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第134話:『刀衆!トルネード・アロンダイトの旋風!』









鬼柳:「あいつの、あんな目は久しぶりに見たんだ」
真剣な眼差しで自分を見つめたあの目は忘れられない。

吹雪:「彼女から、何かを感じたのかい?」

鬼柳:「さあな。少なくてもあいつが嘘を言っているようには見えなかった。正気に戻っているのも本当のようだしな。だから、俺はあいつを…、あいつを信じたんだ」

久しぶりに見たミスティの真剣な表情。



エマリー:「じゃあ、どうするの?ママを放っておくの!」
実の父親の行動に少しだけ激怒するエマリー。

鬼柳:「勘違いするなエマリー。俺は、母さんを信じただけだ。放っておくとは一言も言っていないぞ」
エマリーを落ち着かせるためなのか、少しだけ笑った表情で鬼柳はそう言った。


未来:「それでは、このまま博士の家に向かうんですね?」

鬼柳:「あぁ、当然だ」
鬼柳たちは、継続して博士の家に向かうことにする。




その頃、バリアンから送られた刺客、バギーも博士の家に向かっていた。



更には、ベイチニア半島の住民であるレイバーも、先ほどまで鬼柳たちの後を追っていたが、今は単独で行動していた。






第8OP『Mysterious《Naifu》』






第134話:『刀衆!トルネード・アロンダイトの旋風!』






ベイチニア半島B地区避難所


研究仲間と共に、パソコンの画面を見ていたクレートは、結晶体に飲み込まれた人達を助けられないか調べていた。


まずは、結晶体の成分を調べていた。


研究仲間A:「やはり、あの結晶体は、この世にある成分でできた物じゃないな」

クレート:「そのようだな。おそらく、こことは別の世界のもの。物質からして破壊できるものではない」

研究仲間B:「だが、破壊すれば何が起きるかわからないぞ。さっきみたいに結晶体の増加が再開する可能性もある」
彼の言う通りだ。結晶体の物質は未知の領域。下手に手を出せば、再び結晶化の増幅が始まりかねない。

クレート:「こちらから簡単に手を出すわけにはいかないか。もし手を出して、ミスティさんを助けに行った鬼柳さんたちの邪魔になるかもしれないしな」
腕を組んで悩むクレート。


クレート:「結晶体に飲み込まれた人達は、どういう状況かわかったか?」

研究仲間C:「あぁ、どうやら死んでいるわけではないようだ」

クレート:「何…!」

研究仲間C:「これを見てくれ」
そう言って、研究仲間の1人が、みんなをパソコンの画面に集中させた。

研究仲間C:「結晶体に飲み込まれた人を赤外線カメラで撮った映像だ。見ての通り、身体の体温は、人間が普段生きているときの平均体温とさほど変わらない」

クレート:「つまり、助けられるということか」

研究仲間C:「おそらくな」

研究仲間B:「くそっ!生きているとわかっているのに、結晶体に手が出せないんじゃ、意味がない!」
今は何もできないことに悔しがる1人の男性。


クレート:「まだ助けられないと決まったわけじゃない。まだ希望はある」

研究仲間A:「クレート…」

クレート:「いつでも結晶体を破壊できるように準備しておけ。それから、いざという時住民たちを避難できるようにしておくんだ」

研究仲間A:「だが、もう逃げられる場所は…!」

クレート:「船があるだろ、船が。いつでも出せるように準備しろ。後は、鬼柳さんたちの動きを待つしかない。何事もなければいいが…」
クレートはミスティを救いに行った鬼柳たちを信じて待つことにした。







