第136話:『息子を守るために 秘めたる母親の力!』
ロヴィニ・ジャガー:「そんなに入りたければ、入ればいい」
ロヴィニ・ジャガーはそう言って、高く飛び上がり、屋根の上に立つ。
同時に、玄関を覆っていた結晶体が崩れ始める。
ロヴィニ・ジャガー:「しかし、入ったら、そのとき、お前たちに魔の手が迫る。それでもいいのであれば通るがいい」
玄関の扉が自動で開いた。
レイバー:「ロヴィニ博士は何処にいる!答えろ!」
レイバーが屋根の上にいるジャガーに叫ぶ。
ロヴィニ・ジャガー:「それを知りたければ、前へ進み、真実を見つけろ」
ロヴィニ・ジャガーはそう言い残し、身体が炎に包まれて、その場から消えた。
鬼柳:『お前が何をやろうとしているのか、俺には分からない。だが、俺の気持ちはただ一つ。お前を取り戻すだけだ』
鬼柳の胸には、その気持ちでいっぱいだった。
その頃、ミスティはカルメの部屋の中で「京介」と呟き、窓の外を見た。
ミスティ救出作戦が始まる。
第8OP『Mysterious《Naifu》』
【第136話:『息子を守るために 秘めたる母親の力!』
ロヴィニ博士の家の扉が開き、中へ入ろうとする鬼柳たち。
レイバー:「博士、俺はあんたを許さない」
レイバーは鬼柳たちより先に中へ入ろうとする。
吹雪:「ちょっと君!」
吹雪が止めようとしたとき、どこからか斬撃が飛んできてレイバーの行く手を阻んだ。
バギー:「そこから先は行かせないぞ…!」
ロヴィニ・ジャガーにやられたときのダメージを引きずりながら、こちらに近づくバギーは、手に持っているセカンドステージしたラファール・ジャマダハルから斬撃を飛ばして来る。
亜美:「きゃあ!」
亜美たちは、後ろから飛んできた斬撃に驚いた。
幸い当たってはいないものの、もう少しずれていたら、一溜りもなかった。
結晶体に大きな傷がついているのを見て、亜美は息を飲んだ。
どうやら、身体のダメージの所為で、狙いが定まらないようだ。
恵美:「あんな人、相手にする暇はないわ。急ぎましょう!」
恵美は亜美やエマリーと一緒に中へ入る。
バギー:「逃さないと、いったはずだ!」
バギーは再び、斬撃を飛ばした。
今度は、みんなの方へ向かって斬撃が飛んでくる。
鬼柳:「早く行くぞ!」
鬼柳が、みんなに指示を出す。
そして、インフェルニティ・パイソンを手に取り、自分の攻撃で、バギーが放った斬撃に対抗しようとする。
しかし―
未来:「ミラクル・フープ!」
フラフープのような輪っかを杖タイプのデュエルギアから出し、輪っかの中に透明な壁が張られ、バギーの斬撃を受け止める。
恵美:「み、未来さん…!」
未来の驚きの行動に驚く恵美たち。
未来:「あなたに、そのまま返すわ」
ミラクル・フープで受け止めた攻撃が、バギーに跳ね返される。
バギー:「ぐっ!」
自分が放った攻撃に耐えるバギー。
バギー:「ぐぅ、ぐわっ!」
身体に残っているダメージの所為で、跳ね返された攻撃に耐え切れず、吹き飛ばされる。
未来:「皆さん、先に行ってください。ここは、私が何とかします」
杖タイプのデュエルギアを手に持つ未来は、みんなに背中を見せてそう言った。
亜美:「で、でも、あいつの強さは、王国で目にしているはず。未来さん、1人じゃ―」
未来:「大丈夫、私には、この子がついているから」
未来が杖タイプのデュエルギアを持つ手を挙げてそう言った。
すると、未来の背後に、白い服に包まれた女の子”ガガガクラーク”が現れ、ウィンクをした。
未来が持っているデュエルギアは、ガガガクラークの杖タイプのデュエルギア”クラーク・ウッドワンド”。
先がレイピアのように鋭いため、剣にも見えるが、これは魔術師が使う杖だ。
未来:「さあ、早く行ってください。ここを終わらせたら、私も追いかけます」
未来は強い言葉でそう言った。
彼女の言葉を聞いた鬼柳は、彼女の気持ちに応えた。
鬼柳:「わかった。あいつのことは、あんたに任せる。行くぞ、みんな」
