:「…」
ミスティ:「まさか、あなたも、ここに来るなんてね」
ミスティの言葉を聞いて、鬼柳の脳裏にクエスチョンマークがついた。
鬼柳:「ミスティ、こいつのこと知っているのか?」
ミスティ:「少しね。あなたとのデュエルが終わったあと、ここまで連れて来いって、私たちに剣を向けてきたから」
少し腹が立っているのか、怖い目でレイバーを見る。
鬼柳:「聞いていないぞ、レイバー」
自分の妻に刃が向けられたのだ。夫である鬼柳は黙っているわけがない。
レイバー:「変な動物を一緒にいたんだ。敵だと思い込むだろ」
開き直ったかのようにレイバーは鬼柳と目線を合わせずに言った。
鬼柳は少し腹が立ったが、レイバーには何もしなかった。
ミスティを、行かせたのは自分だった。敵だと思い込むようなことを彼女にさせてしまったのは、自分の責任でもあるからだ。
エマリー:「…?」
エマリーは、母の膝で寝ている女の子に目線が映った。
エマリー:「ママ、その子、もしかして…」
元帥から見せてもらった写真に映っている子と同じだった。
ミスティ:「えぇ、博士の娘さん。カルメちゃんよ」
エマリー:「よかった、無事だったんだ」
気持ちよさそうに寝ているカルメの顔を覗くエマリー。
レイバー:「その子がいるんだ。博士も、この家にいるんだろ?」
ミスティ:「答えは、あのときと同じよ。私が、ここに来てからロヴィニ博士の姿は見ていないわ」
ミスティは、初めてレイバーと会ったときと同じ事を言った。
レイバー:「……」
ミスティを見るレイバー。どうやら、彼女が言っていることは本当のようだと信じたようだ。
ミスティ:「そういえば、教えていなかったわね。私が、ここに連れ去られたのか」
ミスティは、テーブルの上にある写真立てに視線を移す。
エマリー:「あ…」
その写真を見て、つい声がこぼれたエマリー。
鬼柳:「ミスティ、お前にそっくりだな」
ミスティ:「この子の本当の母親よ。どうやら、この子、私をママだと思い込んでしまったみたいなの。だから、パパに頼んで、私をここまで連れてくるように頼んだらしいわ」
鬼柳:「だが、クレートの話しでは、博士の奥さんは病で亡くしている…!流石に間違えるはずがないだろ」
鬼柳は、自分が思っていることを話した。
レイバー:「ん?ちょっと待て。今、パパに頼んだと言っていなかったか?ロヴィニ博士は、この家でまだ見かけていなかったんじゃないのか?」
レイバーもまた気になったことをミスティにぶつけた。
ミスティ:「えぇ、見ていないわ。でも、この子がそう言うのよ。私と一緒にいた、あのジャガーのことをパパってね」
ミスティの口から語られることとは一体…!
第8ED『あしあと《Clair(クレア)》』
次回予告
ナレーション:1人の少女カルメ。彼女は現実で何を見ているのか…。
ミスティは、彼女に呼びかけ、目を覚まさせようとする。
ロヴィニ・ジャガーが襲いかかる中、ミスティたちは、全力で彼女を助けようとする。
そして、ロヴィニ・ジャガーの正体が徐々に明らかになっていく!
エマリー:次回、遊戯王5DXAL「カルメの悲鳴 ベイニチア半島の終わり」
エマリー:「現実を見て!カルメちゃん!」
遊戯王5DXAL豆知識コーナー!!
レイバー:「俺が持つデュエルギアは世界に100本存在する刀衆の1本”トルネード・アロンダイト”だ。風の力で、どんなものでも斬り裂く不滅の刃だ」