その頃、鬼柳たちは、歩いてロヴィニ博士の家に向かっていた。


未来:「博士の家は見えているというのに、結晶体が邪魔をして真っ直ぐ進めない所為で時間ロスになりますね」

鬼柳:「俺たちにはな。だが、ミスティにとっては、いい時間を与えているかもな」
小さい結晶体を飛び越える鬼柳。


吹雪や恵美たちも次々と飛び越え、前へ進む。



恵美:「鬼柳君」

鬼柳:「なんだ?」

恵美:「ミスティさんは、どうして私たちを頼らないで1人でやろうとしているのかしら?」

恵美の言う通りだ。ここには、鬼柳、吹雪、恵美、亜美、エマリー、そして未来の6人がいる。

7人で力を合わせれば、すぐに片付けられる仕事なのかもしれない。

しかし、鬼柳はそうせずミスティを信じて一人で行動させた。




鬼柳:「あいつの目だ」

恵美:「目?」

鬼柳:「さっきも言っただろ、あいつの、あんな目は久しぶりに見たって。あいつが、あんな目をするときは大抵時間をかけて、何かをしようとするときだ」

エマリー:「ママ、昔から何か悩み事ができたとき、時間をかけて納得する答えを出していたもんね」

鬼柳:「あれは、モデル時代のときからだ。昔から、あいつはああいう性格だったからな」
昔のことを思い出した鬼柳は少しだけ笑みを浮かべた。


吹雪:「キミと彼女の過去の話し、ぜひ聞きたいね」
鬼柳の顔を見て、2人の過去に興味深々の吹雪。


鬼柳:「また今度な。あまりいい思い出はないんだ」
鬼柳は、このときこう思った。

『あまりダークシグナーだったときのことは話したくないからな』


鬼柳もミスティは一度はダークシグナーに落ちた身であった。


赤き竜に選ばれた”赤き竜の戦士・シグナー”であった遊星、ジャック、アキ、龍可、そして途中追加されたクロウと龍亜。

それに対立する者たちがダークシグナーであった。

鬼柳はある事件で裏切りと思い込んでしまった遊星への復讐、ミスティは弟を殺したアキへの復讐。もっともこれもミスティの思い込みによるものであった。


2人にとって、忘れたくても忘れられない過去…。

あまり広めたくない過去だ。






その頃、バギーはアボイド・ドラゴンのデュエルギア、”ラファール・ジャマダハル”を手に持って前へ進んでいた。



バギー:『…!』
何かを感じたバギーは、首を90度回転させた方向を見る。

バギー:「近くに誰かいるな。結晶体に包まれた人間じゃない。普通に動いている…」
バギーは、右手を指鉄砲にする。


バギー:「フェザー・ハンド・ガン!」
人差し指から風の弾丸を連射する。


結晶体が次々と破壊されていく。





勿論、大きな物音が聞こえた鬼柳たちも反応した。



鬼柳:「なんだ…!」

亜美:「何かが砕けたような音がしたよ!」
砕けたような音がする方向を、みんなが見つめる。


音は少しずつ近づいている。


吹雪:「危ない!」

鬼柳:「くそっ!」
吹雪は、妻と娘を、鬼柳は娘と未来を押し倒し、女性たちの身を守った。


そして、近くの結晶体が砕け散った。


砕けた結晶体の破片が、鬼柳と吹雪の背中に降り注ぐ。


恵美:「あなた!大丈夫!」

エマリー:「パパ!」
自分たちを守ってくれた吹雪と鬼柳を心配するエマリーたち。


吹雪:「心配ないよ。大したことじゃない」
吹雪が起き上がる。


鬼柳:「いきなりなんだ…!」
鬼柳も起き上がり、白煙が舞う方を見た。



バギー:「誰かと思えば、王国で会った連中か」
白煙の中から現れた人物を見て鬼柳たちは驚く。


亜美:「あー!」

鬼柳:「お前は!」

ダイシャラス王国の元第2王子バギー…。

エマリー:「前に国を滅茶苦茶にしたダメ王子!」
エマリーは指を指してそう言った。


亜美:「エマリー、ナイスネーミングセンス」
亜美は親指を立てて、グッジョブのサインをした。


未来:「ダイシャラス王国であった王子」

鬼柳:「確かバギーって名前だったな」
鬼柳たちがエマリーの発言を訂正するように言った。


バギー:「フロンティアの中でも、俺の名前を覚えてくれている人もいたようだな」
特にエマリーの「ダメ王子」発言に反発する態度は見せず、そう言った。


未来:「あなたは、ダイシャラス王国で遊馬に敗れた後、バリアンの人達に連れていかれたはず!」

恵美:「そんな、あなたがどうしてここに!」
バギーが現れたことに警戒する皆。

さっきふざけて発言したエマリーや、それに乗った亜美も警戒する。


バギー:「自由を手にするため」

鬼柳:「は?どういう意味だ」

バギー:「お前たちにはわからないだろうな。いや、わかってほしくもないがな。俺がバリアン世界でどれだけの苦痛に耐えたのか…。とにかく、お前たちの相手をするつもりはない。俺の目的は…」
バギーが、自分が目指している方向を見つめた。