鬼柳は急いで家の中へ潜入した。
エマリー:「パパ、待って!」
エマリーが後を追いかける。
恵美:「気を付けて、未来」
未来:「はい」
はっきりと返事をした未来。
吹雪:「行くよ!恵美」
そして、吹雪、恵美、亜美は鬼柳たちの後を追いかける。
その間に、吹き飛ばされたバギーは起き上がる。
バギー:「チッ」
悔しさのあまり舌打ちをするバギー。
未来:「まだ起き上がれるのね」
バギー:「あんなもので倒れていたら、戦場では屑も同然だ」
未来:「あなたは、ロヴィニ博士が見つけたヴィータのペンダントをかなり欲しがっているみたいだけど、そこまでする理由はなに?」
未来はヴィータのペンダントを狙うバギーに質問をぶつけた。
バギー:「俺は、ダイシャラス王国で九十九遊馬に敗れた。そして、バリアン世界に強制的に連れて来られ、監禁されていた。自由を奪われたのだ」
悔しい気持ちが拳に現れる。
バギー:「バリアンの連中と交わした契約、ヴィータのペンダントを手にさえすれば、俺は再び自由になれる。自由に動き回れる!」
未来:「バリアン世界に復讐でもする気?聞けば、バリアンを復活させたのは、あなたと狂言なんでしょ」
狂言。今から1年半以上も前。私たちがワックスポワロで遭遇した敵。
最終的に中央裁判室の下につく謎の番人”牢獄(プリズン)”に送還され牢獄行き。
その後、老後の中で死んでいるのが発見されたらしい。
バギー:「俺も好きで復活させたかったわけじゃない。欲しかったのは、奴らの力だ」
未来:「でも、その力は、あなたが想像以上の物だった。あなたは、その力を掴むことはできなかったのよね」
未来の口調は、何でも知っているような話し方だった。
バギー:「貴様、バリアンについて何か知っているのか」
未来:「私は冒険家。その中で、バリアン世界とアストラル世界のことを夫と知ったわ。2つの世界がどれだけの力を持っているのかは、少しだけ理解しているわ」
バギー:「そうか。貴様、九十九遊馬の母親…。なら丁度いい。あいつの首をもらう前に、あんたの首をもらう。あんたの首を奴に見せれば、あいつは絶望するだろうからな」
バギーはセカンドステージしたラファール・ジャマダハルを強く振って、準備万端の体勢になる。
バギー:「言っていなかったな。俺が自由を手にした時にやることを」
未来:「?」
バギー:「俺が自由を手にした時、先にやることは、あの時、俺を倒した男―」
バギーの脳裏にダイシャラス王国で起きた戦いの記憶が蘇る。
あの時、俺を負かした自分の顔は、はっきり覚えている。
バギ:「九十九遊馬を殺すことだ!」
未来:「!」
バギーが発言した言葉に驚く未来。
バギー:「あいつを殺し、あの時のリベンジを、いや復讐を果たす!あいつを殺さなければ、俺の気がすまん!」
バギーは怒りのこもった言葉でそう言った。
未来:「もういいわ。あなたのやりたいことはわかったわ。でも、それを私がさせると思っているのかしら」
いつも優しい表情の未来が、本気で怒った表情をバギーに向けた。
その表情を見たバギーは一瞬動揺した。
未来:「私の首を取ると言ったわね。やってみなさい。あなたの、その力で」
未来がクラーク・ウッドワンドを構えてそう言った。
その言葉を聞いたバギーは、歯を立てて怒りを露にする。
バギー:「調子に乗るのも、今の内だぞ!」
バギーはデュエルギアを、足元の地面に突き刺し、両掌が緑色に輝く。
バギー:「ピン・ザ・フェザー!!」
両掌を大きく振って、風の渦でできた無数の針が未来に向かって飛んできた。
未来:「私に力を貸して、ガガガクラーク」
小さい声でそう言うと、未来の背後に、ガガガクラークが精霊体となって現れ頷いた。
ガガガクラークは、光の屑になり、クラーク・ウッドワンドに力を与える。
クラーク・ウッドワンドがピンク色に光る。
未来:「はっ」
クラーク・ウッドワンドを軽く振って、未来の上半身ぐらいの大きさの本を出した。