みんなは、そっちの方向にあるものが何なのかわかっていた。



鬼柳:『まさか…』
鬼柳は、心の中でそう呟き、バギーに確認した。自分、いや自分たちの考えが間違っていないのであれば、奴の狙いは…。


鬼柳:「ヴィータのペンダントを狙っているのか?」
鬼柳がそう言うと、バギーが反応した。


バギー:「貴様ら…」


鬼柳:「図星のようだな」

バギー:「フロンティアの連中が、なぜそれを狙う。お前たちには、何の価値もないだろ」
バギーがそう言うと、未来が前に出る。


未来:「私たちは、この島の人達を助けるために、あそこに行くの。そして、ロヴィニ博士や、その娘のカルメちゃんもね」
未来がそう言った。


バギー:「チッ、胸糞悪いな。やはり人のためか。そんなことのために、お前たちにペンダントを奪われたくないな」

鬼柳:「俺も、別にペンダントに興味はねえさ。だが、王国であれだけ悪さをしたお前には渡したくないな」

未来:「あなた、バリアン世界から来たみたいだけど、バリアンの人達にペンダントを奪ってこいって頼まれたの?」

バギー:「…」

未来:「もしそうだったら、尚更渡せないわ」いつもより真剣な目で未来はそう発言した。


鬼柳:「覚悟してもらうぞ!」
鬼柳は”インフェルニティ・デス・ドラゴン”の銃タイプデュエルギアの”インフェルニティ・パイソン”の銃口を、バギーに向けた。


その瞬間、インフェルニティ・パイソンを握る手が輝き、デュエルギアに吸収される。


鬼柳:「闇は光へ。魔の竜は、その力で新たな一撃を放つ!」
インフェルニティ・パイソンの銃口にエネルギーがチャージされる。

その属性は”光”。そう、鬼柳の波動の属性は、光属性。闇とは真逆の属性を持っているのだ。


鬼柳:「シャイン・ゼロ・ブラスト!」
銃口からエネルギーが放たれ、エネルギーは光輝くインフェルニティ・デス・ドラゴンの形となって、バギーに迫る。


バギー:「タイラント・フェザー・バリア!!」
右手が緑色に光り、その右手を横に大きく振って、荒々しく吹き荒れる風のバリアを展開し、鬼柳の攻撃を受け止める。


かなりのパワーで、バギーは腰を低くして踏ん張っていたが、力負けして吹き飛ばされる。


バギー:「っ!」
背後にあった結晶体にぶつかるバギー。


エマリー:「パパ、強ーい」
パパの強さに感動するエマリー。目をキラキラ光らせていた。



バギー:「チッ、どうやら相手をする時間は作らない方がいいようだな」
バギーは尻尾を巻いて逃げた。

亜美:「あ!逃げた!」
亜美はバギーを指出してそう言った。


だが、吹雪はバギーが逃げた方向に、ロヴィニ博士の家があることに即座に気付いた。


吹雪:「違う。博士の家に向かっているんだ!奴の狙いは、ヴィータのペンダントだからね」

鬼柳:「チッ、ペンダントを奪って、とっとと逃げるってわけか。そうなる前に、捕まえるだけだ」
鬼柳は走って、バギーを追いかける。


その後を吹雪や他のみんながついて行く。







その頃、ロヴィニ・ジャガーの背中に乗って、カルメがいる家に向かうミスティ。


ミスティ:「ねえ、1つ聞いてもいいかしら?」

ロヴィニ・ジャガー:「なんだ?」

ミスティ:「あなた、いつからカルメの父親になったの?」
聞いた本人もあまり理解していない質問をぶつけるミスティ。

ロヴィニ・ジャガー:「カルメが私をパパと呼んでくれた。なら、私はずっと彼女のパパだったということだ」
以外にも即質問の答えを返してくれたジャガー。

だが、この答えはミスティにとってあいまいな答えだった。

ミスティ:『カルメが、このジャガーをパパと呼んでいるから彼は父親だと思い込んでいる?それじゃあ、どうしてカルメは、彼をパパと呼んでいるのかしら?』
ミスティの中に様々な謎が生まれ出す。