本はパラパラと勝手に開き、両ページに跨って描かれたピンク色の檻のようなイラストが開いた。
未来:「プリジオン・チャージ!」
檻のイラストが描かれたページが、バギーの攻撃を吸収する。
バギー:「何…!」
バギーの攻撃を吸収した本はページが開いた状態でクルクルと宙に浮いて回り出す。
未来:「また、あなたに返すわ!」
攻撃を吸収した本は、たった今吸収したバギーの攻撃を放った。
バギー:「また跳ね返す攻撃か…!」
未来:「ただ跳ね返す攻撃じゃないわ。これは吸収した攻撃を更に強くして跳ね返すわ!」
バギーが放った風の渦でできた無数の針は、1つ1つが少しだけ大きくなりバギーを襲おうとする。
バギー:「タイラント・フェザー・バリア!」
バギーは風のバリアを展開し、跳ね返ってきた攻撃を防御した。
未来:「あなたに息子はやらせない」
未来の頭の中に、小さい頃から今の遊馬の素顔が思い浮かぶ。
未来:「遊馬は、私が守る。それが母親の役目よ」
もし周りに未来に味方をする者たちがいれば、その立ち振る舞いは、周りの人々を魅了させていただろう。
その頃、ロヴィニ博士の家に潜入した一行。
レイバー:『どこだ…!どこにいる!』
レイバーは玄関より少し進んだ先にあった広場の中央に立っていた。
周りを見渡した博士を探そうと動こうとする。
鬼柳:「ちょっと待て!」
そんなレイバーの肩を、後ろから近づいてきた鬼柳が掴んだ。
レイバー:「!」
鬼柳:「この島の住民か?こんなとこで何をしているんだ」
鬼柳が質問した。
レイバー:「離せ!俺は博士を見つけて、家族の仇を打つんだ」
焦っているようにも見えるレイバー。
吹雪:「家族の仇を打つ?」
鬼柳:「訳ありのようだな」
レイバー:「っ!」
鬼柳:「話しを聞かせてもらおうか」
鬼柳はそう言って、レイバーかた事情を聞いた。
-------------
恵美:「この結晶化現象に家族が…」
亜美:「そうだったんだ」
目の前で家族を失うと言う辛い経験をしたレイバーの気持ちが少しわかる恵美たち。
レイバー:「俺が失ったものは二度と戻って来ない。だから、この事態を引き起こしたロヴィニ博士、あの男を倒して家族の仇を打つんだ。それで、俺の復讐は終わる」
レイバーの目は、完全に博士を殺そうとするような目をしていた。
鬼柳:『こいつ…』
鬼柳は昔のことを思い出した。
多元世紀になる前の時代、前世紀の頃にあったある出来事の記憶が鬼柳の頭に蘇る。
レイバー:「博士は、必ずこの家のどこかにいるんだろ。あんたらが、博士をどうするつもりかは知らないが、俺の邪魔はするな」
吹雪:「早とちりし過ぎだよ。この現象を起こしたのが博士と決まったわけじゃない」
吹雪が、そう言うとレイバーは近くの壁に強く拳をぶつけた。
レイバー:「なら誰が、この現象を起こすようなトリガーを引いたんだ!知っているんだぞ。俺は、あんたらが避難所で博士の助手と話していた内容を!博士が見つけたヴィータのペンダント。それが、この現象を引き起こしたってことをな」
ヴィータのペンダントには二つの能力があるとクレートから話しを聞いている。
1つは死者を蘇らせる力。そしてもう1つは人間をマインドコントロールさせてしまう力。
そして、後者の力が発揮したとき、数百メートルに渡って、謎の結晶体が地を覆う。
エマリー:「確かに博士はヴィータのペンダントを使って、奥さんを蘇らせようとしていた。けど、行為があって博士も、マインドコントロールの力を出したわけじゃ…」
レイバー:「偶然、後者の力が発動したからって許されることじゃないだろ」
怖い目でエマリーを見つめ、その視線にエマリーが怯える。
レイバー:「そもそも博士がヴィータのペンダントさえ持ってこなければ、こんなことは起きなかったのだ。死んだ人を蘇らせるためだ。馬鹿馬鹿しい!死んだ人が蘇るはずがない!死んだ人は二度と帰って来ないんだ!俺の家族のように!」
怒りが拳に現れるレイバー。
鬼柳:『ダークシグナーになって、遊星に復讐しようとしていたときの俺と同じだな』
レイバーにかつての自分の面影を重ねる鬼柳。
レイバー:「玄関で襲ってきた男は、突然現れた生き物の首元にぶら下がっているペンダントを見てヴィータのペンダントと言っていた。もしかしたら、あの生き物に聞けば、博士の居場所もわかるはずだ」
レイバーは何も言わずに、その場から立ち去ろうとする。
しかし、それを鬼柳が止める。
レイバー:「何のつもりだ?俺の邪魔はするなといったはずだ」
鬼柳:「別に復讐をしたいのなら、勝手にしてくれ。俺の一番の目的はさらわれた妻を取り戻すことだ」
レイバー:「妻?あぁ、妙な生き物と一緒にいた女か」
鬼柳の言っている妻が、ジャガーと一緒にいるところを、この眼で見ているレイバー。
鬼柳:「俺の目的は妻を取り戻すことだ。だが、ミスティをさらったジャガーを許すわけにはいかない」
実は鬼柳も、ミスティをさらったジャガーに怒りを覚えていた。
デュエルしたとき、ミスティは正気に戻っていたようだが、それでもあのジャガーに一発お見舞いしないと気が済まない。
鬼柳:「ここは、一時休戦をしようじゃねえか」
エマリー:「パパ…!」
パパの発言に驚くエマリー。
鬼柳:「人数は多い方がいいだろ?それだったら、探しているものも早く見つかる。どうだ?」
鬼柳は、レイバーの肩から手をどいた。
レイバー:「俺はフロンティアのメンバーじゃない。俺を信用するつもりか?」
鬼柳:「家族を失った悔しい思いは、本物だ。お前を信じて、俺はお前と共に行動する」
真剣な目でレイバーを見つめる鬼柳。
レイバーは、考える。一緒に行動するべきか、単独行動をするべきか。
俺の目的は、ロヴィニ博士を家族の敵討ちとして倒すことだ。そして、この現象を起こしたヴィータのペンダントを完全に破壊すること。
1人で行動すると時間の無駄が多くなるか。
レイバー:「いいだろ。あんたの誘いに乗ってやる。ただし、さっきも言ったが、俺の目的はロヴィニ博士だ。あんたの奥さんがどうなろうが、俺には知ったことじゃないぞ」
レイバーがそう言うと、エマリーが前に出てきた。
エマリー:「何ですって!パパ!この人と組むのやめ―」
怒りをレイバーにぶつけるエマリーだったが、鬼柳が娘の頭に掌を乗せた。
鬼柳:「いいだろう」
エマリー:「パパ!」
鬼柳:「安心しろ。ママは俺が必ず助け出す」
鬼柳はエマリーの頭をポンポンと軽く叩いた。
吹雪:「話しは済んだようだね。急ごう。ここで時間をつぶすわけには行かないからね」
吹雪の言う通りだ。
一行は、急いで先に進んだ。
その頃、外でバギーと戦う未来―
バギー:「インペトゥス・ウェンティー!!」
セカンドステージしたラファール・ジャマダハルの先端を突き出し、そこから突風のように回転する竜巻が発生し、未来に接近する。
未来:「ミラクル・フープ!」
フラフープのような輪っかを出し、輪っかの中に透明な壁が展開する。
そして、それが盾となって未来を守る。
未来:『これは止めるので精一杯ね』
未来は心の中でそう呟き、バギーの攻撃をかき消した。
本来、ミラクル・フープは敵に跳ね返す防御技だが、未来はあえて跳ね返さなかった。
いや、跳ね返せなかったのだ。攻撃にも跳ね返すことができるものもあればできないものもある。
バギー:「インペトゥス・ウェンティー。どうやら、この攻撃は跳ね返せないようだな」
どうやらバギーも気づいているようだ。
無理もない。さっきまで自分が放った攻撃を連続で跳ね返されていたのに、いきなりそれをやらなくなっては、不思議感が沸くはずだ。
バギー:「なら、これで終わりにする。インペトゥス・ウェンティーを超える新たな技でな!」
セカンドステージのラファール・ジャマダハルを構えるバギー。
すると、ラファール・ジャマダハルが輝き、もう片方の手に同じラファール・ジャマダハルが握られる。
いわゆる二刀流という奴だ。