すると、突然激しい突風が吹き出し、ミスティとロヴィニ・ジャガーを襲う。

ミスティ:「な、何…!この風!?」
ミスティを乗せたジャガーは態勢を整え、地面に着地する。

すると、次は周りの結晶体が砕けるほどの突風が吹き、ジャガーとミスティは、その突風に当たらないように、結晶に包まれた建物の陰に隠れる。



???:「ご苦労だった。”トルネードトルーパー”。もういいぞ」
1人の人間の前に立つ風属性と思われるモンスター。

おそらく、こいつが突風を出していたのだろう。


ミスティと、ロヴィニ・ジャガーは建物の陰から出てくる。





ミスティ:「誰?あなた」
目の前に立つ青年に聞くミスティ。



レイバー:「俺の名前はレイバー。このベイチニア半島に住むデュエリストだ」
怒っているのか淡々と自己紹介を終わらせるレイバー。


レイバーを見たロヴィニ・ジャガーが警戒するように歯を立てる。


ミスティ:「一体、何のつもり?いきなり攻撃してきて」

レイバー:「…」
レイバーは真剣な目でミスティを見る。


ミスティ:「?」

レイバー:「ついさっきまで、避難所にいた人が、まさか敵に回っているとはな」
レイバーの口振りからして、彼がさっきまで避難所にいたということを推測するミスティ。


ミスティ:「あなたには関係ないわ」
ミスティがはっきりそう言うと、レイバーは唇を噛みしめてこう言った。

レイバー:「大いに関係あるんだよ」

ミスティ:「!」
強い言葉でレイバーはそう口にし、ミスティは少し驚いた。

レイバー:「俺の家族は全員、この変な結晶に飲み込まれたんだ。俺の目の前でな!」
レイバーは、島で起きた結晶化の現象で家族を失っていた。


一昨日まで普通に生活していた。しかし、この結晶化の所為で、思い出の記憶が灰になった。


レイバー:「あんたらが、避難所で、この島の研究者と話しているところを盗み聞きさせてもらった。予想はついていたが、やはりロヴィニ博士の実験が原因だったとはな」
まさか、クレートさんと話していたときの内容を聞かれていたなんて…。

ミスティは心の中でそう思った。


ミスティ:「まだ、博士がやったって言う証拠はないわ」

レイバー:「嘘をつくな!」

ミスティ:「ホントよ。現に、博士の家に本人はいなかったわ」
家の中全体を見たわけではないが、ミスティは何となくそう言いきった。

それに、娘のカルメは、今私の隣にいるジャガーをパパと呼んでいた。

ミスティは内心思っているのだ。まさか、このジャガーは、本当にカルメの父親なんじゃないかと…。

無論、このことを言っても信用されないのは目に見えているので、ミスティはレイバーにそのことを言うつもりはなかった。


レイバー:「連れていってもらおうか。博士の家に。そして、色々と教えてもらうぞ」
レイバーが怒った目でそう言った。


ミスティは、彼の目を見てかなり激怒していることに気付いた。

しかし、今、家に来られたら、色々と面倒なことが起きそうだ。それ以前にカルメがいる。

下手にこの人とカルメを接触させたら、彼女に危害が加わるかもしれない…。ミスティはそう思った。


ミスティ:「あなたに教えることはないわ」
ミスティははっきりとそう言って、レイバーに背中を見せた。

レイバー:「なら力づくで行くまでだ。トルネードトルーパー!」
レイバーの横に立っていた風属性のモンスターが、粒子が混じった緑色の光に包まれて、姿を変える。


一度レイバーに背中を見せたミスティだったが、背後から突然吹いてきた風に驚き、再びレイバーの方を向いた。


レイバー:「全てを斬り裂く竜巻の刃!」
レイバーの手に持たれる一本の剣。刀身が緑色に輝いている。


レイバー:「刀衆!”トルネード・アロンダイト”!!」
刀身の輝きが収まり、その刃の先をミスティに向ける。

両刃の剣がキラッと一瞬光る。


ミスティ:「刀衆…!確か、この世界に100本存在する特別な精霊の力を持つ刀だったわね」
刀衆、特刀衆、大刀衆、そして最上刀衆。世界にある特別な精霊の力を持つ剣だ。


レイバー:「トルネードトルーパーは、十数年前に行われたデュエルカップ世界大会の優勝者に送られた世界で1枚しかないカード。そして、デュエルギアとなったその形は何でも斬り裂く風の刃トルネード・アロンダイト。この剣を向けられた者は俺から逃げられない」
右手で剣を持ち、刀身の先をミスティからロヴィニ・ジャガーに向ける。

レイバー:「お前にも付き合ってもらうぞ」

ロヴィニ・ジャガー:「貴様…!」
本気で殺すような目をするロヴィニ・ジャガーは、急に走り出しレイバーに近づく。


ミスティ:「ま、待って!あなたが戦っては、カルメが!」
ミスティが言葉でロヴィニ・ジャガーを止めようとするが、ジャガーにミスティの声は聞こえていなかった。


鋭い爪で猛攻するが、レイバーはトルネード・アロンダイトで、その爪を受け止め、当たらないようにする。


続いて、口にある鋭い牙で噛み付こうとしてきた。

だが、レイバーは、その牙に噛みつかれないように躱した。


レイバー:「手加減なしということか。ならこちらからも行かせてもらおうぞ!」
トルネード・アロンダイトを両手で持ち、攻撃体勢に入る。


トルネード・アロンダイトの刀身に渦を巻くように風が纏われる。


ロヴィニ・ジャガーは真っ正面からレイバーに噛みつこうとしてきた。


レイバー:「風の一突き…!」
トルネード・アロンダイトを素早く前へ突き出した。

レイバー:「ガスト・レイ!」
刀身に纏われた風の力が、ロヴィニ・ジャガーを襲う。


ロヴィニ・ジャガー:「っ!」
ジャガーは、今の攻撃で後ろに吹き飛ばされる。




吹き飛ばされ、背後にあった結晶体がいくつか砕け散る。


だが、ジャガーはすぐさま態勢を立て直す。

その時、目つきがさっきよりもさらに鋭くなっていた。


ミスティ:「ちょっと、落ち着いて!」
ロヴィニ・ジャガーを止めようとするミスティ。

ロヴィニ・ジャガー:「こいつを、あそこに近づけさせてはいけない。だから、ここで殺す!」
ジャガーは高く飛び、鋭い爪をレイバーに向ける。


レイバー:『さっきよりも早い…!』
軽くかわそうと思っていたが、さっきほどまでの動きよりも早く、躱すことは諦め、トルネード・アロンダイトで、その爪を受け止める。


レイバー:「くっ!」

ロヴィニ・ジャガーは遠吠えを上げた。





その頃、家でパパとママの帰りを待つカルメ…。

窓の向こうから遠吠えが聞こえ、窓のすぐ側まで来る。


カルメ:「パパ、ママ…早く帰って来てよ…」
カルメが寂しそうな顔をする。





レイバーとロヴィニ・ジャガーのバトルは激しさを増していた。


レイバー:「その牙と爪折ってくれる!」
トルネード・アロンダイトの刀身が緑色に輝く。


そして、レイバーは身体を捻り、トルネード・アロンダイトを構えた。


レイバー:「やるぞ、トルネードトルーパー」
レイバーの背後に、大きな翼を羽ばたかせるトルネードトルーパーの幻影が現れる。

その鷹のような鋭く赤い眼を光らせて、攻撃体勢に入った。


ロヴィニ・ジャガーも腰を低く落とし、いつでも飛び上がれるような体勢に入った。

しかも、ジャガーの4本の足に炎が灯される。


ロヴィニ・ジャガー:「カルメは私が守る…!」
ジャガーは小さい声でそう呟いた。


レイバー:「最強の矛…、その力でお前を殲滅する!」
トルネードトルーパーの幻影が、羽を羽ばたかせて、風を起こした。

やがて、その風は渦を生み出す。

レイバー:「行くぞ!」
レイバーは右足を軸にして身体を回転させた。


そして、回転するレイバーと風の渦が一つになり、大きな竜巻となった。