そして、2本のセカンドステージしたラファール・ジャマダハルの刃に炎が灯された。
未来:「!」
そういえば、この人、炎属性の力も使えたっけ…。心の中でそう呟く未来。
バギーから殺気が放たれる。
バギー:「お前の首を手にし、遊馬を絶望させる。この攻撃は、お前の力では止められない」
未来:「息子に手を出そうというのであれば、私は絶対にあなたを止めなければいけない。遊馬の母として、あなたを必ず止める!」
クラーク・ウッドワンドを強く握り、いつでも攻撃を止める準備をする。
バギー:「俺はフリーダムな人生を送るのだ!うおおおおお!」
2本のセカンドステージしたラファール・ジャマダハルの刃に灯っていた炎が更に燃え上がる。
バギー:「エンペラー・スクリュー・バースト!!」
バツ印を描くように炎の斬撃を放つ。
そして、放った斬撃は途中で融合し、風と炎が混じりあってできた竜が生まれる。
未来:「っ!」
バギーが放った攻撃に戸惑いを見せる未来。
バギー:「今更、何をしても遅いぞ!こいつは、狙った敵に向かって炎と風の粒子弾を放ち!」
風と炎が混じり合った竜は口から、炎の粒子弾と風の粒子弾を交互に放ち、未来を襲う。
未来:「きゃああ!」
未来の周りに結晶体の破片が飛び散る。
同時に白煙が未来の周りに舞う。
バギー:「そして、トドメだ!」
未来を襲う竜が、猛スピードで空を飛び、そして未来がいる場所に突っ込む。
白煙の所為で、どうなったのか見えないが、未来にヒットしたのか、その辺りは爆発を起こした。
爆発の影響で、結晶の破片が飛び散り、飛び散った破片は、ロヴィニ博士の家の窓ガラスに罅を入れる。
バギー:「俺にたてつくのは、まだ早すぎたようだな」
そう言って、バギーはロヴィニ博士の家の玄関に向かって歩き出す。
???:「これがあなたの本気?」
バギー:「!!」
白煙が舞う、その中から消えこた女性の声。
バカな…!バギーは、そんなことを思って、声が聞こえた方を見た。
白煙が舞う中には、あの女しかいない。なら、今しゃべった声は、あの女…!
バギーは動揺する。
そして、白煙が晴れていき、中から堂々と立つ未来が現れる。
未来の前には、先ほど出したものと同じぐらいの本が現れていた。
バギー:「ば、バカな…!まさか、攻撃を止めたのか…!」
未来:「どうやら、あなたの攻撃より私の風の防御の方が上だったみたいね」
バギー:「風だと…」
未来:「私の身体に最も強く流れている波動属性は風。その力で攻撃を防がせてもらったわ」
未来は、バギーが攻撃を放ってきた直前に、クラーク・ウッドワンドに風属性の波動を流し込み、防御態勢に入っていたのだ。
そして、プリジオン・チャージをやる時と同様に、上半身サイズの本を出し、鎌鼬のようなイラストが描かれたページを開かれ、その鎌鼬のイラストが実体化し、尻尾を振り回して敵の攻撃を受け止めていたのだ。
だから、未来に攻撃は当たっていないのだ。
因みに、その鎌鼬は本の後ろに隠れていた。
未来:「これが、鎌鼬の盾よ」
未来がそう言うと、鎌鼬は猫のようにかわいく鳴いた。
バギー:「チッ、風属性の防御で攻撃を防いでいたか。だが、所詮防御だ。いつまでも俺の攻撃を受け止められるわけがない!」
未来:「残念だけど、あなたに構っている暇は私にはないわ。私も、みんなと早く合流しなくちゃいけないから」
未来が目を瞑ってそう言うと、本から実体活かして現れた鎌鼬の毛が赤くなる。
バギー:「!」
未来:「クラーク・ウッドワンドで、私が今放てる最大の攻撃を味合わせてあげる」
クラーク・ウッドワンドを振り上げる未来。
すると、鎌鼬が尻尾をグルグルと振り回す。
バギー:『こいつは吸収した攻撃を放つ攻撃じゃない…!』
未来が放とうとする攻撃に怯えるような表情を見せるバギー。
未来の前にある本のページがめくられ、扇子のイラストが描かれたページが開かれる。
未来:「ヴィルベルヴィント・キリキリマイ!は!」