ミスティ:「モンスターとの連携攻撃…!」
襲ってくる風に耐え切りながらそう呟くミスティ。


ロヴィニ・ジャガー:「私は、負けない!」
ジャガーは遠吠えを上げて、気合を入れてレイバーが作った竜巻に突撃する。


レイバー:「奥義!疾風勁草!」
レイバーと一つになった竜巻がロヴィニ・ジャガーに迫る。

対するジャガーはそれでも恐れず、竜巻とぶつかり合う。


ジャガーの足に灯されている炎が竜巻の影響で周りに飛び散る。

パワーは互角のように見えた。

どちらも全然引かず、自分の攻撃をぶつけていたからだ。

そして、ジャガーが吹き飛ばされた。

いや、レイバーも同じだ。竜巻の中から出てきたレイバーは、地面から出ている結晶体の上に落ちた。

レイバー:「ぐっ!」



ロヴィニ・ジャガーの方はうまく着地したものの身体にそれなりのダメージを受けたようだ。


ロヴィニ・ジャガー:「うっ」

ミスティ:「だ、大丈夫…!」

ロヴィニ・ジャガー:「問題ない。それよりも、この男を…!」
ジャガーは一歩ずつ前へ進みレイバーに近づく。





その頃、家で留守番しているカルメ。

1人で家にいるのが段々寂しくなり、涙目になってきた。


カルメ:「パパ、ママ、早く帰って来てよ。私を1人にしないで…」
カルメの涙が床にポロポロ落ちる。


すると、ロヴィニ博士の家を中心に、結晶体の増殖が再び始まった。


増殖は範囲を広めていく。





今からレイバーを倒そうとするロヴィニ・ジャガーが、何かの異変に気付いた。

ミスティ:「何かしら…」
それはミスティも同じだった。


妙な音も聞こえていた。音が聞こえる方を見るミスティたち。


音は次第に大きなっていた。


そして、次の瞬間、地面から出ている結晶体から新たな結晶体が様々な場所から出てきた。


ミスティ:「これは…!」

ロヴィニ・ジャガー:「増殖している…。なぜ…!」
ジャガーは家の方向を見つめる。


目を閉じてカルメの心を感じ取る。

ジャガーの脳裏にはカルメが悲しんでいる姿が浮かび上がった。


ロヴィニ・ジャガー:「カルメが泣いている」

ミスティ:「え…!」

ジャガーはレイバーにトドメを刺すのをやめた。

ロヴィニ・ジャガー:「家に戻るぞ。カルメを落ち着かせるんだ!」
ジャガーがミスティにそう言うと、ミスティはすぐにジャガーの背中に乗った。


レイバー:「ま、待て!逃げるのか!」

ロヴィニ・ジャガー:「お前を相手をしている暇はない」
ロヴィニ・ジャガーはそう言って、高くジャンプして急いで家に向かった。


レイバー:「くっ…、戦いを放棄するとはな」
身体の痛みがなくなり、レイバーもロヴィニ・ジャガーが向かった方へ走った。




急いで家に向かうジャガーとミスティ。

ミスティ:『カルメ…』
ミスティは心の中で、そう呟いた。







第8ED『あしあと《Clair(クレア)》』







次回予告

ナレーション:父と母の帰りを待っていたカルメ。全然帰って来なかった2人に寂しさを感じていたカルメをミスティが慰める。

その頃、博士の豪邸の前にレイバーとバギーが到着した。

2人は、自分の目的のために火花を散らした。

そして、その裏でロヴィニ・ジャガーも娘を楽しませるために新たな企みを始めようとする。


エマリー:次回、遊戯王5DXAL「自由を求める者と復讐を誓う者」


エマリー:「ここにママがいるんだよね」
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