クラーク・ウッドワンドから緑色の閃光が放たれ、その閃光は未来の前にある本に命中した。
すると、本が輝き、ページに描かれていた扇子が緑色に輝き、そこから何でも斬り刻むような風が巻き起こり、その風を尻尾を回す鎌鼬が纏う。
そして、鋭い風を纏った鎌鼬は、バギーに向かって突撃する。
バギー:「ぐわあああああ!」
物凄いスピードで迫ってくる鎌鼬を躱すことができず、バギーは未来が放った攻撃を受ける。
未来から受け取った風を纏う鎌鼬は、その力でバギーの身体を斬り裂いて行く。
バギー:「バ、バカな…。俺の…俺の自由が…」
バギーは、その場に倒れてしまう。
攻撃を終えた鎌鼬は、未来の肩に乗っかる。
未来:「ありがとう」
未来は鎌鼬の頭を撫で、鎌鼬は満足したのか少しずつ消えて行った。
倒れたバギーを見つめる未来。
未来:「これが母親の力よ。もう息子に手は出さないでね」
未来はそう言い残し、ロヴィニ博士の家の中へ潜入した。
バギー:「う…」
ダメージを受けた身体を起こそうとするバギーだが、相当ダメージを受けた所為で立ち上がることができなかった。
バギー:「なぜ…トドメを刺さない…。俺に情けでも…かけたつもりか…」
苦しそうにバギーは呟いた。
???:「期待外れのようだな」
倒れるバギーの背後から聞こえた声。
同時に足音も聞こえる。
コルダ:「お前に、この任務は荷が重すぎたようだな」
バリアン8人衆の1人コルダ。バギーを、この島に向かわせた張本人だ。
ピアーズ:「情けねえな!こんなにボロボロになって!」
コルダと共にいたのはバリアン8人衆の1人ピアーズだ。
バギー:「コルダ…、貴様がなぜここに…!」
コルダが、ここにいることに驚くバギー。
コルダ:「勿論、お前を消すために、ここにいる」
バギー:「ま、待ってくれ。まだ、俺は動ける…!ヴィータのペンダントは必ず手に入れて見せる」
バギーは慌ててそう言うと、ピアーズが大きな声で笑った。
ピアーズ:「バカだな!まだ気づいていないのか?お前は最初からこうなる運命だったんだよ!」
バギー:「!」
コルダ:「お前がヴィータのペンダントを奪ってきたら、その時点でお前を消すつもりだった」
バギー:「な、んだ、と…」
コルダ:「お前を人間界に放り出すのは、バリアン世界の我々から見たら、かなり厄介な存在になるからな」
牢に入っていたとはいえ、バギーはバリアン世界にいたのだ。
その存在が今、知れ渡るのは非常に危険だとバリアン8人衆は警戒している。
だから、バギーは最初から殺すつもりだったのだ。
バギー:「最初から…騙していたのか…!」
コルダ:「…」
バギー:「き、貴様…」
バギーの問いに答えないコルダは、右手が黒く染まる。
コルダ:「ご苦労だったな。後は俺たちが何とかする。お前は眠れ」
そう言ってコルダは黒く染まった右手をバギーの背中に突き刺す。
バギー:「ぐはっ!」
バギーの目が徐々に死んで行く。
そして、目を閉じて、その場で息耐えた。
息絶えたバギーは、少しずつ身体が消滅して言いった。
ピアーズ:「さて、大仕事になるな」
コルダ:「いや、俺たちはまだ動かない」
ピアーズ:「フッ、あいつらを遊ばせておくのか?そして、奴らが弱ったところでペンダントを奪う気だろ?」
ピアーズがそう聞くと、コルダはフッと笑い、ピアーズを見る。
コルダ:「さあ、どうだろうな」
コルダはピアーズの問いに笑みを浮かべてながらごまかすのであった――。
第8ED『あしあと《Clair(クレア)》』
次回予告
ナレーション:先を急ぐ鬼柳たちの前に広がる謎の光景…!
それは、ヴィータのペンダントの力によって生み出された仮想世界に過ぎなかった。
そんなとき、鬼柳たちを襲う敵が現れ、みんなは自分の力を信じ、敵と交戦する!
鬼柳とエマリーはみすてミスティと再会することができるのか!
吹雪:次回、遊戯王5DXAL「結晶が作り出した世界」
吹雪:「君たちは先を急ぐんだ!ここは僕が相手をする!」